成人の自閉症スペクトラムの特性のある人に必要な4つの支援基盤。
2011/05/01
東日本大震災依頼、つぶやく拠点をTwitterに移していました。あそこは140文字という字数制限があること、リアルタイムで情報が入出力できること、いろんな人と共通したテーマで繋がれることなどが魅力で、はまっています。
一方で、実は、ここでの「つぶやき」が書けなかったのです。うつの1つの症状でもある過覚醒、阪神・淡路大震災の時のボランティア体験のフラッシュバックなどから、ずっと精神がザワザワとした状態で、まとまった文章が書けなかったというのが本当のところです。が、少し落ち着いてきたようなので再開します。
ザワザワしながらも現場で、自閉症スペクトラムの特性のある方への支援のあり方について、日々あれこれと思考・試行・模索していた中で考えたことです。
成人の自閉症スペクトラムの特性のある人へのサポートには共通した基盤が必要であるように思えます(修士論文のどこかで使うことになると思いますが…)。
1.特性の把握、理解、必要な状態での診断とその受容(本人、家族、関わる人)
2とも共通しますが、何と言っても生育歴、生活史の聴き取り把握と、得意・不得意や興味・関心、生活パターンなどの「その人らしさ」をできるだけ把握し、理解することです。そこで得た情報から、現在の状態との因果関係が見えてくることが多いからです。そして、本人さんが困っている(自分から言い出すことは少ないのですが、その時が支援開始のタイミングでもあります。「困り」はあくまでも本人さんが認知するものであって、家族や周囲の「困り」ではありません)状態が判断されたら、発達障害を診断できる医師に受診すること。診察形態にもよりますが、生育歴の聴き取りをしてくれる医師は滅多にいないので、事前に妊娠後期頃から現在までの本人さんの育ちの歴史を客観的にまとめて事前に医師に届けておくと、短時間の診察でも内容が濃いものとなります。発達障害の診断が下りれば、後は特性(障害自体と本人さん個人)の理解と関わり方の学びをすすめ、本人さんを支える視点で生活や関わりを日々見直しながら試行錯誤しつつ、本人さんとの関係性を豊かにしていくことが不可欠です。医療受診に加えて、発達障害に詳しい相談支援者と関わることや都道府県・政令市の発達障害者支援センター、家族会などとつながることも大切です。一番大切なのは、「家族で抱え込まないこと」です。
2.本人さんが体験しトラウマとして結晶化しているもの、形成されてきた認知パターンの把握・理解
脳の機能的な障害とされていますので、平均的(定型発達をしている)とされる人と比較すると、いろんな面で「違い」が目立ちます。その「違い」が、現代の学校社会や職場などでは、KYとかコミュニケーション下手などの対人関係性や、不得意なことが「できない」というレッテルとなって、集団から阻害されたり、イジメの対象となったりしてしまいます。そうした対人関係性を毎日のように何年も積み重ねていると、「他人は怖いもの」という認知形成がされ、黙って人と関わらない、いじめられても笑顔で対処しようとする、バカにされたり理不尽で納得できない決めつけや押しつけを強要されても我慢し続けるなど、否定的な内省をしていく方が多く、自尊感情をどんどん低下させてしまいます。こうした嫌悪体験や、納得できない、受け入れられない体験などが本人さんにどう記憶され認知されているのかを知ることが、心理的支援の鍵となっていきます。本人自ら語る段階になれば、支援は問題解決型アプローチなどでスムーズにすすむこともありますが、強いトラウマ(フラッシュバックとして突然に持続的に連鎖的に想起され続けるきっかけとなる場合が多い)が形成されている場合や、言語化が苦手という特性の上に記憶しすぎるという特性が加わるために情報過多となり、想起された情報が処理機能を越えて溢れ混乱する状態に至っている場合などでは、断片的な1つひとつの体験記憶とそれに対する認知を聴き取り整理しつつ、違う受け止め方や折り合い方などのアドバイスをしつつ、解きほぐしながら整理・処理することで精神の安定枠を広げてもらう相談支援面接が不可欠な場合も少なくありません。長期記憶や認知パターンは、個人の内面で形成されるものではなく、自身を取り巻く関係性とその事象の捉え方の組み合わせで作られていくものであるという視点が必要です。
3.平均的な人間発達と比して未獲得状態である課題やその背景(特に学童期から思春期)
高機能の自閉症スペクトラムの特性は気づきにくいものです。知らずに社会生活を過ごして行ければ、「個性」で済むものなのでしょう。しかし、2で触れたように、学校という「平均的であること」「みんなと一緒に」「校則を守る」といった画一的な行動を極度に求める社会は、特性のある方にとっては生きづらい社会でしかありません。脱「個性」を強いる社会では、ユニークさや特殊な能力などは、「困る」存在になってしまっているようです。そうした画一的な社会に馴染めないという状態の中で、特性のある方が学童期・思春期を過ごすと何が生じるか? 対人相互関係の苦手さも下支えとなり、他者や集団から学ぶメタ認知能力の成長抑制を基盤に、自我同一性をはじめ対人関係や社会生活のスキルやさまざまな情動的な人格形成が阻害されるなどで、生きる上で獲得しておくべき課題を獲得できないまま成人年齢に達し、就労や社会生活場面で失敗体験や嫌悪体験を重ねてしまうことになります。獲得できていない課題や、資質として持っている苦手さなどをよく把握して、できることは伸ばし、できないあるいは苦手なことは違うやり方で対処するという方法を身につけてもらう支援が必要となります。特に、思春期をどう過ごしたか(特性のある方は思春期が長い場合が多い)の聴き取り把握と理解は不可欠です。
4.就学・生活(社会生活)・就労を緩やかに支援する豊かな福祉的サービス
早期スクリーニング検査などによる早期発見、特別支援教育、就労系の福祉サービスや就労支援、支援センター等の相談機関設置など、発達障害者支援法、障害者自立支援法(2010.12改正)などによって徐々に制度的に充実してきています。しかし、まだまだインフラ整備が始まったばかり、という状態と言えば過言でしょうか? 自閉症スペクトラムの特性が基盤にあって、不登校やひきこもり状態になったり、就労できない、できたとしても職場の人間関係などですぐに辞めてしまわざるをえない、統合失調症をはじめ他の精神疾患を主症状として誤診され不要な過剰薬物投与を続け状態が悪化するなどなど、「平均的」な社会生活・就業生活ができない状態にある方への社会的支援は、市町村事業の「相談支援」(支援計画作成と福祉サービス事業所等の紹介がアウトプット)と「就労支援」系福祉サービス、若者サポートステーション(方向性は就労)などが主たるもので、いずれも「就労」にどう結びつけるかに視点がおかれたものになっています。それ自体は良い事業なのですが、自己否定感情が強く、「動けない」状態にある方を、平均的な「就労」につなごうとするかなり強引な構図です。2、3で述べた特性や特性による非「平均的」であることから人間発達課題が抑制されていたり、自尊感情が低いレベルの方には、未獲得の課題の獲得のし直しや違うやり方の獲得などの特に対人関係上のスキルの向上、他者から「認められ大切と思われる存在」として自己を肯定的に受容しつつ自我同一性を獲得すること、「やってみたい」と思えることを見つけてトライし達成感を体験すること、自身が得意とする分野でできる仕事やそのための資格などスキルを獲得していくことなどの、中間的、段階的、個別的で緩やかな期限を切らない支援が必要です。こうした、個別支援を前提としたアプローチとして、「相談支援面接(カウンセリング)」と「居場所」などのメタ認知形成を核とした集団的スキルアップの場の提供が有効であることがわかってきました。現状の障害福祉サービスでは、訓練等給付の自立支援(生活訓練)がこうした支援に該当すると思いますが、2年という期間限定なので、その期限撤廃と「相談支援面接」の報酬を含むサービス体系化を強く求めているところです。
それでは、今週の気になる記事です。
東日本大震災:発達障害児の親孤立 避難所避け届かぬ支援
はた目には分かりにくい発達障害の子どもたちとその親に、東日本大震災の被災地で行政などの支援が十分届いていない。乳児のような夜泣きなどの症状が周囲の理解を得られず、避難所でつらい思いをするケースも多い。岩手県大船渡市の患者を訪ねた小児科医の根津純子さん(37)=東京都世田谷区=は「ただでさえ困難な避難所生活で、さらにストレスがかかり孤立化している」と指摘する。
軽度の発達障害がある長女(4)の母親(25)は根津さんに打ち明けた。「いっそ家と一緒に流された方がよかったとさえ考えた」。自宅が津波に流され、近くの公民館で避難生活を送る。夜泣きの苦情を恐れ、車中で夜を明かしたこともあった。「障害が見た目には分からず、娘が騒ぐと『しつけが悪い』と言われる」
長女は大きなサイズの子ども用おむつを使う。頼みの救援物資は成人用と普通サイズの乳児用が主で、大きなサイズは数少ない。「なんで大きい子が」「また来た」。冷ややかな目線を感じ、いたたまれなくなった。
かつて同市で勤務し相談に乗っていた根津さんがおむつを持参すると母親は感謝しながらこぼした。「せめて同年代の子どもをひと部屋にまとめてくれたら母親同士で支え合うこともできるのに」
発達障害の長男(7)がいる同市の野田悦子さん(37)は被災を免れた高台の自宅で暮らす。3月末まで断水が続いていた。「津波で浸水したとしても少しでも使えるスペースがあったら自宅で過ごしていた」。長男は興奮すると、大人が見ていてもテレビを消すなどのいたずらをするので避難所暮らしは考えなかった。だが、仮設風呂設置などの生活情報や食料に事欠いた。
大船渡市は市内の発達障害児を約30人と見ているが、そのうち、津波で家を失うなどして支援が必要な人数は分かっていない。どこに親子がいて、どんな要望があるのか、ニーズの把握が難しいという。市は、大型連休中にも市内の福祉施設を高齢者や障害者が集まる「福祉避難所」に指定する予定だ。だが、排せつ介助の必要な高齢者や重度の障害児が優先され、発達障害の子どもたちが入所できる見通しは立っていない。
「毎日新聞」2011年4月27日
避難生活ストレス、いらだつ子ども 専門家「配慮を」
殴る、蹴る、暴言を吐く。被災地で、震災や長引く避難生活によって子どもたちが精神的に追い込まれている。子どものストレスのサインにはいろいろあるが、その一つが攻撃的な言動だ。周囲の大人は戸惑うことも多いが、どんなことに気をつければよいのか。
宮城県南三陸町の住民が暮らす避難所。小学校低学年の女児3人が、ボランティアで訪れた男子高校生(17)の足を蹴り始めた。
靴を履いたまま、すねを強く蹴り上げる。「痛いよ、やめて」。高校生が言っても止まらない。その後も、首を絞めたり、ズボンを引っ張ったり。高校生は「こんなことは初めて」と戸惑いを見せた。
被災地で子どもの遊び相手をしている支援団体は、こうした子どもの変化に気付きやすい。
「最初に会った時は、子どもたちはもう、全身ストレスの塊でしたよ」。3月中旬から岩手県大槌町で子どもの支援活動をしているNPO法人「パレスチナ子どものキャンペーン」の吉田祥平さん(22)は言う。
サッカーをしようとボールを渡すと、力いっぱい蹴ってパスにならない。「ぶっ殺す!」と叫ぶ。かみつく。新しいボランティアメンバーが来ると「まず蹴られる」状態だった。
この団体は、町内3カ所の避難所で子どもの遊び相手をしたり勉強をみたりしているが、こうした暴力的な子どもは、そのうち1カ所に偏っていたという。周囲に自然が少なく、遊ぶスペースもない場所だった。
遊び相手を始めて2週間ほどたった頃から、ぐんと暴力が減ったという。「自分の欲求を抑えきれないということが少なくなった気がします」と吉田さん。自分より小さい子どもの面倒を見る子も出てきた。
災害時のストレスに詳しい藤森和美・武蔵野大学教授(臨床心理学)は「避難生活で不安が高まった時、その力が内向きに働く人は落ち込み、外向きに働く人は攻撃的になる」と解説する。子どもは大人より自制がきかず言動に出やすい。
大人の不安やいら立ちを無意識にまねている可能性もあるという。「愛や思いやりは伝染しにくいが、怒りはうつりやすい」。暴力は、もっと構ってほしいというサインでもある。
大人はどう対応すればよいのか。藤森教授は「まずは暴力はいけないときちんと注意することが必要。子どもは人目を気にするので、一人だけ呼んで『さっき蹴られたの、痛かったよ。イライラしちゃうのかな?』などと声をかけると良い」と助言する。
生活のリズムが整って秩序ができはじめると、自然と落ち着くこともあるという。
「asahi.com」2011.4.25
●外部電源喪失 地震が原因 吉井議員追及に保安院認める
日本共産党の吉井英勝議員は27日の衆院経済産業委員会で、地震による受電鉄塔の倒壊で福島第1原発の外部電源が失われ、炉心溶融が引き起こされたと追及しました。経済産業省原子力安全・保安院の寺坂信昭院長は、倒壊した受電鉄塔が「津波の及ばない地域にあった」ことを認めました。
東京電力の清水正孝社長は「事故原因は未曽有の大津波だ」(13日の記者会見)とのべています。吉井氏は、東電が示した資料から、夜の森線の受電鉄塔1基が倒壊して全電源喪失・炉心溶融に至ったことを暴露。「この鉄塔は津波の及んでいない場所にある。この鉄塔が倒壊しなければ、電源を融通しあい全電源喪失に至らなかったはずだ」と指摘しました。
これに対し原子力安全・保安院の寺坂院長は、倒壊した受電鉄塔が「津波の及ばない地域にあった」ことを認め、全電源喪失の原因が津波にないことを明らかにしました。海江田万里経産相は「外部電力の重要性は改めて指摘するまでもない」と表明しました。
「しんぶん赤旗」2011年4月30日(土)
●少しの睡眠でも大丈夫と思っている人には、ハッと
少しの睡眠でも大丈夫と思っている人には、ハッとするようなニュースだ。完全に覚醒しているときでも、脳の一部は「居眠り」している可能性のあることが、ラットを使った最新研究によって明らかになった。
ラットを睡眠不足にして脳の電気的活動を観察したところ、問題解決をつかさどる脳の領域が一種の”局所的睡眠”に陥っていたことが明らかになった。この状態はおそらく、睡眠不足のヒトにも生じていると研究チームは述べている。
驚くべきことに、脳の一部が睡眠に似た状態に陥っていても、「(ラットの)覚醒状態が通常と異なることは傍目にはわからなかった」と、ウィスコンシン大学マディソン校の神経科学者で今回の研究を共同執筆したジュリオ・トノーニ氏は話す。 局所的睡眠の状態にあるときも、脳の全体的な活動はラットが完全に覚醒していることを示しており、行動にも異常は見られなかった。
この局所的睡眠という現象は、「意義は不明だが興味深い観察事例というだけでなく、実際に行動に影響を及ぼす。つまり、ミスをするようになるのだ」とトノーニ氏は言う。例えば、前肢を使って砂糖玉を取るという難度の高い課題をラットに与えたところ、睡眠不足のラットは成功率が低かった。
研究チームは、ラットの頭部に脳波センサーを取り付け、脳の電気的活動を記録した。ラットが覚醒しているときには、予想通りニューロン(脳内で信号を受け取り伝達する神経細胞)が高頻度かつ不規則に発火した。
一方、睡眠中はニューロンの発火頻度が下がり、脳波は規則的に上下するパターン(徐波)を示した。ノンレム睡眠(急速眼球運動を伴わない睡眠)と呼ばれるこの状態は、ラットやヒトの睡眠全体の約80%を占める。
トノーニ氏によれば、通常「ラットはしょっちゅう昼寝をする」が、研究ではおもちゃを使ってラットの気をそらし、数時間眠らせないようにした。その結果、過労状態となったラットでは、大脳皮質の2つの領域において、ニューロンが本来なら睡眠時に現れる徐波を示した。
覚醒している脳の一部が睡眠状態に陥る理由は不明だが、哺乳類が睡眠をとることと無関係ではない可能性がある。哺乳類がなぜ眠るのかは、今なお残る謎だとトノーニ氏は話す。
有力な説は、ニューロンは常に新しい情報を「記録」しているため、自らをリセットし、また新たな情報を記録できるように、どこかの時点で「スイッチをオフ」にする必要があるというものだ。
「この説が正しいとすると、(睡眠をとらずにいた場合)どこかの時点でニューロンは飽和し始め、受け取れる情報の量が限界に達することになる」。そのため、ニューロンは「休息してはならないときに休息をとる」ようになり、その代償として「馬鹿げた」ミスをしでかすとトノーニ氏は言う。
トノーニ氏によると、睡眠不足は危険な事態を招きかねず、しかもこの種のミスは今後、増える可能性があるという。
理由のひとつは、睡眠時間の短い人が増えていることだ。米国疾病予防管理センター(CDC)の2008年の調査では、一晩の睡眠時間が7時間未満という人が米国の成人の約29%を占め、また慢性的な睡眠障害や覚醒障害に悩む人は5000万~7000万人に上った。米国睡眠財団によると、一般に成人には1日約7~9時間の睡眠が必要だという。
さらに重大な問題は、たとえ眠気を感じていなくてもミスをする可能性があることだとトノーニ氏は警告する。「自分では元気一杯だと感じていて、問題なくやれているつもりでも、脳の一部領域はそうでない状態の可能性がある。その領域は、判断や決定をつかさどる場所だ」とトノーニ氏は述べた。
今回の研究成果は、「Nature」誌4月28日号に掲載された。
「National Geographic News」April 28, 2011
●倉敷教育センター:不登校支援の会、児島分室で開催/岡山
倉敷教育センター(倉敷市)が不登校児童・生徒支援のために開催する「かけはし」が、倉敷市児島地区でも行われることになり、第1回目が23日午後2~4時に同市児島味野4の倉敷ふれあい教室児島分室である。
保護者と教師、関係職員、カウンセラーが自由に意見交換をする場で、不登校に悩む親にかつて不登校に悩んでいた親が助言するなどお互いにサポートする。03年から始まり、同市福田町福田のライフパーク倉敷を会場に月1回、開催してきたが、参加者数の増加や保護者の相談の多様化などもみられ、一人一人への対応時間を十分にとるため、児島分室でも開くことにした。
2回目の5月からは原則として第1土曜開催。参加無料で申し込みも不要だが、開催日時が変更になる場合もあるため、事前に同センター(086・454・0400)に問い合わせ。
「毎日新聞」 4月23日(土)16時8分配信