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        子どもの権利条約の拘束力と感情的虐待。
        2004/02/22
        奈良県天理市に続いて、横浜市長宛にも昨年11月「どうかたすけてください」「わたしの心をわかってほしいです」「いじめやめさせて」と不登校になっている小3の少女が手紙を書いていたことがわかりました。いずれも担任男性教諭による暴力的な言動への恐怖などが原因といいます。天理市の市長は2週間後に返事を郵送。この中で「(教育)委員会や学校に課せられた緊急の課題として取り組んでいるとの報告を受けています」とし「(関係者が)十分誠意をもって話し合いを進められるべきと思い、委員会に伝えています。早く良い結果が出ますように関心をもって見守っていきます」「市長という立場上、影響が大きいので(返信の)文面以上のことは言えない」と、具体的対応についてふれていません。対応に追われたこの学校の校長は家族に「しんどい」ともらし、20日に自殺しました。一方、いじめを認めない学校への不満、担任への不信、そして級友への思いを込めた横浜市長宛の手紙は最近まで放置されていて、市長は「事実であれば残念。今まで表に出なかったことや放置されたことについて速やかに最善の手を(学校は)打つべきだ。子供と一緒に話をしたい」と述べています。学校管理者や教育委員会でなく、市の「一番偉い人」にけなげに救いを求めて手紙を書くというのは、学校内では改善されそうもないのでより立場の強いと思われる自治体の長への直訴です。自治体の長の認識が、学校病理へのメスを握っているとも言えます。身体的虐待よりも感情的な虐待によって受けた心の傷が、子どもたちの非社会化をもたらしていることを、もっと認識する必要があります。また、精神的に追いつめられる校長職の実態、教育行政の構造や力関係も明らかにしていかなければなりません。
         1月30日、国連・子どもの権利委員会が日本政府が出していた2回目の報告書に対する「総括所見」を公開しました。この所見では、「教育制度の過度に競争的な性質によって子どもの身体的および精神的健康に悪影響が生じ、かつ子どもが最大限可能なまで発達することが阻害されている」ことを懸念し、「生徒および親と連携しながら学校における問題および紛争、とくに(いじめを含む)学校における暴力に効果的に対応するための措置を発展させる」ことを勧告しています。また、同「条約の実施を監視する独立したシステムが全国規模で存在しないこと」や「思春期の子どもの間で精神障害および情緒障害(ストレスおよび鬱を含む)が蔓延しており思春期の子どもの精神的健康に関する包括的な戦略が存在しないこと」を懸念し、「人権教育、およびとくに子どもの権利教育を学校カリキュラムに含めること」や「施設および家庭における体罰の禁止の措置」を勧告しています。さらに「政府、議会および一般公衆のあいだで、条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため広く配布されるべき」として、「日本政府の出した第2回報告書および文書回答を広く公衆一般が入手できるようにするとともに、国連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう勧告」しています。
         昨年7月、日本政府の青少年育成推進本部担当相(当時)の鴻池祥肇氏(長崎児童突き落とし事件で「市中引き回し」発言をした人物)が衆院内閣委員会で子どもの権利条約への認識を問われ、「私は詳しいことは存じておりません」と言い放ったとか…。担当大臣クラスがこの程度の認識で平然としているのも、それがマスコミで批判されないのもどうかしていると言うしかありません。国際条約である子どもの権利条約の国内行政・諸機関での拘束力が高まることに、子どもたちをめぐる課題の前進を切望します。とりわけ学校現場や教育行政において、この条約に基づいて子どもたちの最前の利益と権利が守られるようになることは、緊急の課題だと思います。