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        広汎性発達障がいと対人関係能力(3)
        2006/11/16
         昨夜は、私が司会を務める、家族会ノンラベル主催の「アスペルガー援助者養成講座【第5弾】」の第3講、京都教育大学発達障害学科の小谷裕実先生が、「ソーシャルスキルトレーニングの実践から」と題して話されました。まんがやコミック会話、劇ごっこなど、対人相互関係に困難さのある広汎性発達障害の子どもたちに、対人場面でより適切な対応を獲得してもらうための、視覚的な学びと理解の支援を中心として実践研究を紹介されました。
         広汎性発達障害の人たちの多くは、会話場面で、自分の興味関心のあることを一方的に話し続けて会話がなりたたない、相手の目や顔を見て聞き話すことができない、相手の言葉を字義通りに受け取ってしまい相手の隠された気持ちを読み取ることができない、などの困難さを持っておられます(定型発達の側から見ればの話しですが)。例えば、相手の目や顔を見て会話ができない、には理由があることをご存じでしょうか? 相手の目や顔の表情を見ていると、そちらに気が散ってしまって、自分が話そうと思うことを頭の中で整理しまとめる作業ができなくなるようです。集中できることは長時間取り組めるという長所のある反面、同時に複数のことを行うことが難しい、という特性があります。
         こうした困難さを持っていても、相手の目や顔を見ながら会話をすることが、人と会話をするときのルールであり、相手が自分により話したい気持ちになるということを、コミック会話や劇、ソーシャルストーリーなどで丁寧に教えてあげることで、会話のスタイルを獲得し、相手の気持ちを考えながらの会話ができるようになっていきます。アスペルガー障害の人たちの多くは、元々人が好きですから、会話が成り立つことで話しができる人が増えることは喜びであり、達成感を感じるものです。ただ、それを一人で獲得していくことができません。定型発達の人と広汎性発達障害の人とが話をするときに、「通訳者」がいて、話しの意図をわかりやすい言葉に変えて伝えると会話がなりたつことを数多く体験してきました。この通訳者の作業こそが、相手の言葉の奧にある気持ちを広汎性発達障害の人に理解してもらうトレーニングとなっています。
         対人関係の困難さという特性と、それを補う支援の方法を知っている人が、広汎性発達障害の人の近くにいて、対人場面で丁寧に援助することで、対人関係の困難さの多くは克服していけます。こうした援助者(ご家族も含めて)が一人でも多く、早急に育って行ってほしいと思います。
         次回は「広汎性発達障害と対人関係能力(4)」について考えてみたいと思います。
         では、この1週間の気になる記事です。

        いじめ被害者と加害者、容易に逆転 京大助教授ら高校生を調査

        いじめたり、いじめられた経験のある生徒は、被害者、加害者の立場が逆転しやすく、一方に固定していないことが、京都大医学研究科の木原雅子助教授(社会疫学)と全国高校PTA連合会が14日発表した高校生約6400人を対象にした共同調査で分かった。
         全国でいじめによる自殺が相次いでおり、いじめる側、いじめられる側の双方にケアが必要な状況が明らかになった。
         木原助教授らは今年9月、執拗(しつよう)なからかいや無視など本人が不愉快になることを「精神的ないじめ」と定義し、全国45公立高の2年生男子3501人、女子2905人に文書アンケートで回答してもらった。
         調査によると、いじめた経験があると答えたのは、小学校で6割以上、中学校で5割前後、高校は男子で4割前後、女子で3割弱で、いじめられた経験があるとの回答もほぼ同じだった。
         さらに、小、中学校で仲間をいじめた経験、いじめられた経験のある生徒は、経験のない生徒に比べて、7-9倍の割合で逆の立場になったことがあると回答。高校生では、この割合は16-17倍にもなり、いじめる側といじめられる側が高い割合で流動化する傾向があると分かった。
         アンケートでは、人間関係といじめとの傾向も調べた。信頼できる友達や教員、家族がいないと答えた生徒の方が、いると答えた生徒よりも、いじめをした経験が1・3-2倍の割合で高く、人間関係の希薄さが、いじめにつながる傾向も見られた。また、テレビやゲーム、インターネットといじめる側との関係で、長時間テレビを見たり、ネットをする生徒の方が、そうでない生徒に比べて、いじめた経験が1・2-1・9倍の割合で高かった。いじめを受けた相手を尋ねる設問(複数回答)では、9割が同級生だったが、教員を挙げた生徒も2割前後いた。
         木原助教授は「弱いからいじめられるだけではなく、状況に応じていじめは行われることが明らかになった。いじめられる側とともに、いじめる側の背景を探り、ケアやサポートを行う必要がある」と話している。
        (京都新聞)-11月15日9時47分更新

        ●「同級生が金銭要求」中3男子が首つり自殺…埼玉
         12日午後7時半ごろ、埼玉県本庄市の中学校3年の男子生徒(14)が、自宅敷地の倉庫内でロープで首をつって死んでいるのを母親(39)が発見し、119番通報した。
         県警本庄署は自殺とみて調べている。中学校は「この男子生徒から、同級生に金銭を要求されていると相談があった」と説明しており、同署で自殺との関係を調べている。
         調べによると、生徒は同日午後2時ごろに昼食を食べた後、行方が分からなくなっていた。遺書は見つかっていない。中学校によると、男子生徒は6日に「同級生に『500円を返せ』『利子がつくので2万円返せ』と要求されている」と相談していた。男子生徒の家族は、「悩んでいる様子はなかった」と話しているという。
        (読売新聞)-11月13日8時59分更新

        ●「いじめ」未報告の校長が首つり死亡
         福岡県北九州市の林の中で、小学校の校長が首をつって自殺しているのが見つかりました。この小学校では、女子児童が同級生らからたかられ、現金を渡していた事が分かり、校長は11日に謝罪していました。
         死亡したのは北九州市の市立小学校の56歳の男性校長です。警察によりますと12日、家族から捜索願が出され、午後2時半過ぎに北九州市八幡東区の林の中で首をつって死亡しているのが見つかったということです。
         この小学校では5年生の女子児童が同級生ら8人から現金をたかられ、合わせて10数万円を渡していた事が発覚していました。学校側は「いじめ」があったと認識していたにもかかわらず、市教委に「金銭トラブルがある」としか報告していなかったことから、校長は11日に記者会見を開き、謝罪していました。
         「何とも言いようがないんですが、遺書等もまだ無いというふうに聞いておりますし、校長先生の立場からしたら、自らこの問題の解決の先頭に立っていただきたかったという思いがあります」(北九州市教育委員会・大庭清明教育長)
         北九州市教育委員会は12日夜の会見でこのように述べたうえで、今後、児童の心のケアにつとめていくとしています。(12日22:22)
        (JNN)[13日6時25分更新]

        ●<自殺予告>止まらぬ連鎖…有効策なし焦り濃く
         伊吹文明文部科学相あての「いじめ自殺予告文書」を受けて全国的な警戒が続く中、子どもの自殺が止まらない。文書を公表したものの、相次ぐ予告に戸惑う文科省。教育委員会、各学校も即効性のある対策は打ち出せないままだ。連鎖は食い止められるのか。子どもたちに「命」の大切さをどう伝えるか。過去にも度々社会問題化したいじめ問題の教訓はいつ生かされるのか。【佐藤敬一、吉永磨美】
         「連鎖的なものが来ることは覚悟していた」。13日行われた、日本記者クラブ主催の記者会見。招かれた伊吹文科相は苦渋の表情で、自殺予告の手紙が続いていることに言及した。
         文科省が「11日に自殺する」との手紙を公表したのは7日未明。各都道府県教委にいじめの正確な把握と報告を求めている手前「情報隠し」はできない事情もあった。伊吹文科相は「(公表してもしなくても)どちらになっても必ず非難を受ける。非難は私が受けるんだと、毅然(きぜん)とした姿勢を示さないと教委、校長がついてこない」と選択の理由を強調した。
         しかし、公表の影響は予告手紙が相次いだことで明確になった。自殺の原因や予告手紙との関連性が不明ではあるものの、12日に大阪と埼玉で中学生が命を絶った。大阪の飛び降り自殺の一報が入ったのは「いじめ自殺予告」の警戒中。銭谷真美・初等中等教育局長ら幹部も駆けつけ、省内は緊迫感に包まれた。
         1通目の手紙を見た総務課職員が「(手紙の内容が)本当だったら危ないなと思った。かなり緊迫していた」と話していたが、その状態は今も続く。
         教育基本法改正の国会審議に加え、タウンミーティングでのやらせ、高校の履修単位不足、いじめの「三重苦」で文科省職員の疲労も色濃い。問題が次々と発生し、いじめ問題に対する抜本的な解決策を検討するいとまもなく、解決策の検討は「お手上げ」(ある幹部)という。
         13日、新たに届いた2通の手紙について会見をした児童生徒課の木岡保雅課長は「公表によって救われた子どもも多くいるのでは、と考えている。ですから、一つ一つのケースについてできる限りのことをしてまいりたい」と公表の効果を強調した。しかし、具体的な解決策を示さなければ、マイナスの連鎖が続く可能性も捨てきれない。
        ◇「連鎖」断ち切るには…
         今夏以降、各地でいじめが原因とみられる自殺が問題化している。その「連鎖」を断ち切るにはどのような方法があるのか。
         8月17日、愛媛県今治市の中1男子が首つり自殺。遺書には3年間にわたり「貧乏」「泥棒」呼ばわりされ「最近生きていくことが嫌になってきました」と記されていた。
         北海道滝川市の小6女児が昨年、教室で自殺を図り、今年1月死亡した事件では、10月になって女児の遺書を市教委が事実上放置していたことが発覚。さらに10月11日には福岡県筑前町の中2男子、23日には岐阜県瑞浪市の中2女子がそれぞれ自殺した。文科省にいじめ自殺の予告手紙が次々に届き、全国各校で問題の再点検など行われる中、12日に大阪府富田林市と埼玉県本庄市で中学生が自ら命を絶った。
         多くが同様の手段を選んでおり、先行する事件の影響を指摘する声もある。社会評論家の赤塚行雄さんは「戦前に伊豆大島・三原山で自殺が相次ぎ社会現象になるなど、ある時期に次々と自殺が続くことは昔からある。何か心が傾いていると、解決法として『この手で行こう』と引っ張られる」と分析する。
         86年にはアイドルの岡田有希子さんが自殺し、後追い自殺が社会問題化した。警察庁のまとめによると、86年の19歳以下(未成年)の自殺者数は前年比約1.4倍の802人に達した。岡田さんと同じ方法での自殺が多かった。愛知県西尾市の大河内清輝君のいじめ自殺事件が問題化した94年の未成年者の自殺数も580人と前年より多くなっているが、98年以降600人弱から700人超と、より深刻化した。
         履修漏れ問題も含め、「校長の自殺」も最近の特徴だ。ジャーナリストの江川紹子さんは「先生にとり良い職場でない学校が、子どもにとって良い学びの場であるわけがない」と教育者の自殺の背景に思いをはせる。その上で「根本的に何が問題か考えなければいけない。1人だと行動しない子どもたちも、集団自殺のように1人じゃないという仲間意識が芽生え、連鎖的に行動するのでは」と指摘する。
        (毎日新聞)-11月14日3時8分更新
        【コメント】連鎖の問題は、背景に、自殺念慮の状態にある子どもや教師、大人が、自殺者の数倍、あるいは数十倍いることを明らかにしていると思います。「いのちの大切さ」「こころの教育」といった一般論も必用ですが、「死にたい」と思っている人、個々人の具体的な悩みやその背景に寄り添える人の存在こそが、今求められているのではないでしょうか。

        ●<いじめ自殺>素早い対応で防止 母親が体験語る
         大阪府富田林市の中学1年、大川理恵さん(12)の自殺で、家族が明かした「チビと言われて泣いていた」といういじめ体験。同じ悩みを持つ長男が同様のいじめに遭い、自殺を何度も口にしたという首都圏在住の女性(43)が「周囲の理解もあって乗り越えた。その体験を伝えたい」と家族の闘いの経緯を語った。【竹中拓実】
         女性の中学3年の長男(15)は幼少時、成長ホルモンの分泌が減って身長が伸びにくくなる難病と診断された。小学校入学時の身長は3歳児並みの95センチだった。
         最初にいじめに気付いたのは入学後間もなく。通学路でランドセルをいくつも頭の上に乗せられているのを上級生が見かねて伝えてくれた。「人間だるま落とし」。名前まで付いているのを聞き、血の気が引く思いがした。
         6年生になり、いじめが悪化した。身長は小6の平均より30センチ低い115センチ。秋ごろから、女性の財布の現金が少しずつ減るのに気付いた。額が10円単位から100円単位、1000円単位と増えていく。当初は「落としたのか」と考えたという。
         そして元日。新年の抱負を話していたが、「僕はもう死にたい」と長男が口にした。理由を説明してくれない。2月にバッグから10万円が消えた。女性は長男を捜し、家電量販店で同級生たちに1万円ずつ渡していた現場を見つけた。10円単位のおごりが1万円単位のゆすり、たかりに発展していた。
         女性は自殺にまで至らなかった理由の一つに「学校の素早い対応」を挙げる。その日のうちに、校長は関係する児童と保護者を呼び、一家族ずつとじっくり話し合ったという。
         長男は今、高齢者介護の職場で働く夢などを語る。大川さんの報道について家族で話した時、経験を伝えようと決めた。
         女性は「外見をからかうのは子どもではよくあること。そんないじめがなくなるなんて思っていません。ただ、そのたびに周囲の大人には『そんなことを言ってはいけない』と指導してほしい」と願う。
         「学校がいじめの相談を受けた時に『しばらく様子を見ましょう』というのは絶対だめです」
        (毎日新聞)-11月16日15時6分更新

        ●<大阪中1自殺>15人がいじめ 学年アンケートで判明
         大阪府富田林市の中学1年、大川理恵さん(12)の自殺で、市教委と学校側は18日、同学年の154人全員を対象にしたアンケートと作文の結果を公表した。いじめがあったことを4割以上の生徒が知っており、延べ15人が自らいじめたことを認めたという。学校側は、いじめと自殺の因果関係を認めたうえで、身体的特徴をとらえた「チビ」という言葉が精神的苦痛を与えたとみられるとしている。
         148人から回答があったアンケートでは、▽「チビ」と呼ぶ▽大声で威圧する▽通せんぼ▽バレーボールを当てる▽悪口――の五つのいじめ行為があったことが判明。「チビ」と言われていることを65人(44%)が知っていた。それを中学での出来事としたのは33人、小学校での出来事としたのは32人おり、小学生のころから続いていたことをうかがわせた。しかし、「実際に自分が言った」という回答は0だった。
         作文では、▽通せんぼ5人▽大声4人▽バレーボール3人▽きつい言葉を言った3人――の延べ15人が自ら加わったことを認めた。
         市教委と学校側は自殺との因果関係をより精査するため調査を続ける方針を示した。
         新美好正校長は「一連の(いじめ)行動も自殺に至らしめた精神的苦痛の要因となったと受け止めている」と話した。
         大川さんは生まれつきの病気で成長が遅く、深く悩んでいたことを遺族が証言している。
         また、大川さんの自宅には初七日のこの日夜、同級生ら約30人が教員に引率されて弔問に訪れた。会見を終えた新美校長と堂山博也・市教育長も訪れ、アンケートの結果を遺族に説明した。大川さんの父和夫さん(49)によると、新美校長は仏壇の前で涙を流し、うなだれていたという。
         和夫さんは、学校側が自殺の要因をいじめと認めたことについて「やはりそうだったのかと思った。学校の対応が至らなかったからだ。犠牲者を増やさないためにもきちんと対応してほしい」と話した。同級生の弔問については「これだけ友人が来てくれたのはうれしい。ただ生きている間にもっと仲良く出来たら良かったのに」と声を落とした。
        (毎日新聞)-11月18日23時0分更新

        ●子の立場で接して 九州特別支援教育研究大会
         第40回九州地区特別支援教育研究連盟研究大会(九州地区特別支援教育連盟主催)が9、10の両日、那覇市西の県男女共同参画センターなどで開かれた。9日の全体会では千葉大学教育学部の太田俊己教授が講演。「子どものニーズを把握し満たす基本は、子どもの立場で一人一人の思いを読み取ろうとすること」などと強調した。 大会には九州各県から盲、ろう、養護学校や、小中学校の養護学級の教員らが参加した。第35回県特別支援教育研究大会も兼ねた。
         講演で太田教授は「『一人一人のニーズに合わせた支援が必要』とよくいわれるが、具体的に何をすれば良いのか、ニーズの中身が分からなければ支援できない」と説明。さらに「特別支援が必要な子どものニーズは医師など専門的な立場で分析し、見極めるものととらえる風潮があるのではないか」と指摘。「いつも接している教師が主体的に判断することが必要だ。子どもたちが主体的にやりたいことを、子どもの思いをくんで感じ取ることが必要だ」と強調した。
         10日は「自閉症への支援」「LD・ADHD等への支援(センター的な機能)」など八分科会で公開授業などが行われた。
        (琉球新報)-11月17日10時10分更新
        【コメント】日々子どもたちと接している大人に、発達の課題があるかも…と気づく知識と経験が求められています。しかし、気づいた後、発達障害を診断してもらえる医師が絶対的に不足している現状も、一方で厳然とあります。児童・青年期の精神科外来やクリニックを増やす国の施策の必要性を痛感します。