高機能の広汎性発達障害とカウンセリング(6)
2010/12/12
6.家族、関わる人に「理解者」となってもらうための支援
高機能の自閉症スペクトラムの特性のある青年・成人の方で、言葉によるコミュニケーションができ、それを求めている方を対象とした「相談面接」「カウンセリング」等の支援的関わりの有効性や特殊性等について不十分ながら言及してつもりですが、忘れてならないのが、家族機能の改善・再構築や集団的な学習機会等の提供・参加です。
特性をお持ちの本人さんは、得てしてご自身の「問題」とされる言動に気づけないものですから、「相談」や福祉サービス等の利用に向けてまず動かれるのはご両親というケースが多いことは事実です。もちろん、中にはご自身が、ネットや文献などで、「自分に発達の障害があるのでは…?」と自ら相談機関等に連絡をとられるケースも最近は増えてきています。この場合には、対本人さん向けにはすぐに必要なサポートにつながることが可能ですが、ご両親や職場の同僚の方等が「困っている」「もしかしたら…」等と気づかれて、サポートを求められたるケースでは、様々な段階を踏んで頂かなくてはなりません。
まず、対象となる本人さんに、自閉症スペクトラムの特性があるかないか、ある場合にはどんな特性か、得意・不得意は何か、今何に困っているか、これまで何に困ってきたかなど、生育過程をふり返ってもらいながらの様々なエピソードの聞き取りから、「特性」の判断が必要となります。次に、状態に応じて、医療受診や診断(状態によって服薬治療等)が必要かどうかの判断と紹介、部分的サポートが必要である場合に状態に応じて福祉サービスや「相談」支援の利用などの必要性の有無の判断。そして、何よりも、ご家族や本人さんに関わる人に、本人さんの「特性」を理解してもらうための「学び」の提供、「障害」を「受容」し「支援者」として関わってもらうための「寄り添いながらの支援」、それらを提供する場としての「家族会」等の提供・組織化が必要となります。こうした総合的な支援をしているところは、公的には「発達障害者支援法」にもとづきて設置されている「発達障害者支援センター」を中心に行われるべきところですが、予算の関係で、特に人的資源の不足からまだ部分的に行われているところがある、と言える状況です(2010年末現在)。民間でも、NPO法人などで取り組んでいるところが1カ所のみです(2010年末現在、NPO法人ノンラベル:手前味噌ですみません)。
「親の会」「家族会」等の名称で学びと交流の場は、全国各地で作られていってますし、本人さんたちの「当事者の会」等も(多くが非公開的に)各地で開催されているようです。
自閉症スペクトラムの基本「特性」を理解する、個別の本人さんの「特性・個性・希望」を理解する、本人さんが生きやすい環境(家庭や学校、職場、地域等)にするための個別の部分的なサポートや整備・調整を随時取り組んでみる、ということが必要となりますが、これらをご家族や学校・職場等で関わる人に求めるのは無理があります。発達障害を理解するソーシャルワーカー等の第三者の関わりと支援がどうしても不可欠です。
翻せば、発達障害に限らず、「相談」支援や学校や施設での支援に従事する人には、「特性」を理解した上でのソーシャルワークが求められる、ということになります。ぜひ、ご一緒に学んで行きましょう。
この小連載は、今回で一応終わらせていただきます。
それでは、今週の気になる記事です。
暴言、汚い教室…小6自殺で学級崩壊明らかに
群馬県桐生市の市立新里東小6年生、上村明子さん(12)が自殺した問題で、自殺といじめの因果関係を調べる第三者調査委員会が来週にも発足する。
担任への暴言、汚れた教室……。学級崩壊がひどくなり、明子さんが「ひとりぼっちの給食」で孤立を深める状況が、学校の調査報告で明らかになった。
情報公開請求で県教委が開示した学校の報告によると、明子さんの6年1組で4月、落ち着きなく、姿勢の悪い児童が目立ち始める。7月、担任の席決めに逆らう児童が増え、一部児童が暴言を吐くようになる。
8月下旬、女子児童に反抗的な態度や担任の揚げ足取りがみられ、クラスのまとまりがなくなる。9月、教室が汚く、乱れる。児童数人が5年の時の担任教諭に「授業にならない」と相談していた。
明子さんが給食で孤立するのは9月下旬。私語をなくすため座席の配置を替えたが、給食時の指示がなかったため、児童は何となく机を寄せて食べるようになり、明子さんが一人で食べるようになった。
給食時の乱れが続いたため、10月14日に席替えをするが、改善されなかった。明子さんは10月23日に自殺する2日前、一人での給食を担任以外の教諭に泣きながら訴えている。
給食時についての児童への聞き取りで、明子さんに児童2人が「かわいそうだな」「明日は一緒に食べようと思っていた」と答えた。「あまり気にしなかった」と答えた児童もいた。
また、保護者の一人は、「数人の児童が担任の注意を聞かず、収めるのに授業時間すべてを費やすこともあった。明子さんが給食でひとりぼっちになった頃、児童の悪態はピークだった。学校は包み隠さず話し、自殺の原因を明らかにしてほしい」と話した。
学校では1日、授業参観と保護者懇談会が開かれた。保護者から「学校がどんな状況になっているか知りたい」「頻繁に連絡を」という声が出ていたという。
「読売新聞」2010年12月4日12時01分
●「失業や倒産」でホームレスに 約7割、聞き取り調査
ホームレス支援団体などでつくる「若者ホームレス支援方策検討委員会」(委員長・宮本みち子放送大教授)が40歳未満のホームレス50人から聞き取り調査した結果、7割以上が失業や倒産など仕事に関することを理由に、ホームレスになったと答えていたことが3日、分かった。
調査は2008年秋から今年春まで東京と大阪で実施。平均年齢は32・3歳で全員男性。出身別では北海道2人、東北11人、関東17人、中部5人、近畿8人、四国1人、九州6人。公園や駅などで野宿だけをしているのは12人で、34人がネットカフェやファストフード店、サウナなど終夜営業店と野宿を繰り返していた。残る4人は終夜営業店だけで寝泊まりしていた。
ホームレスになった理由は(会社都合も含めた)退職が15人、派遣切りが9人、解雇・倒産が6人、作業員宿舎からの逃亡が8人など。正社員としての経験は43人があると回答し、33人が派遣社員を経験。27人が5回以上転職していた。
「共同通信」2010/12/0318:59
●「いじめと関係認めて」 小6自殺 両親、県と市に通知書 群馬
桐生市立新里東小6年、上村明子さん(12)が自殺した問題で、明子さんの両親が、「いじめと自殺の因果関係と学校の責任を認めるよう求める」とする通知書を市、市教育委員会、学校に提出したことが8日、分かった。7日に提出された通知書では「自殺の原因は、児童のアンケートや教職員の聞き取り調査から因果関係は明らかだ」と主張。「市教委や市に切望することは、早急に今回の事件を精査し、いじめと自殺の因果関係や学校側の責任を認めること」としている。
通知書に対し、亀山豊文市長は「内容をよく確認した上で、対応したい」とのコメントを出した。
また、代理人の弁護士は同日、県に対しても、いじめと自殺の因果関係の存否について回答を求める通知書を提出した。
「産経新聞」12月9日(木)7時57分配信
●市立中学校でいじめ、学校側が保護者会で謝罪/相模原
相模原市内の市立中学校で、2年生の男子生徒がいじめを受け、学校側が保護者会を開いて謝罪しいていたことが8日までに、分かった。市教育委員会は市立小中学校全109校に対し、いじめの未然防止について対応の強化を進めている。
市教委によると、今年9月15日の昼ごろ、生徒がトイレで6人の男子生徒からズボンを脱がされるなどのいじめを受けた。同月末に学校側がいじめを把握し、対応を協議。いじめに加わった生徒の中には、今回の行為を悪ふざけと認識していた者もいたことから、担任らが「人としてやってはいけない行為」と注意。被害を受けた生徒に謝罪させたという。
学校側は今月に入って保護者会を開き、「いじめが起きて大変申し訳ない。再発防止を徹底したい」と謝罪。保護者からは「改善策を進めてほしい」などの要望が出された。
市教委によると、被害を受けた生徒は現在、普通に学校生活を送っているという。
「カナロコ」12月8日(水)19時45分配信
●くじの期待感、ドーパミンが関与=依存症治療に貢献も―放医研など
くじの低い当選確率を高く見積もってわくわくしてしまう傾向に、脳内のドーパミンが関与していることを、独立行政法人放射線医学総合研究所、早稲田大などの共同研究グループが初めて明らかにした。ギャンブル依存症などの治療に役立つ可能性があると期待される。論文は8日、米神経科学会誌オンライン版に掲載された。
ドーパミンは、快感や意欲などの情動に関わる神経伝達物質。研究グループは、健康な男性36人に、さまざまな当選確率と当選金額を組み合わせた宝くじをいくらなら買うか答えてもらうテストを実施。その後、ポジトロン断層撮影(PET)で、脳の線条体という部位でドーパミンを受け取る2種類の「受容体」の量を調べた。
低い当選確率を高く見積もり、高い当選確率を低く見積もる傾向は、多くの被験者に共通に見られた。実際の金額・確率と期待とのずれの程度を数値化し、ドーパミンとの関連を見たところ、D1という受容体の量が少ない人ほど、低い確率なのに過度に期待したり、確率が高いのにはらはらしたりする傾向が強かった。もう一つのD2では、こうした関連はなかった。
「時事通信」12月8日(水)7時7分配信
●iPadで先進授業 大阪府教育センター付属高校
大阪府教委の教員研修施設「府教育センター」(大阪市住吉区)に平成23年度から新設される付属高校のカリキュラムに、多機能端末「iPad」や電子書籍を使った先進的な授業が取り入れられることが8日、分かった。不登校など課題を抱えた生徒の支援にも取り組む。教育センターは全国の都道府県に設置されているが、付属校を開設するのは全国で初という。
23年度は府内全域から1年生240人を募集。センターに隣接する府立大和川高校(22年度で募集停止、閉校予定)の校舎で授業を行う。
特徴的な授業は、コミュニケーション能力などを鍛える「探究ナビ」。週2~3時間を予定し、興味のある課題について人前で意見を述べたり提案したりできる力をつける。
また、iPadなどを使ってデジタル教科書を活用するほか、センター内にある大学の研究室並みの実験室やスタジオなども利用。宇宙航空研究開発機構(JAXA)などと連携した講座などキャリア教育も充実させ、将来像への意識を高める授業も行う。
一方、不登校など課題を抱えた生徒への対応も充実させる。専用の教室を整備し、常勤の臨床心理士も配置。他の高校からも生徒を受け入れ、元の学校に復帰するプログラムの確立を目指すという。
センターには現在、教員や研究員ら約70人の専門スタッフが所属。府内の幼稚園から高校までの教員を対象に、授業内容の研修を行っている。海外の先進事例なども研究しているが、「成果が見えにくい」との指摘もあったといい、付属校ではセンターで蓄積したノウハウをフルに活用。成果が上がった取り組みをほかの府立高校にも広げることで、大阪の教育の底上げにつなげたいとしている。
「産経新聞」12月9日(木)1時56分配信