中学生の8割「親子円満」? 消えゆく反抗期。
2004/10/10
教育シンクタンク「ベネッセ未来教育センター」(東京都多摩市)の意識調査から、8割の中学生が親との関係は円満だと考えている一方で、この年代に特有の「反抗期」の傾向が失われている実態が見えてきているそうです。「一見、好ましい結果に見えるが、子供が親に依存し続けて精神的な自立が遅れている。社会全体でみると心配な結果だ」と、調査をまとめた深谷昌志・東京成徳大学子ども学部教授は指摘している。
調査は今年2月、関東の中学1-3年生1,355人を対象に行われたもの。家庭で過ごす時間について、半数を超える中学生が「のびのびできる」「安心できる」「楽しい」と回答。「退屈」「イライラする」「孤独」など否定的な回答はどれも半数以下。
親との会話は、「父親とよく話す」が26.7%、「母親とよく話す」が54.9%。「親は自分を理解している」と答えたのは70.6%で、「親とうまくいっている」は父親とが77.7%、母親とは87.4%を占めています。「今と同じ家庭に生まれ変わりたい」(36.6%)が「生まれ変わりたくない」(21%)を大きく上回り、親を肯定的にとらえ、円満な家庭に満足している姿が浮かんでいます。
半面、親はどういう場面で絶対にしかると思うかを複数回答を求めたところ、「先生の言うことを聞かなかった」「近所の人にあいさつしなかった」「朝家族に『おはよう』といわない」はいずれも10%前後。子供をしからない親たちの姿がうかがえます。
また「どういうことで親を超えたか」の問いに「母親の体力」とした中学生は79.8%でしたが、半数を超えたのはこれのみで、「付き合い方」「社会の見方」「社会常識」はいずれも25%以下だった。
この結果について深谷教授は、「これが小学生高学年の調査なら全く問題ないのだが、中学生になると、親に依存していた子供は親を疎ましく感じたり目障りに感じるもので、こうした反抗期固有の傾向がうかがえない。これは高校生への調査でもみられる傾向だ」と指摘しています。
そして、「家庭が円満なことを否定する必要はないが、反抗期は子供が精神的に自立する上で不可欠な過程だ。近年の、友達同士のような親子関係や、親元を離れない『パラサイトシングル』などの現象と無関係と思えない。反抗期が消え、ゆるやかに成長するスタイルが定着したともいえるが、反抗期を持たない子供がどう自立するのか心配だ」と話した。
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≪人生観示さぬ親≫
子供の心相談をしている北海道旭川市の小児科医、田下昌明さんの話 「中学生が家庭でのびのびでき親に理解されていると感じることは、子供が親をうまく利用できていると思っていることの裏返し。いまの親は自分の人生観を子供に示しておらず、目に見えない親の大きさを子供が感じていない可能性がある。子供が3つ4つのころから子供の話を真剣に聴き、自分の人生観を示し、子供と生きる目的や理由について一緒に考えることを普段からしていなければ、子供は自分で道を探そうとはしない」
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反抗期>親から自立する過渡期にみられる一過性の不適応状態。子供は親に心身とも依存して育つが、中学生ぐらいになり自立するようになると、自分とよく似た、しかも身近にいる親の存在を目障りに感じたり、無視するなどの態度に出る。自分の殻にこもり、月日がたって自分ができてくると、殻を破って自分を表し、親との関係もやがて修復される。幼児期の第一次反抗期と対比し、第二次反抗期とも呼ばれる。
16歳以上に権利<住民投票> 神奈川・大和市が条例案可決
神奈川県大和市議会で16歳以上の市民に住民投票の実施請求権と投票権を与える条項を盛り込んだ自治基本条例案が4日、賛成多数で可決されました。市によると、町村合併などを巡り、投票権を16歳まで引き下げた例は過去にもあるが、常設の条例で16歳以上を対象とするのは全国初となります。条例の施行は来年4月です。