障害のある方々と関わるときに忘れて欲しくない視点
2007/02/11
いじめ自殺 国提訴の両親 「真相明らかに」
■このままでは娘に合わす顔ない
最愛の娘はなぜ自ら命を絶ったのか。「いじめ」を疑う両親に、学校や市は否定を続けた。埼玉県北本市立北本中1年、中井佑美さん=当時(12)=が自殺してから1年4カ月。「いじめを隠蔽(いんぺい)している」と国、市の責任を明らかにするため6日提訴した父の紳二さん(56)と母の節子さん(52)は会見し、娘を失った悲しみを語った。「娘の死の原因を明らかにしたい」。提訴はその一念からだった。
佑美さんが自殺したのは平成17年10月11日午前8時20分ごろ。マンションから飛び降りたと聞き、両親は耳を疑った。当日も普段通り朝食を食べた。ふさぎこんだ様子もなかった。
佑美さんの机から遺書が見つかった。いじめを示す直接的な言葉は書かれていなかったが、目が向く記述があった。
《クラスの一部に勉強にテストのせいかも》
佑美さんは小学校6年のとき、特定の女子児童からのいじめを受けていた。トイレに連れ込まれ「便器に顔を突っ込め」などと言われたことがあったという。佑美さんから伝えられていたので、両親はいじめに過敏になっていた。
成績優秀だった佑美さん。勉強で悩んでいた様子はない。学校では美術部に所属。友達思いの優しい性格で、ケンカして落ち込んでいる友達の相談相手になる娘だった。
いじめ以外の動機を思いつかなかった両親は、すぐに学校などに調査を依頼。しかし、学校側からの回答は「何もありませんでした」の一点張り。北本市教育委員会に「犯人捜しのようなことをすると、人権保護団体からクレームが来る」とも言われた。
学校側の調査に不満を持った両親は、必死になって関係者を訪ねて自力で話を聞いた。
その結果、中学に進級してからも佑美さんは、同級生から「キモい」「うざい」などと嘲笑(ちょうしょう)され、一部の生徒から無視されていた-などの証言が寄せられた。
両親は、いじめがあり、それが自殺に結び付いたと確信した。
娘の死と向き合い続けてきた1年4カ月。185センチと長身の紳二さんの体は、娘を亡くしてから体重が約18キロ落ちた。
紳二さんは会見で「娘にいつまでも寄り添っていてあげたい。娘の遺骨は今も家に安置してあります」と言葉を絞り出した。そして、「娘に何があったのかを知ることができなければ、私たちが天国に行ったとき、娘に合わせる顔がありません」。
節子さんは「1日だけ佑美が戻ってきたら、抱きしめてあげて『守ってあげられなくてごめんね』と言いたい」と話し、しゃくり上げた。
なぜ娘は自殺したのか。自分たちの確信を公に認めさせるため、提訴を選択した。内心はまだ逡巡(しゅんじゅん)がある。
しかし紳二さんは語る。「こんな苦しい思いをする親は、今後は出てほしくない。こんな悲しい裁判は二度と起こしてほしくない。そのための裁判です」
佑美さんの遺書の最後はこう結ばれていた。
《これから楽しい事もあるけど、つらい、いやな事は何億倍もあるから。いそがしい時にごめんなさい。私、お母さん大好きなのにね》
(産経新聞)2月7日8時0分配信
●いじめの「なやみ言おう」、相談電話を文科省が設置
いじめなどに悩む子供の相談を24時間体制で受けるため、文部科学省は7日、同じ番号に電話をすれば、全国のどこからでも地元の相談機関に自動的につながる「いじめ相談ダイヤル」を設置した。
電話番号は「0570・078310(なやみ言おう)」。原則として、各都道府県や政令市の教育委員会の相談窓口につながるが、夜間は民間の臨床心理士や教員OBらが対応する自治体もある。通話料は相談者が負担し、PHSやIP電話などからはつながらない。準備が間に合わなかったさいたま市は9日から、奈良県は21日から24時間体制となる。
同省では、今回設置した全国統一番号と、地域の相談機関の電話番号を記載したカードを1000万枚作製し、全国のすべての小中学生に配布する。
(読売新聞)2月8日1時32分配信
●県内の自治体対応に格差の懸念 新年度からの発達障害支援
【岐阜県】文部科学省が新年度から創設する発達障害の児童生徒に対する支援事業で、県内市町村で対応にばらつきが生じつつあることが分かった。文科省は、2年で全公立小中学校に支援員配置の方針を打ち出し、2007年度から財政措置を始めるが、一般財源の位置付けのため、実際の使い方は市町村に任されるからだ。関係者からは「自治体による格差が生じかねない」と懸念する声が上がっている。
学習障害(LD)や注意欠陥多動性障害(ADHD)といった発達障害は、全般的な知的発達に遅れはないものの、特定の能力だけが著しく劣ったり、年齢や発達に不釣り合いな注意力の散漫さや衝動性があったりする。県教委の本年度の調査によると、発達障害が疑われる児童生徒は県内で約1600人に上り、2年前の約4倍に上った。
県教委は、04年度から教育アシスタント事業を開始し、06年度は150人に拡充。一部の市町村も独自に支援員などを配置してきた。県教委は今後も充実させる姿勢だったが、文科省が制度化することで、市町村の対応に委ねられる方向だ。
単独で支援員を配置してきたある市は、新年度は文科省の制度を使い全小学校への配置に拡大する方針。担当者は「交付される目的は発達障害の支援。そのために使いたい」と話す。
だが、別の市の担当者は「市予算の全体枠に入ってしまうため、交付の全額を支援員配置に振り向けるのは難しい」と打ち明ける。別の自治体も「単独事業の財源を国の交付額に振り替える。新年度の配置は現状維持」という。いずれも厳しい財政状況が背景にあるとみられる。
日本自閉症協会県支部の水野佐知子支部長は「発達障害の子どもたちをきちんとサポートする体制をつくってほしい」と訴える。中部学院大の別府悦子教授(障害心理学)は「発達障害への対応は教育現場で重要な課題になっている。ようやく制度化されたわけで、市町村は財政措置通りに使うべきだ」と話している。
(中日新聞)2月7日11時25分配信
●発達障害児:教育に光、親の会「支援員配置を」 文科省新施策、高まる期待/秋田
文部科学省は07年度から、LD(学習障害)やADHD(注意欠陥多動性障害)、高機能自閉症など発達障害を持つ児童・生徒への「特別支援教育支援員」配置のための経費を全国の市町村に計約250億円、地方交付税として配分する。使い道は各市町村に委ねられる。障害を持つ子の親らがつくる「秋田LD・AD/HD親の会 『アインシュタイン』」(にかほ市、東條裕志会長)は先月18日、子供たちの教育をサポートする支援員配置に予算を活用するよう求める要望書を各市町村長とその教委あてに送った。県が07年10月から「発達障害者支援センター」を新設することもあり、親の会は期待を込めて行政による支援態勢充実の動きを見守っている。
●無理解が生む苦しみ
ADHDは注意力の発達が年齢に釣り合わず、授業中じっと座っていられない。LDは読み書きや、話したり聞いたり、計算など特定の能力の習得が著しく困難だ。高機能自閉症は興味や関心が狭く特定のものにこだわる特徴があり、周囲とのコミュニケーションが困難になる。いずれも知的発達の遅れはなく、中枢神経系の機能障害が原因と見られているが、十分に解明されていない。
「アインシュタイン」の東條会長によると、これらは社会に十分に認知されていないため、障害を持つ子とその家族が苦しむ現状があるという。
例えばLDの子供は、計算はよくできるのにひらがなが書けないなどの症状で本人が困っているのに、周囲から「やる気がないからひらがなを覚えようとしない」などと言われる。ADHDであれば、「このボタンを押してはいけない」と言われても、それを理解する前に体が動き、「なぜやめろと言ったことをするのか」としかられる。周囲の無理解によるストレスで自己肯定感が失われ、自閉症を併発したり、些細なことで暴れるなど2次障害を引き起こすこともあるという。また、保護者も周囲から「しつけができていない」などと言われて苦しむことがある。教師が障害について知らずに子供をしかる場合や、教師が障害に気付いても保護者がそれを認めようとしないなど、障害への認識不足が解決を遅らせている。
●「先進」胸張る県
文科省の新たな財政措置は各市町村に向けたもので、発達障害を持つ児童・生徒への支援員の配置や支援のあり方は、各市町村が独自に決める。秋田市では現在、普通学級に在籍する軽度の知的・身体障害や発達障害を持つ児童・生徒を支援するサポーターを必要に応じ各校に派遣しているが、この財政措置をどう生かすかは、検討することになるという。
県は、各小中学校から教員1人を選んで、発達障害の児童・生徒への支援に悩む学校と、専門家や医療機関との橋渡しをするコーディネーターを養成する事業を04年度から始め、現在は県内の全小・中学校に1人が配置されている。一般教員にも10年ほど前から、研修で発達障害について理解を深める内容を組み込んでおり、「全国的に見てもかなり進んだ取り組みをしている」と胸を張る。07年度からは、「県小児療育センター」(秋田市八橋南1)に、子供や家族の相談窓口となる「発達障害者支援センター」が設置されることになり、支援態勢のさらなる拡充を図る構えだ。
●認識に開き
06年度の県の調査では、県内小中学校で「学習・行動面で著しい困難を示す児童・生徒」は全体の約1・8%。だが、02年度に全国5カ所で実施された同じ調査の結果は約6・3%と大きな開きがあり、県は「学校側の配慮が奏功して、障害を持つ児童・生徒が自然に受け入れられ、調査結果に表れないこともある」と説明する。
しかし、東條会長は「障害が目立たない場合は周囲に困難があると認識されにくく、実際にはより多くの児童・生徒が障害に苦しんでいるのではないか」と指摘する。背景には、県側の施策が教育現場に十分に浸透しておらず、障害に理解があり熱心に取り組む教員は少数で、現場全体で支援する態勢になっていない現状があるという。「発達障害者支援センター」も、当初は10年度開設予定の「こども総合支援エリア(仮称)」内に設置される計画だったが、「早く支援できる態勢を」との保護者の声を受け、前倒しでの設置となった。東條会長は「支援の内容はまだ十分わからない。今後も要望を出していきたい」と話す。
(毎日新聞)2月7日13時1分配信
●いじめメール、中学生2人逮捕=「死ね」「キモイ」女子に700回-奈良
女子生徒に700回以上「死ね」などと嫌がらせメールを送ったとして、奈良県警天理署は8日、同県天理市の市立中学校に通う15歳の3年男子生徒2人を県迷惑防止条例違反容疑で逮捕した。いずれも容疑を認めているという。
調べでは、男子生徒2人は昨年12月中旬、1人の自宅のパソコンから、同学年の女子生徒(14)の携帯電話に向け「おいコラ死ね」「キモイ」などと記したメールを2日間で約700回送信して嫌がらせをした疑い。
さらに、1人は今年1月初旬にも「死」「学校へ来るな」などの文言のメールを2日間で約70回送信した疑い。
(時事通信)2月8日22時30分配信
●<いじめ自殺>生徒の母が名前、写真公表 都内のシンポで
いじめを苦に我が子が自殺した親らが集うシンポジウム「生まれてきてくれた命たちへ」が10日、東京都内で開かれた。各遺族が体験談を語る中、昨年10月に起きた福岡県筑前町立三輪中のいじめ自殺事件の当事者、森美加さん(36)も登壇。亡くなった長男啓祐(けいすけ)君(当時13歳、中2)の名前と写真を初めて公開し、「息子が残したメッセージを多くの人に伝え、笑顔の絶えない社会をつくりたい」と涙ながらに語った。
いじめのない社会を目指すNPO法人「ジェントルハートプロジェクト」(川崎市)などが各遺族らに呼びかけて開いた。
森さんは、啓祐君も気に入っていたという小学校卒業アルバムの写真パネルを横に、「当初は息子の名前を明らかにすることはためらいがあった」と説明。だが、中学進学を控えた二男(12)が「啓兄ちゃんは悪いことをしてない。だから僕は胸を張って中学校に行くよ」と語るのを聞き、夫順二さん(40)と相談し公表を決めた。
美加さんは啓祐君の小学校卒業文集を紹介し、「啓君は優しい心の持ち主で、みんなが幸せに暮らせるいじめのない社会をつくってほしいと願っていた。命を絶つということの意味は何なのか。私たちは大きな課題を与えられた」と話した。
参加者からは「学校は隠ぺいしがち」「真実を知ることがいじめ防止につながる」などの意見が相次ぎ、同NPO理事の武田さち子さん(48)は「当事者の親の知る権利を立法化してほしい」と訴えた。
同じく理事で98年に長女をいじめ自殺で亡くした小森美登里さん(50)は、活動報告で「やられたらやり返せ」と親に教えられている子どもが多いと指摘し、「大人が学校のいじめを生み出しているのではないか」と問題提起した。
(毎日新聞)2月10日21時5分配信
●自閉症者施設協:「障害程度区分」に批判 京都大会、関係者ら220人に参加/京都
昨年4月の障害者自立支援法施行後初となる「全国自閉症者施設協議会」京都大会が8日、京都市内であった。自閉症者の保護者や施設関係者ら約220人が参加。法施行後、施設にとって経営上の負担になると懸念される「障害程度区分」に批判が相次いだ。
同法では障害程度区分によって、施設入居の可否、サービス利用費、人員配置が決まる。自閉症者の場合も、食事や排せつ時の要介助の度合いや時間の長さなど、介護保険の要介護認定を基にした他の障害と同様の基準で区分が決まる。このため、障害特性を十分反映した認定になっていないのが実態という。
分科会の席上、和歌山県内の施設関係者は「自閉症の場合、介護はそこまで必要ないが自傷行為やパニックがあり、専門性が必要とされる終日援助が不可欠。だが自閉症者の障害程度区分は低く評価されてしまう」と指摘。北海道内の施設長は「このままでは支援に必要な施設運営費や人員配置ができない。調査員に『一定期間だけでもこの人には手厚い支援が必要』などと伝えるしかない」と胸中を明かした。
この他、発達障害研究の第一人者の十一元三(といちもとみ)・京都大医学部教授が講演。自閉症の特徴や現在分かっている原因について説明し、「高機能自閉症の人は適応能力が高く、過小診断が極めて多い。支援が急務だ」と訴えた。
(毎日新聞)2月9日16時1分配信
●県内唯一の発達障害者施設オープン
発達障害児(者)や家族を対象に支援を行う県内唯一の発達障害者支援センターがうるま市に設置された。県による設置で、学校や医療機関、公共職業安定所などと連携して相談に応じ、乳幼児から成人まで一貫した支援体制を目指す。
センターには職員4人が配置され、乳幼児から成人までの幅広い就労支援、相談支援などを行うほか、夜間、緊急時の一時保護等に対応する。
業務委託先は、2006年8月に発足された県発達障害者支援体制整備委員会が現地視察などを行い選定。運営は栄野比の里などを運営する社会福祉法人緑和会に委託された。
1日に開所し、当事者から生活上の相談などが寄せられている。
県内の発達障害者の実態は把握されていないが、02年2月の文部科学省の調査を基に県教育委員会が推計した知的発達に遅れはないが学習面や困難性がある児童、生徒は約9000人。
沖縄自閉症児者親の会の谷口曜子会長は「ずっと待ち望んでいた。ネットワークの構築をしっかりし、教員や施設職員にも発達障害についての正しい知識を身に付けてほしい」と期待を寄せた。8日午前、センターの開所式が開かれる。
電話相談は、月曜から金曜日の午前8時半から午後5時15分(緊急時は夜間、休日も可能)、来所相談は予約制。098(972)5515。
(琉球新報)2月8日10時14分配信
【コメント】京都府では、平成19年度当初予算案の中で、ようやく「発達障害者支援センター」を「府立こども発達支援センターに設置」する方向性が示されました。この子ども発達支援センターは、「児童福祉法に基づく知的障害児通園施設と肢体不自由児通園施設及び相談や検査を行う部門からなる心身障害児総合通園センターです。」「京都府南部地域における障害児療育の拠点として、専門的な知識・技術を要する障害児などへの相談・支援を行います。」とする施設です。発達障害のある子どもから成人までを対象として支援を行う発達障害者支援センターが、こうした「京都府南部地域における障害児療育の拠点」としての「心身障害児総合通園センター」に設置されることに疑問を感じます。京都府は南北に長い府であり、南部の1カ所設置ではニーズに応えきれません。また、発達障害への寮育や就労支援などの機能が、この立地条件で果たせていけるのか、その体制が確保できるのか、大きな疑問です。設置されること自体は、一歩前進と評価できるものですが…。
●京都市教委:学校名は「洛友中」と発表 不登校中学生を対象、4月4日に開校/京都
◇全国初、中学生と二部学級合同授業も実施
京都市教委は8日、4月4日に開校する市内の不登校中学生を対象にした中学校名を「京都市立洛友(らくゆう)中学校」とする、と発表した。20日開会の2月市議会に、関連条例改正案を提出する。同校では、全国で初めて中学生と二部学級(夜間中学)の合同授業を実施。市教委は二部学級の生徒も募集する。
市教委によると、昨年11~12月に校名を募集したところ、府内や滋賀・大阪などから84点の応募があり▽京都らしい▽さまざまな世代や国籍・背景を持つ生徒が学びあう学校にふさわしい▽平易な文字で声に出しても読みやすい――などの理由から選んだ。作者は金子雅寿さん(31)=宇治市=と原哲夫さん(58)=伏見区=で、開校日に表彰する。
校舎は府内唯一の二部学級を併設する市立郁文中(下京区)を活用。同中は他の市立4中学との統合に伴い4月に市立下京中として開校予定で、空いた校舎を昼・夜ともに使う。中学生の定員は約10人で、3月以降に募集を始め、5~6月に入学する。
一方、二部学級の募集定員は約30人。市内に住む16歳以上の中学教育課程未修了者で、3年間通学可能なことが条件。願書は9~20日、郁文中で受け付ける。問い合わせは同校二部学級(075・821・2196)。
(毎日新聞)2月9日16時0分配信
【コメント】京都市教育委員会は平成16年に、不登校の中学生を受け入れる「洛風中学校」を開校しています。この年度の卒業式では19名が卒業、在校生は26名とされています。市教委は当初、この「洛風中学校」で不登校への対応の先進的な経験を積み、それを各学校に普及していく、という見解を示していました。「京都市立洛友中学校」は2部制という特色はあるものの、2つめの不登校の中学生向けの中学校として作られるものです。しかも、1部の定員は10名、3年間通学できることが条件と言います。体の良い「隔離政策」と思えて仕方がありません。不登校の子どもたちに寄り添う、不登校を起こさなくてもすむように学校のあり方を検討し直す、といった対応が一切聞こえてこないのが残念でなりません。
●講演:いじめる権利、だれにもない 一人娘亡くした小森さんが訴え--氷見 /富山
◇「優しい心大切」
高校生活3か月半で、一人娘の香澄さんをいじめによって失い、その後NPO法人「ジェントルハート(やさしい心) プロジェクト」を運営している小森美登里さん=横浜市=がこのほど、富山県氷見市のいきいき元気館で講演(氷見青年会議所主催)。「いじめられる子は弱い」「大人に相談しないからだ」と被害者に負担を強いる風潮、報道を批判し「『ウザイから』と、人を傷つけていい権利はない」と訴えた。
講演の演題は「やさしい心が一番大切だよ」。98年7月、香澄さんが自ら死を選ぶ直前に語っていた言葉だ。香澄さんが生まれた時、アルバムの最初に「人の痛みの分かる優しい女の子になってください」と記した。その通りに育ってくれた香澄さんは、明るく、人を笑わせ、クラスのムードメーカーだった。ところが高校に入学して、一変してしまった。
小森さんは娘の悲劇に直面するまで、いじめ報道などにも「死ぬほどの勇気があるなら、なぜもっと強く生きなかったのか」「親に相談せずに死ぬなんて、親子関係がうまくいっていないんだ」と考える一人の大人だったという。そして今は、心と体への暴力で傷ついた娘を思い起こし、「心が深く傷つくと、生きる気力を失ってしまうんです」と指摘する。
さまざまないじめ事案に接し、「思い切って相談しても、周囲から『あんたにも問題があるんでしょ』と言われ、教師から『やり返せ。それが強さだよ』とハッパをかけられる」現状を説明。今の教育現場について「『保健室にいればいい。フリースクールや転校も』と、いじめられた子が対応を迫られるだけ。いじめた子を変えないと、根本的な解決にはならないんです」と訴えた。
また「無視は心に対するリンチ。相手を死にも追いやる。いじめた側は『他の子もやった』と言い訳するが、10人の無視は、100倍もの心の痛みになる」とも語った。
◇自由の翼持つ命奪わないで--ジェントルハート
「ジェントルハート」では、小森さんらが小中高校などを回って講演し、いじめを苦に天国に旅立った多くの子どもたちのメッセージを伝えている。人権という言葉を「自由の翼を持って生まれた命」として易しく説明。「皆さんは、自由の翼で飛び回ってください。でも、お友達の自由の翼をむしったり、ボンドで固めるようなことはしないで」と呼びかける。
講演後は、5~6人に分かれワークショップ。模造紙に「今まで目撃したことのあるいじめ」を書いていってもらうと、いろんな種類が出てきて、ついに「自分がやったいじめ」を告白する子も出てくるという。
小森さん夫妻は、香澄さんとの最後の別れの際、「生まれてきてくれてありがとう」と告げた。そして今、ジェントルハートの活動を通して「すべての子どもたち、生まれてきてくれてありがとう」と語りかけている。URL=http://www.gentle‐h.net
(毎日新聞)2月10日16時0分配信