自殺者8年連続で3万人越える/20~30代で増加
2006/06/03
昨年の全国の自殺者は、3万2,552人と8年連続で3万人を超えたことが1日、警察庁のまとめで分かりました。例年と同じく中高年の自殺が多いが、20~30代の若者の自殺者数が前年比で5%以上増えているのが特徴。原因・動機は健康問題と並んで「経済・生活問題」が目立っています。社会の将来を支える若年層の苦悩ぶりをうかがわせる結果となっています。
同庁によると、昨年の自殺者数は、過去最悪だった03年の3万4,427人より減少しましたが、記録を取り始めた78年以降4番目に多く、男性が2万3,540人で全体の72.3%を占めました。
年代別では、60歳以上が1万894人(前年比0.9%減)と最も多く、続いて▽50代7,586人(同2.4%減)▽40代5,208人(同2.1%増)▽30代4,606人(同6.3%増)▽20代3,409人(同5.0%増)▽10代以下608人(同3.2%増)。また、小学生が7人、中学生が66人、高校生が215人。大学生は433人と、前年の370人より63人増えた。
動機のトップは「健康問題」1万5,014人(46.1%)。次いで「経済・生活問題」7,756人(23.8%)▽「家庭問題」3,019人(9.3%)▽「勤務問題」1,807人(5.6%)――だった。「経済・生活問題」はバブル景気に沸いた90年には1,272人でしたが、景気の悪化とともに増加し、98年には6,000人を超え、近年は主な動機として注目されるようになっています。
20~30代の自殺は、厚生労働省の調査で同年代の死亡理由の中で最も多く、今回の警察庁のまとめで、遺書を残しており動機が明確な30代1,409人のうち「経済・生活問題」は412人(29.2%)で「健康問題」452人(32.1%)に次いでいます。20代では976人のうち「健康問題」313人(32.1%)▽「経済・生活問題」177人(18.1%)でした。
自殺防止対策の法制化を国に求めていますが、自殺する個人に焦点をあてた「うつ対策」で終わらないようにしなければなりません。自殺動機で多いのが「健康問題」、「経済・生活問題」、「家庭問題」、「勤務問題」。日本社会で生活していくことの困難さにこそ、焦点があてられる必要があります。
●市町村教委/生徒指導“場当たり的”、担当主事「不在」45%(文科省調査)
文部科学省の調査で、生徒指導を担当する指導主事を配置していない市町村教委が全国の45%にのぼることが分かりました。文科省は「荒れる学校」対策として、問題のある生徒に教員が一丸となって臨む米国流の生徒指導方針「ゼロトレランス(毅然(きぜん)とした対応)」の導入を打ち出していますが、調査結果では、学校を管理する市町村教委に危機感が乏しく、教育現場の状況を掌握しきれていないなどの課題が浮かんできました。
調査は昨年12月の時点で全国の教育委員会と高校を対象に実施。学校の生徒指導について専門的な立場から指導助言する指導主事が何人いるかを市町村教委に尋ねたところ、「0人」が45.2%で「1人」が33.2%。生徒指導をめぐる国や都道府県の方針や通達、指導が現場に周知徹底されにくい実態が分かりました。
指導主事が実情把握のため学校訪問する回数も「状況次第で定期的にはない」が37.6%、「生徒指導に絞った学校訪問はしていない」は24.8%、「年一回」が13.6%。学校任せにしがちで実態掌握には消極的な姿勢が明らかとなっています。
生徒指導を充実させるための研修を実施していない教委は45.7%。実施した場合の研修テーマは「不登校」(74.8%)「生徒理解」(66.1%)などが多く、学校の秩序維持に効果的とされる(?)「出席停止」は、わずか5.2%でした。
「毅然とした対応」の生徒指導方針は、学校を舞台にした凶悪事件や薬物事件などが全国で相次ぐことを受け、文科省が全国に通知。学校の秩序維持のため、度重なる指導を聞き入れない生徒には出席停止などの厳しい態度で臨む方針のようですが、その前提には、あらかじめ生徒の行動規範や罰則、運用方針などを生徒や保護者に十分に周知していることが不可欠となります。
しかし、今回の調査結果では、出席停止の前段階となる問題生徒への特別指導を教委の規則に「特に盛り込んでいない」と回答した市町村教委は62.9%もありました。
市町村教委の80.5%は、出席停止の措置などを普段から保護者や住民に周知させておらず、都道府県教委の55.3%も退学や停学などの懲戒処分を出す方針を示していませんでした。具体的な行動規範や違反した場合の罰則などを全生徒や保護者に周知させている高校は15.8%にとどまり、懲罰や制裁には腰が引けた姿勢が浮かびあがりました。
文科省児童生徒課の話:「指導主事不在の教委が多いのは深刻な問題。国の考えが学校にきちんと浸透していないことになる。市町村教委の生徒指導への対応は場当たり的で、事前にルールを周知させたり、日常的な共通理解を作ろうという意識に乏しい。これではいざ処分や制裁を出した場合、生徒や保護者とトラブルを招きやすい」
教育委員会に体制や姿勢・意欲がない状態で、学校で発生する反社会的な問題行動にどう対応するかは、学校任せになり、校長任せになり、生徒指導部長任せになり、現実的には担任任せになってしまいます。秩序維持の徹底や懲罰などを含む厳格な対応が良いとは思いませんが、現場で対応にあたる担任や生徒指導部が相談相手をもてないという現実は、解消していく必要があると思います。問題行動の事実と経過、背景について、少なくとも学年団として共通理解を持ち、対応について集団論議の上で共通認識をもって臨むという体制づくりは必要でしょう。
●出生率5年連続で過去最低の1.25に/予想上回る少子化ペース
1日、厚生労働省の人口動態統計(概数)で、1人の女性が生涯に産む子供の平均数の推計値である合計特殊出生率が、5年連続で過去最低を更新し、平成17年は1.25となったことが分かりました。前年比0.04ポイントの大幅下落で、人口減少に歯止めがかからない実態が改めて裏付けられ、年金などの社会保障制度や労働力への影響が懸念されます。政府・与党は6月中に新たな少子化対策をまとめる方針ですが、より実効性のある施策が求められます。
昨年1年間に生まれた子どもの数は106万2,604人で過去最低だった前年より約4万8,000人減。一方、出生数から死亡数を引いた「自然増加数」はマイナス2万1,408人で、統計を取り始めた明治32年以来、データのない昭和19~21年を除き初の減少となり、平成17年に人口減少社会に突入したことを改めて裏付けました。
厚労省は出生率の低下について、晩婚化や晩産化傾向が背景にあると分析。また、15~49歳の出産期人口や、出生率が高い25~34歳の割合が減少したことを出生数減を招いた大きな要因とみています。
年金制度は、国立社会保障・人口問題研究所が平成14年に公表した将来人口推計に基づいて財政計算され、給付水準はモデル世帯で現役世代の平均手取り賃金の50.2%とされていますが、推計では合計特殊出生率は19年に1.31で底を打ち、62年に1.39まで回復するとしていました。
しかし、今回の数値(1.25)は推計値を0.06ポイント下回り、このまま出生率の下落に歯止めがかからなければ、年金制度の前提が大きく崩れます。年金収入を見込んで設計されている高齢者医療制度や介護保険制度など他の社会保障制度にも影響を与えかねません。
また、若年世代の減少は将来的な労働力不足を意味し、経済成長や企業活動に影響が出ることが必至です。
政府・与党は、団塊ジュニアが出産適齢期を迎えたこの5年間を少子化に歯止めをかけるラストチャンスととらえ、新たな少子化対策を打ち出す予定ですが、政府の予想を上回るペースでの少子化進行は、議論に大きな影響を与えることになります。
歳出・歳入一体改革議論が同時に進んでいることもあり、政府・与党内では少子化対策への思い切った財源投入には否定的な意見が強くありました。しかし、小泉純一郎首相がこの日、「数字を厳しく受け止めなければいけない。今後、少子化対策は最重要課題になる」との認識を示したことから、今後、より実効性のある施策の展開を求める声が強まりそうです。
●アスペルガーの専門研究所、兵庫・芦屋大が設置
芦屋大(兵庫県芦屋市)は6月1日、発達障害の一種で、他人との関係を築きにくい特徴を持つアスペルガー症候群を専門にする「アスペルガー研究所」を開設します。専門研究所は日本では数少ないのが実態です。
芦屋大は教育学部の単科大学。アスペルガー症候群の実態を把握し研究、分析するとともに、教育現場で実際に同症候群の子どもと接する教職員たちの支援も目指すそうです。
研究所は学内外の9人で構成。所長には不登校問題を長年扱い、同症候群研究で知られる臨床心理学者井上敏明さん(六甲カウンセリング研究所長)を迎えるとしています。
●発達障害:早期発見、5歳児も健診実施-栃木市が来月から/栃木
栃木市は6月から5歳児の発達相談を市内の幼稚園や保育園、保健福祉センターで順次実施します。対象は06年度中に5歳になる子供約700人で、幼稚園や保育園に通っていない未就園児も含みます。発達障害の早期発見、支援をすることで、子供の不適応反応や2次的障害の予防を目的にしています。
これまで健康診査は4カ月、9カ月、1歳6カ月、2歳、3歳の5回行ってきましたが、従来の健診では発見されにくい高機能自閉症などの発達障害に対応する必要が出てきた。またきつ音などの構音障害、小児肥満についても早期に対応することが出来るといいます。
就園児は市内の幼稚園10カ所と保育園10カ所、未就園児は保健福祉センターで健診を受ける。保護者が記入した相談票を元に、幼稚園教諭や保育士、保健師、福祉トータルサポートセンターの心理職を中心に行動観察し、対応が必要と思われる子供には個別相談を実施。
発達障害は自閉症、アスペルガー症候群、学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)など、通常低年齢で表れる脳機能の障害。04年度に1,056人の5歳児を対象とした県の調査では、発達障害の疑いで2次健診や医療機関に紹介したケースが56人と5.3%あったそうです。
栃木市は05年4月、医療、保健、福祉、教育の窓口を一本化する「福祉トータルサポートセンター」を開設し、出生から就労まで一貫した支援を受けられるよう体制を整えました。同市健康増進課は「発達相談は障害の発見が最終目的ではない。小学校入学前の子供に合わせ、どんな支援が出来るか把握することが大切だ」と話しています。