心療内科から精神科への敷居。
2007/06/10
ここ数年のことでしょうか。「心療内科」の看板を掲げる病院、クリニックが増えています。総合病院はともかく、内科の診療所・クリニックが「心療内科」を付け加えるケースと、精神科の診療所・クリニックが「心療内科」を付け加えるケースが多いようです。身体の不調と精神のトラブルは密接に関係しているので、内科、精神科双方からその垣根を低くすることは必用だと思います。
気になるのは、精神科受診が基本であるうつや神経症などの精神疾患やパーソナリティ障害などのを発症しているケースで、「とりあえず心療内科で…」と「心療内科」の看板のある内科医を受診する方が少なくないことです。
「精神科」は、まだまだ日本では敷居が高いというか、門をくぐるのに勇気が必用な所であることは事実ですが、ここ数年で広まっている、「うつかなと思ったら早めに医療受診を…」、「こんな症状を感じたら、社会不安障害かも知れません」などの「心の病は専門家へ」というメディアによる誘導的社会風潮によって、「とりあえず心療内科で…」が起こっているものと思われます。
抑うつ気分を感じたり、不登校・ひきこもりなどの状態像が見られるというだけで受診し、症状を訴えると、抗うつ剤や抗不安剤が処方されることが多いようです。不本意に受診をさせられた人は、処方薬を飲もうとしなかったり、医療への拒否感を強めることもあります。また、処方薬を服薬しても効果がないと感じると、別の病院へとドクターショッピングが始まることもあります。
大切なのは、その症状が起こってきた心理社会的背景をできるだけ把握し、状態や症状に応じた薬物療法、ケースによって精神療法(カウンセリング)との併行治療を行える精神科医と出会うことです。日常生活に支障が出ている場合には、「とりあえず…」ではなく、まず精神科を受診すること、患者個人の問題に帰することなく、経緯や背景を丹念に読み解きながら状態を判断し、治療をすすめることが必用かと思います。
次回は「中学校での不本意な体験」について考えてみたいと思います。
では、この1週間の気になる記事です。
自殺者数、9年連続で3万人超え 警察庁まとめ/自殺、学生・生徒は最悪886人
昨年1年間の自殺者数は3万2155人で、前年より1・2%減少したものの、9年連続で3万人を超えたことが7日、警察庁のまとめで分かった。統計を始めた昭和53年以降6番目に多い。特に学生・生徒らの自殺は同2・9%増の886人で、53年以降、最悪となった。
年齢別では、前年比2・1%増となった「60歳以上」が1万1120人で全体の34・6%。以下、「50歳代」7246人(同22・5%)▽「40歳代」5008人(同15・6%)▽「30歳代」4497人(同14・0%)-の順。男女別では男性が約7割を占める状況は変わらないが、女性が9342人で前年より330人増加した。
自殺した学生・生徒ら886人のうち、小学生は14人で前年の2倍。中学生も22・7%増の81人。高校生は220人、大学生は404人だった。
原因・動機別にみると、「健康問題」が全体の半分近くの1万5402人で最も多く、2番目が「経済生活問題」。さらに、「家庭問題」「勤務問題」と続いた。
自殺者全体の32・5%に当たる1万466人が遺書を残しており、いじめや成績などの「学校問題」を理由に書いた人は、前年より28・2%多い91人で、統計の残る平成10年以来最多。昨年のいじめ自殺の続発を裏付けている。遺書だけでなく、警察の調べで「学校問題」が原因と判断された自殺者は242人で、前年を9人上回った。
厚生労働省は6日に昨年の自殺者が3万人を割ったと発表したが、警察庁は、検視などで事件性を調べて自殺と判明した事案を集計、外国人も含まれるため、厚労省の人口動態統計より毎年2000~3000人多い。
(産経新聞)6月7日15時50分配信
●引きこもり支援施設の監禁死事件、元代表理事に2審も実刑
名古屋市北区の引きこもり者更生支援NPO法人「アイ・メンタルスクール」(解散)で昨年4月、男性(当時26歳)を監禁、死亡させたとして、逮捕監禁致死罪に問われた元代表理事・杉浦昌子被告(50)の控訴審判決が8日、名古屋高裁であった。
前原捷一郎裁判長は「引きこもりに悩む家族の思いにつけ込んだ悪質な犯行だが、反省も深めた」と述べ、懲役4年とした1審・名古屋地裁判決を破棄し、懲役3年6月の実刑を言い渡した。
被告側が求めていた執行猶予は認めなかった。
判決によると、杉浦被告は職員ら4人(いずれも有罪確定)と共謀し、昨年4月14日未明、東京都内の男性の両手足に手錠をかけて名古屋市内の寮まで運び、男性の腹部に鎖を巻き付けるなどして監禁し、暴行を加え、死亡させた。
(読売新聞)6月8日20時51分配信
●体罰の「罪」/長崎
先月29日の長崎地裁の401号法廷。長崎市の中学で喫煙を巡る指導中に校舎4階から飛び降り死亡した男子生徒の両親が、市に損害賠償を求めた訴訟で担任の30代男性教師が証人として出廷した。
男子生徒は、たばこを持っていることが見つかり、放課後に担任の指導を受けることが決まった後、複数の友人に「殴られる」「パンチしたらかわす」「やばかったら飛び降りる」と話したという。このため、担任が過去に体罰をふるっていたことが、生徒を追い詰めた一因ではないかと両親側はみている。
これに対し、市側は事件当日は体罰をふるっておらず、この訴訟は「体罰とは関係ない事案」と主張する。
両親側によると、担任はしばしば体罰をふるっていたという。担任は「最後の手段として体罰に及ぶことがあった」と複数の生徒に対する体罰を認めた。
生徒指導のためとはいえ、法的に禁止されている体罰を使うのはなぜか。気持ちを抑制できないからか。周囲にも容認する雰囲気があるからだろうか。
傍聴席で双方のやり取りを聞きながら、自らの学校時代のことを振り返ってみた。
小学校から高校まで何人もの熱心な教師に出会った。札幌市で小学3年から卒業まで担任だった新任の女性教師とは、放課後の運動場でバスケットボールで遊んだ。何より感謝しているのは、楽しく勉強するこつを教わったことだ。
転校した東京の中学の野球部顧問の体育教師には、外野フライも満足に取れなかった私の長所を見いだしてもらい、試合で使ってもらった。大きな自信につながった。
教師から殴られたことはなかった。優等生だったわけではない。他の生徒が体罰をふるわれる場面も記憶にない。それが普通の学校と思っていた。
「熱心さの余り、手が出た」との言い訳を時々、聞くが、熱心さと体罰は別ものだ。今、教育環境の違いを感じている。土地柄なのか、時代なのか。
長崎地裁には県内だけでなく関西や九州各県から約100人が集まり、傍聴席に座りきれないほどだった。中には教師の指導後に命を絶った小学生と高校生の母親たちもいた。
教師の指導で傷ついている子供たちは予想以上に多い。中でも体罰を背負った指導は思いもよらぬ結果をもたらすことがある。体罰の「罪」は大人が考える以上に重い。
〔長崎版〕
(毎日新聞)2007年6月5日
●「いじめ許さん」全員に体罰 辞表の先生、保護者が慰留 京都
体罰を加えたことをわびる教諭に、教諭の熱意を正面から受け止めた児童と保護者。京都府京丹後市の市立小学校で、「クラスメートへのからかいをやめなかった」とクラス全員に体罰をした男性教諭(28)が辞表を提出した。しかし、保護者のほぼ全員が辞職の撤回を求める署名を提出。思いとどまった教諭は謹慎処分が解けた8日、児童らと互いに謝罪し、きずなを深めたという。市教委は「近年、学校に理不尽な要求をする保護者が増える中、教諭の熱意が通じたのでは」としている。
市教委などによると、教諭のクラスでは1人の男児の外見を一部児童がからかい、他の児童も黙認する状態だった。教諭は「(次にからかったら)みんなをたたいて教師を辞める」と注意したが、今月4日、再びからかいがあったため、「ここで放置すると、いじめに発展しかねない」と判断、からかわれた男児を除く全員のほおを平手打ちした。
報告を受けた校長は同日夜、保護者らを集め、教諭とともに謝罪。3日間の自宅謹慎を命じられた教諭は辞表を出した。ところが、寛大な処分を求める署名運動が保護者の間で始まり、全校の児童191人の保護者ほぼ全員分の署名が学校に提出された。
その後、教諭が二度と体罰をしない意思を示したため、校長は辞表を返却。謹慎処分が解けた8日、うつむいてわびる教諭に、児童たちも泣きながら「私たちが悪かった」と謝ったという。
教諭は採用4年目で、同小には今年度着任。校長によると、熱心でまじめな人柄で、子供のころに外見を理由にした嫌がらせを受けた経験があったという。
引野恒司・同市教育長は「学校に理不尽な要求をする保護者も少なくない風潮なのに、教諭の行為を熱意ととらえ、署名運動まで起きるとは驚いている」とした上で、「体罰の事実は事実なので、子供や保護者の心情を受け止めた上で適正に処分はする」としている。
◇河上亮一・日本教育大学院大学教授(教師論)の話 「教師として、職をかけてもやってはいけないことを示す覚悟も必要。児童や親にもその姿勢が伝わったのではないか。最近ではこういう先生はめずらしく、評価すべきだ」
◇森毅・京都大名誉教授の話 「熱心だから体罰が許されるという話ではない。教師が体罰をするなら辞めるしかないと思うし、保護者らはそれを非難するにしても支持するにしても、もう少し学校と冷静に付き合う手だてがあるのでは」
(産経新聞)2007/06/09
●次期学習指導要領、見通し 道徳「教科書」見送り 中教審部会長
■週5日制は堅持
中央教育審議会・初等中等教育分科会教育課程部会の梶田叡一部会長(兵庫教育大学長)は8日、次期学習指導要領について、(1)週5日制は堅持(2)道徳は正規教科とせず、教科書検定は行わない(3)国語や理数科目を重視する-などを柱とするとの見通しを語った。指導要領を協議する部会長が新要領について公に言及するのは初めてで、教育再生会議の第2次報告に盛り込まれた道徳の「教科書検定」を事実上否定した形となった。
現行の指導要領は平成17年から見直しが行われているが、教育基本法や教育関連3法改正の審議、未履修への対応などで作業が遅れている。
梶田部会長は東京都内の講演で、秋には中間まとめを出し、来年早々にも告示したいと述べた。
主な内容は、週5日制を維持▽授業時数は週30時間(現行28時間)▽教科再編は行わない▽「総合的な学習の時間」は時数を削減▽中学校の選択授業は廃止-などとしている。再生会議の報告にあった土曜日授業については「朝令暮改はよくない。個人的には現行のように補習や行事を行うべきだ」と述べた。
伊吹文明文部科学相も5日の会見で「土曜日は今でも活用しており、実現の仕方は文科省に任せてもらわなければならない」と、再生会議を牽制(けんせい)していた。
(産経新聞)6月9日15時32分配信
●<児童ポルノ>「所持合法の日本、のんき」 被害相談増える
ネット上にはんらんし続ける児童ポルノに、日本はどう対処すべきなのか。この問題を取り上げた連載「ネット君臨」には、罰則の強化を求める読者の声が多数寄せられている。【ネット社会取材班】
◇通報の7割、性的行為 ネット上有害情報
10代で知らない相手から性的暴行を受けたという30代の女性は「一生忘れられないし、20年たった今でも悪夢に悩まされる」という。「児童ポルノは持っているだけでも処罰すべきで(単純所持が合法の)日本が、いつまでものんきなことを言っていていいのか、と首をひねりたくなる」
2児の母という兵庫県の女性(37)は「娘がいるので、人ごとではありません。厳罰に処してほしい。女性と子供が安全に暮らせる社会でなければ少子化は止まらない」と訴える。
幼いころ性的被害を受けた女性も「当時は幸いにビデオや携帯電話がなかったが、今は映像に残され、さらに傷つけられてしまう。一生を台無しにされるかもしれないのに、刑罰の甘さにはあきれてしまう」と言う。
ネット上の有害情報の通報を受け付ける「インターネット・ホットラインセンター」(東京都港区)によると、昨年6月の開設以来、児童ポルノと判断した通報は1042件。単なるヌードではなく、DVDを中心に性的行為が7割を占めるとされる。さらに掲示板などへの投稿は「小学生や幼児の画像にまで及んでいる」(同センター)という。
警察庁によると、児童ポルノ禁止法違反での検挙は06年が616件で前年比31・1%増。うちインターネットを利用したものが250件で4割に上る。警察庁幹部は「画像の削除を民間団体と協力して行っているが、限界がある。警察だけに限らず、単純所持の禁止を求める声は大きくなっている」と語る。
奈良県では奈良市で起きた小1女児誘拐殺害事件を機に05年7月、児童ポルノの単純所持を禁止する条例が施行された。
◇「麻薬と同様だ」
「ポルノグラフィと性暴力」の著書がある中里見博・福島大准教授(憲法)の話 単純所持の禁止に対し、表現の自由やプライバシー侵害として反対する声はあるが、児童ポルノは麻薬と同様だと考えれば「所持の自由」が認められる領域ではない。国境を越えるネットで流通している以上、各国が協力して規制するしかない。捜査権乱用を懸念する声もあるが、迷惑メールに添付された画像を削除し忘れた人が裁かれるべきではない、というのは原則。運用のあり方は議論すべきだろうが、大きな萎縮(いしゅく)効果があるのは確かだ。
◇解説 「人権軽視国でいいのか」
米政府が児童ポルノをめぐり、画像の「単純所持」を処罰できるよう日本側に法改正を要請したことは、国際社会の動きを反映している。現状のままでは「子供の人権を軽視する国」という評価が定まりかねず、国会は本格的な論議を求められる。
今年5月、主要国首脳会議(ハイリゲンダム・サミット)司法・内務相会合は児童ポルノ根絶に向け、国際協調を強めることを宣言した。背景には、インターネットの世界的な普及と技術の進歩がある。この問題に取り組むスウェーデンのシルビア王妃は毎日新聞の取材に「ビデオカメラで撮影し、ネットで簡単にばらまける時代になった」と指摘。ネット時代に合わせた法整備の必要性を強調した。
スウェーデンでは今年予定される法律の見直しで、単純所持の処罰をさらに進め、児童ポルノを見る行為そのものを禁止することも検討されている。「ネットで見るだけでも性的刺激を受け、実際に子供を虐待する危険がある」という考え方が強いからだ。
児童の性的虐待問題に取り組む国際NGO(非政府組織)「ECPAT」の05年の報告書によると、日本は誰でも簡単に無料でアクセスできる児童ポルノサイトの数が、世界で5番目に多い。海外からも見ることができるため、日本国内だけの問題にとどまらない。
単純所持の禁止については「捜査権の乱用を生みかねない」などの指摘が国会の一部にあり、判断を先送りしてきた。しかし、それは法律そのものより、運用の仕方にかかっている。
米国やスウェーデンでも捜査当局はその点に慎重を期しており、大きな問題にはなっていない。国境を越えて広がる児童の被害をどうくい止めるか。日本も国際社会に足並みをそろえる時期に来ている。【ネット社会取材班】
(毎日新聞)6月10日3時14分配信
●フリースクール:発達障害児を対象 染原さん、私財投じ元旅館改装--宗像/福岡
◇個々に応じて学習指導 宗像に「YOYO学園」開校--県内初の民間
注意欠陥多動性障害(ADHD)や学習障害(LD)など発達障害の幼児と児童生徒を対象にしたフリースクール「YOYO(ようよう)学園」が宗像市神湊に開校した。理事長兼学園長の染原レイ子さん(55)が私財を投じて元旅館を購入し、一部改装した。同様の民間施設としては県内初で現在、小学生4人と幼児1人が入園している。
学園は3185平方メートルの敷地に、鉄骨(一部木造)2階建て延べ1270平方メートル。海岸のそばで玄界灘が一望できる。学園名は「陽葉」「前途洋々」など太陽をいっぱい浴びた緑の葉っぱや子どもたちが伸び伸びと育ち、楽しく学べることをイメージした。
染原さんは日本LD学会認定の特別支援教育士でもあり、博多区で学習支援教室「からーぼっくす」も経営。スタッフは幼稚園、小学校、養護などの各教諭免許や言語聴覚士、図書館司書の資格を持った常勤5人と英会話や日本舞踊などを指導する非常勤5人。
定員は幼稚部=10~20人▽小学1~3年=10~15人▽同4~6年=10~20人▽中学生=5~15人▽ショートクラスA(1回1時間半、4~15歳)=1週間に18人程度▽同B(1回1時間、3歳児)=8組程度の親子。
入園時に面談や検査で子どもたちの言語能力や理解力などを的確につかみ、個々人に応じた学習指導プログラムを設定する。LDの治療法の一つで、トランポリンやシーソーなどを使って、いろいろな感覚を養う「感覚統合運動」や言葉指導を通して発達を促す。
染原さんは97年、小学校教頭を最後に退職。次男(21)が小学6年の時にLDと診断され「母親としての責任を痛感した」と言う。染原さんは「子どもは育つ時に育てておかないといけないことが分かった。学びやすい環境で伸び伸びと成長した時に能力が開花する。これがすべての自信につながる」と話す。
問い合わせはYOYO学園0940・62・0044。
(毎日新聞)6月6日13時1分配信
●発達障害児:自己表現に理解を 学校職員らが研修会--草津/滋賀
発達障害児の支援のための研修会が8日、草津市西渋川の発達障害支援センターで開かれ、県立小児保健医療センター児童精神科医の華園力(つとむ)さん(49)が保育園や小中学校の職員ら約80人に講演した。
発達障害は、学習面や行動面で遅れが見られたり、周囲と円滑にコミュニケーションが取れず、いじめや不登校につながるケースもある。
華園さんは「児童の状態を把握し、記録することが重要」「正常になることが最終的なゴールではない。(児童が)社会の中で安心して快適に自己実現が図れることがゴールになる」と訴えた。
保育園に勤める林田和美さん(24)は「本人の立場になって、子どもを尊重してあげることが大切だと思った」と話していた。
(毎日新聞)6月9日16時1分配信
●何でこうなの?:教育委員会の「?」を探る/3 調査機関/千葉
◇迅速な事実解明を--「第三者」に望む被害者ら
いじめや体罰、わいせつ行為など、学校内で起きる問題は後を絶たない。しかし、こうした問題は学校側にとっては不都合で、隠ぺいの恐れもぬぐいきれない。全国のいじめやわいせつ被害者の会などは、問題を調査する第三者機関の設置を求めて文部科学省などに申し入れをしている。第三者機関が学校内を調査するようになる可能性はあるのだろうか。
昨年10月にいすみ市の中学校で発覚した、男性教諭(39)が生徒に暴言をあびせるなど不適切な言動を繰り返していた問題では、マスコミの報道によって、初めて学校側が調査に乗り出した。自主的に事態を明らかにして解決を図ろうという姿勢はなかった。
こうした態度に対して、文部科学省児童生徒課は「学校が誠意を持って対応し、調査するのが基本」と説明する。一方で、「各教育委員会に『こうしなさい』と言う権限は(文科省は)持っていない」とし、第三者機関の設置には消極的だ。
県教育委員会教職員課も「『第三者は調査できない』という法律はないが、どんな問題でも第三者が入ればいいか、と言えばそうとも言えない」と同様の態度を示す。
学校と児童・生徒側の間に入り、事実関係を明らかにする活動をしているNPO「千葉こどもサポートネット」の米田修副理事長は「子供が被害を受けたらすぐ訴えられるシステムを作らなくては、構造的な解決にならない」と話す。
既に取り組みを始めた自治体もある。兵庫県川西市は、全国で初めて、子供の人権救済・調査機関を作った。同市子どもの人権オンブズパーソン事務局によると、この制度は、児童虐待などが専門の大学教授や弁護士など、非常勤のオンブズパーソン3人(2年任期)を市長が任命。常勤の相談員4人、専門員6人が加わり、学校などに調査に入っている。
学校外の問題もカバーできるよう、市長の付属機関であるのが特徴で、条例が定める調査権限に基づき事実関係を明らかにし、勧告することができる。学校を通してリーフレットやカードで子供たちにPRしており、昨年は延べ603件の相談があったという。
自殺や校内事故で子供を亡くした親による「全国学校事故・事件を語る会」(兵庫県)の内海千春代表理事は、第三者機関設置の重要性を認めながらも「川西市は例外的にうまく機能した」とし、「自治体によっては、機関が逆に世論の沈静化に利用され、事実が隠ぺいされる場合があるのではないか」と指摘する。
内海代表理事は「第三者機関の設置を含め、事実解明をどのようにして図るかといった指針を国が早急に定めるべきだ」と話している。
(毎日新聞)6月7日12時1分配信