児童生徒自殺11%増=小中高137人、「理由不明」と文科省
2004/12/19
17日、文部科学省がまとめた「生徒指導上の諸問題の現状」で、03年度に自殺した公立小中高の児童生徒は前年度比14人増の137人で、98年度以来、5年ぶりに増加したことがわかりました。児童生徒10万人当たりの割合は0.12ポイント増の1.03人。内訳は、小学生が2人増の5人、中学生が2人減の34人。高校生が14人増の98人。
教育委員会が報告した自殺の原因別は、64%が理由が特定できないとして「その他」扱いとされたほかは父母の叱責など家庭事情が12%、精神障害9%、「世の中がいやになった」5%、進路など学校問題が4%など。インターネットを通じた集団自殺が含まれているかどうかは不明で、いじめが原因とされた自殺は5年間ゼロが続いていると言います。全国の公立小中高校児童生徒の自殺は5年ぶりの増加。過去10年では00年度(1.05人)に次いで4番目に高い水準。文科省は「自殺原因はいろいろあり、増加理由は不明」としながら、「道徳教育などの場で命を大切にする教育をさらに進める」としています。
「いじめが原因とされた自殺は5年間ゼロが続いている」としていますが、64%が「その他」であることを考えても、それはありえないでしょう。今回のまとめがどんな資料をもとにしたものかはわかりませんが、他の理由が%表示されているところをみると、遺書の有無・内容から判断されていると思われます。いじめが原因の場合、遺書を残す場合もあれば、衝動的に自殺行為に及ぶ場合もありますし、実際に、いじめを苦にした内容の遺書を残してのいじめ自殺は後を絶ちません。この現実に眼を向けず、「64%が理由が特定できない」「自殺原因はいろいろあり、増加理由は不明」というのでは、学校教育の統轄官庁としての見解としては、あまりにもお粗末です。一件一件の自殺を各学校、教育委員会で真正面から受け止め、その子の心を思いやり、事実経過を明らかにしながら総括すべきは総括する、改善すべきは勇気をもって毅然と改善するという立場があってこそ、「命を大切にする教育をさらに進める」ことができると思います。
文科省「ゆとり」転換、授業時間増を検討
文部科学省は14日、小中学校などの授業時間を増やすため、標準授業時間の見直しの検討に着手したそうです。高校1年の読解力低下を示す今月7日の国際調査結果に続いて、小中学生の学力低下傾向を示す結果が出たのを受けての措置だそうです。実現すれば77年から減り続けていた授業時間が約30年ぶりに増加に転じることになり、文科省が推進してきた「ゆとり教育」の方針が、事実上、転換されることになります。省内には異論もあり、慎重に検討を進めているそうです。
検討されているのは、平均的な基準だった標準授業時間を「最低限度」と位置づけを改め、各学校にそれを上回る授業時間を確保するよう促す案や、標準授業時間そのものを引き上げる案などで、学校現場に学力向上への意識を高めてもらう一方、近年の学力低下論の噴出で高まる公教育への不信感をぬぐいたいという狙いがあります。見直しの方向性がまとまり次第、文科省では年明けにも中央教育審議会に具体的な導入方法や時期などを審議するよう要請する方向です。
標準授業時間は現在、小学校が6年間で計5,367時間、中学校が3年間で計2,940時間。高校も必要な単位数を取得するための時間数を規定しています。標準授業時間が最長だったのは、68年の学習指導要領改訂後の一定期間でした。「教育の現代化」に向けて各教科で新しい内容が盛り込まれ、中学校では3,360時間から3,535時間に拡大。小学校の授業も当時は5,821時間という長さでした。ところが授業についていけない子が問題になり、その反省から77年の改訂で、小中学校とも授業時間を削減。その後も、「ゆとり教育」や学校週5日制の実施で、標準授業時間は削られ続けてきました。
小中学校では中3の受験期などを除き、標準を上回る授業時間を確保しているのが実態ですが、今後、授業時間を拡大する場合、長期休暇の一部や放課後を授業に充てるケースなども想定され、学校現場にも大きな影響が出そうです。
2つの国際調査で相次いで学力低下の傾向が示されたことについて、中山文科相は「学校週5日制や学習指導要領の削減が、必ずしも望ましい結果になっていないと思う。その点を率直に認め、対策を講じる必要がある」と述べています。
文部科学省の施策・スローガンは3年もたないようです。対処療法的に右に左に揺れ続け、数値合わせに奔走している姿が嘆かわしく見えますが、実際の被害者が子どもたちであることは許されませんし、学歴主義・学校化社会を大人たちが肯定し続けるという問題は、短期的視野での「改革」が意味をなさないことを示していると思います。