「学校だけが息抜きの場」、医師宅火災で逮捕の長男
2006/07/09
6日、3人が死亡した奈良県田原本町の医師宅火災で、放火と殺人の疑いで逮捕された高校1年の長男(16)が「学校が唯一の息抜きの場だった」と話していることを接見した弁護士が明らかにしました。
長男は幼稚園のころから父親(47)の監視下で勉強させられていたといい、「漫画を買っても家で読めないから、学校で読んで友達にあげていた」と話しているといいます。
一方、自宅に放火した後「思い出のため、父と2人で写っている写真を持って家を出た」ことも判明。
調べに対し「父の暴力が許せなかった」と供述しており、田原本署捜査本部は父親への不満から自宅へ火を付けるに至った動機を慎重に調べています。
父親が抱いていた職場での学歴による差別化と劣等感が産んだ惨劇といえると思います。自身が実現させたかった夢をわが子に託す、「愛情」に名を借りた共依存。学歴・出身校偏重、人格や経験などではなくレッテルによる差別化、親世代が有しているこうしたデバイドの犠牲者はいつも子どもたちです。そろそろ気づき合いませんか、子どもが人として豊かに育つことの大切さとそのために親・学校・地域ができることを…。
●2歳女児死亡に児童相談所、虐待に一切気付かず「対応、手ぬるかった」
滋賀県高島市の夫婦が2歳の女児を虐待して死亡させたとされる事件で、滋賀県中央子ども家庭相談センター(草津市)の竹嶋道江所長らが6日、大津市の滋賀県庁で会見し、傷害致死容疑で逮捕された父親の長阪健太容疑者(24)と母親の千鶴容疑者(25)がネグレクト(育児放棄)をしていた可能性があると判断していたことを明らかにし、「結果から見れば、対応が手ぬるかった」と陳謝しました。
同センターによると、千鶴容疑者が育児不安を訴えたため、死亡した優奈ちゃんは04年1月から県内の乳児院に預けられ、千鶴容疑者の様子などからネグレクトの可能性がある、と判断したといいます。
優奈ちゃんが自宅に戻った今年5月中旬から、高島市とともに、13回以上の電話と5回の家庭訪問を行ったそうですが、事前に連絡したり、抜き打ちで自宅を訪れても不在が多く、長阪容疑者と1度会えただけで、優奈ちゃんとは1度も会えなかったといいます。
竹嶋所長は「身体的な虐待の可能性は考えていなかった。家庭訪問を積み重ねれば、いつか優奈ちゃんと会えると思っていたが、対応が手ぬるかった」と話しました。
長阪容疑者の自宅近くの女性によると、近所の人が「4、5日前に(同容疑者宅の)風呂場付近で『あちゅい、あちゅい』という泣き声が聞こえた」と話していたといい、この女性も「家の中で人をたたく音を聞いたことがある。1年ほど前、優奈ちゃんが1人で泣いていたので相手をしていると、父親から『ほっといてくれ、迷惑だ』と言われた」といいます。
虐待やネグレクトを確認したり疑いを感じたときには通報すること、とされていますが、通報先の児童相談所がこうした対応しかされないのであれば、通報をためらってしまいます。大人が軽い暴力(?)を起こしただけでも警察のお世話になるのに、子どもは命が危険にさらされた状態であっても、子どもということで放置される。なぜ、子どもを一人の人格として認知してあげられないのでしょうか?
●求む!保健所長、医師不足で欠員相次ぐ(東北)
東北の保健所が医師不足にあえいでいます。岩手、宮城、秋田の3県で、原則として医師免許が必要な保健所長を確保できず、1人で複数の所長を兼務する事態が続いているそうです。国は保健所長の資格要件を緩和し、なり手の拡大を目指していますが、効果は表れていません。「都市に偏在する傾向は、臨床医師と同じ」(厚生労働省)で、新型インフルエンザ対策など危機管理の対応に懸念が広がっています。
宮城県では06年度、7カ所の保健所のうち栗原、登米、気仙沼の3保健所で所長が欠員状態。7月下旬に、本年度採用した医師2人が登米、気仙沼に赴任しますが、現在は栗原、登米を大崎保健所長が、気仙沼を石巻保健所長がそれぞれ兼務しています。
鹿野和男大崎保健所長は、週3日は大崎、週2日は栗原と登米に半日ずつ通っています。「緊急のやりとりを電話で済ますことも多い。時々、頭の中で管轄が混乱しそうになる。今まで大きな問題はないが、兼任は望ましくない」と漏らしています。
岩手県は本年度、10保健所のうち2カ所の所長を確保できず、北上と水沢、久慈と二戸の組み合わせで兼務。秋田県は8保健所中、3カ所が欠員。横手と湯沢、秋田中央と大仙、北秋田と大館が兼務となっています。青森(6保健所)、山形(4)、福島(6)は充足しています。
厚労省は04年4月、所長不足を解消するため、医師免許を資格要件としていた地域保健法施行令を改正。どうしても医師が確保できない場合は、薬剤師や獣医師なども就任できるようにしました。しかし、これまでに医師以外の所長就任は全国でゼロ。岩手、宮城、秋田では検討さえ進んでいません。
医師以外の所長を置く場合でも、医師免許を持つ職員の配置は必要になります。秋田県は「知識や判断力は医師にかなわない。所長は強い処分権限があり、医師でないと県民に納得してもらえないのでは」と、検討が進まない理由を語ります。
厚労省のホームページには、所長ら保健所で勤務する医師を募集する自治体が登録されているが、大半は地方。医師側は「都心勤務を希望する人が多い」(鹿野所長)といいます。
東北大大学院医学研究科の辻一郎教授(公衆衛生学)は「患者に接する臨床医に比べ、公衆衛生分野の志望者はもともと少ない。感染症の予防や健康増進など保健所の使命を、行政が粘り強くPRするしかない」と話しています。
●障害者支援法人に無担保融資、大阪のNPOなど全国初
1日、NPO法人「ゆめ風基金」(大阪市東淀川区)と近畿労働金庫(同市中央区)は近畿のNPO法人と社会福祉法人の障害者支援活動を対象とする無担保の低利融資制度を創設しました。
上限500万円で金利は年1.95%(変動)。使途は<1>事務所の敷金など事業の立ち上げ資金<2>行政の助成金交付までのつなぎ資金――などです。障害者活動に特化した民間金融機関の融資制度は全国初といいます。
障害者団体の多くは運営基盤が弱く、融資を受けるのが難しい。今回の制度は、同基金がこれまでの募金活動で集まった資金を活用し、同金庫に保証資金として1,000万円を預金する方法で実現しました。
同基金の牧口一二・代表理事は「活動実績がなくても融資を受けられるのが大きい。ただ本当に困っているのは、法人格のない任意団体。対象にできないか今後、考えたい」と話しています。
●特別支援教育:理解深めよう 8地域でフォーラム開催へ/山口県教委
授業や集団活動で困難を抱える子供たちを支援する「特別支援教育」の理解を深めようと、山口県教委は10、11、29の3日間、県内8地域でフォーラムを開きます。参加費は無料。
発達障害児とかかわる療育機関や臨床心理士らと、保護者や学校関係者によるパネルディスカッション形式。子どもが自分のペースで学校生活を送り、地域社会で働いていくためのビジョンなどについて意見を出し合います。
【10日午前10時~正午】下関市の海峡メッセ下関▽防府市のデザインプラザHOHU▽柳井市のアクティブやない【11日午前10時~正午】周南市の周南総合庁舎▽岩国市の市民会館▽宇部市の湖水ホール▽萩市の市民体育館【29日午後1~4時】山口市の県セミナーパーク。問い合わせは県教委特別支援教育推進室(083-933-4615)。