理解のない“支援”はいらない
2008/05/24
障がいや病理などで、沢山の人が「支援」を必用としていて、それぞれに対応した支援の体制が作られて来ています(十分・不十分、程度の差こそあれ)。発達障がいへの支援は始まったばかりと言えますが…。
しかし、支援する側の人が、「良かれ」と思って行う「支援」が、当事者にとって新たな負担や嫌な体験となることがあることを忘れてはなりません。
特に、目に見えない障がいや病理のある人に対しての支援においては、当事者が言葉でニーズを伝える場合はともかくとして、多くの場合、支援する側が「○○が必用だろう」「○○であるべきだろう」と推測して行う支援となりますから、当事者のニーズとのズレが生じるのは必然とも言えます。
ただ、支援にあたる人の推測が、障がいや病理の特性理解をベースとするものでなく、世間一般的な通念による発想でしかない場合は要注意です。当事者個々人の認知や行動のパターンを知ることなく、「一般的に○○であるべきだ」「そうすれば快適になるはず…」という思いこみは、当事者にとっては要らぬおせっかい、余計なお世話を越えて、迷惑千万、時には深く傷ついてしまう体験となってしまいます。
まず、支援を必要とするその人を理解すること、理解しようとする姿勢が大前提だと思います。
NPO法人ノンラベル主催の「アスペルガー障がいを学ぶ春の講座」は、お陰様で200名を超える参加で盛会の内に終了しました。毎日新聞が取材記事にしてくれましたので、紹介させていただきます。
次回は「自閉症スペクトラムの人はひとりが好き?」についてです。
では、この1週間の気になる記事です。
アスペルガー障害:学ぶ講座に200人 当事者ら体験語る/京都
◇「アスペルガーは才能」
アスペルガー障害の特性と当事者とのかかわり方を学ぶ「アスペルガー障がいを学ぶ春の講座」が18日、左京区の京都会館であった。当事者が「何かやれば成功する素質があるというプラス思考が大事」と強調し、集まった支援者ら約200人が耳を傾けた。
アスペルガー障害に悩む人々を支援するNPO法人ノンラベル(南区)が主催。毎年春と秋に開いており、今回は17日から2日間、田井みゆき理事長や専門家らが講演した。
アスペルガー障害は広汎性発達障害の一つ。他人の意図や感情を読めず、うまく意思疎通ができない▽特定の興味や関心の対象に執着する――などの特徴がある。
この日は20歳代の当事者の男性が「私が今、伝えたいこと」と題して田井理事長と対談した。大学時代に漢字や英語検定に夢中になり、構内で歩きながら参考書を読んだ話や、アルバイト先で熱心に店のノウハウを学んで評価された話などを披露。「アスペルガー=才能と思って、生活、人生設計に生かせたら」と力を込めた。
当事者の母親2人も登壇し「私たちが子供のころは、変わった子が多かったが、個性として受け入れられていた。今は画一的で『これができなかったらだめ』と言われる。そういう社会が少しずつ変わってくれれば」などと訴えた。
(毎日新聞)5月19日17時2分配信
●過労自殺は最多81人=「労働時間短くても危険」-脳・心臓病死も高水準・厚労省
仕事上のストレスが原因の過労による自殺で2007年度に労災認定された人は、前年度比22.7%増で過去最多の81人だったことが23日、厚生労働省のまとめで分かった。長時間労働で発症する脳や心臓の病気による過労死の労災認定も依然高い水準。労働環境が改善せず、心身ともに疲弊している実態が浮き彫りになった。
同省によると、07年度にうつ病などの精神疾患で労災請求した人は前年度比16.2%増の952人、認定は同30.7%増の268人で、ともに4年前の2倍以上となり、過去最多だった。業種別では製造業(59人)がトップで、卸売・小売業(41人)や建設業(33人)、医療福祉業(26人)などが目立った。
268人のうち自殺(未遂含む)で労災認定を受けた人は81人(未遂3人)。40代22人、30代21人で、働き盛りの年代が過半数を占めた。
同省は今回、精神疾患で労災認定された人の時間外労働時間を初めて調査。81人のうち、1カ月の平均は100時間以上120時間未満が20人、80~100時間が11人などだったが、40時間未満も12人おり、労働時間が比較的短くても過労自殺の危険があることが裏付けられた。
(時事通信)5月23日17時3分配信
<職場いじめ>昨年度27%増…相談6千件 厚労省まとめ
厚生労働省は、07年度の総合労働相談の結果を公表した。職場でのいじめに関する相談が前年度に比べて約6000件(27%)も増えたのが特徴だ。労組や弁護士グループの労働相談でもいじめ相談はここ数年増加しており、職場でのいじめが深く広がっていることをうかがわせた。
総合労働相談は全国の労働局が約300カ所で実施。相談件数99万5061件(前年度比5.2%増)のうち、労働条件の引き下げなど個別の労働紛争に関する相談は約20万件(同5.5%増)に上った。
労働紛争に関する相談内容の構成比では解雇が22.8%、いじめ12.5%、労働条件の引き下げ12.5%など。この中で、いじめは前年度比27.6%増の2万8278件と大幅増になった。労働形態別では、派遣、契約社員からの相談が2万7281件と16.1%増えたのが目立った。
厚労省によると、いじめの相談は正社員よりも、非正規労働者からが多く、非正規同士のいじめもあり複雑だという。同省の担当者は「雇用形態の違う人が入り乱れて働く中、会社内での人間関係が希薄になっているのではないか」と分析している。
(毎日新聞)5月24日11時35分配信
●学校裏サイト管理人に賠償命令=「書き込み放置は違法」-大阪地裁
インターネット上の「学校裏サイト」の掲示板に実名で誹謗(ひぼう)中傷を書き込まれ精神的苦痛を受けたとして、大阪市内の少女がサイト管理人の男性に220万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、大阪地裁は23日、「書き込みを放置したのは違法」として、55万円の支払いを命じた。
山下郁夫裁判長は「実名を公表された場合、現実の学校生活にも被害が及ぶことは容易に予想できた」と指摘。男性は書き込みを放置し、掲示板の管理義務に違反したと判断した。
判決によると、少女が通っていた私立中学の裏サイト掲示板に2006年8月、少女の実名を挙げ「死ぬほどうざい」「ブス」などの悪口が書き込まれた。発見した学校側が9月に削除を要請したが、男性は応じなかった。
(時事通信)5月23日21時1分配信
●障害者就労支援、知事に求める
橋下徹知事は20日、障害者の就労を目的にパソコン技術の訓練を行う「府ITステーション」(大阪市天王寺区)を視察した。
同ステーションは2004年9月開館で、府が大阪障害者団体連合会に年約2億円で運営を委託。知事直轄の改革プロジェクトチーム(PT)の財政再建プログラム試案では、8月以降の運営の全面見直しを求めている。
橋下知事は、音声で操作内容を知らせる視覚障害者用のパソコンソフトを体験し、講習会や訓練の様子などを視察。同連合会の樋口四郎・理事長に「障害者の就労支援をお願いします」と求められ、「行政が取り組むべき課題と思っている。いろいろご意見いただきたい」と話した。
(読売新聞)2008年5月21日
●障害児施設契約制度:「利用料滞納で退所可」 家計事情を排除-厚労省通知
障害児施設に入所した子供の保護者に施設利用料などを課す「契約制度」を巡り、厚生労働省が家族の経済的事情を考慮する必要性を否定し「保護者が支払いを滞納した場合は、子供を退所させることも可能」とする通知を出していたことが分かった。通知は公費負担で養う「措置制度」の対象児童を限定する見解も示しており、障害児への公的責任を著しく狭める国の姿勢が浮き彫りになった。
厚労省は障害者自立支援法の本格施行を控えた06年6月、障害児に措置制度を適用する要件として、保護者が(1)不在(2)精神疾患(3)虐待――のいずれかに該当することを定めた。さらに7月、全国児童相談所長会に措置を適用する場合の具体例を通知した。
通知は「不在」の判断について、保護者が入院中や施設入所中でも病院・施設名が分かれば対象にならないことを明示。「精神疾患」に該当するのは「家裁に成年後見人の利用申請中」の保護者に限った。
虐待に走る恐れがある故意に支払わない保護者についても「(虐待に当たる)養育拒否とは認められない」と定義。滞納世帯の児童は「(施設が)契約を解除することも可能」との見解を示した。
日本知的障害者福祉協会の調査では、24都道県で契約と判定された児童の割合が7割を超えた。厚労省の通知を厳格に運用しているとみられる。
厚生労働省障害福祉課は「一つの指標で『文言通りに従え』という意味ではない。子供の状況を勘案し、総合的な判断をするのは児童相談所の役割」と話している。
◇国の責任逃れだ--岡田喜篤・川崎医療福祉大学長の話
児童は自己選択権も、不適切な境遇から自力で逃れる手だてもない存在で、公的責任の措置制度が重要だ。「公権力に基づく措置は自由がない」との指摘があるが、措置でも保護者の意向を尊重する手続きがある。措置に問題があるなら改善を検討すべきで、契約の導入が解決策にはならない。障害児だけ措置を制限するのは児童間の不公平で、国の責任逃れだ。
(毎日新聞)2008年5月20日
●生活保護費から賠償金差し引く セクハラ敗訴の羽曳野市
生活保護の申請をした女性(44)への職員のセクハラ行為をめぐる訴訟で敗訴し、110万円の損害賠償を支払った大阪府羽曳野市が、訴訟費用を除いて女性の手元に残った約24万円を「収入」とみなして生活保護費から差し引いていたことがわかった。専門家は「嫌がらせとしか思えない」と指摘している。
昨年10月の大阪地裁堺支部判決によると、女性は生活保護受給を申請した05年5月から同12月、羽曳野市の担当の男性職員(30)=懲戒免職=から「夜に自宅に行く」といった内容の電話を4回受けた。元職員は訴訟で否認したが、判決は「立場を利用したもので悪質」と指摘し、セクハラ行為と認定。市に慰謝料など計110万円の支払いを命じた。
女性の代理人弁護士らによると、市は判決に従って賠償金を支払い、女性の手元には訴訟で証拠採用された電話の録音テープの声紋鑑定費や弁護費用などを引いた24万2千円が残った。市はこれを女性の「収入」とみなし、昨年11月~今年4月、女性の生活保護費(月約6万6千円)から月1万~5万円を分割して差し引いた。
一方で、市は国家賠償法に基づき、元職員に女性への賠償金と同じ額を市に支払うよう請求。元職員が応じたため、市は生活保護の減額に加えて賠償金も結果的に取り戻した形になった。
自治体は生活保護法に基づき、受給者が交通事故や離婚などで保険金や慰謝料を受け取った場合、それを「収入」とみなして保護費を減額することができる。一方で旧厚生省は61年、受給者の自立や更生のために使われる分については収入とみなさない、とする通知を出している。
女性の代理人は羽曳野市に「24万円は女性の自立や更生に必要な費用とみなすべきだ」と抗議。「そもそも、訴訟で負けた市が勝訴した側から賠償金を事実上取り戻すのは信義則に反する」と主張している。
女性は朝日新聞の取材に「裁判で市が悪いと判断されたのに、お金を返す必要があるのか」と話した。
これに対し、羽曳野市の麻野博一・福祉総務課長は「生活保護受給者が得た保険金などについては、ふだんから必要経費を除いたすべてを収入と認定している。今回も同様の措置をとった」と説明する。
厚生労働省によると、行政の不法行為や災害被害などで賠償金を得た受給者については、自治体から問い合わせがあった場合、「個別の事情」を最大限考慮して生活保護の減額を判断するよう求めているという。過去には、95年の地下鉄サリン事件の被害に遭った生活保護受給者にオウム真理教(現アレフ)が支払った賠償金約300万円が、収入として認定されなかったケースがある。
今回の羽曳野市の対応について、同省保護課の担当者は「訴訟に敗訴して賠償金を支払った経緯を踏まえれば、もう少し配慮の余地があったのではないか」と話している。
(asahi.com)2008年05月24日03時00分
●子どもサミット:不登校を考える 佐世保のフリースペース-来月1日/長崎
◇設立20周年記念事業
佐世保市京坪町の「フリースペースふきのとう」(山北真由美代表)は6月1日、同市三浦町のアルカスSASEBOで、不登校経験者が思いを語る「子どもサミット」を開く。ふきのとう設立20周年記念事業で、初めてメンバーの子どもたちが実行委員会をつくり運営する。
子どもサミットは今年で4回目。1日は午後0時半開会、不登校問題などに詳しい高垣忠一郎・立命館大教授の基調講演「競争社会と自己肯定感」がある。その後、ふきのとうのメンバーら4人が体験などを語る。コーディネーターは高垣教授が務める。
実行委員はふきのとうに通う8人。同市社会福祉協議会などを回ってサミットをPRしたり、当日の司会や受け付けも担当する。また、過去3回は1日だけの開催だったが、今回はサミット後も9、11月と来年2月に計3日間、「いじめ・不登校子どもの心に寄り添う」をテーマに講演会や劇団の公演などを催す。
実行委員の一人は「『甘えている』と言われるのがつらかった。逃げているわけじゃなく、悩んでいて動けないということがある」と訴える。実行委員長の吉田祐太さん(19)は「多くの人に不登校について理解してほしい」と話している。
山北代表は「子どもたちの生の声を聞いて、何に苦しんでいるのかを理解してほしい」と話している。サミット参加費は、中学生以上500円▽小学生以下無料。問い合わせは山北代表(0956・22・5462)。
(毎日新聞)5月22日15時1分配信
●<小中教員増>文科省、授業増対応で1万3300人と試算
文部科学省が「教育振興基本計画」の原案に掲げた小中学校の教員定数増の数値目標の内訳について、同省の試算が明らかになった。新学習指導要領(完全実施は小学校11年度、中学校12年度)で学ぶ内容が増え、(1)授業増への対応で1万3300人(2)小学校の外国語活動の専科教員約2400人(3)少人数教育実施で8800人--が必要と試算。文科省は23日、計約2万5000人の目標を同計画の原案に盛り込んだ。
原案では、教員が子どもと向き合う時間の確保や特別支援教育の充実などのため、さらに定数増や非常勤職員配置を求めていく方針も示し、数値は記載しなかったが約1万人を見込んでいる。
文科省は、原案を元に23日から各省との本格的な協議に入った。
(毎日新聞)5月23日22時30分配信