お知らせ

news

  • ▼新着情報

    • ▼ブログ

      • ▼研究ノート

        「学力考査」の「プレテスト」は「答えを教えている」?
        2004/01/08
        昨年末の向日市議会で、教育問題についてある議員が「学力考査」に関する質問をされました。「プレテストの名目で答えを教えて、同じ問題で学力考査を実施されている状況で本当の学力の定着が図れるのか…」というものでした。学力評価についての認識が固定的・一面的で古い教育観・学力評価観にとらわれての質問であったと思います。
         言われるところの「学力考査」は中学校において数十年にわたって続けられている「客観的テスト」形式の総括的評価です。しかし、学力評価には、「診断的評価」「形成的評価」そして「総括的評価」の3つがあり、中でも「形成的評価」の重要性が現在強調されています。「プレテスト」はこれにあたるもので、教師にとっては生徒がどのくらい授業内容を理解できているか、どの部分の理解が不十分かを知る意味があり、また生徒にとっては自身の理解度を知ることができ、わかっていないところに気づく機会です。そしてわかっていないところを再学習して身につけることが大切だと思います。この「プレテスト」がたまたま学期末試験の直前に行われ、内容に一定の同一性があったことを問題とされているようですが、一人ひとりが確かな学力を身につけていくことを重視する立場から考えれば、何ら「問題」とする必要を感じません。教育評価のあり方について、もっと学習された上で、問題指摘としての発言でなく、より子どもたちにとって有意義な学力評価が向日市の教育現場で行われていくよう建設的な質問なり意見を述べていただきたいと思います。
         この議員質問のために、次男の学年(中1)の社会科の2学期末試験はやり直しとなり、試験範囲も1学期分も含めるとされ実施されました。一人の議員の固定観念による質問で教育委員会が動揺し、学校長に調査を指示、約7割が似通っていたとして百数十人の子どもたちが再テストを受けるという事態となりました。学期末も押し迫ってのこの事態、対応する教師の皆さんも大変だったと思います。社会科などの教科で学期途上での形成的評価を行うための小テストをすれば、それとほぼ同じ問題が本試験に出ることは当然と言えば当然です。数学などのように数字を少し変えれば違う問題となる教科とは基本的に違うからです。鎌倉幕府ができたのはやはり1192年なのですから…。
         わかるところと、わかってないところを理解し、わからないところを学習し身につける。十分に形成された学力で総括的評価をしてもらいたいと思うのは子どもたちはもちろん、親の願いでもあると思います。競争的受験のための評価には相対評価や偏差値による序列化、差別化が必要でしょう。でも、その中で形成される意識は「競争的」な人間関係や「他人より…」という価値観です。客観的評価はその時点の一面的な学力を表すもので、その人の本当の全体的学力や人間性、価値観を表すことはできません。高度経済成長からバブル崩壊まで信仰されてきた学校信仰・学歴社会が崩れ去った現在、当時の教育評価の中軸であった客観的テストによる総括的評価のみに頼りつづけることなく、全人格的な学力評価を行える様々な評価方法を柔軟に組み合わせる必要性が強調されてきています。ちなみに、この発言をした議員は「文教消防常任委員会」の委員長をされています。教育委員会・学校教育の施策に大きな影響力を持つ議員であるという、前向きで誠実な意識を再構築して頂きたいと思います。