ひきこもり相談295件に、長期化壮年傾向も(京都府)
2006/02/19
京都府は、昨年6月に開設した「ひきこもり相談支援センター」の相談状況をまとめ、12月末までに、来所や電話で計295件の相談が寄せられたことがわかりました。専門家による面接相談を受けたのは58人、本人が10人、家族は48人でした。
相談の方法は、電話が141件、専門家による面接が154件。面接相談の結果によると、ひきこもりで悩む58人(男性52人、女性6人)の状況では、16-29歳が38人と青年層が多いが、30歳以上も19人いました。ひきこもり期間は3年未満が26%、5-7年が19%、10年以上が19%でした。ひきこもりの長期化に伴う壮年化傾向がうかがわれます。また約7割が不登校経験者でした。
厚生労働省の推計では京都府内のひきこもりは約8,000人とされています。府保健福祉部は「解決には長い時間を要するが、相談拡充に努めるとともに、本人の社会参加を支援する取り組みを民間と連携しながら進めていきたい」としています。
「焼け石に水」の取り組みですが、基本的に必要な体制だと思います。1回の相談で状態が改善することは望めません。継続的な関わりが必要です。また、第三者と家庭との、第三者と当事者との関わりが始まることで、家庭に「外部」の風が通り、変化が見られることがよくありますので、相談の窓口対応だけでなく、民間との連携でフットワーク軽く「動く」ことが良き援助となると思います。(何が何でも家に入れば良い、というわけでないことは言うまでもはありません)
●人間関係希薄で問題行動/PTA、高2の6,000人を調査
全国高等学校PTA連合会が公立高55校の2年生約6,000人を対象に調査した結果がまとまり、集計と分析に当たった木原雅子京都大助教授(社会疫学)が12日発表しました。家族との会話がなかったり、学校をやめたいと思ったりした生徒は、性経験や万引、刃物で手首を傷つけるなどの自傷行為をする割合が、そうでない生徒の約2倍以上、という結果です。
地域差は少なく、木原助教授は「問題視されるこれらの行為は子供たちの叫びであり、共通の原因は人間関係の希薄さ。今の社会は意識して人と人がかかわり合う必要があり、大人が本気で取り組まないと状況は変わらない」としています。
家庭環境が大きく変化し、家族で食事、会話をする時間が短いというご家庭が増えています。不況の影響でぎすぎすし、家庭の人間関係が薄まっているのも現実です。また、学校現場が相変わらず40人を基本とした一斉授業、教師は実務に追われ、子どもたちに関わる時間は減るばかりです。「関わって欲しい」「理解して欲しい」、子どもたちの叫びが聞こえてきます。
●複数障害対応校を検討、特別支援教育で方針(沖縄)
15日、県教育委員会は07年度から全国で実施される特別支援教育に向けて「沖縄県における特別支援教育体制整備の基本方針」を決定、複数の障害に対応できる養護学校の設置を検討することが盛り込まれました。さらに小中学校の通常学級に在籍する学習障害(LD)や注意欠陥多動性障害(ADHD)などの児童・生徒らを支援する体制の充実や、障害のある子どもたちと障害がない子どもたちの交流や共同学習を積極的に推進していくことなどを決めました。
同方針は、文部科学省が推進する特別支援教育を受けて(1)ノーマライゼーションの進展に対応した教育的対応の充実(2)通常の学級に在籍するLDなどの児童・生徒への対応と特殊学級などの充実(3)盲、ろう、養護学校における教育とセンター的機能の充実(4)障害のある児童・生徒についての相談支援と就学指導の充実(5)教職員の専門性の向上と適切な人事交流などの検討―の5つを柱としています。
(1)では障害のある人もない人もともに生活するノーマライゼーションの理念を基礎に、障害のある児童・生徒を支援するため地域全体で連携していくことが示されています。(2)は、LD児らへ対応するための職員研修の充実や、専門家が各校に出向いて発達障害の子どもらへの対応を教員に助言する巡回相談アドバイザーによる支援の強化などの施策を実施することに。(3)では医療、福祉、労働など関係機関との調整役をする地域のセンター的機能の充実、(5)では特殊教育教諭免許状の保有率向上を図る方針が示されました。
仲宗根用英県教育長は「特殊教育は、大きな転換期を迎えている。一人ひとりの教育的ニーズに対応していくため、今回の方針を基に県の特別支援教育を推進していきたい」と話しているます。県教委は今回の方針を冊子にまとめ、3月中には市町村教育委員会や各小中高校に配布するそうです。
●非開示一部取り消し=体罰教諭の情報公開請求(神戸地裁)
16日、神戸大大学院教授が、体罰について兵庫県教育委員会に行った情報公開請求で、非開示部分の取り消しを求めた訴訟の判決が神戸地裁でありました。佐藤明裁判長は「条例で非公開と定めるプライバシーの侵害には当たらない」として、体罰発生報告書などで記された加害教諭や学校名などの非公開決定の一部取り消しを認める判決を言い渡しました。
提訴していたのは学校教育を研究する馬場健一教授(43)。02年、学校で起きた体罰を対象に公文書の情報公開請求をしましたが、体罰を行った教職員や学校名は非公開とされていました。
佐藤裁判長は判決理由で、個人を特定する懲戒処分の情報は非公開対象と指摘したが「生徒への体罰は公務員である教職員の職務執行で、プライバシーの情報は含まれないと考えるべき」と判断。「情報公開条例は公務員の不当な職務執行にも向けられている」とし「非公開は条例目的に反する」としています。
同教授は「体罰を抑止する画期的判決。プライバシーを理由に不透明になりがちな不祥事で、公務員の監視を行うことができる」としています。
体罰、いじめ、不登校、問題行動、自殺など、学校で何が起こっているのか、親が知ることができない、巨大な壁が学校にはあります。学校側による何らかの過失で起こった事故や事件、自殺などに対して、多くの場合学校側は教育委員会ぐるみで事実関係を明らかにせず、責任関係を曖昧にしようとします。教師の体罰の直後に自殺するというケースも多く、この判決は学校の隠蔽体質を変えていく上で大きな一歩となると思います。