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        自衛隊イラク派遣…大義名分はあるのか?
        2003/12/10
        9日、自衛隊のイラク派遣が閣議決定されました。みなさんはどう受け取られたでしょうか? 3月段階では「大量破壊兵器」があるからとブッシュのイラク侵略攻撃を支持し、自衛隊派遣の必要性が議論されていましたが、今もって「大量破壊兵器」は見つからないままに、そしてアメリカとの関係では結論を出すのは年を越すわけにいかないとの判断からか、「テロを許すわけにはいかない」を全面に押し出し「人道復興支援」「安全確保支援」として、現在もその全土が戦闘状態にある他国の領土へ自衛隊が軍備を備えて送られることになろうとしています。ある世論調査では9割の国民が派遣には慎重・反対と答えています。国連は国連軍への参加や復興支援について決議していますが、今回の日本の自衛隊派遣は、戦争を始め、終結宣言後も殺戮を繰り広げながらイラクを占領下においているアメリカとの「同盟関係」に基づくもので、イラク側から見ればアメリカの援軍としての参戦と受け止められても仕方のないものです。
         イラクの市民が今最も求めているのは、生命の安全の確保とライフラインの復旧です。水道・電気、医療と子どもたち、人々の命です。自衛隊がそのために来てくれると派遣地とされるサマーワの人たちは考えているそうです。「復旧のためなら何でも協力する」と……。しかし、迷彩服を着て軍備を備えた軍隊が数百人規模で押しかければ、政府の言うところの「テロリスト」たちにとって格好の攻撃対象となることは誰にでも考えられます。
         イラクの主権を尊重しながらの国連主導の復興支援はもちろん必要です。しかしアメリカも「イラク全土が戦闘状態にある」と言っているような状況では、アメリカは一時占領を止めて退却し、国連軍として復興支援として参加すべきであり、日本もまた同じく国際政治の場でその役割を果たす時ではないでしょうか。私には小泉首相の説明は、アメリカとの同盟関係を維持するための自衛隊派遣としか聞こえませんでした。
         今回のイラク戦争において、アメリカははじめから侵略者=「テロリスト」であって、恐怖政治を行っていたフセイン政権が倒れたことは歓迎しつつも、その際の攻撃もその後の占領政策における戦闘も多数の一般市民を次々と犠牲者とし、住居や様々な建造物を破壊し続けているわけですから、イラクの国家復興に向けて望む民主化に役立っているとはイラク市民の4分の3が思っていません。今日の生活も明日の命も見えない日々を過ごしている市民と子どもたちにとっての「最善の利益」が考えられなければなりません。復興に向けて、戦闘という軍事的活動から国連における国際政治の場に焦点が移される時に来ていると思います。
         ブッシュの始めた侵略戦争に荷担することへの決議にあたり、同盟国として日本の「国家の意思が問われ、国民の精神が試されている」と小泉首相は言いましたが、私には自衛隊派遣との関係が一国民としてまるで理解できません。すごくねじれた憲法解釈に基づく精神主義的な主張で、自衛隊派遣への大義名分は少しも聞き取れませんでした。「国際貢献」とか(むいたところで)「石油権益の確保」を言う前に、イラク国民が本当に望んでいることは何かを、イラクの人々の命の重みを、派遣されることになるかも知れない自衛隊員の命の重みを、戦争という行為の愚かさを、わずか半世紀余り前に起こったことを振り返りながら考えるべき時だと思います。20世紀を振り返る時です。