横断歩道、どちらが優先? 人・車
2006/07/30
この週1回更新の「つぶやき」を少しだけパターンを変化させたいと思います。まず、私が日頃思っていること(ほとんどがうっぷんになるかも…)を書いてストレス解消。そして、その前1週間にメディア記事として流されたものの中から、私が恣意的に選んだ、子どもや教育、発達障害、自殺などの問題に関するものを紹介し、少しコメントを付けたいと思います。
さて、【この頃思うこと】の1回目は歩行者優先原則が無惨にも無視されている現状について思うことです。横断歩道を渡ろうとしている人や自転車がいるときに通りかかった車、果たして何割の車が停車して人や自転車の横断を優先させられているでしょうか? かくいう私はどうかと聞かれれば、「その場の状況による」としか答えられないので説得力に欠きますが、実態は酷いものでしょう。
私の場合、後続車がなく安全に停止できる状況であれば停止し、歩行者・自転車の横断を待ちます。これができない状況というのは、後続車があり、その運転手が「俺は急いでるんだ」オーラを感じる時、横断待ちをしている人が「あきらめ」てこちらを見ていない時などです。
では、酷い実態を演じている人々(運転手)の心理はどんなものでしょうか。1.「車」という器に載っていることである種の「優越感」が生まれることによる歩行者や自転車の軽視、2.歩行者や自転車は止まっているが自分の車は相当なスピードで走り抜けようとしているので停車するのは困難という手前勝手な状況判断、3.よほどのことがない限り罰せられることはないという妙な「安心感」、などでしょうか。
運転者も、車を降りて逆の立場=「歩行者の立場」になったときに、横断歩道で停車せずに突っ切る車に対する憤りを感じる人は少なくないと思います。立場変われば人変わるー。親が幼いわが子に対して抱く感情、教師が生徒に対して抱く感情、与党政治家や権力者が政治的マイノリティに対して抱く感情、これらに相通じる所があるように思えます。逆の立場で、相手から発せられた言葉や行為を感じることができれば、その「思い上がり」や「勝手な価値基準」に気づくことは難しいことではないでしょう。
日常生活の様々な場面で、瞬時に相手の立場に立って考えるようになるためには、少し努力が必要ですが、そのことが理解と安心の人間関係を築くことにつながりますから、人として豊かになるための努力であると思います。
次回は「自転車がなぜ車道の右側を走るのか」について考えてみたいと思います。
では、この1週間の気になる記事です。
自殺対策ー原因・動機など詳細を公表へ(警察庁)
これまで非公開だった自殺の原因・動機を細かく分類した警察庁の内部資料について、同庁は今後、自殺対策のため、関係官庁や研究機関などの要望に応じて速やかに公表する方針を決めた。一方でさらに自殺対策に有効になるようにするため、従来の分類方法について外部の専門家の意見を聞いて見直しも図る。先月、成立した自殺対策基本法は自殺関連の情報の収集、分析、提供などを国と自治体に義務付けた。自殺対策の第一歩として、正確な現状把握に寄与しそうだ。
警察庁は毎年、「自殺の概要資料」を発表。原因・動機別は「家庭問題」「健康問題」「経済・生活問題」など大きく8項目に分けて明らかにしている。05年は、自殺者総数3万2552人で、「健康問題」が1万5014人と最も多かった。
しかし、警察庁によると、原因・動機はさらに細かく分類されている。例えば、「家庭問題」は▽親との不和▽子との不和▽家族の死亡▽両親間の不和――など11項目。「経済・生活問題」では▽倒産▽事業不振▽失業▽就職失敗――など7項目。「健康問題」は▽病苦▽老衰苦▽アルコール症▽覚せい剤による精神障害――など9項目に細分化されている。
これまで警察庁は「犯罪による死亡ではないことの確認が第一で、自殺原因を十分に解明できているわけではない」として、詳細なデータは内部資料にとどめていた。しかし、自殺対策基本法の成立を受け、参考資料として関係機関に提供する方針に改めた。
一方、現行では、原因・動機の「学校問題」の詳細項目に「学友との不和」はあるが、「いじめ」はない。「経済・生活問題」でも「負債」や「生活苦」はあるが、「借金苦」はないため、警察庁は専門家らとの検討で、自殺の実態をより把握できるよう項目内容を見直す方針だ。
自殺者の実態調査では、フィンランドが87年度の自殺者全員を対象に自殺要因を調べ、その後の対策に生かし、自殺死亡率を引き下げる成果を上げている。NPO法人「自殺対策支援センター ライフリンク」の清水康之代表は「自殺の実態を明らかにすることで、効果的な対策が取れ、社会的に追い詰められた末の自殺者を減らすことにつながるはずだ」と期待する。
【コメント】やっと自殺対策基本法を実態あるものにする方向で動きが始まりました。学校問題の項目に「いじめ」がないという実態にそぐわない現状も明らかになっていますが、警察では「自殺」とカウントしていても、文科省ではその多くが「事故」として処理されている実態を明らかにしていく必要があると思います。教師の指導の直後に校舎4階の窓から飛び降りても「事故」として処理されている事例が身近にあります。
●養育放棄で入院400人超、半数の病院が受け入れ経験
児童虐待の1つで、食事などの世話をしない「養育放棄(ネグレクト)」によって、体調が悪化した子供の入院受け入れを、小児科がある病院の46%が過去に経験、入院した子供は400人を超えることが24日、厚生労働省研究班の全国調査で分かった。うち12人が死亡、21人に重い後遺症があった。
2005年だけでも100人以上が入院しており、早期発見が難しいとされるネグレクトの深刻な被害実態が浮かび上がった。児童相談所など関係機関による一層の取り組みが求められそうだ。
調査は1月、小児科がある全国の570病院を対象に実施、230病院から回答を得た。うち、疑い例も含めネグレクトによる子供の入院を経験したことがあるとしたのは106病院(46%)に上った。
【コメント】「子ども夫婦」の子育て、と言われる実態がまだまだ問題化されていないと思います。子どもができて「親」になるわけですが、親となるために子育てをしながら学ぶことができない夫婦を多く生み出している今の日本。親個人の問題ではなく、健全に子どもを育てられる社会環境の形成レベルが問われていると見るべきだと思います。
●障害者、もっと大学へ=8月、東大が初の支援イベント-現役学生、教員らが体験談
東京大学は、障害を持つ中高生に大学進学の道をアドバイスする初のイベント「君たちは大学に進学するために何をすべきか」を8月27日、同大武田ホール(東京都文京区弥生)で開催する。障害を持つ現役学生や研究者が体験談を語り、キャンパスライフや進路、障害者が受験勉強するコツなどについて分かりやすく説明する。東大を目指す学生だけでなく、障害を持つ生徒すべてが対象。
●シンポジウム:「『ひきこもり』だった僕から」の著者・上山さんら事例報告(京都)
ニートをめぐる議論を手がかりに、日本の社会が“強要”する学校観や労働観を問い直すシンポジウム「『ニート』議論で語られないこと」が22日、北区の立命館大であった。「『ひきこもり』だった僕から」の著者、上山和樹さん(37)らが事例報告し、「生きにくさ」を抱えるマイノリティーの立場を代弁した。
上山さんはひきこもりの心理を、社会に順応したい気持ちが強過ぎて「スイッチが24時間オンの状態」に陥り、かえって社会規範から逸脱していく、と説明。不登校が子どもの選択肢として受け入れられた一方で、大人の不適応は否定され、相次ぐ心中事件などを助長している、と指摘した。
更に、「甘えている」と、社会全体が向ける誤解が苦しみを生むことを強調。無理に“社会復帰”させようとするのは逆効果、などと主張した。
一方で、上山さんはサラリーマンのネクタイを引き合いに「ひきこもった人から見ると、元気に社会参加する人は異様。“社会生活”という名の信仰を持っているように見える」と吐露。これには、会場から「実際の自分が別にいるのに儀礼で別の現実を作り、観念的な安定を得るのが人間。ネクタイは社会人としての儀礼に過ぎない」と理解を示す声も出た。
この他、大阪府高槻市で在日コリアンらの生活を支援する「高槻むくげの会」の紀井早苗さん(34)は、同市の公立学校などの在日外国人向け教育支援事業の廃止(04年度)を痛烈に批判。「在日外国人の子どもは社会の入り口部分である学校から疎外されている。日本人は学校の中に共生の場をつくるべき」などと訴えた。
【コメント】上山さんの「不登校が子どもの選択肢として受け入れられた一方で、大人の不適応は否定され、相次ぐ心中事件などを助長している」というコメントに共感します。私が副代表をしている「家族会ノンラベル」の5周年記念講演会(9月23日開催予定)にシンポジストとして上山さんに登場してもらうことになっています。今、あらためて「ひきこもり論」を熱く語ってもらいたいとおもっています。
●不登校:「中1のつまずき」防げ、4年連続減 府教委「小・中連携が成果」(大阪)
府教委は27日、府内公立小・中学生の不登校児・生徒が4年連続で減少し、昨年度は9798人だったと発表した。中学校への進学時に学習でつまずき、中学1年で不登校が急増するのが特徴だったが、府教委は「不登校を未然に防ぐことに狙いをおいた小・中連携の成果が出ている」と分析している。
府教委によると、心理的理由などで30日以上欠席した児童・生徒は昨年度、小学生1824人(在籍者の0・37%)、中学生7974人(同3・70%)。ピークは01年度の1万1523人だった。
現場の取り組みとして、▽中学1年生への夏休みの補充授業▽小学校時代の元担任と中学校の現担任との共同家庭訪問▽小中学校の教員による相互授業見学――などの成果が出てきたという。
【コメント】「中1のつまずき」は学習面でのつまずきが多いのはもちろんですが、小学校のときから集団生活に適応できないものをもちながら中学校という教科学習中心で管理教育が強い場に入れられ、不快さ、嫌悪感、拒否感を強く抱くという学校システム上の問題や、思春期の自分探しの課題と学校という器との不適応など、子どもの視点での深い検討が必要です。強いストレスにさらされ続ける子どもたちに、「補充授業」や「共同家庭訪問」という新たなストレスが加えられることで、一時的に不登校を減少できたとしても、ストレスは蓄積されていくだけではないでしょうか。その子らしく思春期を乗り越えられる環境を、学校という半強制的な器が用意してあげられるかどうかが問われていると思います。
●来所人数36%増、前年比「不登校」が6割近くー05年度教育相談概況(長岡京市)
京都府長岡京市教育支援センターはこのほど、2005年度教育相談概況をまとめた。来所した延べ人数は、過去最多だった04年度よりも40%近く増加した。
04年度までは市立図書館(同市天神4丁目)内の市立教育センターで、子どもの心身や学習面、家庭教育などについて相談を受けつけていた。昨年4月からバンビオ1番館に市教育支援センターを設置し、相談事業などを引き継いだ。
05年度の相談延べ人数は1761人で、前年度より36%増えた。同センターは「実際に悩みを抱える子どもが増えているほか、相談事業が周知されてきたこと、駅前に移って利便性が増したことなどが考えられる」としている。
主な相談内容は「不登校」が1034件ともっとも多く、60%近くを占めている。「神経症的傾向」が84人で前年度比2・3倍、「情緒不安定」が121人で同4・3倍と大幅に増えた。
相談は臨床心理士など4人がカウンセラーとして対応しているが「手いっぱいの状況になりつつある」(同センター)という。
●全教員対象の研修始まるー不登校問題で京都市教委と校長会(京都市)
京都市立学校の全教員を対象にした不登校問題研修が26日、京都市左京区の京都会館で始まった。初日は、管理職や一般教員、常勤講師ら約1400人が参加し、藤原勝紀・京都大教育学研究科教授の話を聞いた。
不登校傾向の児童・生徒への支援充実を目指し、市立の幼稚園と小中学校、総合養護学校の全教員約6500人に義務づける初の研修で、市教委と各校長会が企画した。8月10日までに藤原教授や河合隼雄・文化庁長官らが講師になる11の講座を開き、1人1講座の受講を求める。
この日の研修で、藤原教授は、「ごく普通の子」が起こすと言われる近年の少年犯罪などに触れ「悪いことと頭で分かっていても、それができない。知識と生身の人間が相関しない状況がある」と指摘。「生身の人間が、生身の人間に影響力を与えるのが教育ではないか」と投げかけた。
不登校問題も「生身に引きつけて考える必要がある」とし「登校している子も『不登校になる心』を抱えて学校に来ている。どのようにしてその心を乗り越えているのか、登校している子から学んでほしい。子どもの知恵が教えてくれる」と話した。
【コメント】「『不登校になる心』をどう乗り越えているのか、登校している子から学ぶ」ー、今学校現場で行われている「不登校対策」に対する適宜なアンチテーゼではないかと思いました。学童期から思春期にかけて、子どもたちが求めているのは、ともだちとの関係性であり、信頼できる大人との関係性ではないでしょうか。親や学校現場の大人たちは、子どもたちが信頼を寄せる対象となり得ているか、日々自己観察したいものです。