児童虐待相談3万件超、被害の半数近くが6歳未満
2006/07/02
27日午前、内閣府は「青少年の現状と施策」(2006年版青少年白書)を発表しました。
04年度の児童虐待に関する相談が3万3,408件(前年度比6,839件増)と初めて3万件を超え、過去最高となりました。「児童虐待は、子どもの生涯、さらには世代を越えて大きな影を落とす。発生予防から虐待を受けた子どもの自立に至るまで、切れ目なく支援することが必要だ」としています。
全国の児童相談所や警察に寄せられた児童虐待の相談は、調査を始めた90年度から14年連続で増え、04年度には約30倍となりました。
内容別では、身体的虐待が1万4,881件(44.5%)で最も多く、ネグレクト(育児などの怠慢や拒否)が1万2,263件(36.7%)、心理的虐待が5,216件(15.6%)、性的虐待が1,048件(3.1%)と続いています。
●56%が生活「苦しい」/国民生活基礎調査(厚労省)
28日、厚生労働省は05年の国民生活基礎調査結果を公表しました。生活を「苦しい」と答えた世帯は56.2%に達し、過去最高を更新しました。1世帯当たりの平均所得額(04年)は580万4,000円。95年の659万6,000円から12%減少し、低所得層ほど減少率が目立つなど格差の拡大傾向をうかがわせています。
同調査は昨年6~7月、全国4万5,001世帯(所得調査は7,038世帯)から回答を得たもの。
今の生活を「大変苦しい」と答えた世帯は23%。「やや苦しい」の33.2%を加えた「苦しい」は56.2%で、前年より0.3ポイント増えています。調査開始時の86年より15.3ポイント増え、00年の50.7%より5.5ポイントの増。「児童のいる世帯」では「苦しい」が60.1%に上っています。
平均所得額の10年間での減少を所得階層別(5区分)でみると、最も所得の低い層(平均123万9,000円)の下げ幅は24%減だったのに対し、最も高い層(同1,295万1,000円)は9%減にとどまっており、経済格差の低所得層への広がりが示された結果となっています。
また、調査結果から推計した総世帯数は4,704万3,000世帯で、うち「児童のいる世帯」は1,236万世帯(26.3%)。86年の1,736万4,000世帯(46.2%)から大幅に低下しました。平均児童数も1.72人で、86年の1.83人より0.11人減りました。一方、65歳以上の人がいる世帯は39.4%の1,853万2,000世帯で86年に比べ倍増。うち独居は406万9,000世帯でした。
「児童のいる世帯」で60.1%が「苦しい」と答える状況では、「少子化対策」としていくら箱物を作っても、抜本的な歯止めにはならないことは明らかです。
●精神障害の相談気軽に/来月から夜間勉強会:家族会『新宿フレンズ』
心の病気について、もっと気軽に相談できる場を提供しようと、新宿区の精神障害者家族会「新宿フレンズ」(代表・岡嵜(おかざき)清二さん)が、7月から夜間勉強会をスタートさせます。これまでの家族限定の会ではなく、心の病気を心配する人や、病気に関心を持つ人すべてに対象を広げ、知識の普及に役立てていくとしています。
「新宿フレンズ」は1969年から活動を始め、現在の会員は約500人。症例の多くは統合失調症で、適切な治療を受ければ回復するが、受診が遅れたがために、症状が悪化する例も少なくないといいます。
同会はこれまで、保健・医療の専門家を招いて勉強会を月に1度、土曜日の昼間に開いてきましたが、もっと多くの人が立ち寄れるようにと夜間の開催を企画したものです。同会では「心の病気は家族ぐるみの支えが必要。多忙な父親にもぜひ出てほしい」と話しています。
夜間勉強会は7月12日にスタート。毎月第2水曜日の午後7時-9時、新宿区西新宿8の13の18、クレイン西新宿101「ムツミ第一作業所」で開催。問い合わせは、新宿フレンズ=電(3987)9788=へ。
●「軽度発達障害」早期対応へコーディネーターの養成研修
軽度発達障害の児童生徒に、適切な指導を行う「特別支援教育」が来年度から全国の小中学校に適用されるのを前に、校内や学校と家庭、専門家との連絡調整役となる特別支援教育コーディネーターの養成研修が各地で開かれています。
来年度中に、全国すべての小中学校へのコーディネーター配置を目指していますが、依然として課題も少なくありません。
特別支援教育は「学校教育法」が改正されるのに伴い、来年度から本格的に実施されることになっています。LD(学習障害)やADHD(注意欠陥・多動性障害)、高機能自閉症などの軽度発達障害児も対象となります。
こうした児童生徒の指導を充実させるため、今月6日に行われた東京都教委のコーディネーター養成研修の2回目の講座では、「保護者への啓発を進めながら連携をしていくことが大切だ」「コーディネーターにお任せ状態になってはいけない」などの声が上がりました。
区市町村教委から推薦を受けた約50人の教員が、「校内支援体制の構築」をテーマに9つの班に分かれて協議を行いました。教員たちは、10月まで計10回の研修を受けた後、それぞれの市町村で行われる伝達研修で講師役を務めることになっています。
特別支援教育では、従来の「特殊教育」では対象外だった通常学級に在籍する軽度発達障害の子供も含めて、それぞれ状況に応じた個別指導計画を作成し、教育をしていくことになります。
しかし、「担任が軽度発達障害の子に気づいても、そのことを保護者に納得させることができずに、一人で悩みを抱え込んでしまう教員が多い」と、都教育庁義務教育心身障害教育指導課の田島忍・指導主事は、教育現場での不安を代弁します。
田島さんは養護学校の教員だった05年度にコーディネーターとなり、通常学校の校内研修に講師役として参加。軽度発達障害の子に対する教育は、早期発見・対応が重要だが、わが子が特別な扱いを受けることに抵抗を持つ保護者が壁となり、専門家の意見を聞けずにいると言う声を耳にしてきました。
こうした子どもを、学校全体でサポートするため、特別支援教育では校内委員会を設置し、個別指導計画を作成して教育することを掲げています。文科省特別支援教育課の調査によると、05年の特別支援教育コーディネーターの配置率は公立小中学校で77.9%、校内委員会の設置率は87.8%に上っています。しかし、個別指導計画の作成率は28.9%にとどまっており、現場での教育体制がまだ整っていないことが浮き彫りとなっています。
小貫悟・明星大学助教授(臨床心理学)は、「特別支援教育には、保護者の理解・協力が不可欠。個別指導計画を通して、保護者と話し合いをしていくことが重要」と指摘しています。
「特別支援」は、個のニーズに応じた適切な支援提供が基本です。現状の学校の枠組みや力量、保護者との連携の度合いを前提とするのではなく、本人が何に困り、何を必要としているかを理解し、その状態の改善に向けて学校と家庭、地域で具体的に何が必要かを検討し、個別支援計画を作っていくことが求められていると思います。支援の「パターン化」が進まないことを祈ります。
●中高校生の4人に1人が不眠、成人を上回る:10万人調査
中学・高校生の4人に1人が不眠を訴えていることが、日本大医学部の兼板佳孝助手(公衆衛生学)らの研究でわかりました。10万人規模の調査で、思春期の子どもの不眠の実態が明らかになるのは初めてで、不眠の割合は大人を上回っています。大津市で開催された日本睡眠学会学術集会で30日発表されました。
研究は、厚生労働省の研究班(主任研究者、林謙治・国立保健医療科学院次長)の調査の一環で、04年12月~05年1月に、全国の中学131校、高校109校を無作為に抽出、在校生に最近1カ月の睡眠状況や生活習慣、精神的健康度を質問したもの。回収数は約10万人(回収率64.8%)。
不眠としたのは(1)なかなか寝付けない「入眠障害」(2)夜中に目が覚める「夜間覚醒(かくせい)」(3)朝早く目覚めて再び眠るのが難しい「早朝覚醒」――の3項目のうち1つ以上が当てはまった場合。その結果、不眠の割合は23.5%で、成人3,030人を対象にした調査(97年)の21.4%を上回りました。
入眠障害は14.8%で、成人の8.3%より6.5ポイントも高い結果。逆に、夜間覚醒は11.3%(成人15%)、早朝覚醒は5.5%(同8%)で、成人より低かった。
不眠が多いのは▽男子▽精神的健康度が低い▽朝食を食べない▽飲酒習慣あり▽喫煙習慣あり▽部活動に不参加▽大学進学希望なし――などと答えた生徒でした。
〈教育評論家の尾木直樹・法政大教授の話〉悩んで寝付けないのは思春期にはあることだが、あまりに不眠の割合が高く、大変な事態だ。日本の中高生は、携帯電話のメールの普及で、友人づきあいがバーチャル化している。それが、大人が思っている以上のストレスになっているのではないか。