自殺対策基本法が成立
2006/06/18
自殺の防止と自殺者の親族のケアを目的として、自殺対策を国や自治体の責務とし、超党派による議員立法で国会提出された自殺対策基本法が15日午後、衆院本会議で与野党の賛成多数で可決、成立しました。自殺について「多様かつ複合的な原因及び背景を有するもの」と定め、官房長官をトップとする自殺総合対策会議を内閣府に設置し、対応状況を国会に報告するように義務づけています。
http://seiji.yahoo.co.jp/gian/0164016402018/index.html
年間の自殺者が98年から8年連続で3万人を超える中、自殺を単に個人の問題として片づけるのではなく、社会的に取り組むべき課題として基本理念で位置づけまし。国や自治体、医療機関、事業主、学校、NPOが密接に連携して対策にあたるべきだとし、未遂者や遺族への支援充実も掲げています。事業主に対しては従業員が心の健康を保てるよう必要な措置をとるよう求めたのも特徴です。
自殺防止をめぐっては政府が昨年末に総合対策を策定しました。しかし、省庁の対応が縦割りで、実効性を確保するために基本法の整備が必要との意見が与野党の国会議員からあがり、議員有志が法案をまとめたもの。自殺防止に取り組むNPOや民間団体、個人も各地で署名運動を展開(わずか1カ月半で目標の3倍以上の10万1055人分が集まりました)、基本法の制定を求めていました。
本法は理念法として成立したものですが、自殺を個人の問題とせず社会的背景や関係性の要因があり、国や自治体、事業主、学校などが自殺防止の取り組みをする民間団体や個人と連携しながら自殺対策を行うことを求めています。総論的に「…ねばならない」の羅列とも読めますが、「自殺大国」と呼ばれるようになったわが国において、やっと自殺対策を国として取り組むことが宣言されたことは大きな一歩と言えます。今後、対策の具体化や態勢づくりに向けて、自殺防止や未遂者・遺族ケアに取り組む団体や個人と行政などが連携できる枠組みを速やかに作っていく必要があります。
●「カンニング疑われ自殺」高校生遺族が損害賠償を提訴(埼玉県)
カンニングを疑われて自殺した高校生の母親が、埼玉県に対し、8,000万円の損害賠償を求める訴えを起こしました。
04年、埼玉県立所沢高校の3年生だった井田将紀さん(当時17)は、中間試験でカンニングを疑われ、教師5人に2時間に渡って事情聴取を受けた後、飛び降り自殺しました。井田さんの母親は「大学の入試に関係のない物理のテスト中に日本史の勉強をしていただけで、カンニングでないことは明白だった」として、埼玉県に対し、8,000万円の損害賠償を求める訴えをさいたま地裁に起こしました。
学校教育の場において「聴取」という言葉に不自然さを感じる人が多いことを信じたいと思います。それも、大人である教師が5人の集団で2時間も問いつめたわけです。教師たちには、集団心理が働きます。カンニングを疑わせる行為があったことを認めさせ、「謝罪」させ、「処分」を受けさせるという筋書き通りに「指導」という名の圧倒的弱者である個人への圧倒的強者からの攻撃、それへの服従を「善」と考え集団に参加していくという心理です。将紀さんは、この2時間に渡る拘束と圧力によって、抵抗する気力も萎え、無力感に嘖まれ、あげく自己否定感情を募らせたのでしょう。これが学校という場において行われるべき「指導」と言えるでしょうか。
お母さんは学校側に要望して、この2時間の出来事を再現してもらったそうです。再現した教師個人に感想を聞くと、「なぜそこまでやる必要があったのかわからない」というようなことを言われたそうです。ナチスの強制収容所で行われていた収容者への信じがたい非人間的な対応がなぜ生じたのか、その状況での「強者」の集団心理が、この事件とだぶって感じられました。
●人間関係「希薄に」80%…読売世論調査
読売新聞社が実施した全国世論調査(面接方式)で、社会の人付き合いや人間関係が希薄になっていると思う人は、00年7月の前回調査よりも7ポイント増え、80%に達したそうです。
希薄になっていると思う人は、大都市よりも、中小都市や町村で急激に増えており、人とのつながりの喪失感が大都市部だけでなく、全国的に広がっていることが浮き彫りとなりました。
調査は5月13、14日の両日実施。人間関係が希薄になりつつあると思うかとの質問に、80%の人が「そう思う」と答え、「そうは思わない」という人は19%でした。
「そう思う」人を都市規模別にみると、中都市(東京23区と政令市を除く人口10万人以上の市)が81%で最も高く、次いで、小都市(人口10万人未満の市)80%、大都市(東京23区と政令市)78%、町村75%の順。前回調査と比較すると、大都市は3ポイント増だったのに対し、中都市と町村が6ポイント、小都市は10ポイントと、大幅に増加しています。
●田辺市の発達障害支援事業が軌道に/年齢問わずに対応(和歌山県)
人とのコミュニケーションが取りづらい、落ち着きがないという、発達障害の悩みに相談に応じる田辺市の事業が軌道に乗っています。5月の1カ月間だけで本人や家族、教員ら延べ42人から相談がありました。昨年10月の事業開始から徐々に相談人数は増加していて、市やすらぎ対策課の梶垣吉良参事は「子どもから大人まで一貫した支援体制を築きたい」と話しています。
同課によると、市町村が発達障害者の支援体制整備事業に取り組んでいるのは、県内では田辺市だけ。
昨年4月に発達障害者支援法が施行され、広域でこの問題に対処する道が開けたことから、田辺市では、同市とみなべ、白浜、上富田、すさみの各町で事業を展開しています。これまでは「就学前は保育所で」「入学したら学校で」など支援体制がバラバラでしたが、乳幼児から成人まで一貫した発達障害児者の支援体制をつくったものです。
社会福祉士や臨床心理士ら専門家による発達障害支援コーディネーターが相談に応じています。相談の内容は「学校で授業に集中できない」「友達関係がうまくいかない」「学習面のバランスの悪さを、どう指導したら良いのか」「パニックを起こした子どもとのかかわり方は」などさまざま。本人や保護者だけでなく、指導している教員からの悩みも多いといいます。
昨年12月から、定期的に予約制で直接面談する「はなまる相談」と名付けた発達障害児者相談の日を設けた。毎月2回、同市湊の市民総合センター2階作業室で臨床心理士が1人約1時間、1日5人まで相談に応じています。
相談受け付け状況(延べ人数)は、相談日の前後の相談も含めて4月が児童6人、保護者5人、教員などその他16人の計27人。5月は児童2人、保護者7人、その他33人でした。開設当初は教員からの相談が多かったそうですが、本人や家族からも増えてきているといいます。完全予約制で、6月はすでに定員がいっぱいの状態です。
整備事業では、相談だけでなくコーディネーターを中心に学校や保育所、福祉事務所、保健所などの関係者が、発達障害の状態に応じた個別の支援計画を作成。教育や福祉などの関係機関へ助言するほか、地域住民に発達障害への理解を深めてもらうための啓発活動に取り組みます。和歌山市にある発達障害者支援センターとも連携します。
はなまる相談は7月は11日、25日の午前10時~午後4時。問い合わせ、申し込みはやすらぎ対策課(0739-26-4902)へ。
●発達障害者:県検討委、支援で調査/来月から3、5歳児らの2万人対象に(徳島)
16日、発達障害を持つ子どもに対する支援のあり方を考える県発達障害者支援体制整備検討委(会長、橋本俊顕・鳴門教育大教授)の今年度初会合が徳島県庁であり、障害児の状況を把握するため、7~11月に約2万人を対象にした実態調査の実施を決めました。県教委が04年度に全小中学生を対象に調査しているが、今回の調査には3、5歳児や高校生も含めることになりました。
検討委によると、8市と那賀、美波、牟岐、海陽各町の3、5歳児と小中高校生が対象。該当者は約8万6,200人です。3歳児健診時の他、保育所や幼稚園、小中高校の協力を得たうえで、1万9,500人に調査。内訳は3、5歳児は各3,000人、高校生は各学年1,500人(計4,500人)。
具体的な質問項目は「『パパ カイシャ イッタ』等の3語文で会話ができますか」(3歳児)、「身の回りのことなど、言葉の指示だけでは行動に移せない」(5歳児)、「相手が聞いて分かるように整理して話すことができない」(中学生)など。該当の有無などを問う内容で、中間報告を12月にまとめるとしています。分析も加えた最終報告を踏まえ、来年度に具体的な支援体制を話し合うそうです。
LD(学習障害)や自閉症などの可能性があり、特別な支援が必要とされる児童生徒数は、文部科学省の小中学校全国調査(02年)で、全体の6.3%との結果が出ていますが、04年の県教委調査では4.1%でした。
●余呉町の廃校利用、不登校児ら支援へ「教室」(滋賀県)
廃校になった小学校を利用し、不登校の児童、生徒を支援する教室づくりが余呉町で進んでいます。ボランティアの力を借りて校舎を改装し、7月ごろから受け入れを始める方針です。
準備を進めているのは、3月末まで同県長浜市青少年センターで不登校や非行の子どもと親のカウンセリングをしていた唐子恵子さん(49)。「不登校の支援は即応性が大切。行政は決裁に時間がかかるなど支援が遅れてしまう。それなら自分で教室をつくろうと決意した」と話しています。
活用するのは、昨年3月末に廃校となった余呉町上丹生の旧丹生小学校。センター勤務時代に同校を訪れた際、木造2階建て校舎に温かみを感じ「ここなら」と思い立ったそうです。
余呉町に貸与を申し入れ、町側も快諾。教室の名前と同じ特定非営利活動法人(NPO法人)「子ども自立の郷ウオームアップスクールここから」を発足させ、長浜市から教室近くに移り住みました。
受け入れは小学生から高校生まで。不登校の相談は唐子さんがあたるほか、授業は教員免許を持ったボランティアが担当。学校に復帰する場合は、事前に町内の小中学校で授業を受けさせるなど町教育委員会もバックアップ。幅広く受け入れようと、通学に加え寄宿も可能に。
今月から壁の塗り替えなど改装に取り掛かったほか、近くの住民がソファなどの備品を提供するなど支援の輪も広がっています。唐子さんは「将来は校舎内に喫茶室をつくり、住民との交流も目指したい」と話しています。
入学金は3万円、授業料は月額7万円(寄宿の場合は14万円)の予定。問い合わせは同NPO法人=電0749(86)3578=へ。