君が代起立斉唱=学校の管理統制が必要な理由は?
2011/06/05
大阪府議会で、公立学校教職員に君が代の起立斉唱を義務付ける全国初の「君が代起立斉唱条例」が成立したとか。最高裁でも違憲裁判で合憲の判断が出ましたが、「強制にならないように」と釘を刺していることを忘れてはなりません。この最高裁判断も想定内の動きでしょう。
さて、教育現場などで、人の気持ちに制約を強制的に加えるのには、何かの理由があるはずです。学校では校則や校長命令、そして今回の行政の条例。自治体では条例、国レベルでは法律となるのでしょう。その組織を束ねる立場の人が、自身の思い通りにその組織がまとまらない時に、よく強権発動として、いろんな「定め」を作ったり、強化したりしてきました。
大阪府の学校で、管理統制を強めたい理由…。いくつか思い浮かびます。「全国学力テスト」の結果、不登校や校内暴力などの問題事象の数…。2008年9月、橋本知事は「教育非常事態」を宣言し、・学力向上策の徹底・地域や家庭も教育に責任をもつ・ダメ教員を排除する・学校にクレームを付ける保護者に対応するという点を強調しています。「PTAは解体する」とも。教職員組合との対立構図も当然あるでしょう。
子育て中の府民が求めているのは、よりよい教育が受けられる環境を整備して欲しい、の1点に尽きると言えば言い過ぎでしょうが、教育予算を増やし、ゆとりある教職員の配置、そして、生活保護受給者が日本一多いという家庭の経済的困窮の問題などを脇に置いて、生徒の「成績の向上」がはかられるはずはありません。
そうした諸問題を君が代問題に収束させてしまった感じがします。かつて、小泉内閣が「郵政民営化」問題だけで国会解散をした時と同じ臭いがします。郵政民営化の結果はさんざんなものでした。迷惑千万!(この間も普通郵便が2週間近く届かなかった、なんてことがありました)
迷惑なのは子どもたちです。「自分の考えを持つ」ことを課題とする思春期の発達段階において、学校では、理由のよくわからない「強制」が行われていて、管理側と教師との意見対立を折あるごとに見せつけられる、校則なども、おおよそ学校・教委の都合の良いように作られたものを「遵守」することが求められるのですから…。「判断力」が育つはずもなく、「意見表明権」は侵害されるのですから、不満のはけ口としての問題行動が生じるのは自明の理です。
権力を持つ側の都合で、国民の権利や利益を振り回す。今回の国会の税金と時間の無駄遣いドタバタ劇も、M党O氏やH氏や自民党T氏などの政治的・金権的権力者の私欲に群がる議員たちが右往左往する姿をムダにマスコミを通じて見聞きさせられただけのもの。被災地への復興という直面している政治課題を前進させる議論があったとは思えません。
何が目的だったのか? 突き詰めて考えることが、一人ひとりに求められているのだと思います。
それでは、今週の気になる記事です。
君が代起立斉唱条例:大阪府議会で成立…全国初
大阪府内の公立学校教職員に君が代の起立斉唱を義務付ける全国初の条例が3日、府議会本会議で成立した。橋下徹知事が率いる首長政党「大阪維新の会」府議団が提出。公明、自民、民主、共産は反対したが、過半数を占める維新や、みんなの党などによる賛成多数で可決された。橋下知事は、不起立を繰り返す教職員の懲戒免職を盛り込んだ処分基準を定める条例案を9月府議会に提出する方針を示している。
◇教員に義務付け
条例は「我が国と郷土を愛する意識の高揚」「服務規律の厳格化」などを目的に掲げ、府立と政令市を含む市町村立の小中高校、特別支援学校の教職員を対象としている。
「学校の行事において行われる国歌の斉唱にあっては起立により斉唱を行うものとする」と明記し、府施設での国旗の常時掲揚も義務付けた。罰則規定はない。
討論で、維新は「模範となるべき教職員が繰り返し職務命令違反する行為が子供に与える影響は計り知れない」と必要性を強調。これに対し、公明は「条例よりも職務命令など管理監督を徹底すればすむ」、自民、民主も「条例化の必要はない」などと反論した。自民が提出した国旗の常時掲揚だけを義務付ける条例案は否決された。
「毎日新聞」2011年6月3日 19時46分
●「君が代」強制条例に反対 大阪弁護士会が会長声明
大阪弁護士会は24日、「大阪維新の会」(代表・橋下徹府知事)が大阪府議会へ提出を予定している「君が代」斉唱時の起立強制条例案に反対する中本和洋会長の声明を発表しました。
声明は、橋下知事が不起立教員に免職など罰則を定める条例案を9月府議会に提出すると表明していることに触れ、「職務命令や条例によって教員に『君が代』斉唱時の起立を義務づけ、義務違反に対して懲戒処分をもって臨むことは、教員の思想及び良心の自由を侵害し、違憲となる疑いが強い」と批判。地方自治体が制定する条例で教員に起立を強要することは、条例制定権を「法律の範囲内」に限定する憲法94条、また教育に対する「不当な支配」の排除を定めた教育基本法16条1項に抵触する恐れがあるとし、「かかる条例を制定することは、教育に対する過度な統制になりかねない」と述べています。
さらに教員が起立を強制されると、出席している子どもは事実上起立を強制され心理的な圧迫を受けることになり、「多様な思想や考えを学習する環境を保障すべき学校教育の理念に抵触するおそれがある」と断じています。
「しんぶん赤旗」2011年5月26日(木)
●「国際常識を身につけるため、国旗、国歌に敬意を」 国歌斉唱時の起立命令は合憲 最高裁が初判断
卒業式の国歌斉唱で起立しなかったことを理由に、退職後に嘱託教員として雇用しなかったのは違法として、東京都立高の元教諭が都に損害賠償などを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(須藤正彦裁判長)は30日、起立を命じた校長の職務命令を合憲と判断し、元教諭側の上告を棄却した。都に賠償を命じた1審判決を取り消し、元教諭側の逆転敗訴となった2審判決が確定した。
最高裁は平成19年2月、国歌伴奏を命じた職務命令を合憲と初判断したが、国歌斉唱の起立命令に対する合憲判断は初めて。
1、2審判決などによると、元教諭は16年3月の都立高の卒業式で起立せず、東京都教育委員会から戒告処分を受けた。19年3月の退職前に再雇用を求めたが、不合格とされた。
同小法廷は判決理由で、卒業式などでの国歌斉唱の起立は「慣例上の儀礼的な所作」と定義。起立を命じた職務命令について「個人の歴史観や世界観を否定しない。特定の思想の強制や禁止、告白の強要ともいえず、思想、良心を直ちに制約するものとは認められない」と指摘した。
「産経ニュース」2011.5.30 17:42 (1/2ページ)
●「退陣」ほのめかし、前夜作戦=不信任否決の舞台裏-民主執行部
内閣不信任決議案否決に大きく響いた菅直人首相の「退陣発言」。その作戦は、採決を翌日に控えた1日夜、民主党の岡田克也幹事長や枝野幸男、仙谷由人正副官房長官ら政府・民主党の幹部10人で練られたものだった。採決前の舞台裏を追った。
民主党の小沢一郎元代表と小沢氏に近い議員計71人は1日夜、都内のホテルに結集し、「不信任案可決」へ気勢を上げた。会合を終えた小沢氏は記者団に、不信任案賛成を表明。同時に「政党、党派のレベルでうんぬんする問題ではない」と自発的離党を否定した。
◇「小沢切り」想定
衆院の民主党会派はその時点で305人。53人欠けても委員長ポストを独占し、委員数でも野党を下回らない安定多数252人を維持できる。
「造反が40~50人なら厳しく処分すべきだ」。岡田氏らの会合では強硬論が相次ぎ、結局、賛成者を即日除籍(除名)する「小沢切り」の方針を決定。その一方、造反者が、衆院の過半数を失わない66人までにとどまるよう、ぎりぎりまで努力することを確認した。
岡田氏らは、そのための作戦を協議。被災地の状況から衆院解散は困難との思いは共有していたが、「けん制のために解散風を吹かせる」として、採決が予定されていた2日の衆院本会議後に臨時閣議をセットすることが決まった。「解散を決める閣議ではないか」と連想させるためのものだった。
さらに、「造反予備軍」の軟化を誘う手段として、採決前に菅直人首相が「退陣」をほのめかす案が出され、2日昼の党代議士会で首相が発言する内容の調整に入った。内容は最後に首相が筆を入れた上で、同日朝に芝博一首相補佐官から岡田氏らにメール送信された。
◇北沢、平野氏が調整
岡田氏ら10人の会合が開かれていたホテルには、別に、首相が信頼する北沢俊美防衛相と、鳩山由紀夫前首相に近い平野博文元官房長官の姿もあった。鳩山氏が不信任案賛成を表明したことで党分裂への危機感を強めていた平野氏が、北沢氏と打開策を話し合った。北沢、平野両氏は翌2日朝も衆院議員会館で協議して首相と鳩山氏の間で交わす3項目の「確認事項」の文案を固め、北沢氏は茶封筒に入れて首相官邸に向かった。
同日午前11時すぎ。鳩山氏が平野氏を伴って官邸に現れ、首相は立会人として岡田氏を呼んだ。文書には「退陣」の文言も日付もなかったが、できるだけ意義を強めようと、鳩山氏が「署名をいただけますか」と迫った。これに対し、首相は「2人の信頼関係の中ですから(署名なしでも)全く問題ありません」とかわした。結局、鳩山氏が「信じます」と折れた。
こうして迎えた2日正午の党代議士会。野党多数の参院の円滑運営のために、首相が身を引くことを期待していた輿石東参院議員会長は、首相と鳩山氏のやりとりをテレビ画面で見詰めていた。首相が最後まで退陣時期を明確にしなかったことを確認すると、電話を取り上げ、怒鳴った。「何てことをしてくれたんだ」。相手は平野氏だった。
「時事ドットコム」2011/06/03-23:23
●児童生徒の自殺、疑い例も含め報告要求…文科省
文部科学省は1日、児童生徒の自殺について正確に把握するため、新たな調査に乗り出すと発表した。
これまでの同省調査では警察庁調査と比べて人数がかなり少ないなど、全容が把握できていないとの指摘が出ていたためで、今後は疑い例も含め報告を求める。また、万一起きてしまった場合、学校側は、遺族の意向も踏まえ、全教員に加えて、周辺の児童生徒からも慎重を期した上で聞き取りを行うよう明記した。
同省はこれまで、「学校が自殺と判断した」との条件で人数を把握していたが、警察庁調査では2009年の小中高生の自殺が306人だったのに対し、同年度の同省調査では165人にとどまっていた。このため調査対象に「自殺の可能性が否定できない」ケースも含めるよう変更。年齢、性別、遺書の有無、いじめや病気などの背景について学校側が記入した調査票そのものを同省が回収する。
「読売新聞」 6月1日(水)21時35分配信
●損賠訴訟:自殺生徒の両親が県提訴 八戸の県立高「いじめが原因」--初公判/青森
八戸市の県立工業高1年の男子生徒(当時16歳)がラグビー部内のいじめなどが原因で自殺したとして、両親が県を相手取り、約700万円の損害賠償を求めて青森地裁(浦野真美子裁判長)に提訴し、27日に初公判があった。県側は答弁書で棄却を求めた。
訴状によると、男子生徒は07年4月に入学してラグビー部に入ったが、ミーティングに参加させてもらえなかったり、ボールをぶつけられるなどした。5月に退部届を出したが顧問教諭が繰り返し慰留。教諭から「やめるなら退学しろ」などと言われ、睡眠障害やうつ症状が出て命を絶った。
父は初公判後に記者会見し、「息子の名誉のため闘ってきた。学校を許せない」と語った。代理人の土井浩之弁護士は「情報公開請求したが、職員会議の議事録が残っていない。真相解明に限界を感じて提訴した」と説明した。
「毎日新聞 」5月28日(土)12時52分配信
●千度以上示す核物質、3月12日に検出していた 福島原発
東電福島第一原発から約6キロ離れた福島県浪江町で3月12日朝、核燃料が1000度以上の高温になったことを示す放射性物質が検出されていたことが分かった。
経済産業省原子力安全・保安院が3日、発表した。検出された物質は「テルル132」で、大気中のちりに含まれていた。原発から約38キロ離れた同県川俣町では3月15日、雑草から1キロ・グラム当たり123万ベクレルと高濃度の放射性ヨウ素131も検出されていた。
事故発生から2か月以上たっての公表で、保安院の西山英彦審議官は「隠す意図はなかったが、国民に示すという発想がなかった。反省したい」と釈明した。
テルルの検出は、1号機から放射性物質を含む蒸気を放出する「ベント」の実施前だった。
「読売新聞」2011年6月3日23時09分
●被災者の生活保護打ち切り相次ぐ 避難所生活や義援金理由
東日本大震災で被害が大きかった宮城、福島両県で、生活保護受給中の被災者に対し、避難所生活で住居費がかからないことや、義援金を受け取ったことを理由にした保護の廃止や停止が相次ぎ、少なくとも7例あることが両県の弁護士会や生活支援団体への取材で4日、分かった。
東日本大震災を受け、厚生労働省は生活保護に関しては阪神大震災時の措置にならい、義援金などの一時金は収入とみなさないことや、被災者の個別の事情に配慮するよう各市町村に通知。厚労省保護課は「個々の事例を早急に調査したい。打ち切る場合も被災者への丁寧な説明が必要だ」としている。
弁護士会などが確認したのは宮城県で4件、福島県3件の計7件。生活支援団体「生活と健康を守る会連合会」(東京)によると、最近被災各地で保護打ち切りの相談が増えているといい、同連合会は「実際の廃止・停止件数はもっと多いはず」としている。
福島県南相馬市の男性は、義援金や東京電力からの賠償金の仮払いが収入とみなされ、5月25日に生活保護を廃止された。宮城県では仙台市、塩釜市、名取市で事例が報告されている。このうち、名取市の避難所で生活する男性(69)は避難所生活で住居費がかからないことを理由に5月1日付で保護を停止された。
いずれも被災者に通知があったが、自治体による詳しい説明はなかったという。南相馬市では「手続きを踏んで対応している」。名取市も「法的に問題がないと考えている」としている。
福島県弁護士会は「震災による税収落ち込みで被災自治体が生活保護打ち切りに動いているのかもしれない。大震災の被災者への保護は全額国庫負担にしても維持すべきだ」と指摘している。
「スポニチ」 2011年6月4日 16:25
●仮設住宅 当選の7割入居せず
津波で大きな被害を受けた宮城県南三陸町で、町内の仮設住宅に当選した世帯のおよそ70%が、実際には入居していないことが町の調査で分かりました。入居すると食料や物資の支給が打ち切られるため、避難所などで生活しているとみられ、町は説明会を開いて、1週間以内に入居しなければ部屋を明け渡してほしいと求めることにしています。
南三陸町ではおよそ2000世帯が仮設住宅への入居を申し込んでいますが、用地の確保が難しく、着工できたのは50%余りにとどまっています。このため、入居は抽せんで決められていて、これまでに町内に完成した仮設住宅では、およそ300世帯が当選して鍵が渡されました。ところが、3週間以上が過ぎた今も、およそ70%にあたる200世帯ほどが、実際には入居していないことが町の調査で分かりました。中には、荷物を運び入れただけで生活していない住民や、鍵を受け取っただけで住宅に行ってさえいない住民もいるということです。町は、仮設住宅に移ると食料や物資の支給が打ち切られることや、光熱費などを負担しなければならないため、避難所などで生活を続けている住民が多いとみています。こうした事態に、入居できなかった住民から「自分たちに譲ってほしい」という不満の声が上がっていることから、町は5日にも当選者を集めた説明会を開き、1週間以内に入居しなければ部屋を明け渡してほしいと求めることにしています。南三陸町の遠藤健治副町長は「仮設住宅に入居するということは自立するということ。食材等の確保も自分でやらないといけないので、不安になるのだと思う。義援金の配分などで不安を解消していきたい」と話しています。
「NHKニュース」6月4日 19時36分
●受信料支払い命じる判決確定
NHKが、受信料の支払いに応じない人たちに対して起こした裁判で、受信料の支払いを命じた判決が、最高裁判所で初めて確定しました。NHKが受信料の支払いを求めた裁判で、最高裁で判決が確定したのは初めてです。
NHKは、受信契約を結んだのに受信料を払っていないとして、札幌市の男性と東京都の男性2人に支払いを求める裁判を起こしました。このうち、札幌市の男性の裁判では1審が「男性の妻が無断で受信契約を結んだ」として、NHKの訴えを退けましたが、2審は「テレビを見ることは夫婦が共同生活を送るうえで必要なものといえ、妻が契約した場合でも、夫は責任を負う」として受信料の支払いを命じました。また、東京の裁判では、受信料支払いの義務づけが憲法違反かどうかが争われ、1審と2審は「放送の中立性を確保するため、支払いの義務づけは合理的だ」と指摘して、支払いを命じていました。この2件の裁判について最高裁判所第3小法廷の田原睦夫裁判長は、1日までに男性側の上告を退ける決定をし、受信料の支払いを命じた判決が確定しました。NHKが受信料の支払いを求めた裁判で、最高裁で判決が確定したのは初めてです。
「NHKニュース」6月1日 19時27分
●抗うつ剤が脅かす五大湖の生態系
下水道に流れ込んだ抗うつ剤が、生態系に重大な影響を及ぼす可能性が明らかになった。
アメリカ、ペンシルバニア州北西部のエリー市で、抗うつ剤「プロザック」に含まれる有効成分フルオキセチンが微量検出された。これが五大湖の微生物を大幅に減少させているという。
プロザックなど抗うつ剤は、微量ながら世界中の飲料水や親水施設で検出されている。専門家によれば、人体に影響を及ぼすほどの量ではないという。しかし、軟体動物の生殖系はダメージを避けられず、魚などの脳に作用する可能性もある。
一方、細菌に与える影響も専門家は案じている。「細菌なんて一切いなくて構わないと考えるかもしれない。しかし、生態系の一部としての役割を担う場合もある。すべて死滅させて良いわけがない」と、エリー市マーシーハースト・カレッジの微生物学者スティーブ・マウロ氏は語る。同氏の研究チームは、五大湖の一つエリー湖で、岸近くの水から低濃度のフルオキセチンを検出した。
湖のきれいな水に同濃度のフルオキセチンを加えてみると、大腸菌と腸球菌が死滅した。この2種はいずれも人間に重度の感染症を引き起こす可能性がある。
エリー湖で検出されたフルオキセチンは、水1リットルあたり1ナノグラムと非常に低い濃度だった。「人間に有害なレベルではないと見られる。無脊椎動物にも影響はないだろう」とマウロ氏は話す。ただし、他の化学物質と混合すると、湖の生態系により大きな効果を及ぼすのではないかと推測している。
抗うつ剤の侵入経路も解明が待たれている。人体に取り込まれたフルオキセチンは、尿を通じて下水道に入ると考えられている。また、未使用の抗うつ剤がキッチンシンクなどにそのまま捨てられると、事態はさらに厄介になる。通常、下水処理施設ではろ過されないからだ。
ところが、エリー湖のプレスク・アイル州立公園付近で検出されたフルオキセチンは、「どこから入ってきたのかがわからない。湖岸に汚水が直接流れ込んでくる場所がないのだ」とマウロ氏は述べる。「湖中に拡散している可能性もある」。
研究成果は5月23日、第111回米国微生物学会総会で発表された。
Rachel Kaufman
for National Geographic News May 26, 2011
●ADHD患者の脳の働き解明 神戸の理研など 水野敬研究員
発達障害の一つ「注意欠陥多動性障害(ADHD)」の子どもは、健康な子どもが同じゲームをして働く脳の中央付近の部位「視床(ししょう)」と「線条体(せんじょうたい)」がほとんど働かないことを、理化学研究所分子イメージング科学研究センター(神戸市中央区)などの研究グループが突き止めた。これらの部位を観察することで客観的な診断などにつながる可能性があるといい、26日、神戸市で開かれる日本分子イメージング学会総会・学術集会で発表する。
ADHDは、不注意や多動性、衝動性といった症状が特徴で、同グループによると、国内では小学生と中学生の5~15%を占めるという。「ドーパミン」など神経伝達物質の不足が一因とされ、情報伝達を促す薬が治療に使われているが、脳のどの部位が関わっているのかについて明確には分かっていなかった。
同センターの水野敬研究員と熊本大の友田明美准教授らは、同大学医学部付属病院(熊本市)を受診した10~17歳のADHD患者14人と、同年齢の健康な子ども14人を対象に、脳の血流を画像化する「機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)」を使って調査。
3枚のカードから1枚をめくり、金額が書かれていれば、その額がもらえる‐という設定でゲームを全員にしてもらったところ、ADHD患者の場合、脳内で行動の制御や報酬を喜ぶ感情に関わる視床と線条体が、ほとんど働かなかった。しかし、薬を飲み続けると、3カ月後には健康な子どもと同様の働きに変化した。
水野研究員は「この調査方法を簡素化できれば、客観的な診断に加え、治療効果を検証することも可能になるのではないか。今回使った治療薬とは別の薬についても、脳のどの部位に働くかなどを調べたい」と話す。
「神戸新聞」2011/05/26