子どもが育つ環境を考えさせられる佐世保同級生殺害事件。
2004/06/06
長崎県佐世保市の市立大久保小学校(児童数187人)の6年生、御手洗怜美(さとみ)さん(12)が殺害された事件で、県警の調べに対し、補導された同級生の女児(11)が「(事件の)4日前に殺すつもりだった」と供述していることが分かりました。佐世保児童相談所は2日、女児を長崎家裁佐世保支部に送致、家裁は女児の観護措置を決め、長崎市の長崎少年鑑別所に。
この事件は単に11歳女児の同級生殺害という事件性だけでなく、その背景について考えさせられます。
事件の10日ほど前、女児が髪を切っており、髪形などについて、インターネットの掲示板に書き込みがあったそうです。県警の調べに女児は「仲良しだったけど、インターネットの掲示板に(怜美さんに)嫌なことを何度か書き込まれ、腹が立った。殺すつもりだった」と供述。実際に事件が起きた1日の4日前にも殺害を実行しようとしていたとみられます。また女児が自分のホームページ(HP)に同級生への激しい憤りなどをつづっていたことも分かりました。女児は掲示板の書き込みについて「やめて欲しい」と怜美さんに求めていたといいます。このHPの世界を覗くと、様々な彼女の苦悩が見えてくるようです。
◇クラス替えのない小さな「密室」の友人関係
<うぜークラス つーか私のいるクラスうざってー>。女児は昨年12月、自分のHPに気持ちをぶつけています。同級生たちをののしる言葉がさらに並びます。<下品な愚民や><喧嘩(けんか)売ってきて買ったら「ごめん」とか言って謝るヘタレ(根性なし)や><高慢でジコマン(自己満足)なデブス(デブでブス)や>
女児は今年5月、HPで物語も書いています。題名は「BATTLE ROYALEー囁(ささや)きー」。残虐シーンが社会問題化した映画「バトル・ロワイアル」になぞらえ、同じクラスの中学生同士が、ただ一人の生き残りをかけて殺し合う。登場人物は男子18人、女子20人。1学級しかない大久保小の6年生と構成は全く同じ。物語は一人の女子生徒だけが生き残ったところで終わる。女児はこう記しています。<私は……殺し合い、なんて、人を奪うことは許されないので殺し合いなんてしません(何きれいごと吐いてるんだ)>
保護者の中には「女児にはいろんなストレスがたまっていたのではないか」とみる人もいます。6年間1クラスで持ち上がり、女子特有の小集団形成・解体・再形成もあったでしょうし、表面的には「良い子」の役割を演じ続けるというストレスも大人には理解できないほど強いものだったのでしょう。
学校関係者は「女児は事件の1週間ほど前からいらいらして、他のクラスメートとも口げんかをしていた」と明かします。これは確かな「兆候」ではないのでしょうか。夜のチャットで不本意な書き込みにいらだっていれば、昼間の学校生活場面でもその心理状態が現れて当然です。
はた目には少女らしい仲良しの2人。女児は怜美さんのように授業参観でも進んで手を上げる快活なタイプだった。だが、教師の目には「非常に明るい半面、暗いところがある」と映ったといいます。その暗いと感じた面を知る関わりを持って欲しかったと思います。
父母は佐世保児童相談所に「子供は問題なく育っていた。成績もよく、頑張り屋だったが、なかなか自己主張できないところがあった」と話しています。一所懸命演じた「良い子」のもう一つの面を、彼女は精一杯隠し通したのでしょう。誰にも心を開くことなく……。
捜査関係者は残酷な事件と女児の顔が結びつかない。「かわいらしい、どこにでもいる普通の子で特別な感じはしない。本当の動機は仲の良かった2人にしかわからないかもしれない」と語っています。学校も家庭も地域も、子どもたちにとって「安心できる場の保障」「自分を大切に思い他者を思いやる気持ちの育ち」の必要性を教えてくれた事件ではなかったでしょうか。しかし、失ったものが大きすぎます。
民間施設と教委、小中学校が連携:不登校児童・生徒の対応へ初会合
フリースクール関係者と学校関係者の連携のあり方などを考えるネットワーク会議(京都市上京区)
不登校児童・生徒への対応について、学校関係者とフリースクールなど民間施設の関係者が協議する「不登校に関するネットワーク会議」の初会合が1日、京都市上京区のホテルで開かれました。
これまでほとんど連携がなかった府内の民間施設と教育委員会、小中学校が「児童、生徒に細やかに対応するため」情報交換する場を設けたものです。▽フリースクールなどの実態把握▽学校とフリースクールの連携のあり方▽文部科学省が示している出席認定に関するガイドラインの京都府版策定-の3点を協議するそうです。
委員には府教委、小中学校代表、学識経験者らのほか、ほっとハウス(京都市南区)、わく星学校(同左京区)、聖母の小さな学校(舞鶴市)の3つのフリースクールの代表が出席した。
座長に本間友巳京都教育大教授を選び、フリースクールが「人間関係をつくり、社会の中で自立できるようになることを目指している」などと活動の状況を報告した。
会議は今後月1、2回のペースで数回開催し、連携のあり方やガイドラインを決めていくそうです。