アスペルガー障がいの疑いのある人を医療に紹介するとき
2008/04/27
私が現在、アスペルガー障がいやその疑い、傾向のある方とどう関わっているか、特に医療との関わりについて少し紹介したいと思います。
1つは、NPO法人ノンラベルの副理事長として、アスペルガー障がい及びその疑いのある青年・成人の方のカウンセリングをお受けしつつ、居場所「ぽけっと」において月曜日~金曜日の午後の時間をアスペルガー障がい及びその疑いのある青年・成人のみなさんと関わっています。
2つは、個人事業として営業している相談室カンナにおいて、アスペルガー障がい及びその疑いのある青年・成人の方(もちろんそれ以外の方も…)のカウンセリングをお受けしています。
そして、未診断で、「発達」の偏りが見受けられる方で、障がいの診断や服薬治療が必要と判断された方には、医療受診をおすすめし、了解された方には医療機関(現在のところ京都、大阪に限定されますが)を紹介させてもらっています。
さて、この「判断」が極めて重要となるわけですが、ノンラベルの個別面談も、カンナでの面談も、基本的には同じスタンスと構造で、この「判断」のためのインテーク面接を行っています。
これは、ご本人さんの親御さん(ほとんどがお母さん)から2時間程の聞き取り、という形をとります。まず、事前に妊娠・出産から今日に至るまでの本人さんの生育歴(エピソードなど)を書いてきてもらい、独自のインテーク用紙に沿って生育歴を聞き取らせてもらいます。その段階で「発達」に障がいや偏りの疑いや傾向があると思われると、オリジナルのチェックシート(DSM-?-TRやICD-10の操作的診断基準に基づくものではなく、さまざまな特性の有無を確認しつつ、特性や個性を深く聞き取ることを目的に作ってあります)を使っての聞き取りを行い、特性の状況によって「判断」をさせてもらいます。
この「判断」によって、医療受診が必用と思われれば、その旨をお伝えし、医療機関を紹介し、受診予約を取っていただき、受診日やインテークの日が決まれば、その医療機関に「受診依頼書」とこちらでのインテーク資料を事前送付して、受診をスムーズにしていただけるようにしています。
受診につながり、検査、診察、診断が行われると、検査結果のコピーをもらってきていただき、医療機関からは診察・診断の所見などを書かれた報告書をいただき、次回の面談の際に診断結果についてわかりやすく、そして詳しくご説明し、その後のケア計画を相談していきます。
「広汎性発達障がい」や「アスペルガー障がい」、「特定不能の広汎性発達障がい」などの診断が下りた場合、多くのご本人さんにサポートが必用となります。それは、生きづらさや生活や仕事の場面での対人関係トラブル、不得手なことでのミスの連発などから、自尊感情を低くされたり、周囲の方が、その関わり方に困るケースが極めて多いからです。ご本人さんに対しての支持的なカウンセリング、困難なことについてやり方や考え方を替えてみようというアドバイス、ご本人さんに関わる周囲の方(ご家族や職場の方など)に対しての心理教育やケース相談(主に障がい特性、本人さんの特性や個性、考え方などの理解と、関わり方の工夫や環境をご本人がやりやすく、ミスを少なくできるように工夫し整えていくことを目的としたもの)を継続して行っていきます。
ご本人さんとのカウンセリング、周囲の方とのケース相談、医療機関での服薬治療、さらに今後は行政との関わり(自立支援サービスなどの利用…)などを重層的に取り組むことで、ご本人さんの特性(得意・不得意なことや考え方のパターンなど)が段々と鮮明になり、生活改善に向けてのより具体的なアドバイス、サポートが行っていける、というのが、現状での私の到達した考え方です。「診断」は、サポートへのきっかけであり、指針となるもの。その後のケア、サポートの内容が問われています。
次回は「発達障がいへの社会保障に望むこと」です。
では、この1週間の気になる記事です。
<ジェネリック医薬品>生活保護受給者は使用を…厚労省通知
全額公費負担で医療を受けている生活保護受給者への投薬には、価格の安いジェネリック(後発)医薬品を使うよう本人に指導することを厚生労働省が都道府県や政令市などに通知していることが分かった。指導に従わなかった場合、生活保護手当などの一時停止や打ち切りを検討すべきだとしている。後発薬は価格が安い半面、有効性などについての情報不足から使用に抵抗感を持つ医師や患者もおり、専門家から「患者が選択できないのは問題だ」と批判が上がっている。
◇専門家「患者の選択権奪う」
後発薬は、研究や臨床試験を経て認可された先発医薬品の特許が切れた後に同じ主成分を使って製造されるため、多額の研究開発費がかからず安い。認可時には、血液中に成分が浸透する速さや濃度が先発薬と同じかどうかを確認する試験などがあり、国は「有効性や安全性は先発薬と同等」と判断。年々増大する医療費の削減に有効として使用を促進しており、08年度は後発薬の使用により220億円の医療費削減を掲げている。
一方、主成分以外の溶剤やコーティング剤などが先発薬と違うことなどから、「先発薬と(効能が)まったく同じではない」として、後発薬の使用に抵抗や不安を感じる医師や患者もいる。
通知は4月1日付。医学的理由で医師から指示され先発薬を使う場合を除き、生活保護者が医療機関で薬を処方される際、都道府県や政令市などの所管する福祉事務所が後発薬を使うよう本人に周知徹底する、としている。これを受け生活保護者は、医療機関で受診する際、後発薬を処方するよう医師に求めることになる。先発薬を使い続けている生活保護者については福祉事務所が診療報酬明細書をチェックし、正当な理由がない場合は口頭や文書で指導する。それでも従わない場合は保護の一時停止や打ち切りを検討するとしている。
厚労省保護課は「生活保護の医療扶助は最低限の医療を受けてもらうのが目的。安全性や効用が同じなので安い後発薬の使用に問題はない。窓口で3割負担する人と比べ、負担のない受給者は(自ら)後発薬を選ぶ動機が働きにくく、制度に強制力を持たせないといけない」と説明している。
(毎日新聞)4月27日2時31分配信
●<障害児>施設利用料が自治体の対応で差
千葉県内の知的障害児施設に入所する男児(10)の処遇について、東京都が施設利用料の1割を保護者が負担する「契約制度」を適用したのに、事務を引き継いだ千葉県が一転、公的負担による「措置制度」に変更していたことが分かった。県が改めて男児の家庭環境を調査し、父親の養育能力に問題があると判断した。自治体の対応の違いで処遇が左右される現行制度の問題が浮き彫りになった。
施設側の説明によると男児は05年1月、公的負担による措置制度で千葉の施設に入所した。一家の居住地が都内だったため都の児童相談センターが処遇に関する事務を担当。障害者自立支援法の本格施行(06年10月)を機に「措置」を「契約」に切り替えた。
入所前に両親は離婚し、その後、父親が千葉県に転居したため、今年3月1日付で千葉県の児童相談所が事務を引き継いだ。改めて男児の家庭環境を調査したところ、父親の養育能力に問題があり、「契約は不適切」と判断、措置制度に戻した。
男児が入所する施設によると、契約制度を適用した都は、児相センターの窓口に来た母親の所得を基準に施設利用料の算定根拠となる「受給者証」を発行していた。本来なら受給者証の名義人の母親が施設と契約しなければならないのに、実際に契約したのは親権を持つ父親だった。
両親とも是正手続きをせず、所得証明書も出さなかったため負担軽減の対象外となり、父親への請求額は昨年10月、月2万~3万円から約5万円に増えた。施設が都の児相に問い合わせ、手続きの不備が判明した。
都側は「手続きにミスはない」と説明。しかし、施設側は「都は家庭環境もまともに把握せず、『契約ありき』で判断している」と批判している。厚生労働省障害福祉課も「不適切な契約を長期間放置した都の対応は問題」と指摘している。
◇ことば 「措置」と「契約」
児童福祉法に基づく措置制度は、児童の入所に要する費用(措置費)を国と都道府県が2分の1ずつ負担する。保護者は収入に応じて「徴収金」を自治体に支払う。一方、障害者自立支援法に伴う契約制度では、低所得の保護者も原則1割の施設利用料や医療費、食費を支払う必要がある。児童施設はすべてが措置制度だったが、06年の同法本格施行により、障害児施設に限って都道府県が「措置」か「契約」かを決めることになった。
(毎日新聞)4月21日2時31分配信
●「雇用型」への移行難航 京の障害者施設再編
授産施設や共同作業所が、障害者の自立支援を促す目的で3つの支援事業所に再編される中、京都市は今夏から再編を効果的に進めるため本格的な検討に入る。特に、入所者に最低賃金を保障しなければならない雇用型と呼ばれる就労継続支援事業所への移行は難しいといわれ、収益を確保しながら事業運営をどう誘導していくかが課題となる。市は、4月末から雇用型として中京区に開設する喫茶店を一つのモデルケースに支援の在り方を探る。
■最低賃金の確保課題
2006年の障害者雇用促進法改正と障害者自立支援法施行で、福祉的な就労の場だった授産施設と共同作業所が、「就労移行」「就労継続・雇用型」「同・非雇用型」の3つの支援事業所に再編されることが決まった。また、就労移行、雇用型の両支援事業所は最低賃金を保障するよう義務づけられた。
国は10年度までの再編を求めているが、市では授産・共同137施設のうち、就労移行が10、雇用型4、非雇用型23の37施設の再編にとどまっている。
特に、雇用型が少ない。今後、3年間で100施設の再編を進めるが、自立できる可能性の高い障害者が入所する就労移行に比べ、より細かなケアが必要な人の雇用型は、最低賃金を確保するため収益を上げる事業展開が問われる。
NPO法人の京都ほっとはあとセンターが雇用型として、29日から西京区西ノ京東中合町の京一商西京同窓会館に喫茶「ほっとはあと」を開設する。これに対して市は場所を無償提供、店舗設備費を助成し、授産・共同施設の状況に応じた今後の事業誘導について探る。
市障害保健福祉課では「企業やNPO、各施設などと協議しながら、賃金保障できるシステムを考えていきたい」として、専門委員会の設置を含め具体策の検討を急ぐ。
(京都新聞)4月22日22時39分配信
●ひきこもり:若者半数以上、不登校の経験あり 県の対策会議がアンケート/愛知
就労・就学など自宅以外の生活の場がない「ひきこもり」状態の若者の半数以上に不登校の経験があることが、県のアンケートで分かった。県の対策検討会議は「不登校の子は卒業すると学校のケアが届かなくなるので(ひきこもり防止のため)卒業前から保護者に相談場所を知らせる必要がある」と提言している。
県によると、ひきこもり問題を抱える家庭は全国で26万世帯、県内では1万5500世帯に達すると推計されている。問題解決に向けて県は昨年、有識者の対策検討会議を設け、初めてのアンケートを実施した。ひきこもりに悩む県内の681世帯に支援団体などを通じて協力を呼びかけ、約3割にあたる233世帯の本人や家族から回答を得た。
ひきこもり状態の人の主な年齢層は20~30代。中学や高校などでの不登校経験者が122人にのぼり、不登校・ひきこもり期間は「6カ月~1年」22人、「1年~1年半」17人などで「3年以上」も15人いた。約7割の161人に就労経験があり、うち44人が3カ月未満で辞めていた。145人に医療機関への通院経験があるが、保健所などの公的な相談サービスを利用したのは82人にとどまった。
約9割の208人が家族と同居しており、親から毎月「1万円以下」もしくは「1万~3万円」の小遣いをもらう人が多い。主にテレビやインターネットで一日を過ごすが、201人が書店やコンビニなど「外に出かけることがある」と答えた。
親の年代は50~60代が152人と多く、70代以上も20人いた。親の年収は「300万円以下」が59人で最も多く「300~500万円」が56人だった。
現在困っていること(複数回答)としては「就職や仕事」128人、「人付き合いや友人関係」110人、「経済的なこと」105人など。今後希望する支援策は「働く場所」98人、「就労訓練サービス」73人、「居場所作り」52人などだった。
検討会議は調査結果を受け、就労に向けた社会適応訓練事業や、家族や本人を支える相談事業の拡充などを県に提言した。県は家族の会や民間の支援団体と協力しながら相談体制の充実に取り組む。
(毎日新聞)4月25日11時1分配信
●<新学習指導要領>前倒し実施、現場はやりくりに四苦八苦
「ゆとり教育」から脱皮した学力重視の新学習指導要領の一部が来年度から、小中学校で先行実施される。文部科学省が24日公表した移行措置案。特に授業の総時間数が増える小学校では、授業時間や指導体制の確保が急務となるが、「やる事が増えるのに人もお金もない」と不満の声も漏れる。
■授業時間増
小学校の授業時間は来年度から週1時間増える。山形県最上町立富沢小は、読み書きの力や計算力を上げるために全学年で週1回程度設けていた「ドリル学習」の時間を、増加分に充てる予定だ。笹原啓一校長は「ドリル学習は続けたかったが……」と漏らす。
小中学校は現状でも授業時間が不足気味で、時間確保のため2学期制を導入する自治体も増えている。小学校全12校中5校で実施している埼玉県戸田市教委によると、始業式などの時間を削れるため、3学期制に比べて年15時間程度多く授業時間を確保できる。戸田市教委は「2学期制導入が広がる可能性がある」と話す。
一方、3学期制の東京都文京区立窪町小の松野薫子教務主任は「新たに週1時間を確保するのは大変。インフルエンザで2日間学級閉鎖すれば、すぐ飛んでしまう」と気をもむ。
■どうする指導体制
「定数増に努めてほしい」。移行措置案説明のため24日、各都道府県や政令市の教育長を集め、文科省で開かれた会議で、ある政令市の教育長は訴えた。今年度予算による人員増(教員定数1000人と非常勤講師7000人)に対し、「小中学校3校に1人しか増えない計算だ」と不満を突きつけた。
授業時間が大幅に増える理科の担当教員。大阪府の公立小の男性教諭は「実験には多くの準備が必要。器具も少なく古い備品でやりくりする学校もある。人的、財政的な裏づけもすべきだ」と厳しい。埼玉県の公立小の理科主任の教員も「実験を理科が専門ではない教員が行うのは大変」と話す。
小学5、6年の英語を先行実施するかは、各学校の裁量に任されている。だが、大阪府の公立小の教員は「保護者からは必ず『隣の小学校はやっているのに、うちの子が通う学校ではなぜやらないんだ』という声が上がる」と懸念する。
(毎日新聞)4月24日23時57分配信
●少年は「広汎性発達障害」 岡山駅の突き落とし事件
JR岡山駅のホームで岡山県職員仮谷国明さん=当時(38)=が突き落とされ死亡した事件で、殺人などの非行事実で家裁送致された大阪府大東市の少年(18)が、岡山地検の簡易精神鑑定で、広汎性発達障害の一種「アスペルガー症候群」と診断されていたことが23日、少年の付添人弁護士の話で分かった。
付添人の木村雅史弁護士は「簡易鑑定で判断できるものではないが、接見で発達障害の傾向があることは間違いないと感じた」としている。家裁に本格的な精神鑑定を実施するよう申し入れを検討しているという。
少年は岡山県警の調べに「家を離れたかった」「人を殺せば刑務所に行ける」などと説明。岡山地検は無差別的な犯行に至った心理状態を調べるため、鑑定を実施したとみられる。
岡山家裁は15日、「少年の成育歴や生活環境を調査する必要性などを考慮した」として、少年の住所地を管轄する大阪家裁への事件移送を決定。少年も既に大阪少年鑑別所(堺市)に移された。
(中日新聞)2008年4月24日02時02分