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        生活保護費の基準額(最低生活費)の引き下げについて
        2006/01/11
        11日、厚生労働省は生活保護費の基準額(最低生活費)の引き下げを検討する方針を固めました。地域によっては基準額が基礎年金額を上回り、与党や自治体から「基準額が高すぎる」という指摘が出ているのを受けた措置で、生活保護費全体の抑制につなげる狙いもあるようです。三位一体改革に絡んで進めてきた地方団体との協議を再開するとともに、専門家による検討会も設置し、基準額の見直し議論が進められていきます。
         生活保護費の受給世帯数は04年に初めて100万世帯を突破。03年度の保護費総額は2兆3,881億円で、90年に比べて約8割の増。全受給世帯のうち高齢者世帯が半数を占め、今後も増加が見込まれています。
         生活保護費のうち、食費や光熱費など生活扶助の基準額は、居住地によって細かく規定されています。たとえば、単身の65歳の場合、郡部では月額6万2,640円ですが、県庁所在地は7万3,540円、東京23区では8万820円。家賃などを負担していれば、1万3,000円を限度に住宅扶助が加算されます。
         これに対し、05年度の基礎年金額は、40年加入した満額受給者でも月額6万6,207円で都市部では生活扶助の基準額を下回ります。こうした状況を問題視する与党などからは「基礎年金より高い保護費をもらうのはおかしい」との意見が相次いでいて、全国知事会と全国市長会は昨年11月、国に対して基準額の見直しを求めていました。このため、厚労省は見直しに着手する方向となりましたが、公的年金が他の収入や資産の有無に関係なく保険料納付実績に基づいて支給されるのに対し、生活保護は最低の生活を保障することが目的で資産調査を伴います。省内には「生活保護と公的年金は性格の異なるもので、単純に比較すべきでない」との考えも根強く、今後の議論ではこうした点をどう整理するかが焦点になるとみられています。
         年金と生活保護費は制度の目的や確立経過が異なります。「受給額」の多少だけを問題にした論議は財政上の表面的な見方でしかなく、年金問題の本質的課題や生活保護受給に至る社会経済的背景の検討・議論がないがしろにされると思います。

        ●始業式の朝、佐世保の中2男子自殺=今年度、県内中高生で8人目(長崎)
         10日午前7時15分ごろ、長崎県佐世保市の市立中学2年の男子生徒が自宅の自分の部屋で死亡しているのを、母親が見つけ江迎署に通報しました。この日は3学期の始業式。同署は自殺とみて動機などを調べています。県内では今年度これまでに、中学生が2人、高校生が5人自殺しています。
         この自殺を受けて10日、生徒が通う学校の校長と鶴崎耕一・市教育長が会見、「命の大切さを繰り返し生徒たちに訴えてきた。亡くなった子も『自殺は周りの人を悲しませる』という趣旨の感想文を書き、思いが届いていると思っていた。でも、本当は届いていなかったのだろうか」と、14歳の生徒が自ら命を絶ったことに、校長は声を震わせたそうです。
         学校によると、生徒が感想文を書いたのは昨年10月5日。同校のPTA会長が交通事故から生還した身内の体験を語り、全校生徒が感想文を書いた。昨年7~10月に県内で7件相次いで発生した自殺に対し、県教委が「命を大切にする教育」の大切さを訴える中、生徒も命の重みをつづりながら、なお死を選んだ結果となりました。
         市役所で会見した校長は「本人に悩みがあり、そのことを私たちが察知できなかったとしたら、申し訳ない」、鶴崎教育長は「『命が大切』であることは『あなた自身が大切』ということと表裏一体と伝えることが必要だ。思春期で心の揺れがあったとしても、バランスを大きく欠いて(自殺して)しまうのはどういうことなのか。もう一度我々も考えなければいけない」と語りました。
         学校はこの日、実力テストを延期し、緊急の全校集会を開いた。校長は生徒の死を伝えたうえで「悩みがあったら、友達、お父さん、お母さん、先生に教えて」と訴えたといいます。
         文部科学省によると、中学生の自殺者は04年度、全国で30人。動機は・家庭事情16.7%・学校問題13.3%・厭世13.3%で、理由不明など「その他」が56.7%としています。県教委によると、04年度は、中高生とも県内の自殺者はゼロだったそうです。
         警察庁が発表する自殺者の同年代の数値は、文科省発表の4倍位になっています。事故や病気として多くの自殺事案が処理されています。それにしても0件から8件に急増した長崎での中高生の自殺。その背景にあるものを、教育行政担当者はとことん追究し、問題解決をはかるべきです。

        ●運営継続へ支援を/舞鶴の不登校児童・生徒の民間施設
         京都府舞鶴市上安にある不登校児童・生徒の民間教育施設「聖母の小さな学校」の「支える会」が、運営資金の寄付を広く呼びかけています。新年度から、主な支援先からの資金提供が受けられなくなるためで、「学校が存続すれば、立ち直る子が1人、また1人と出る」と支援を訴えている。
         同校は元高校教師の梅澤秀明さん(51)と良子さん(57)夫妻が「困難を抱える子どもに徹底的にかかわる教育をしよう」と89年に設立しました。個々に応じて教科や手話などの体験学習を実施。この16年間で約200人の子どもが卒業し、昨年は、府教委の「不登校学習プログラム」の共同開発施設にも選ばれています。
         しかし運営面は、個人経営のため厳しい状態が続いています。平均10人弱の在籍生から1日1,000円の指導料を受け取るが、通学が月に数回の子もおり、年間運営費450万円の約3分の1にしかなりません。そのため赤字分は、梅澤さん夫妻が生活費から出すほか、主に、夫妻が以前勤めた高校の運営母体だった宗教法人「聖母訪問会」(神奈川県鎌倉市)が必要に応じて補てんしてきましたた。しかし同会もメンバーの高齢化などで経営が厳しく、学校敷地と建物の無償貸与は続けるが、資金援助を中止することになりました。
         卒業生の保護者らも「支える会」を新たに結成し、各方面に寄付を呼びかけていますが目標には大幅に足りない状況。川崎弘会長(60)は「先生は1人の子が立ち直るために、身を削って努力している。学校を1人でも多くの人に知ってほしい」と話しています。
         寄付は一口1,000円。郵便振替で「聖母の小さな学校を支える会」の口座=00980-1-162920=へ。問い合わせは同校TEL.0773(77)0579まで。
         私も個人的にご夫妻と面識があります。京都府北部における拠点的フリースクールであるだけに、何としても存続させて頂きたいと思います。

        ●軽度発達障害者/支援体制の構築急務(島根)
         島根県は発達障害者支援法の施行を受けて、06年度に「支援センター」設置を準備するなどようやく支援に乗り出しました。
         文部科学省の調べでは、通常学級で知的発達に遅れはないが学習面や行動面で著しい困難を示すと担任教師が回答した児童生徒の割合は6.3%。中国地方5県で支援センターが設置されていないのは島根だけで、専門家不足や対応の遅さが指摘されています。障害に対する正しい知識の伝達と、患者が自立するための援助機関の創設・支援が、早急に求められています。
         「あの子たちの行き場が社会にはない。相談できる所すらないのが現状」。軽度発達障害の長男(23)を持つ出雲市の主婦、岡田誠子さん(51)は打ち明けます。長男は知的な遅れはないが、幼いころから落ち着きがなく、集団生活が出来なかった。学校でも次第に孤立するようになり、中学では不登校に。卒業後から現在まで就職もできず家で生活しています。
         外見は普通の成人男性。しかし軍手を手にはめないと物が触れないなど強いこだわりをいくつか持ち、行動がぎこちないため、街を歩けば警察官にたびたび職務質問を受ける。「障害を警察に説明しても、普通に見えるため理解されない。本人も歩いているだけで職質され、理由が分からないのでかっとなり何度もトラブルが起きました」。警察には「こういう子は外に出すな!」と怒鳴られたこともあった。障害が理解されない現状。「それでも最終的に、彼に自立してほしいという思いは捨てきれません…」
         岡田さんは軽度発達障害の子どもを持つ親の会「紫陽花倶楽部」代表を務めます。会員は保護者ら約70人。月に数回集まり、学集会や情報交換をしています。「地域に発達障害の知識がない」「就労する場所がない」。昨年12月に出雲市内で開かれた会では、母親たちがやり場のない悩みを吐露しました。ある母親は「理解のなさが子ども同士のいじめを誘発している状況もある。悔しいです」と目に涙を浮かべたそうです。
         20年間、自閉症児の療育に携わり、現在は出雲市平田町で軽度発達障害や自閉症の子どもたちの療育支援をしている佐藤比登美医師(62)は「ここ2年間、子どもから大人まで軽度発達障害を訴えて来る患者が急増したが、まだまだ県内での認知度は低い」と理解不足に危機感を募らせます。佐藤医師が昨年行った講演会には、教師や保護者160人が参加し、関心の高さをうかがわせました。「軽度発達障害児には、幼児期からのコミュニケーション技術の訓練など適切な対応こそ効果を生む。大切なのは日常生活。子どもの将来を考え、学校、家庭、専門家が連携して日常生活の中で個別に社会的スキル(技術)など必要な援助をしていくことが大切」と話しています。
         就学中の児童生徒の相談・指導には、県教育センター(松江市)の特別支援教育セクションが取り組んでいます。発達障害の相談件数は01年以降急増傾向で、05年度10月末現在でもすでに延べ1,083件の相談がありました。
         相談の大半は小学生が教師の勧めで相談に来るケースですが、最近では不登校や非行と絡んだ高校からの相談も多いようです。同センター職員の長沢幸子さん(51)は「対人関係の不器用さや集中力がないのを『怠けている』と考えるなど間違った対応が、結果的に子どもの自信を失わせてしまい、学校に来ることすらできなくなるような2次障害を引き起こしている」と話します。ここでは相談者に訓練を含めたグループセラピーを行っているが、相談件数の増加から十分な対応ができていないのが現状といいます。
         長沢さんは「それでも義務教育期間中は誰かがみている。でも問題はその後の社会に、ケア体制が整っていないこと。早急な支援体制の構築が課題です」と指摘しています。