抑うつ気分は内面の堂々巡りから
2006/09/09
抑うつ状態とうつ病が違うことはご存じですね。うつ病は「気分障害」として精神病として分類されるものです。一方の抑うつは、日常生活の中で頻度高く生じる鬱々とした気分の状態を広く言います。財布を落としてしまった、約束していたデートがキャンセルになった、料理を焦がして食べられなくしてしまった、子どもが学校に行き渋るようになってきた、不登校が続いている、イジメを受けているようだが自分からは何も語ってくれない、夫が毎晩残業で遅く話す時間がない、こんなにがんばっているのにだれも自分のことを認めてくれない…。人として生きる上での基本的な生理的な欲求が満たされ、一定の社会生活がなりたっていても、このような気持ちの満足が得られない状態はひんぱんに生じます。
割り切ってリセットできるものであれば頭の切り替えができて、不満な気持ちを引きずることはないかもしれませんが、割り切ることができず、いくら考えても解決の方向性が見えずに、また内容的に家族や友人にも相談し辛かったり、相談できたとしても一緒に悶々としてしまったりする内容であれば、内面で堂々巡りをしながら時間ばかりが過ぎていく、ということになります。
こんな時は内容にもよりますが、1.問題をひとまず後回しにして時間を置き別のことに集中してみる、2.今悩んでいる問題が自身の人生においてどれくらい重要なものかを考えてみる、3.問題を一緒に考え整理しながら解決方向に寄り添ってくれる信頼できる第三者の相談相手(カウンセラーなど)の力を借りる、といった方策が考えられます。問題が時間の経過とともに自然と解決してくれる場合は良いのですが、放っておけばずっとそのままとなる問題には、違う角度からのアプローチが必用です。
いずれにしても、内面の堂々巡りから生じた抑うつ気分は、ストレスを与え続けるものです。一人で抱え込まないで、信頼できる第三者に聴いてもらうことから解決の方向に向かうことは少なくありません。相談室カンナは、そんな場所でありたいと思っています。
次回は「空を飛んでいる夢をみたら」について考えてみたいと思います。
では、この1週間の気になる記事です。
少子化要因は育児世代の長時間労働…厚生労働白書
厚生労働省は8日、2006年版厚生労働白書を公表した。白書は、少子化の要因の一つに、30代を中心とした育児世代の長時間労働を挙げ、労働者の仕事と生活の調和を実現する働き方の見直しは企業の社会的責任であると強調した。
国民に対しても、長時間労働を生む原因となる「24時間サービス」「即日配達」など、利便性を際限なく求める姿勢を見直すよう訴えている。
白書によると、25~39歳で「週60時間以上」の長時間労働をしている人は、2004年には20%を超え、10年前より4ポイント前後が増えた。仕事以外の時間が足りない状況は、「少子化の一つの要因で、長期的にみて社会の活力を低下させる」と分析。労働者が仕事に偏った生活から解放され、仕事と家庭の調和がとれた状況「ワークライフバランス」の実現を求めている。
(読売新聞)-9月8日10時48分更新
【コメント】
育児世代の長時間労働は、少子化の要因となるとともに、幼児期・学童期・思春期の子どもたちとの親子関係が適度にもたない状態を強います。仕事場における労働者としての役割は重要ですが、家庭に帰れば父親役割、母親役割を果たしながら家庭が子どもの育ちにとってよりよい環境となるようにする義務があることを、企業社会が認識することが求められていると思います。
●「起立性障害は怠け病じゃない」心身医学会が診療指針
中学生の約1割に見られ、不登校の原因にもなっている「起立性調節障害」の診療指針を日本小児心身医学会が作成した。
同障害は思春期特有の自律神経失調症で、朝は立ちくらみや頭痛で起きられないが、午後には回復することから「怠け病」ととられることも多い。
学会では「身体疾患であることを教師や親に正しく理解してもらうきっかけになれば」としている。
指針の作成にあたった田中英高・大阪医大助教授によると、起立性調節障害の子供は優等生タイプが多く、親らの要求に応えすぎてストレスをためやすい。ストレスが自律神経の働きを鈍らせ、特に立ち上がった時に脳や身体への血流が低下して「朝起きられない」「脈拍が速くなる」などの症状が現れ、約4割に不登校が見られるという。
(読売新聞)-9月7日14時49分更新
【コメント】
「障害」とはいえ、ストレス因によるところの大きなものであり、ストレスが減少すれば(例えば午後になれば)症状が消える、という可塑性の高い疾患です。診療指針の確立は必用ですが、原因であるストレス因を除去する方策を、学校教育の現場とともに考える連携した取り組みが求められます。
●発達障害児ら一貫支援/幼稚園から高校/田村3市町モデル指定/11月から県教委
県教委は学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、自閉症などの発達障害がある子どもたちらの学習環境を整える特別支援教育体制推進事業を11月から始める。田村市、三春町、小野町の田村地方をモデル地域とし、幼稚園から高校まで一貫して支援する。3市町の教育関係者や医師らで特別支援教育推進連絡会を設置し、児童生徒一人一人の障害に応じた具体的な指導法を教員にアドバイスするなど児童生徒の学習の充実を図る。県教委は取り組みを全県に広げたい考えだ。
連絡会は幼稚園や小中学・高校、養護学校の教員のほか、地元の医師、保健師、各市町教委の担当者、県の児童福祉司らで構成する。小中学校の特殊学級だけでなく通常学級で学ぶ障害の程度の軽い児童生徒も対象とし、児童生徒の現状を把握する。さらに乳幼児健診など幼少期の情報も加味する。
田村地方の小学校37、中学校15、高校3の全校と管内の全幼稚園を対象に、医師や養護学校教員ら専門家が学校、園を定期的に訪問。障害を持つ児童生徒の授業を見学、教員から状況を聞き、学習進度の調整や注意の仕方など個人個人に合わせた適切な指導法を教員にアドバイスする。
支援は高校卒業まで継続して実施する。11月の初会合後に具体的な支援策の詳細を詰める。10月には保護者や地域住民を対象とした啓発セミナーを開催する。
県教委はこれまで、LDなどの児童生徒への支援策として各校の教員1人を特別支援教育コーディネーターに指名していた。コーディネーターの養成研修は実施しているものの、習得した知識をほかの教員に伝える校内研修がなかなか進まず、各教室での児童生徒の支援は十分にできていないのが現状だ。
さらに、児童生徒一人一人の障害の状況が異なる上、障害かどうか判断しにくい場合もあり、教員は接し方に悩むケースが多かった。また、小学校から中学校へなどの進学時に情報交換しているものの、連携が不十分といった指摘もあり、一貫して支援する体制が求められていた。
推進事業は国の委嘱を受けた今年度限りの事業だが、3市町は連絡会を継続し、児童生徒の学習環境を維持していく方針。
県教委は田村地方の成果を県内の各地域に伝え「それぞれの地方の実情に合った特別支援教育の体制づくりを進めたい」(特別支援教育グループ)としている。
県教委が昨年、県内全公立小中学校を対象に実施した調査によると、LDやADHDなどの可能性がある児童生徒数は全体の4%だった。
(福島民報)2006年09月03日
●講演会:不登校問題を考えよう-10日に松戸で/千葉
不登校問題をテーマにした広木克行・神戸大発達科学部教授の講演会、「子どものシグナル見えますか~不登校、ひきこもり…から学ぶこと~」が10日、松戸市の稔台市民センターで開かれる。
不登校問題を考える東葛の会「ひだまり」の主催。94年、不登校児を抱える親の会として誕生した。県北西部を中心に活動し、親の会員は約150人、学生などスタッフ27人。
広木教授は臨床教育学が専門。発達科学部付属養護学校長も務め、少年事件や不登校問題に詳しい。
「ひだまり」の鹿又克之代表は「不登校に悩む人は社会に潜在している」という。小学校教諭で世話人の岩根宏さんは「不登校は後ろめたい、解消すべきだという考え方が子どもを追いつめる。不登校にどう向かい合うか、講演会に来てもらい一緒に考えたい」と話す。
講演会は午後1時から。会費1000円。問い合わせは「ひだまり」(電話047・361・8757)。
(毎日新聞)-9月6日12時1分更新
【コメント】
平成17年度の学校基本調査の結果が出され、不登校は実数こそ減ったものの、少子化の中で子どもの数自体が減っているために比率としてはむしろ微増。特に中学生では2.75%(36人に1人の割合)と高い数値に伸びています。自治体によっては「不登校数の半減」などの数値目標までかかげて取り組んだところもあるようですが、効果はほぼ見られません。不登校「対策」への視軸を早く見直してほしいものです。