広汎性発達障がいと対人関係能力(1)
2006/10/29
アスペルガー障害をはじめとする広汎性発達障害をお持ちの人は、「対人相互作用」に困難さがある、とよく言われます。自閉症スペクトラムの三つ組み課題の一つであり、高機能の広汎性発達障害の方においてもこの困難さが特徴的に現れている方が多いかと思います。「相手の気持ちがくみ取れない」「まわりの雰囲気が読めない」「多人数の中にいると疲れてしまったり疎外感を強く感じる」など、当事者にとっても、その場にいるまわりの人にとっても、関係性に困難を感じます。
では、この対人関係の困難さは、広汎性発達障害の方が、生まれもって身につけてきたもので、改善できないものなのかどうか? 各種の文献や論文では特徴的な特性としてこの困難さが指摘されていますが、一生持ち続ける生活レベルで支障の出る困難さなのでしょうか? この疑問に対して、最近、相談室でのカウンセリングや訪問、家族会ノンラベルの居場所で当事者の方々と接して来る中で、違う認識を持つようになりました。それは、確かに生まれながらの障害特性であり、まわりの人の言動を注視してそこから学ぶという柔軟な対応が困難であることは確かであると思いますが、個別、適切な援助があれば対人場面での多くの対応法を学ぶ力は持っていて、十分に獲得できる、ということです。たまたま、こうした援助の機会や体験を得ずして育ってきてしまったために、獲得できないままでいる、ととらえるべきではないかというものです。それは、第三者として1対1で関わったり、居場所という集団での関わりの中で、こちらの意思を確かめたり、気を使ってくれたり、という体験を数多くしてきたからです。他者との関わり方のルールを一つずつ獲得していくことができれば、社会において適応できる基本的な社会的能力を身につけていくことは十分にできるのではないか、そのための学びや体験を提供できる人的資源が必用である、と強く思うこの頃です。
次回は「広汎性発達障害と対人関係能力(2)」について考えてみたいと思います。
では、この1週間の気になる記事です。
<いじめ>法務省調査では「増加」 文科省とは逆の結果に
「学校のいじめは減少している」という文部科学省の「いじめ」に関する調査に対し、「実態を反映していない」との指摘が出ているが、法務省の調査では増加傾向にある。同省の調査によると、学校でのいじめは05年には前年より2割以上増えており、文科省調査への疑問の声は大きくなりそうだ。また、各地の弁護士会や自治体がいじめに関する相談機関を設置しており、「ぜひ相談を」と呼び掛けている。
法務省の調査によると、学校内のいじめについて「学校側が不適切な対応をした」とする05年の人権侵犯事件数は716件で、04年に比べて22.6%も増加。01年は481件▽02年524件▽03年542件▽04年584件と増え続けている。いじめも執ようで、陰湿な事例が多くなっているという。
法務省調査は、各地の法務局など人権擁護機関が、「いじめで人権を侵害された」と相談した当事者の申告などに基づいている。
一方、文科省は、学校や自治体教委の報告を積み重ねる形だ。学校側がいじめを見落としたり黙認したりすれば、統計には反映されない。また、いじめ根絶を目指す自治体が発生件数を具体的な目標として数値化したため、「実態を目標に合わせて報告する例もあるのでは」との指摘もある。
増加するいじめを重く見た法務省は、今年度からは相談ごとを自由に書いて法務局の人権擁護担当に無料で郵送できる「SOSミニレター」を約70万枚作成し、さらに18万枚増刷する。全国の小学5、6年と中学生に配布を進めている。
(毎日新聞)-10月23日3時5分更新
【コメント】どうしていじめの現場である学校で把握している数字よりも、人権擁護機関などへ寄せられた相談件数の方が多いのでしょうか? 学校にいじめの問題を相談しても解決してもらえない…、といったあきらめ感もあると思いますが、学校現場において、いじめ解消に向けて具体的に行動することなしに、いじめ問題が減ることはないと思います。いじめは犯罪であり、結果被害者も加害者もその後の人格形成に大きく影響する問題であると共に、人権問題であるという意識をもっと強くもつ必用があると思います。
<子どもの人権問題に関する相談先電話番号一覧>
http://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken27.html
●教諭のいじめで不登校に-鹿児島県奄美大島の中学校
鹿児島県奄美市の市立朝日中学校で、2年生の女子生徒(14)が1年生だった昨年9月に担任の男性教諭(30)からいじめを受け、不登校になっていることが24日、分かった。学校側もいじめを認め、生徒の両親に謝罪しているという。
奄美市教育委員会によると、男性教諭は女子生徒に授業のプリントを渡さなかったり、出欠確認の時に名前を呼ばなかったりした。女子生徒は昨年10月から学校を休みがちとなり、進級した現在もほとんど欠席しているという。
男性教諭は「心ない言動で心の傷を負わせてしまった。申し訳ない」と話しており、3月の終業式では1年生全員の前で謝罪したが、女子生徒が面会を拒んでいることから、直接には謝罪できていないという。
2月に女子生徒の母親の訴えでいじめを把握した市教委は、3月に男性教諭を口頭での訓告処分とした。学校側は「教師として許されない。1日も早く学校に出て来てもらえるよう家庭訪問などを続けたい」としている。
(サンケイスポーツ)2006年10月24日更新
【コメント】情けない話しです。被害少女は、この教師からの謝罪を「心からの謝罪」として受け入れるまで、心的外傷からの回復は始まらないと思います。
●「教諭自殺、学校に責任」両親が公務災害認定を申請
東京都新宿区立小学校に今春から勤務していた新任の女性教師(当時23歳)が自殺したのは、仕事上のストレスや学校の支援不足が原因だとして、この教師の両親が24日、地方公務員災害補償基金東京都支部に公務災害の認定を申請した。
心の病で休職する教師が増える中、新任教師の死は学校現場に課題を突き付けている。
両親の代理人弁護士によると、この教師は4月、2年生の担任になった。保護者と交換する連絡帳の中で、宿題の出し方が安定しない、子どものけんかで授業がつぶれるなどと指摘されるようになり、5月には、人生経験の少なさも批判された。
このため5月22日、校長に初めて相談。保護者と電話で話すよう指示を受けたが、時間外労働も加わり、過度のストレスを感じていた。自殺を図っていったん未遂に終わったが、同月末にもう一度自殺を図り、翌日死亡した。ノートには「全(すべ)て私の無能さが原因です」などと書き残されていた。弁護士は「保護者からのクレームなどで精神的に追いつめられ、学校の支援も不足していた」としている。
(読売新聞)-10月25日1時53分更新
【コメント】学校社会という日本一大きな管理組織は、間接や末梢神経部分に外見からは判断できない病理が広まっているようです。自己治癒力も免疫力も抵抗力も、あまり期待できない状態になってしまっているのでしょうか。
●<生活保護>7割が申請に至らず 事前相談で門前払いか
全国各市が設置する福祉事務所で04年度に受け付けた生活保護の相談件数のうち、実際に保護を始めた割合が平均で28%と3割に満たないことが会計検査院の調べで分かった。最低の北九州市は14.6%で、最高の千葉市は69.7%だった。こうした自治体間の格差について専門家の中には「相談にとどめて申請させない門前払いの実態を示している」と指摘する声もある。政府が給付削減を進める中、生活保護行政の姿勢が問われそうだ。
検査院は昨年6月に国会から社会保障費の地域間格差の検査を要請され、生活保護費などを調査。初の結果となった。
検査院によると、相談件数を把握しているのは、全福祉事務所(1225カ所)のうち各市が設置した事務所(903カ所)。政令市と都道府県別に集計したが、最高、最低以外の自治体は公表していない。
調査結果では、相談件数に対する保護開始率の低さが目立つ一方、相談から申請に至った比率も全国平均で30.6%。最低が北九州市(15.8%)で、最高が千葉市(71.1%)だった。実際に申請された件数に対する保護開始率は平均で91.5%。最低の熊本県でも73.8%と高く、申請後は高率で保護を受けられる実態がうかがえた。
日本弁護士連合会が今年6、7月に行った生活保護に関する無料電話相談によると、事務所に相談に行った180人中118人(65.5%)が「65歳までは仕事を見つけなさい」「子供などから援助を」などと言われ申請に至らなかったという。
生活保護行政の問題に詳しい小野順子弁護士は「子供など扶養義務者がいることが理由で相談段階で門前払いになるケースが多い。だが、実際には申請を受けて調査しないと扶養できるのかどうかすら分からない」と指摘する。一方、厚生労働省保護課は「相談者はさまざまな要因で生活に困っており、児童給付などほかの制度を使っている可能性もある。この数字だけで門前払いとは言えない」と話している。
北九州市では、保護を必要とする人たちから悲痛な声が上がっている。
「区役所の窓口はいつもけんか腰で『子供に援助してもらえ』の一点張り。思わず『首をつって死にます』と言ったこともある」。小倉北区の市営住宅に1人で暮らす女性(75)は8年前に夫と死別。年金月額7万円だけが収入だ。2人の息子のうち援助を受けていた二男が春から音信不通に。長男は自分の家計維持で精いっぱいという。「介護保険料も医療費も上がって暮らしはぎりぎり。夫が元気な間はちゃんと税金を納めていたのになぜこんな目に遭うのか」と涙ながらに訴える。
同市内7区の福祉事務所は毎年策定する運営方針で相談件数に対する申請率の数値見込みを設定している。同市保護課は「申請件数のとらえ方が自治体によって異なり、申請率を一概には比較できない。市は従来、保護行政の適正実施に努めている。門前払いはしていない」と反論する。
もちろん北九州市だけではない。今年2月、京都市伏見区では、認知症の母親(当時86歳)の介護で生活苦に陥った息子が、母親に相談の上で殺害し自らも自殺を図った。息子は窓口に3回行ったが、失業保険を理由に申請を受理されなかった。京都地裁は7月の有罪判決で「生活保護の相談窓口の対応が問われている」と異例の指摘をした。また秋田市では今年7月、2度の申請を却下された男性(当時37歳)が、乗用車内で練炭自殺している。
(毎日新聞)-10月26日3時6分更新
【コメント】国や担当部局が関心を持つのは、保護費をどれだけ前年比で減らすことができるかで、保護を必用としている人の生活の実情ではないようです。先進諸外国の公的扶助や精神保健などに対する国家予算の支出割合やその位置づけを学ぶべきです。
●奈良の母子3人放火殺人、16歳長男の少年院送致決定
奈良県田原本町(たわらもとちょう)の医師(47)宅が全焼し、妻子3人が死亡した放火殺人事件で、殺人、現住建造物等放火などの非行事実で送致された元私立高校1年の長男(16)の少年審判が26日、奈良家裁で開かれ、石田裕一裁判長は、中等少年院送致とする保護処分を決定した。
決定によると、長男は6月20日午前5時ごろ、自宅1階台所などにサラダ油をまき、ガスコンロで着火したタオルで1階階段付近に放火。木造2階建て延べ約140平方メートルを全焼させ、2階で寝ていた母親(当時38歳)、二男(同7歳)、長女(同5歳)を一酸化炭素中毒で死亡させた。
奈良地検は長男を「確定的に近い殺意があった」として、刑事処分相当の意見を付けて家裁に送致した。しかし、家裁による精神鑑定で、「父親の暴力で抑うつ状態になり、一つのことにしか注意が向かない発達障害だった」と診断され、付添人弁護士は「殺意はなく、更生のために専門的な施設で治療を受けさせるべき」と主張していた。
(読売新聞)-10月26日12時21分更新
●奄美の不登校中1女子、教師訪問直後に自殺未遂
鹿児島県奄美大島の公立中学校の男性教諭(37)が、不登校になっていた1年の女子生徒(12)の自宅に上がり込み、生徒がかぶっていた布団を引きはがして、「学校に行くのか、行かないのか」などと迫り、その直後、生徒が首つり自殺を図っていたことが26日、わかった。
生徒は一命を取り留めたが、校長は「不適切な行動だった」と教師の対応に問題があったことを認め、27日にも男性教諭らが生徒と両親に謝罪するという。
学校や関係者によると、女子生徒は今年6月ごろ、部活動を巡って顧問の女性教諭(25)から全部員の前でしっ責された。女子生徒はその後、退部し、2学期から学校に行かなくなった。
(読売新聞)-10月27日3時7分更新
【コメント】これも情けない話しですし、とても可哀想な事件です。90年代の前半くらいまでは、こんな対応が行われていたかと思います。「全部員の前でしっ責」を受け、「布団を引きはが」された少女の気持ちが、この教師たちに理解できるのでしょうか。
●障害者自立法施行『採算合わぬ』 東大和市社協が撤退
障害者自立支援法の全面施行に伴う負担増を理由に、東京都東大和市の同市社会福祉協議会が、九月末で障害者の外出を援助する移動支援事業から撤退したことが、二十五日分かった。市内で同事業をしていた十九の事業者で撤退したのは同社協だけ。同法施行で事業が区市町村の裁量に任された結果、報酬単価の引き下げなどによる撤退事業者の増加も懸念されていたが、「地域福祉の中核的役割を担う社協が真っ先に投げ出すなんて…」と福祉団体から批判も上がっている。
一九九〇年から移動支援事業を手掛けてきた同社協が、市側に撤退の意向を示したのは八月下旬。同法全面施行に伴い、事務作業が煩雑化し負担が増える▽採算性が合わない▽ガイドヘルパーの確保が難しい-というのが理由だった。
財源の半分を市の補助金と委託費で賄う社会福祉法人で、地域福祉推進の中核でもあるだけに、同社協の星長助事務局長は「認識が甘いと言われても仕方がないが、現実的に考えれば継続は困難。民間が育ち、社協は(移動支援の)役割を果たしたという判断もあった」と説明する。
しかし、突然の撤退で、同社協の移動支援事業を利用していた視覚障害者七人(九月末現在)のうち、現在も二人の受け入れ先が未定。その一人の五十代の男性は「一方的に打ち切りを決めてフォローもない。十五の事業者を回ったが、以前のようなサービスを受けられるところが見つからず病院にも行けない」と憤る。
障害者支援組織「東大和障害福祉ネットワーク」は十三日、利用者のサポートや社協の体制見直しを求め、尾又正則市長へ要望書を提出した。同ネットワークの海老原宏美代表は「苦しいのはどの事業者も同じ」と批判する。
同事業が区市町村の裁量に任され、報酬単価の引き下げなどに伴い苦境に立つ事業者も多いとみられ、川崎市では約百二十の事業者のうち二十前後が撤退したという。しかし、全国社会福祉協議会によると、社協については「今のところ、ほかに撤退したところは聞いていない」としている。
世界規模の障害者団体の国内組織「DPI日本会議」、尾上浩二事務局長は「移動支援は報酬単価が低いうえ、利用が不定期でヘルパーの確保が大変なことから事業者は敬遠しがち。手を引く事業者は今後もますます増えると予想される。社協の役割からして、こうした事業こそカバーすべきだ」と主張する。
<メモ>移動支援 ガイドヘルパーを派遣するなど身体、視覚、知的、精神障害者の外出を支援し、社会参加を支えるサービス。今月、障害者自立支援法の全面施行に伴い、地域生活支援事業に組み込まれた。事業者の報酬単価や利用者負担などは市町村の裁量に委ねられ、実情に沿った柔軟な対応が可能となった。東京都杉並区では身体介護を伴うサービスを1時間4000円、伴わないサービスを同2400円と報酬単価がアップしたが、広島市では一律1時間1500円と大幅減額になるなど、自治体間の格差も生まれている。従来に比べ負担が増えた事業者は多く、事業撤退やサービス低下が懸念されている。
(東京新聞)2006/10/25
【コメント】社会福祉協議会が「採算が合わない」と事業から撤退を決める自立支援法。もっと規模の小さな事業所や施設では、採算が合わないどころか、存続の危機に迫られています。悪法であると言って良いと思います。
●長男を中等少年院送致 奈良放火殺人 家裁「殺意は未必的」
奈良県田原本町で今年6月、母子3人が死亡した医師(47)宅放火殺人事件で、奈良家裁は26日、殺人や現住建造物等放火などの非行事実で送致された長男(16)を中等少年院送致の保護処分にすることを決定した。石田裕一裁判長は「保護処分によって矯正改善の見込みがある。結果の重大性などを考慮しても、なお保護処分で対処すべき特別の事情がある」と判断。処遇期間については、「相当長期の処遇が必要」と意見をつけた。
少年法は16歳以上の少年が故意に人を死なせた場合は原則検察官送致(逆送)しなければならないと規定する一方で、「相当の理由」がある場合には例外規定も設けている。今回の決定はこの例外規定に基づいており、検察側は抗告受理申し立てを検討する。
石田裁判長は決定理由で、長男への父親の継続的な暴力について「正当なしつけの限度を超えた虐待ともいうべきもの」と指摘。長男が事件前の中間テストが不出来だったことで「父に発覚すれば殺されてしまうぐらい殴られると恐怖し、父を殺害して家出することを決意した」とした。
さらに、実行には特定不能の広汎(こうはん)性発達障害の特質が強く影響し、放火を決意したと指摘。殺意については、「確定的ではなく、未必的に過ぎない」と認定。長男に罪の意識が芽生えつつあることなどから「自分自身の内面を振り返ることができる教育的環境のもとで、情緒の健全な発達を促し、贖罪(しょくざい)意識を養うことが望ましい」と結論づけた。
決定によると、長男は6月20日午前5時ごろ自宅1階階段付近に放火し、2階で寝ていた母親=当時(38)=と弟=同(7)▽妹=同(5)=の3人を一酸化炭素中毒で死亡させた。
■奈良地検の西浦久子次席検事の話 「決定の内容を検討の上、上級庁と協議して抗告受理申し立てをするか否かを検討する」
■付添人の濱田剛史弁護士の話 「決定は非常に適正だと思う。少年の更生可能性が適正に判断された」
■十一元三・京都大教授(児童精神医学)の話 「長男への保護処分決定は、家裁が情状面や殺意の有無などに関して総合的に判断した結果だと考えている。広汎性発達障害は本来犯罪に結びつくものではないが、更生を図るには発達障害を念頭にした個別の処遇プログラムが必要だ。保護処分の決定は、家裁が刑事責任を問わず、長男が社会に再び適応できるための教育を優先すべきだと判断したのだろう」
【用語解説】広汎性発達障害
興味の偏りや、コミュニケーションの障害などを特徴とする発達障害の総称。先天的な脳機能障害が原因とされ、現在の診断基準は1994年に米国で確立された。自閉症やアスペルガー障害などが含まれ、全国に100万人前後いると推計される。犯罪などの反社会的行動を起こすことはまれであり、むしろ詐欺などの被害にあうことが多いとされる。
(産経新聞)-10月26日17時5分更新
●全国初の「職親制度」 京都府が創設 ひきこもり支援へ
対人関係をうまく築けず、自宅中心の生活を送る社会的ひきこもりの青年の自立に向け、京都府は26日、就労体験のできる事業所と青年を引き合わせる「職親制度」を新たに創設すると発表した。ひきこもり青年を1人受け入れるごとに、府が5万円を事業所に助成する制度で、全国初という。
山田啓二知事が、同日の定例会見で明らかにした。
府は、仕事や学校に行けず、自宅にひきこもっている青年が府内に約8000人いる、と推計している。仕事を通じて人間関係の再構築を目指す狙いから、新制度を「職親」と名付けた。
居場所の提供や相談など、日常的にひきこもり青年を支援する府内27の団体から紹介を受けて、事業所に引き合わせる。事業所、支援団体と受け入れに関する協定を結んだ上で、青年に1カ月(80時間)程度の就労体験をしてもらう。支援団体は、その様子を見ながら青年や事業所に助言する。
府は「ひきこもりの青年を力づける取り組みを官民の協働で進めたい」としており、受け入れ可能な事業所を26日から11月15日まで募る。企業だけでなく、農林水産業や伝統産業の職人、NPO(民間非営利団体)なども応募できる。問い合わせは府青少年課Tel:075(414)4304。
(京都新聞)-10月26日15時49分更新
【コメント】ひきこもり支援が、こうした就労支援だけになっていることに危惧を感じます。就労が課題、という段階のひきこもりの人たちは、まさに氷山の一角であり、圧倒的多数者が家から部屋から出られない、人に会えないなど重篤な状態で、中にはひきこもり状態から二次的に神経症や精神病を引き起こしているケースも少なくありません。こうした「見えにくい」部分にこそ支援の光があてられなければならないと思います。繰り返しますが、ひきこもり問題は、若年者非就労問題だけでは決してありません。
●<千葉教諭自殺>「校長のパワハラ許せない」遺族が会見
千葉市立中学の教諭、土岐文昭さん(50)が9月に自殺した問題で、妻聖子さん(47)ら遺族が28日、同市内で会見し、「校長の過剰な圧力、大声での叱責(しっせき)はパワーハラスメント(地位を利用した嫌がらせ)だと考えている。一生許すことはできない」と声を震わせ話した。遺族は近く、公務災害申請をする方針だ。
遺族側の報告書によると、土岐さんは4月に赴任した中学で、校長(58)から「役立たず」などと度々大声で叱責され、精神的ダメージを受けていた。8月末、職務を優先させるために教頭昇任試験を受けないと校長に伝えたところ、「辞表を書け」「おれに恥をかかせる気か」などと怒鳴られたという。直後に「抑うつ、疲弊状態」と診断され、9月6日、同市内で飛び降り自殺した。
聖子さんは「人の命と人権を大切にしなければならない学校で二度とこんなことが起きてほしくはない。真相を究明してほしい」と訴えた。
一方、市教委は28日、「調査結果が出る時期は未定」と話し、自殺原因について明言を避けた。週明けにも療養休暇中の校長、教職員を対象に対面調査を実施する。
(毎日新聞)-10月28日20時20分更新