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        教員の半数が児童虐待気付いても通告ためらう?
        2004/06/13
        文部科学省の委託研究班による「児童虐待に関する学校の対応についての調査研究」で、虐待が疑われる子どもの存在に気付いても、幼稚園と小中学校の教員の半数近くが、「児童相談所などへの通告は、場合による」と考えていることが6日分かりました。調査は、山梨大の玉井邦夫・助教授らの研究班が2002年度、全国の公私立幼稚園と公立小中学校、計179校の教員3710人を対象に実施し、2年がかりで回答を分析したものです。通告は法的義務ですが、教員がためらうのは、「自らの判断に自信が持てない」「子どもへの被害拡大を恐れる」などの理由が多く、研究班は「児童相談所などとの適切な連携に向けたシステムづくりが急務」と指摘しています。
         2002年度までの2年間に、家庭での虐待(身体的・心理的・性的虐待、育児放棄)が疑われる児童・生徒への対応を経験した教員は5人に1人の21.9%、幼稚園25.6%、小学校25.3%、中学校18.2%の順でした。疑いを持ったきっかけは、「身体的な様子」「子どもの言動」「他の教員の連絡」「欠席状況」の順で多く、養護教員、学年主任、生徒指導担当者などの教員ごとに、虐待に気付くきっかけに特徴があり、報告書は「学校は複眼的な視点を持ちうることを示している」としています。しかし、虐待事例を教員が見つけた場合に、児童相談所や福祉事務所に通告する義務(児童虐待防止法)について、「知っている」「聞いたことがある」と答えたのは83.6%。公務員の守秘義務よりも通告義務が優先することを知っていたのは、71.4%にとどまっています。
         「今後、疑わしい事例を通告するか」という問いには、「必ずする」と答えたのは44%。「場合によってはする」が48.8%、「しない」が0.3%いました。
         通告をためらう要因は、「虐待であるという判断に自信が持てない」「事実関係を把握したいと考えるだろうから」など「自分の判断」に関するものが回答者の4割強、「子どもに被害が出るのではと思う」など「子ども自身」に関するものは2割弱、「保護者との信頼関係を損ないたくない」など「家庭との関係」に関するもの、「上司から止められそう」など「校内体制」に関するものがいずれも1割強でした。
         虐待を受けている子どもにとって、どんな対応がふさわしいのかを考えた時、これらの答えは「大人の立場」が優先された判断と思えてしまいます。

        若者減り、年金不信加速―出生率低下
         出生率低下に歯止めがかかりません。厚生労働省が10日発表した03年の合計特殊出生率は政府の02年推計を下回り、1.29に落ち込みました。この「誤算」は、改正したばかりの年金設計を大きく揺るがします。政府が約束した「50%給付」の確保は不透明になり、「年金不信」に拍車がかかるのは避けられそうにありません。出生率低下はまた、経済成長の足を引っ張り、過疎化による地域崩壊などにもつながりますが、抜本策は見えないままです。
         政府は89年に合計特殊出生率が急落した「1.57ショック」をきっかけに少子化対策に取り組んできました。今回の年金改革法にも、育児休業中の人の年金保険料免除期間を現行の1年から3年に延長することを盛り込んでいます。児童手当の支給対象の拡大や不妊治療に対する助成制度も設けていますが、出生率低下は底なしの様相です。
         政府の出生動向基本調査によると、結婚5年未満の夫婦が「理想とする子ども数」は2.31人。しかし「予定する子ども数」は1.99人。その差の理由は「金が掛かるから」が8割を占めています。
         フランスでは3人の子どもを9年間養育した男女に年金額を10%加算するなどして、出生率を94年の1.65から02年に1.88に回復させたそうです。スウェーデンでは、子どもが4歳になる間に所得が減っても、年金計算は(1)子どもが生まれる前年の所得(2)年金加入期間の平均所得の75%(3)現行所得に基礎額(約50万円)を上乗せした金額――の3通りから最も有利なものを充てるなどの対策で、01年に1.57だった出生率は02年に1.65に伸びたそうです。政府はこうした事例を参考に、若い夫婦への「経済支援」に力点を置いていますが、政府の社会保障審議会では、女性の就労形態の変化や、出産よりも自らの生き方を尊重し始めたことも出生率低下につながっているとの指摘も出ています。政府は昨年、自治体や大企業に少子化対策の行動計画作りを義務づけた次世代育成支援対策推進法を作りましたが、少子化に伴う年金財政の悪化→若い世代の将来不安増大→一層の少子化進行――という悪循環から抜け出せていません。
         今回の「年金騒動」を見ていても、政府関係者が長期的視点を持って真剣に子育て支援社会の形成を考えているとは思えません。子の生きる世代、孫の生きる世代をよりよい社会に、という意思が稀薄であるために、その場しのぎの右往左往施策が続くのではないでしょうか。