対人援助におけるストレングスモデルの大切さ
2007/02/04
ひきこもり状態が続いている方や、抑うつ感をもたれている方などに共通しているのが、「自分は弱い」「自分はダメ」という自己を否定する感情の強さです。こうした状態の人に、一般的なはげましが意味を持たないことはよく語られています。
何かのきっかけと心理社会的背景が重なってこうした状態になっていったと思われますので、今の状態に視点をおいてあれこれ論じても、否定的な感情を肯定的に変容させることは極めて困難です。
その状態になる前の本人の個性や人格、今の状態から抜け出せた後の願いや目標に視点をおくことで、具体的な援助の方向性が見えることが少なくありません。
その人は本来どんな人だったか、どんな良さや強さがあったのかに注目し、一緒に思い出しながら自身を見つめ直す、意欲が失われる中であきらめていったりやらなくなった行動に注目し、それができるようになることで自身の力を再確認するなど、否定され隠され包まれた本人の個性や興味やできることに気づき、「できる自分」や達成感を感じることに寄り添う援助をストレングスモデルの援助と言い、様々な回復援助において注目されています。
「できない自分」を感じること、感じ続けることは辛いことです。かつてできていたことが、一人ではできなくても、やる気にならなくても、「誰かと一緒に」ならハードルは低くなり、再体験につながりやすいものです。どんな小さなことでもこの再体験が気持ちを動かします。「できないと思いこんでいた自分」から「やればできる自分」を感じる時です。それは徐々に意欲につながり、自己を肯定できる状態に変わって行けます。
本来のその人、できていたことに視点を置くことは、対人援助において欠かせない視点だと思います。
次回は「障害のある方々と関わるときに忘れて欲しくない視点」について考えてみたいと思います。
では、この1週間の気になる記事です。
居残り、起立「体罰でない」 文科省、体罰範囲を明示
学校教育法で禁じられている「体罰」の基準について文部科学省は2日、「居残り指導や授業中に起立を命じるなど、肉体的苦痛を与えない行為は体罰ではない」といった見解を現場への通知に盛り込む方針を明らかにした。何を体罰とするかの文科省見解は初。「教師が体罰の範囲を誤解して萎縮(いしゅく)することがないようにしたい」(同省児童生徒課)としている。
文科省は来週、全国の都道府県教委などに(1)生徒指導の充実(2)出席停止の活用(3)懲戒(罰)、体罰について-を通知。罰について「殴る、ける、長時間立たせるなどの肉体的苦痛を与える行為は体罰であり、許されない」との基本的な考え方を明示した。その上で、授業中に生徒が騒いで授業が成立しない場合、他の児童生徒の教育権を保障する目的であれば「居残り指導」などは許容される罰としている。
他にも「教員や他の児童生徒に対する暴力を正当防衛として制止する」「教室の秩序維持のために、室外で別の指導を受けさせる」ことなども許容される罰として例示。「授業中に通話した場合に携帯電話を一時的に預かる」行為も認める。
出席停止については、いじめの加害者に対して、必要であれば「最後の手段」として認められると明記した。学校や教委が地域社会の理解が得られるよう支援するよう明示する考えだ。
体罰基準をめぐっては「児童懲戒権の限界について」と題した昭和23年の法務庁長官回答が国の法的見解となっている。今回の文科省通知は基本的にこれに準じた形だ。
いじめ自殺が社会問題化したことを受け、政府の教育再生会議ではいじめた子供への厳しい対応を要請。体罰の範囲の見直しや出席停止制度の活用を1月にまとめた第1次報告に盛り込んでいた。
(産経新聞)2月3日8時1分配信
●中2自殺で松戸市教委が教諭聴取…担任女性は寝込む
千葉県松戸市で同級生への集団暴行をとがめられた市立中学2年の男子生徒(14)が自殺した問題で、松戸市教委は3日、暴行があった1月31日の放課後に男子生徒の指導にあたった同校の教諭の事情聴取を始めた。市教委はこれまで、学校側の指導について「問題はなかった」との見解を示してきたが、改めて行き過ぎた指導がなかったかどうか調べる。市教委などによると、男子生徒を指導したのは男女4人の教諭。この日に聴取したのは50歳代の生徒指導主任の男性教諭で、約2時間半にわたり指導内容などを確認した。
市教委は今後、学年主任の男性教諭らの聴取も進めることにしているが、このうち男子生徒の担任の40歳代の女性教諭は、ショックで寝込んでおり、事情を聞ける状態ではないという。
(読売新聞)2月4日9時16分配信
【コメント】集団暴行は集団によるいじめ。その加害者が自殺しました。いじめの加害者に対して出席停止などの対処を盛り込んだ教育再生会議の報告やマスコミによる報道が、この子に強い不安を与えたのではないでしょうか。いじめ加害者に厳罰主義的対応を行うという表面的な対処は、実態に合わないばかりでなく、更なる課題を産むものであるということが早くも明らかになったのではないでしょうか。
●06年の有効求人倍率、14年ぶりに1倍台を回復
厚生労働省が30日公表した2006年の年平均の有効求人倍率は1・06倍となり、14年ぶりに1倍台を回復した。
また、総務省によると、同年の年平均完全失業率は4・1%で、4年連続で低下した。景気回復による雇用情勢の改善がより鮮明になった。
年平均の有効求人倍率は4年連続で前年を上回っており、02年の0・54倍から、ほぼ2倍の水準に回復した。有効求人倍率が1倍を超えると、計算上は、職を探す人全員が就職することができるだけ企業の求人があることになる。
06年の年平均の完全失業者数は前年比19万人減の275万人となり、4年連続の減少。自営業も含む就業者数は、26万人増の6382万人だった。サラリーマンら雇用者数は79万人増の5472万人で、1953年の調査開始以来、過去最高となった。
(読売新聞)1月30日11時3分配信
●<児童虐待防止法>超党派見直し案ー児相の安全確認義務化へ
超党派の国会議員による児童虐待防止法の見直し案に、児童相談所(児相)の安全確認義務が盛り込まれる見通しとなった。児童相談所が虐待の通告を受けても安否を確認しないまま子どもが死亡するケースが後を絶たず、そうした事態をなくす目的。親が呼び出しに応じない場合は強制的に立ち入り調査するための親の呼び出し制度も併せて設ける方向だ。
見直しを進めているのは「児童虐待防止法見直し勉強会」(幹事・馳浩自民党衆院議員)。
04年に児童虐待で死亡した53件の中で、17件は児相が住民などの通告を受け把握していた。昨年10月の京都府長岡京市の男児餓死事件では、児童委員が死亡前6カ月間に4度通報したが、安否確認されなかった。
児相の安全確認は、現行法では努力義務にとどまる。04年の法改正でも義務化が検討されたが、それに伴う職員の人員増が現実には困難との理由で見送られた。
自治体の中には、埼玉県のように独自に48時間内の確認を義務化したケースもある。厚生労働省は今月、48時間内の確認に努めるよう指針を出したが、初動対応の差は現場ごとに大きく、「『(安全確認に)努める』という今の法律の表現は弱すぎる」(メンバーの議員)として、義務化に踏み込むことになった。
安全確認の義務化と一体の形で、児相の立ち入り調査もしやすくする。これまでは親が施錠したり、応答がなければ居宅に入れるか判断が難しいとされ、05年度、全国の児相で立ち入り調査の1割が保護者の拒否などで断念されていた。このため、親が呼び出しに応じない場合、強制的な立ち入りを可能にする。裁判所の許諾を得るかどうかは検討中だ。
このほか▽親が子の治療を放棄する場合、親権代行者を選び、治療を進める措置(親権の一時停止)▽一時保護や施設入所の子に対する親への接近禁止命令――なども検討中だ。
(毎日新聞)01月31日03時01分
●<地域間格差>所得格差「小泉政権下で拡大」実証 本社集計
99~04年の全国の市区町村の納税者1人あたりの平均所得に関し、格差の度合いを示す「ジニ係数」を年ごとに割り出したところ、02年を境に上昇したことが3日分かった。ジニ係数は毎日新聞が東京大大学院の神野直彦教授(財政学)の協力を得て割り出した。平均所得の最高値と最低値の差は3.40倍から4.49倍に拡大、小泉純一郎前政権の間に地域間格差が開いたことを示した。神野教授は「感覚的に論じられてきたものを初めて定量的に示せた」と指摘しており、地域間格差は4月の統一地方選の主要争点になりそうだ。
ジニ係数は所得の不平等度を0~1の間で表す数値。「0」は完全な横並びで、数値が高いほど格差が開き、「1」は1人(1カ所)だけに所得が集中する状態となる。
毎日新聞は、総務省が毎年まとめる「市町村税課税状況等の調(しらべ)」に基づき、年ごとに市区町村別の総所得金額をその自治体内の納税者数で割って平均所得を確定。これをジニ係数を求める公式に当てはめた。
その結果、99~01年はほぼ横ばいだった数値が02年の0.070を境に上昇に転じ、04年には0.079になった。国内の個人所得のジニ係数が99~04年で0.007ポイント上昇というデータがあることが「格差論争」の根拠の一つとされており、市区町村別が2年間で0.009ポイント上昇したことは大きな数字だという。
平均所得の上位はほとんどが大都市部。04年には東京23特別区のうち9区が上位20自治体に入った。これに対し、下位は軒並み高齢化の著しい町村部。最高値と最低値はそれぞれ、99年は東京都港区の751万円、秋田県東成瀬村の221万円で、04年が港区の947万円、北海道上砂川町の211万円だった。
神野教授とともに作業にあたった慶応大大学院経済学研究科の宮崎雅人氏は「小さい所を大きな所が吸収するケースを考えれば、平成の大合併はジニ係数を下げる方向に働いたはずだ。実際の格差拡大は今回の結果より大きいのではないか」と分析している。【統一地方選取材班】
◇ジニ係数 所得の不平等感を0~1の間で示す数値。「0」は完全な横並びで、数値が高いほど格差が開き、「1」は1人だけに所得が集中する状態となる。イタリアの統計学者、C・ジニが考案した。日本の個人所得のジニ係数は80年前後から上昇。どの統計を使うかで数字は異なり、0.2台~0.4台と幅広い結果が出ている。今回は各自治体の平均所得を使ったが、個人所得の差よりも平均所得の差の開きは少ないため、0.07台という低い水準で推移することになった。
(毎日新聞)2月4日3時7分配信
【コメント】国民の多数が感じている「格差」の拡大、この調査でも数値的に明らかになりました。格差を感じ、景気回復を感じない、一方で景気を示す数値だけは上昇しているとすれば、誰が潤っているのか、誰のために政治が行われてきたのかを考えずにはいられませんね。