キレる子どもの脳に特徴? 1万人追跡調査へ。
2004/07/04
文部科学省所管の独立行政法人科学技術振興機構は29日、少年犯罪の増加や学級崩壊、不登校のまん延などの原因を最先端の脳科学で探ろうと、0歳児と5歳児計1万人について、行動の特徴と脳の働きの関係を5年間にわたって追跡調査すると発表しました。
この調査は、体を傷つけずに磁気や光で脳内の活動を調べる「機能的MRI(磁気共鳴画像)」や「光トポグラフィー」といった最先端技術を活用し、子供の生活状況や心身の発達、言語の習得具合などを調べながら、脳との関係を長期間にわたって観察するそうです。家庭環境の違いや地域差、男女差なども詳しく分析、問題行動を起こす子供の脳の特徴や、その原因などを突き止めることを目標としています。今年度から2年間、予備調査を行い、調査手法やプライバシー保護のあり方などを検討。本調査は2006年度から5年間実施する予定です。
ここ数年、ささいなことですぐに「キレる」子供が増え、少年犯罪の増加などにつながっていると言われています。テレビやゲーム、インターネットの普及、ストレスの増大、少子化などとの関連が指摘されていますが、はっきりした因果関係は分かっていません。
研究の代表者は、光トポグラフィーの開発者で脳科学が専門の小泉英明・日立製作所フェロー。全国の大学病院や自治体などの協力を得て、乳児健診時に家族構成や生活状況などを聞き、追跡調査の対象者を絞り込みます。調査研究費は7年間で総額40-50億円にのぼる見込みだそうです。
「キレる」ことと脳機能との関係を調査し明らかにすることは意義のあることだと思います。できればキレやすくなる前の子どもの脳の状態と、キレるようになってからの脳の状態の違い、変化が明らかになるような縦断的調査が行われればと思いますが、一方で、脳の機能的変化が起こるとしたら、その環境的要因(政治、経済、文化、地域、学校、家庭等の社会的環境と人間関係など)を同時に調査してもらいたいと思います。そして、小学校高学年から中学校にかけての児童生徒に様々な問題行動が顕著なことを考えると、5年間だけでなく、青年期までの追跡調査が必要かと思います。
民間のIT技術者を教員向けに派遣(文科省)
長崎県佐世保市の小6同級生殺害事件などを受けて、文部科学省は情報モラルをはじめIT(情報技術)に対応できる教員を増やすため、民間企業の技術者らを講師役として各地に「出前派遣」してもらい、指導力の向上を目指す方針を固めました。学校と企業との橋渡し役として「教育情報化推進協議会」が7月にも発足するそうです。会員企業の支店網をフルに活用し、官民一体の取り組みとするそうです。推進協は、電機・通信機器メーカーや教科書関連会社、都道府県教委の連合会、情報教育関係団体などが会員として参加し、学校からの研修希望を受けて、会員企業の支店などに講師派遣を依頼。企業の技術者のほか、情報教育で優れた実践例がある学校関係者も講師になります。
文科省の調査では、公立小・中・高校でコンピューターの指導ができる教員は52.8%(昨年3月現在、全国平均)にとどまるそうです。教員のIT研修は各都道府県教委単位で実施されてきましたが、内容は各教委にゆだねられてばらつきがあるうえ、参加費用を個人負担しなくてはならない例もあり、必ずしも十分には普及していなかったようです。
佐世保の事件では、ネット上のやり取りを巡るトラブルが背景の一つとして指摘されています。相手の表情が分かる日常会話とは異なる特性を踏まえ、ネット利用のエチケットである「ネチケット」を子供に身につけさせるなど、教員の指導力の問題も改めてクローズアップされています。
久留米の小5女児、校長体罰でケガ・25日から欠席
福岡県久留米市の市立鳥飼小の今古賀信夫校長(55)が授業中、5年生の女児(11)の顔を平手打ちし、1週間の打撲傷を負わせていたことが28日分かりました。女児は「学校に行きたくない」と家族に話し、欠席しています。
市教委などによると、女児のクラスでは級友を中傷する内容のメモが出回るなどしたため、24日の3時間目の学級会で話し合うことになりました。校長が「いじめをしないこと」や「命の尊さ」を指導しようと午前11時ごろ、教室に入ったところ、女児が自分の席についていなかったため、注意した後、ほおを1回、平手でたたくと、女児は衝撃で棚に顔をぶつけ、けがをした。教室には担任の男性教諭もいたといいます。校長は同日中に市教委に報告後、女児の自宅を訪ね保護者に謝罪。女児は翌25日から学校を休んでいます。校長は読売新聞の取材に対し事実を認め、「教職員を指導する立場にありながら、取り返しのつかないことをした。校長として、教員として、してはいけない行為だった。猛省している」と話しています。
日本で「体罰」禁止の法的規定の歴史は長いものがありますが、実態として、「生徒指導」の手っ取り早い手段、教師の感情的な行為として、温存され続けています。この少女が受けた精神的傷は、当該の校長や教育委員会がどんな釈明・謝罪を言葉で繕ったとしても、簡単に消えるものではありません。「教育のプロ」の肩書きが泣きます。