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        父と娘のすれ違い
        2006/10/22
        日本の高度経済成長を現場で支えてきたお父さんたちの多くは、「家庭をかえりみず仕事に打ち込んできた」という方であると思います。おのずと家庭と子育てはお母さんの仕事と…。こうした経済社会的背景において、性別役割がある程度規定されて行ったのだと思います。その中で、おざなりにされてきたのが、父親役割・母親役割かと思います。
         子どもは、乳幼児期に主たる養育者である(多くの場合)母親に愛着を求めます。子どもが女の子であれば、続いて異性の親である父親からの愛情を求めます。この頃に、「仕事が忙しい」お父さんたちは、娘の求める愛情に十分に応えることができません。時には愛情希求行動を疎ましく思いぞんざいにあしらってしまったり、無視やはねつけなどをしてしまうケースが少なくありません。子どもにしてみれば、自然と愛情を求めて近づいて行った相手から、自身が求める対応をもらえないばかりか、反対の結果を体験してしまい、自らの欲求を抑圧し、「愛情を求めることはダメなこと」という認知が形成されてしまいます。父娘の葛藤は、かなり幼少期に始まっていると言えます。
         思春期になって、「お父さんが嫌い」と公言してはばからない女の子が沢山います。成育歴をお聴きすると、上記のような体験をされている方が少なくありません。父親も、娘を可愛く思っていないわけではありません。しかし、幼少期に形成されたアンビバレントな思考が固定化し、その溝が埋まらないまま時間だけが経過し、本来のそれぞれの思いとは逆のすれ違いが続いてしまいます。
         こうしたケースでは、第三者が子どもの気持ちをしっかりと聴くこと、そして父親の考えや人生観を聴くこと、そしてお母さんなど間に立って調整役となれる人が第三者と連携しながら、父・娘それぞれの思いや立場を尊重しながら、意識的にかつ気長に関係修復へ働きかけること、それらをコーディネートできる第三者(家族関係への心理教育を行えるカウンセラーなど)を持つこと、などが大切です。
         次回は「広汎性発達障害と対人関係能力」について考えてみたいと思います。
         では、この1週間の気になる記事です。

        いじめ自殺緊急調査、文科省が全国の小中高で洗い出し

        北海道、福岡県の児童・生徒がいじめを苦に自殺した問題を受け、文部科学省は16日、全国のすべての小中高校を対象に、自殺の原因となっている「いじめ」について、緊急調査に乗り出す方針を決めた。
         今週中にも各都道府県教委や私立、国立の学校に要請する。また、来年度には警察などと連携し、自殺の実態を探る全国調査を実施するほか、教員向けのマニュアルを整備するなど、子供の自殺を食い止めるための体制づくりを早急に進める。
         文科省では、これまでも年1回、全国の公立小中高校を対象に、いじめや自殺、不登校の数などを調べてきた。9月に公表した調査結果によると、昨年度の自殺の件数は105件で、ピークだった1979年(380件)と比較すると激減していた。ただ、原因別で見ると、いじめによる自殺の件数は99年度以降ゼロで、調査が実態を反映していないという指摘が出ていた。
        (読売新聞)-10月17日3時5分更新
        【コメント】いじめの実態を明らかにさせる取り組みは必用です。数を調べることに留まることなく、何が原因やきっかけで、どんなイジメがどんな構造でどんな範囲で行われ、どんな対応が行われ、結果どうなったか、その後の対応に生かす教訓は何かなど、いじめ事件から学ばなければならないことはたくさんあります。また、いじめにだけ焦点があたっていますが、不登校をはじめとして学校社会にはさまざまな問題が鬱積しています。いじめを一つの契機として、これらの多様な問題にも調査を深め、解決に向けて具体的対応法を見いだしてほしいと思います。いじめは「なくす」ことを考えるとその困難さから暗礁に乗り上げてしまいますが、「必ず対応できる」という姿勢でのぞむことで具体的な取り組みが進むと思います。

        ●2年生自殺の三輪中、いじめ7─8件を「0件」と報告
         福岡県筑前町立三輪中2年の男子生徒(13)がいじめを苦に自殺した問題で、合谷智校長は16日の記者会見で、同校ではこの数年間、7、8件のいじめが起きていたのに、担当教諭の指導などで解決したため、「いじめが続くことはない」と判断し、町教委に「0件」と報告していたことを明らかにした。
        文科省は「いじめが起きていたのなら、解決したかどうかには関係なく、正確な件数を報告してほしかった」と指摘している。
         7、8件のいじめうち4、5件は、合谷校長が着任した2004年4月以降に起きていた。合谷校長は「統計上もきちんと報告を上げるべきで、私の判断が誤っていた。7、8件のいじめについては現在、再調査しており、内容が判明したら公表したい」と述べた。
        (読売新聞)-10月16日22時13分更新

        ●福岡いじめ自殺 全校生徒の1割「経験ある」 校長が謝罪
         「いじめが原因です。さようなら」との遺書を残して福岡県筑前町の町立三輪中2年の男子生徒(13)が自殺した事件で、同校は16日、過去に別のいじめがありながら、町の教育委員会には報告していなかったことを明らかにした。また急きょ行ったアンケートで、全校生徒の1割がいじめの経験があると答えていることも発表。後手に回る学校の対応、自殺原因と教師の関係の説明も二転三転する中、文部科学省は調査に乗り出すことを決めた。
         16日午後の記者会見で合谷智校長は「(校長に就任した)04年4月以降、今回の事案とは無関係だが4~5件のいじめがあった」と告白した。町教委にいじめの報告をしなかったが、「いずれも長期にわたらなかった」「自殺した男子生徒のいじめは分からなかった」などと釈明した。
         同校では男子生徒の自殺翌日から全生徒425人を対象に記名アンケートを実施。ここで生徒たちがいじめの実態を次々に告白しているという。
         男子生徒にいじめ発言を繰り返したとされる学年主任(47)については合谷校長は「父親は学年主任が長期的に(いじめ発言が)続いたと訴えているが、私は短期間に集中し、例えば1年生の1学期にあったと考えている」と、いじめ発言期間が限定的なものだったと強調。「いじめを否定しないが、誘因と考えている。裏付けられるデータが上がっていない」と語り、自殺の直接の引き金になったとの見方を否定した。その上で処遇に触れ「今は話を聞ける状態ではないので、今後の推移をみて判断したい」と述べた。
         これに先立ち三輪中は同日午前、緊急の全校集会を開いた。合谷校長は「本当に申し訳ない」と全生徒に謝罪。「先生たちが手を抜いてしまった。乱暴な言葉を使った。全力で君たちの信号をキャッチする」と話し、信頼回復に全力を尽くす考えを強調した。
         三輪中や町教委には数百件を超える電話やメールによる批判が殺到している。生徒の間では「先生が(いじめ発言をしたのが)原因なら、学校はきちんと調べるべきだ」「学校からいじめをなくしてほしい」などの声が上がっている。
        ◇「学校は自殺との因果関係なかなか認めない」
         98年に長女をいじめ自殺で亡くした小森美登里さん(49)=横浜市港南区=は、今回の事件に触れ「教育委員会や学校は謝罪していじめがあったことを認めても、自殺との因果関係はなかなか認めない」と話す。
         小森さんは現在、いじめのない優しい社会を目指すNPO法人「ジェントルハートプロジェクト」(川崎市)の理事で、講演活動などのために各地の学校に出向いている。
         一般論としながら「いじめなどの問題が多いと学校の管理職らの格下げなどの処分となり、保身のために事実を言いにくくなる」と指摘。また、学校現場の教師たちのしがらみが、「いじめの対応が遅れる一因となっている」と分析する。
         同NPOが03~06年に、中学校23校8997人を対象に行ったアンケートでは、4人に1人がいじめられた経験を持つと回答した。小森さんは「子どもの実感と教師の目に違いがある」という。
         また、いじめの数を減らすために目標数値を設定する自治体もあり、「目標値内に収めようと(いじめを)隠す原因になる」と疑問を投げかける。「数が多いことを恐れず、国や自治体は一度、実態を把握して解決に動いてほしい」と訴える。小森さんによると、長女の死亡原因は「いじめ」とされていないと学校側に説明されたという。
         いじめを解決する方法の一つとして、「大人は子どもと一緒に、心と命の問題について考えていかないといけない。話を聞けば子どもは答えをしっかり教えてくれる」と話した。【吉永磨美】
         ◇教諭のいじめ関与、全国で
         「葬式ごっこ」や差別発言、暴力、体罰……。教諭が生徒へのいじめに関与した事例はこれまでも全国で起きている。
         86年2月に「このままじゃ『生きジゴク』になっちゃうよ」との遺書を残して自殺した東京都中野区立中野富士見中2年、鹿川裕史君(当時13歳)のケースでは、教諭4人が同級生とともに色紙に追悼の言葉を寄せ書きするなどの「葬式ごっこ」を行っていた。
         91年6月には福岡市の市立中学校でも、尿検査で再検診となった3年生の男子生徒に対し、担任の男性教諭が中心となって同級生に「追悼の言葉」を言わせるなどした。
         また、福岡市の市立小学校の男性教諭が、担任の4年生男児の曽祖父が米国人と知って、男児に「血が汚れている」などの差別発言や体罰などを繰り返し、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症させたとして、男児と両親が、教諭と市を相手取って総額約5800万円の損害賠償を求めて提訴。福岡地裁が今年7月、体罰と差別的発言があったと認定し、市に220万円の支払いを命じた。しかし、PTSDは否定したため、男児側が控訴している。
         ほかにも、横浜市の市立中学校で05年、男性教諭が3年生の男子生徒の鼻にチョークを押し込もうとするなどの「いじめ」を繰り返し、頭を柱にぶつけて軽傷を負わせた。02年には東京都武蔵村山市の都立養護学校の高校2年の男子生徒が、授業中に担任の男性教諭からワインを唇に塗られたり、遺影と誤解するような黒縁立ての写真を贈られている。
        (毎日新聞)-10月17日10時23分更新

        ●福岡、中2自殺 変わらぬ隠蔽体質 心の痛み共感できない学校
        福岡県筑前町立三輪中学校の2年生の男子生徒(13)がいじめを苦に自殺した問題で、同校校長は16日、1年当時の担任による言葉のいじめを認め、全校集会が開かれた。文部科学省は過去のいじめ自殺で、いじめの定義を変更するなど、隠蔽(いんぺい)体質になりがちな学校の対応の変化をうながしてきたが、いじめが原因の自殺はこの7年間、統計上ゼロ。子供の心の痛みを共感できない学校や教師に関係者からは批判の声がでている。
        《解明困難…「いじめ自殺7年連続ゼロ」》
         文科省は、いじめの定義について、(1)自分より弱いものに一方的に(2)身体的、心理的な攻撃を継続的に加え(3)相手が深刻な苦痛を感じている-としている。
         昭和61年、東京都中野区立中野富士見中2年、鹿川裕史君=当時(13)=が、担任教師まで加わった“葬式ごっこ”などのいじめを苦に自殺した事件を踏まえて定義されたものだ。
         さらに平成6年、愛知県の西尾市で市立東部中2年、大河内清輝君=同(13)=がいじめを苦に自殺。この事件後、同省はいじめの定義にあった「学校としていじめの事実関係を把握しているもの」の文言を削除。「遺書などで『いじめられた』と子供が訴えれば、具体的な事実関係を厳密に特定するまでもなく、いじめがあったと認定する」(同省)ことで、隠蔽されがちないじめに対する学校の対応の変化をうながした。
         文科省の統計では、小、中学、高校のいじめは年間約2万件以上。一方、児童生徒の自殺は年間100人以上で推移している。しかし、いじめを主たる理由とする児童生徒の自殺件数は、平成10年に千葉県成田市の中学2年生が自殺した事件を最後に17年までの7年連続ゼロだ。
         同省では「自殺の原因を学校で特定するのは、非常に困難だ。特にいじめの場合、教師の目を盗んで行われる場合もあり正直、遺書がなければいじめと特定することは困難」と話す。
         しかし、北海道滝川市のいじめ自殺では遺書にいじめの記述がありながら市教委と学校が「いじめがあったか確定できない」としていた。
         同省では、滝川市のケースで自殺の3週間前にも同クラスで修学旅行のグループ分けをめぐり3回にもわたって話し合いが行われたことについて、「自殺した生徒にすれば、教師も加わっていじめられたように感じるだろう。福岡の担任にも言えることだが、校長でもいい、教委には指導主事もいる。なぜ、『指導としておかしい』と担任を正さなかったのか」と学校運営の問題点を指摘。ある文科省の幹部は「こうした事件が起きる学校は必ずといっていいほど『担任任せ』もしくは『校長排除』の空気がある。情報の風通しが悪く、組織一丸となった対応に鈍い」と話す。
        《校長、「いじめ」を「プレッシャー」と表現》
         福岡県筑前町立三輪中学校のいじめ自殺問題で、合谷(ごうや)智校長が16日朝の全校集会で、他の生徒によるいじめを「プレッシャー」と表現していたことが分かった。
         合谷校長は午後に町役場で開いた記者会見で「男子生徒に対するいじめがあった」との認識を改めて示した上、「子供たちの姿を見て、いじめという言葉が出てこなかった。わたしの弱さだ」と釈明した。
         全校集会は生徒の自殺を受け、午前8時半すぎから約30分間、報道機関に非公開で開いた。会見によると、合谷校長は生徒らを前に「君たちがプレッシャーを与えることはあった。そのことに対して『ごめんなさい』と謝る気持ちが大切です」と発言したという。
         不適切な発言でいじめたとされる元担任は、全校集会は体調不良を理由に欠席。合谷校長は学校側の非を認め、生徒たちに謝罪した上で、「これからは『先生、そんなこと言ったら傷つくよ』と話し、みんなで優しい人間になっていこう」と話したという。
         一方、合谷校長は「マスコミやインターネットで出ている学校と違うと知っているのは君たちとわたしたち。振り回されてはいけません」とも発言したという。会見では「ネットの書き込みに目を覆いたくなる内容があった」と述べ、「マスコミ」の問題を指摘した言葉は削除するとした。
         遺族が学校側の説明に納得していない点について、合谷校長は会見で「(原因究明への)情報収集で学校が遅れているなと思う。大変申し訳ない」と釈明。「経験したことのない事態で、今までの三輪中の組織力ではもう限界を超えている」と話した。
         一方、文科省は16日、福岡県教委に職員を派遣し、教諭の関与について調査に乗り出すことを決めた。
        ◇埼玉県教育委員の高橋史朗・明星大教授の話
         「最大の問題は、子供と心のキャッチボールができず、心の痛みを共感できない教師の存在だ。教師に求められるのは知識・技術の伝達だけで、『時代が要請する教師像とは何か』という視点が戦後教育からすっぽり抜け落ちていた。このため、子供を不用意に傷つける教師の言動が増えている。今、教育現場に問われているのは教師自身の人間力。望ましい教師像とは何かを改めて考え、教師の養成、採用、研修に努めるべきだ」
        ◇プロ教師の会を主宰する河上亮一・日本教育大学院大教授の話
         「学校社会には、教師が教え、生徒が学ぶというある種の上下関係が必要だが、この関係を誤解する教師がいる。自分が偉いと思い込み、生徒に横暴に接するのだ。今回の事件も教師の側に問題があったことは否めない。ただ、教師や学校を非難するだけでは根本的な問題解決にならない。どんな学校にもトラブルやいじめは存在する。その現実から目をそらさず、家庭や地域も積極的に学校運営に関与すべきだ」
        (産経新聞)-10月17日8時1分更新
        【コメント】いじめ自殺に限らず、学校で起こった事故によって死亡したり障害が残ったケースでも、学校は事実経過の調査に積極的に取り組まなかったり、事実を隠蔽して学校側の責任をあいまいにしようとし続けてきました。全国でこれらの問題をめぐって訴訟や人権救済の申し立てが行われていますが、学校や教委の隠蔽体質が明らかになるとともに、司法の側の不理解から遺族の「起こった出来事の事実経過を知りたい」「再発防止に具体的な方向性を」といった願いが通じることは希有です。

        ●校長“いじめ”で男性教諭自殺か
         千葉市立中学校で教務主任を務めた男性教諭(50)が先月自殺したことが17日までに明らかになった。同市の教育委員会が勤務校の男性校長(58)の度重なる叱責(しっせき)により自殺した可能性があるとみて関係者から事情を聴いている。この校長は9月中旬に市教委から事情を聴かれたが翌日から体調不良を理由に休職している。
         市教委などによると自殺した男性教諭は9月6日に千葉市内の道路にかかる陸橋から飛び降りて死亡した。遺書は見つかっていないが遺族が「真相を知りたい」と市教委に訴え、調査を開始。学校側は市教委から配布された文書に回答し、提出したという。
         校長の自殺した教諭への「行き過ぎ指導」は今年の夏休み前から始まったとされる。この教諭に対して校長が大声で罵詈雑言(ばりぞうごん)の集中砲火を浴びせ、責めている姿が学校関係者らにたびたび目撃されていたという。
         校長は昨年4月に、亡くなった教諭は今年4月に同校へ着任した。数学を担当し、サッカー部の顧問を務めた。生徒の話では「まじめなタイプ。優しかった」。校長については「朝礼はいつも予定を毎回オーバーしたし…いつ終わるんだよって感じ」という声があがるなど「説教好き」として煙たがられている面もあったようだ。
         この件を知った生徒たちは動揺を隠せず、教室内でもさまざまな憶測が飛んでいる。放課後もマスコミが生徒に近づかないよう職員が周囲を巡回する“厳戒態勢”を取って対応した。取材に応じた同校の教頭は「(市教委の)調査結果を待つだけ。(校長がこの教諭を叱責する場面は)見たことがない」と説明している。
        (スポーツ報知)-10月18日8時4分更新

        ●大阪教職員殺傷 少年に懲役12年 家裁移送退ける
         大阪府寝屋川市立中央小学校の教職員殺傷事件で、殺人などの罪に問われた卒業生の少年(18)に対し、大阪地裁は19日、懲役12年(求刑・無期懲役)の判決を言い渡した。横田信之裁判長は少年の広汎性発達障害が犯行に与えた影響を認めたが、「その影響は過大視できない。結果の重大性などに照らして極めて悪質な事案で、もはや保護処分の域を超えている」と判断し、刑事処分を選択した。
         一方で、横田裁判長は再犯防止などのために障害を踏まえた処遇の必要性に言及、「少年刑務所での適切な処遇を強く希望する」と付け加えた。
         公判では、発達障害を考慮して矯正教育をする少年院送致が適当か、事件の重大性からあくまでも厳罰で臨むかが最大の争点だった。横田裁判長はまず、発達障害について「障害の特徴である強迫的な固執性もあって、少年は本件犯行に及んだとみられる」などと認定した。
         しかし、「少年は規範意識もある程度働いており、犯行を思いとどまることは不可能ではなかった。一般に障害そのものは犯罪と結びつくわけでもない」と指摘。さらに「障害の確立された治療法はなく、18歳という年齢から、少年院での処遇可能期間に治療効果が浸透するか問題だ」などとして、弁護側が主張する保護処分(少年院送致)に疑問を呈した。
         また、「人を刺すことは当然、殺す可能性を含んでいる」と、弁護側は否定した殺意を認定。犯行当時の精神状態についても「著しく減退していなかった」と完全責任能力を認めた。
         ただ、検察側は犯行時18歳未満の最高刑となる無期懲役を求刑したが、障害による影響などを考慮して「無期に処することはできない」とした。
         少年犯罪を厳罰化した01年4月施行の改正少年法は、故意の行為で人を死亡させた16歳以上の少年について、原則的に成人と同様の刑事裁判を受けさせる検察官送致(逆送)と規定している。大阪家裁は昨年8月、この原則に沿って少年を逆送し、大阪地検が起訴した。少年は捜査・公判段階の2度の精神鑑定で広汎性発達障害と診断された。
         弁護側は「発達障害の克服なしに真の更生は出来ず、少年院送致が相当」と少年法55条に基づく家裁移送の決定を強く主張。改正少年法施行後、殺人罪で初の家裁移送の決定が出るか注目されていた。
        ◆認定事実 中央小学校在学中、同級生からいじめられていると感じ、担任教諭に否定的な感情を持っていた少年は、引きこもり生活の中で加害空想を抱くようになり、担任教諭らを刺そうと計画。17歳だった昨年2月14日午後3時ごろ、同小に包丁を持って侵入、担任が不在だったため、鴨崎満明教諭(当時52歳)を刺殺、女性教職員2人の腹部や背中を刺して重傷を負わせた=殺人、殺人未遂、建造物侵入、銃刀法違反の罪。
        【広汎性発達障害】 自閉症、アスペルガー症候群などの自閉性障害の総称。先天的な脳機能障害とされ、他人の意図を読めずうまくコミュニケーションできない▽想像力に障害があり、情緒的理解や抽象的思考が苦手▽自分の興味、関心に執着する--といった特徴がある。雰囲気を察知したり、相手の表情から内心を読み取ることが難しく、社会適応に訓練が必要とされる。その半面、集中力や記憶力で優れた能力を発揮するケースもある。
        (毎日新聞)-10月19日17時13分更新
        【コメント】この判決から、1.広汎性発達障害について司法がまるで学び理解しようとしていない現実、2.今の日本社会が広汎性発達障害に対して抱いている意識や理解のレベルを司法判断が見事に現していること、が読み取れます。発達障害があるから罪が許される、ということはありません。起こした犯罪行為に対して罪は償うべきであることはいうまでもありません。犯罪行為を犯罪として理解・認知できない状態にある被告には、懲罰的な処遇だけではなく、起こした罪をしっかりと認知し自身の罪と向き合える能力を養うための医療・療育的な環境を与えることが不可欠だと思います。また、多くの方が指摘されていますが、この少年の成育歴や、学校に対して恨みを抱くようになった経緯についてまったく触れられていないことは、判決として極めて不備なものであると思います。広汎性発達障害と犯罪については、今後も起こりうるものですから、障害特性の理解の上に立って司法判断が行われて行くようになることを願います。

        ●<自殺統計>分類に「いじめ」「多重債務」など追加 警察庁
         警察庁は19日、8年連続で年間3万人を超える自殺対策に役立てるため、同庁の自殺統計の原因・動機の分類方法を見直し、「いじめ」「負債(多重債務)」「介護・看病疲れ」など社会問題化している項目を新たに加えることを決めた。来年1月以降は新しい分類で集計し、データは08年以降に関係省庁や研究機関の要望に応じて速やかに公表する。
         今年6月に国と自治体に自殺に関する情報の収集、分析などを義務付けた自殺対策基本法が成立したことを受け、同庁が見直しを進めていた。
         同庁は全国警察で把握した自殺者のデータを「自殺の概要資料」として毎年とりまとめ、公表している。原因・動機は「家庭問題」「健康問題」「経済・生活問題」など大きく8項目に分類。さらに家庭問題を「親との不和」や「子との不和」に分けるなど全体で54項目に細分化し、検視を担当した警察官がこのうち一つを選んでいた。
         今回の見直しでは分類項目に新たに「いじめ」「介護・看病疲れ」「子育ての悩み」「被虐待」などを加えるほか、これまで「負債」としてきたものをさらに「多重債務」「連帯保証債務」「その他」の三つに分ける。また、該当するケースの少ない「思想」や「あてこすり」を廃止し、全体で53項目とした。自殺の動機は多岐にわたることが多いことから警察官が三つまで選んで記録する。さらに、これまでまとめていなかった自殺サイトへの書き込みの有無も集計。自殺の手段の分類にも「練炭等」「排ガス」の項目を加えた。
        ▽自殺対策に詳しい本橋豊・秋田大医学部教授(公衆衛生学)の話 原因の分析は自殺対策には欠かせない。自殺の動機は一つに限定できないことが多く、原因を一つに絞り込む方法には問題があった。新分類は社会的な問題が新たに盛り込まれており、自殺対策により役立つ中身になったと評価している。
        (毎日新聞)-10月19日11時0分更新

        ●いじめ 摘発165件 力が弱い/無抵抗/いい子ぶる/動作鈍い
         昨年1年間に全国の警察が摘発、補導した、いじめに絡む小中高校生による暴行などの事件は3年連続で増加し、過去10年で2番目に多い165件(前年比4件増)に上ることが20日、警察庁のまとめで分かった。
         同庁によると、いじめる側が起こした暴行などの事件は155件で、いじめの仕返しによる事件は10件だった。
         摘発、補導された人数は前年より10人多い326人。うち中学生が240人と7割以上を占め、高校生は63人、小学生が23人だった。
         いじめた理由(複数回答)は「力が弱い、無抵抗だから」が全体の27・3%で最も多く、次いで「いい子ぶる、生意気」が27・0%、「よくうそをつく」が11・7%、「態度、動作が鈍い」が11・3%。
         被害者203人のうち6割以上が「誰かに相談した」と回答。相談相手(複数回答)は保護者が41・9%で最多。教師の31・5%、警察などの相談機関13・8%、友人の3・0%と続いた。
         小中高生のいじめに絡む事件の摘発、補導は平成8年からの10年間でみると12年の170件がピーク。14年は94件だったが、翌年以降は増え続けている。
         教育現場に警察が介入する「いじめ絡み事件」の増加について、教育関係者の多くは「学校が子供の暴力行為に自力で対処しきれなくなっている現状の表れ」と指摘する。
         文部科学省の統計によると、いじめの発生件数自体は近年、少子化による児童生徒数の減少とともに、減少傾向にある。一方で、校内暴力の発生件数(文科省調べ)は増加しており、暴力的ないじめに特化している傾向を裏付ける。同省は「キレやすい子供」を脳の機能不全ととらえた科学的な研究も進めている。
         子供から電話相談を受けるNPO法人「チャイルドライン支援センター」の徳丸のり子理事は「今の子供は人間関係で衝突したり摩擦を起こしたりする経験が少ないから、たまにそうなると凶暴化してしまう」と指摘。「いじめられっ子のサインに先生や親が早く気付き、適切に処置すれば、解決できるはず。大人の力が弱まっている」とも話す。
         不登校生徒のメンタルケアにあたっているNPO法人「不登校情報センター」の藤原宏美理事は「不登校になる子の8割ほどはいじめが原因。教師や家庭から子供を助ける意識が薄れてきている」と分析している。
         「日本子どもを守る会」名誉会長の大田尭・東大名誉教授(教育哲学)は「人間関係が疎遠な時代、大人の人間関係作りが下手になったことが子供にも影響している」と話している。
        《首相、教育再生会議で議論》
         安倍晋三首相は20日、いじめによる子供の自殺などが社会問題化していることについて、「教室、学校におけるいじめの問題は、昔からあったのも事実だが、最近極めて深刻化している。教育再生会議でもこの問題をどうすれば解決できるか議論していきたい」と述べた。首相官邸で記者団の質問に答えた。
        (産経新聞)-10月21日8時2分更新

        ●対人能力障害、ケア充実を 京の団体 アスペルガー援助者 養成講座 
         知的に問題はないが、対人能力に障害のあるアスペルガー症候群の人へのチームケア充実を目指す「アスペルガー援助者養成講座」が11月4-25日の毎週土曜午後6時半から、京都市中京区丸太町通七本松西入ルの京都アスニーで開かれる。
         思春期から成人期にかけての援助をテーマに、医療や教育、生活の現場で支援に携わる専門家が適切な理解と支援について講演する。
         「京都ひきこもりと不登校の家族会ノンラベル」(右京区、田井みゆき代表)が催す。定員200人で、家庭や学校、職場など当事者にかかわる幅広い人の参加を呼び掛けている。
         講師は▽4日 田井代表▽11日 十一元三さん(京都大医学部教授)▽18日 小谷裕実さん(京都教育大教授)▽25日 定本ゆきこさん(精神科医師)。参加費は4回で1万円。はがきかファクス、電子メールで先着順に受け付ける。問い合わせはノンラベルTEL、ファクス075(312)3338。
        (京都新聞)-10月19日8時49分更新
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        ●自殺防止:県が連絡会議設置 来年7月までに行動計画 /石川
         石川県は20日、自殺防止のための関係者の連絡会議(会長・山岸勇副知事)の初会合を県庁で開いた。自殺対策基本法が12月までに施行され、対策が県の責務とされているのを受けた取り組み。来年7月までに行動計画を作り、実施する。
         メンバーは、医療、労働、教育、宗教など各分野のリーダーと、県、県警の担当者ら30人。会議では県警の担当者が県内自殺者数の推移を説明した。
         1990年代、年間ほぼ200人前後だったが、山一証券など金融機関の破たんが相次いだ98年に300人を突破。その後300人前後で続いている。最も多かったのは03年の332人。
         性別では、男性は90年代前半、120~130人台だったが、96年から急増し、98年に200人を突破。その後も200人を上回る状況が続く。一方で女性は60~100人前後で、男性ほどの変化はない。年代別では96年以降、50歳代が急増。
         職業では無職が多い。原因別でみると、病苦は増減を繰り返しながらも減少傾向であるのに対し、経済生活問題が98年以降急増。03、04年には病苦を抜いて原因のトップになっている。
         委員らは自殺防止に向けた取り組みを説明。30年来、電話相談を行っている「金沢こころの電話」会長の山内ミハルさんは「先日当番だった日は3時間で2件、自殺に関する電話があった。うち1件は大学生。『つらいことがあって昨日、首を切った。自分は生きる価値がない』というものだった」などと相談の具体例を報告した。
         今後、連絡会議の内部に、「児童・生徒」「勤労者」「高齢者」の3部会を置き、それぞれ対策を練って、行動計画につなげる。
        10月21日朝刊
        (毎日新聞)-10月21日16時2分更新