少しの理解とサポートで、発達障がい者は立派に働ける。
2007/09/07
アスペルガー障がいなどの広汎性発達障がいの方の中には、大学を難なく卒業される方が少なくありません。しかし、就労でつまづいてしまわれる方が多いのも現実です。
企業の人事の採用基準で「コミュニケーション能力」が問われるためです。自閉症スペクトラム障がいの方にとって、この「コミュニケーション能力」というのは、大きな課題の1つですから、面接で視線が合わなかったり、質問の意味がわからなかったり、意味を取り違えて答えてしまったりして、結果「不採用」となってしまうためです。
興味・関心をもったことには深く努力をする人たちであるにも関わらず、このような「対人関係のスムーズさ」基準によってふるい落とされてしまうのは、いかがなものでしょうか。人間の持つ能力の大きな損失ではないかと考えます。
従業員の一人が「ちょっと人と違っているな…」と感じて、事業主さんが相談に来られているケースがあります。本人さんをカウンセリングにつなぎ、生育歴や職場でのトラブルなどを聞いていて、広汎性発達障がいの疑いを感じたため医療に紹介し、検査・診察を受けられ、広汎性発達障がいの診断を受けられました。その後も、本人さんへの対人関係トレーニング&トラブル対処のためのルールづくりを目的としたカウンセリングと、事業主さんへの関わり方を学んでいただく面談を継続しています。「能力のある人なので、できることを増やしてがんばってほしい」と、この事業主さんは言われています。佐々木正美先生の著された『アスペルガー症候群のすべてがわかる本』(講談社)をお薦めすると、すぐに購入され、2回読まれた上で、本人さんと定期的に話しをする時間をとられて、具体的な特性の理解と問題解決への議論を積まれておられます。この方には、本当に頭が下がる思いです。
周囲の人の障がい特性の理解、障がいのある本人さんの個性を理解しようと努めること、部分部分で必要なサポートの必要性に気づき援助することで、本人さんは立派な労働者として生きて行くことができますし、事業主にとっても、有能な社員を確保することができるのです。
こうした視点が、発達障がい者理解の上では不可欠だと思います。
次回は「休日のない生活」について考えてみたいと思います。
では、この1週間の気になる記事です。
親の年収400万円未満なら授業料タダ・東大、免除枠広く
東京大学は家庭に経済的余裕がない学部生に対する授業料の免除枠を来年度から広げる。家庭の年収、構成人数などを総合的に判断して免除の可否を決めている現行制度を簡素化、年収が400万円未満なら一律に授業料全額を免除する方式に改める。国立大では初の試み。
東大の学部の授業料は年53万5800円。いまは授業料が免除されるのは世帯の年収から特別控除額を引いた金額が基準額以下で、特別控除額や基準額は家族構成などによって異なる。例えば「4人家族、弟が公立高校生、自宅外通学」なら年収310万円以下の場合に全額免除が認められる
(NIKKEINET)2007年8月30日
●過労死:明治屋支店社員遺族が損賠求め提訴 謝罪なく「安全配慮義務怠った」/京都
05年4月に食料品輸入販売会社「明治屋」(本社・東京都中央区)の「京都三條ストアー」(中京区)の社員だった岩田謙吾さん(当時27歳)が死亡したのは、同社が長時間労働をさせて安全配慮義務を怠ったためだとして、両親=西京区嵐山樋之上町=が同社に総額9022万円の損害賠償を求める訴訟を24日、京都地裁に起こした。
訴状によると、岩田さんは96年に入社し、同店で鮮魚調理や販売を担当。05年4月7日夜に帰宅し、疲れで入浴もできずに就寝したが、翌8日未明に急性心不全で死亡した。労働時間は死亡の半年前から月平均290時間超で、直前の1カ月間は13時間余りの日が多く休みは1日だけ。3月は法定を132時間上回る316時間に及んだ。
京都上労基署は同年11月に労災認定し、その際の地方労災医員協議会の意見書は「異常な時間外労働で著しい疲労蓄積をきたし、短期的にも長期的にも過重業務だった」と指摘。同社と当時の店長(45)は今年6月、労基法違反罪で東京簡裁で各罰金30万円の略式命令を受けて確定している。
提訴後に記者会見した母町子さん(58)は「会社から『代わりはいくらでもいる。息子さんは勝手に亡くなった』と言われ、いまだに謝罪の言葉はない」と憤り、「息子の死を無駄にさせないよう頑張りたい」と話した。
岩田さんの死亡後、同店の従業員はほぼ全員が異動になったといい、同席した弁護団長の村山晃弁護士は「会社にきちんと責任を認めさせる必要がある。再発を防ぐためにも、当時の労働状況を知る人は情報を寄せてほしい」と呼びかけた。連絡は同弁護士(075・211・4411)へ。
同社は提訴について「真摯(しんし)に対応する」としている。
(毎日新聞)2007年8月25日
●文科省、学力テスト結果「非公表」 悩むのイヤ…データ不受理も
■教委、開示請求「困る」
4月に文部科学省が実施した43年ぶりの全国学力テストの結果公表をめぐり、各地の教育委員会が頭を悩ませている。9月にも結果が全国へ通知されるのを前に、文部科学省は各教委に「序列化につながる」とし、市町村別や学校別の結果を公表しないよう求めた。だが、各教委は議会質問や情報公開請求を受けた場合の対応に苦慮しており、中には、結果自体を受け取らないという苦肉の策を検討する教委も現れている。
「(市町村名や学校名の公表を禁じた)実施要領に基づいて対応してほしい。情報公開を請求されたら、不開示情報として取り扱ってほしい」
24日に開かれた都道府県教委と政令指定都市教委の担当者説明会。文科省初等中等教育局の金森越哉局長は繰り返し強調した。
今回の学力テストで文科省は、全体の結果や都道府県ごとの結果は公表するが、市町村別、学校別の平均点などは「序列化や過度の競争につながる」ため非公表としている。だが、結果を受けた各市町村や学校が内容を公表するかは個別の判断に委ねられるため、改めてクギを刺した。
これに対し、各教委の反応はさまざま。ある教委の担当者は「どうすべきか悩んでいたが、国が非公表の方針を明確に示してくれたので助かった」と安堵(あんど)。別の担当者は「議会で突っ込まれたとき対応に困る」とぼやいた。
各教委が特に懸念するのは、情報公開請求を受けた場合の対応だ。大阪府枚方市が平成15、16年度に実施した独自の学力テストで、学校別成績を不開示にしたことの是非が争われた裁判では、大阪地裁、高裁とも開示すべきだとの判断を示し、市教委は応じざるを得なくなった。
文科省は、「同様の事例で盛岡地裁は今年8月、開示請求を棄却する判決を下している。地方レベルと全国レベルのテストでは規模も異なり、不開示は当然だ」と強調する。
各教委からは「外に出て困るデータは受け取りたくないのが正直な気持ち」(大阪府内の市教委関係者)といった声も出始めている。
千葉県教委は「市町村別や学校別のデータは受け取らないことも検討している」という。同県は毎年、抽出方式で独自の学力調査を行い、市町村別の傾向などを把握しているため、「情報公開のリスクをおかしてまで入手すべきデータかどうか慎重に判断したい」という。
鳥取県教委も「学校別データなどは受け取らない方向で文科省と相談している」。同県は昨年、関係部局で情報公開への対応を検討したが、「開示せざるを得ないとの結論だった」という。
文科省はマスコミの動きも警戒する。市町村教委や学校から個別のデータを収集すれば、学力ランキングをつくることも可能になるからだ。
非公表の方針に、批判の声も出ている。
宮城、新潟など8都県は昨年度に実施した独自の学力テストで、市町村別のデータを公表しており、「なぜ今回は対応が違うのか」との不満が一部保護者らの間で高まっているという。
テストや受験の実情に詳しい森上教育研究所の森上展安社長は「情報はすべて公開すべきだ。何のために全国規模の調査にしたのか。学校や先生は競争を好まないが、競争意識を持ち、学力向上につなげることが大切だ」と話している。
(産経新聞)8月27日12時54分配信
●障害者の工賃アップへ 発注企業の税控除 厚労省検討
厚生労働省は08年度税制改正で、障害者が働く授産施設や障害者雇用のために設立した特例子会社向けに仕事の発注や業務委託を増やした企業に対し、増加額の25%程度を法人税などから控除するよう求める。企業からの発注を後押しすることで、障害者の工賃アップにつなげたい考えだ。
税額控除を認める発注先は、授産施設や作業所、特例子会社のほか、障害者自立支援法で一般企業での就労に困難が伴う障害者向けに設けられた就労継続支援事業所など全国計約3000カ所。これらの事業所への発注が、過去2年間の発注実績の平均額を上回った企業に対し、増加分の約25%を法人税や法人住民税などから控除することを想定している。上限は課税額全体の10%程度。実現すれば、1年間で約6億5200万円の減税効果が見込めるという。
現在、授産施設などで働く障害者の平均工賃は月約1万5000円で、政府は今後5年間で倍増させるとしている。工賃の原資を稼ぎ出せるよう、施設の売り上げアップにつながる支援策が必要だと判断した。
(asahi.com)2007年08月28日10時36分
●「人権侵害増えた」が4割超…内閣府世論調査
内閣府は25日、「人権擁護に関する世論調査」を発表した。
人権侵害が増えたと感じる人が4割を超えるとともに、「権利のみを主張して他人の迷惑を考えない人が増えた」と答えた人は85%を超え、ともに過去最高となった。
インターネットによる人権侵害を指摘する人が増加しており、内閣府では「他人への配慮がなくなってきている」として、対策のための啓発活動に力を入れたいとしている。
調査は、1958年からほぼ5年に1度の割合で行われており、今回で10回目。今年6月21日から7月1日まで全国の20歳以上の男女3000人を対象に面接聴取で実施し、回収率は58・9%。
人権侵害が「多くなってきた」と答えた人は、2003年の前回調査より5・8ポイント増えて42・0%、「あまり変わらない」は40・3%。調査開始以来初めて、人権侵害が増えたと感じる人が感じない人を上回った。
「権利のみを主張して他人の迷惑を考えない人が増えた」という質問について、「そう思う」と回答した人は前回より8・5ポイント増えて85・2%、「そうは思わない」と答えた人は3・6ポイント減の12・7%だった。
人権課題の中で関心のあるものについて、複数回答で尋ねたところ、「障害者」(44・1%)、「高齢者」(40・5%)、「子ども」(35・0%)、「インターネットによる人権侵害」(32・7%)、「北朝鮮当局によって拉致された被害者等」(31・5%)の順となった。
(2007年8月25日22時6分読売新聞)
●「障害理由の解雇は不当」地位保全申し立てへ 神戸の男性
勤務先が病気に伴う身体障害を理由に解雇したのは職権乱用に当たるとして、神戸市西区の男性(54)が、尼崎市の塗料メーカーを相手に、地位保全などを求める仮処分を今月中にも神戸地裁尼崎支部に申し立てる。
男性は三十九年間、同社に勤務。一九九六年、「HTLV-1関連脊髄(せきずい)症(HAM)」と診断された。徐々に歩行が困難になり、九七年一月、身体障害者二種四級に認定された。その後、つえを使うようになり二〇〇三年には身体障害者一種二級となった。〇五年、総務人事室に異動。業務中に転ぶこともあったが、仕事を続けていた。
ところが、今年二月ごろ、会社側から「従業員に迷惑がかかる」と、業務中の着席を指示され、七月には「けがをしたら会社の責任。仕事ができる状態ではない」などとして解雇された。
男性側は「職場環境を整備する努力を怠り、職場から障害者を排除しようとするもので、公序良俗に反する」と主張。塗料メーカーは「努力したが、処理可能な業務量が限られていた。通勤や職場での安全面からも勤務継続は困難と判断した」と反論している。
HAMは、白血球に感染したウイルス(HTLV-1)が歩行障害などを引き起こす。治療法がなく、国内に約千五百人とされる患者が国に難病指定を求めている。
(神戸新聞ニュース)2007/08/30
●発達障害相談116件/医師「乳幼期の発見を」
県発達障害者支援体制整備委員会が二十八日、県庁で開かれ、県発達障害者支援センター(うるま市)へ寄せられた相談件数が、今年二月の開所から六月までの五カ月間で、百十六件あったことなどが報告された。相談年齢が七歳以降の学童期に多いことから「乳幼児期での早期発見が重要」との指摘があったほか、県全体の支援体制について、地域や児童相談所、医療者らとの連携強化を求める声が上がった。
「相談支援」の内容で最も多かったのは「学校での不適応」など教育に関するもの三十八件。次に診断や施設紹介などに関する「情報提供」十七件、家庭での療育などに関する「家庭生活」十四件と続いた。
年齢層では「七歳―十二歳」の学童期が五十一件と約四割で最も多く、「十九歳以上」三十二件、「十三歳―十八歳以上」二十四件、「〇歳―六歳」の乳幼児は、九件と最も少なかった。
同センターが行っている「発達支援」も五十六件のうち四十八件が「七歳―十二歳」。障害種別では「知的障害を伴う自閉症」が四十七件と多くを占めた。「就労支援」は二十九件だった。
県南部医療センター・こども医療センターの土岐篤史医師は「学童期の相談が多いのが沖縄の特徴。年齢が高くなってから障害に気付き、ケースが複雑になることもある」と述べ、一歳半健診など乳幼児期での「気づき」が重要だと強調した。
那覇市学校教育部の佐久川博美主幹は「就学前と就学後で支援体制がスムーズに移行できるよう整備が重要。子どもを軸にした支援を考える必要がある」と指摘。また八重山や宮古地域の相談件数が少ないことから、センターの周知や児童相談所、地域などとの連携強化が挙げられた。
同センターの問い合わせは電話098(972)5630。
(沖縄タイムス)2007年8月29日(水)
●【教育最前線】芦屋大アスペルガー研究所 発達障害者への理解呼びかけ
■正しい支援啓発 人材育成も
コミュニケーションなど対人関係に問題を抱える発達障害の一種「アスペルガー症候群」。いじめや少年犯罪の背景要因の1つとしても近年注目されているが、知識や経験の不足から学校現場では対応に苦慮しているのが実情だ。教育系大学の芦屋大(兵庫県芦屋市)は昨年6月、同症候群の治療教育・研究を行う「アスペルガー研究所」を全国で初めて設置。臨床事例を蓄積し分析を進めているほか、市民講座などを通じて人材育成にも力を入れている。
「いわゆるアスペルガー系の人は、言葉は理解できるし、むしろ普通の人より高い知能を持っているケースも多い。ただ心の器が少し違う」
不登校のカウンセリングや刑事裁判での精神鑑定を多く手がけている、同研究所の井上敏明所長(72)は、そう分析する。
井上所長が指摘する「心の器の違い」とは、主に特定の物事に執着し、他人への配慮や場の空気を「読む」のが理解できない点。そのため周囲との摩擦を招きやすく、パニックや家庭内暴力、引きこもり、犯罪などの深刻なトラブルに発展するケースもある。
研究所は、臨床心理の専門家や精神科医など計9人で構成。月に1回、研究会を開催して情報交換を行っているほか、井上所長が主宰する六甲カウンセリング研究所(同県西宮市)に業務委託し、一般からの相談を受け付ける「人間関係相談センター」を開設した。
反響は大きく、人間関係相談センターには年間約300件の相談が寄せられた。子供を抱える保護者からの相談が主だったが、成人からも多く、中には70歳を超えた元エンジニアの男性の妻から「仕事を退職した夫の挙動がおかしい。アスペルガーではないか」という相談もあったという。
井上所長は「深刻なのは、家族や学校など周囲の人々に知識がないため適切な対応ができず、本人を支援するどころか、さらにストレスを抱えさせてしまうケース。2次被害的に鬱病(うつびょう)などを併発する場合もある」と指摘する。
無理に「アスペルガー系の人」を周囲に適応させるのではなく、周囲の人が彼らに対する正しい知識を持つことが大切で、そうした考えから同研究所では発足以来、保護者や一般市民向けのセミナー・公開講座も積極的に開催している。
8月20日からは、教員OBなどにアスペルガー症候群をはじめとした発達障害についての集中講座を受講してもらい、ボランティアとして現役教員のサポートに当たってもらう支援事業も開始した。
文部科学省がまとめた調査結果によると、現在、通常学級にアスペルガー症候群などの発達障害の可能性がある児童・生徒がいる割合は約6%。同研究所は今後、研究内容をまとめた教育支援マニュアルなどを制作するとともに、幼児段階で発達障害にどう対応するかを定めた指針づくりなどを進める。
倉光弘己・芦屋大学長(71)は「発達障害を持つ人々は、周囲がうまく受け入れられれば、1つのことに集中する能力が高いだけに社会に有益な財産にもなりうる。欠陥を補うのではなく、そうしたよい面を生かす方法を模索したい」と話している。
(産経新聞)8月31日17時12分配信
●医療、雇用など活発論議 宮崎市で「不登校問題全国のつどい」 850人が参加
不登校や引きこもりの子を持つ親や教員らを対象としたシンポジウム「登校拒否・不登校問題第12回全国のつどいin宮崎」(登校拒否・不登校問題全国連絡会などが主催)が25、26の両日、宮崎市塩路浜山のサンホテルフェニックスで開かれた。北海道など県内外から延べ約850人が駆け付け、不登校と医療との関係などが話し合われた。
つどいは1996年から始まり、毎年開催されているが、九州では初めて。初日の25日に横湯園子中央大教授(教育臨床心理学)が記念講演した後、2日間にわたって分科会が開かれた。
「医療福祉とのかかわり」をテーマにした分科会では、自閉症の1つ「アスペルガー症候群」や知的障害のある子どもがいる親、ソーシャルワーカー、大学教授らが参加。「アスペルガー症候群が原因だと決め付ける少年犯罪報道が多い。正しい知識と情報が社会に伝わっておらず、結果的に不登校に追いやられている」と訴える声が上がった。さらに「長引く不況や雇用主の理解不足から、知的障害者や自閉症がある人の雇用が減ってきており、引きこもりから脱する機会が奪われている」など現状を懸念する声も出た。
ほかの分科会では、参加した男性会社員から「『活動に参加するのは母親』と決め付けず、父親も参加してみてはどうか。活動を通じて交友関係も広がり、複眼的な視点も持てるようになる」という意見も出された。
来年は、8月9日と10日に京都市で開かれる予定。
(西日本新聞)8月27日10時8分配信
●親も子供も宿題丸投げ いま代行業者繁盛
■読書感想文2万円、工作5万円
「読書感想文」から「自由研究」まで、夏休みの宿題を片づける「宿題代行業者」が登場し、賛否を呼んでいる。メールなどで届いた依頼に、アルバイトの学生らが有料で応える。多くの小中学校で夏休み最後となる今週末は“駆け込み客”が殺到しているというが、「家庭学習の習慣を身につけるという本来の趣旨に反している」と、教育関係者は批判的だ。
インターネット上で宿題代行サイトを主宰するのは大阪市内の20代の男性。このサイトには東大や京大、阪大、関関同立など全国の有名大学生らが多数、登録している。
算数の文章問題は1問500円、読書感想文は2万円で引き受けるほか、大学生のリポート(2万円~)や卒業論文(30万円程度)まで幅広く手がけている。
そのほか、夏休みの宿題の定番である工作(5万円)や自由研究(2万円)なども請け負っており、これまで実際に「アリの研究」や「河川敷の水質調査」などを提供したという。
依頼は主に親からで、「子供の宿題が期限に間に合わないから」という理由がほとんど。中には小学生本人から注文が来たこともあるという。メールやFAXで受けた依頼を、業者を介して登録学生に発注。高額バイトとして一部の学生に人気があり、中には月20万円以上稼ぐ学生もいるという。
夏休みには問い合わせが通常の約3倍になるといい、今年はこれまでに、小学生の夏休みの宿題だけで約40件の注文があったという。代行業者は「夏休みが終わる今週末は全国からの駆け込み客が増えている」と話す。
こうした状況に文部科学省は「家庭学習の習慣を身につけるのが宿題の本来のねらい。その趣旨からも、宿題を丸投げするのはおかしい」。大阪府教育委員会も「宿題をお金で解決するという保護者の考えが気になる。それをビジネスにしてしまう業者もどうか。子供の成長を一番に考えればゆゆしき事態だ」と異議を唱える。
一方、代行業者は「読書感想文などは、あくまで参考用に渡しており、そのまま提出することは禁止している」というが、実際は目が届かないのが現状だ。
インターネット上では、ほかにも大学生の卒業論文を代行する業者が増えており、韓国では500サイト以上が乱立。すでに出来上がっている論文などを提供するサイトもあり、日本よりも一足早く問題になっているという。
三重大学の奥村晴彦教授(情報教育)は「宿題や課題は結果より努力した跡が大切。お金で買ったものでは意味がない。保護者や業者も『何でも金で解決できる』という考え方を子供の心に植え付けるのは良くない」と話している。
(産経新聞)9月1日18時36分配信周