平成22年度の不登校など問題事象と特別支援教育の状況についての向日市への情報公開。
2011/09/14
すごい台風でした。京都市南部では強風に続いて大雨警報が出ましたが、被害は少なかったようですが、紀伊半島や私の実家の岡山など中国・四国地方などでは大きな被害が出ています。
今日は、午前の予約の方が都合で、次週の最終枠に変更になったので、HPの更新と、修士論文の仕上げに向けた作業にかかる予定です。
お盆明け初の更新です。Twitterではつぶやいてきましたが、8月13日に向日市情報公開条例にもとづいて、3つの公文書公開を請求していました。
○文科省「平成22年度『児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査』の向日市内小・中学校における基礎となるデータ、特に不登校・暴力に係るもの、及び、それらに関する各校内及び教委における指導上hの方針、総括等を含む会議資料一式」。
○向日市内の小・中学校における平成22年度の「生徒指導上の諸問題」に係る、SC、SSW等と校内体制による指導的関わりがわかる資料一式。
○平成22年度における、向日市内小・中学校の特別支援教育の対象児童・生徒数、各校毎の支援体制、取り組み等、学校毎、及び向日市全体としての実態がわかる資料一式。
確かに膨大な資料となるでしょうし、閲覧でなく複写公開としているのでコピー代(請求者負担)もかなりの額になること、規定の2週間以内では資料がそろわないことなどを前提としての請求です。もう10年ほど、不登校等問題事象については毎年の夏の恒例行事化しています。
向日市情報公開条例では、以下のような規定があります。
第2条 この条例において次に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1) 実施機関 市長、教育委員会、選挙管理委員会、監査委員、公平委員会、農業委員会、固定資産評価審査委員会及び議会をいう。
(2) 公文書 実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画、写真、フィルム及び電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られた記録をいう。以下同じ。)であつて、当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が保有しているものをいう。
(公文書の公開の請求に対する決定等)
第12条 実施機関は、前条に規定する請求書を受理したときは、当該請求書を受理した日の翌日から起算して14日以内に、当該請求に係る公文書の公開をするか又はしないかの決定(第10条の規定による公開の請求を拒否する決定及び公開の請求に係る公文書を保有していないことによる公開をしない決定を含む。)をしなければならない。
4 実施機関は、やむを得ない理由により第1項の期間内に同項の決定をすることができないときは、当該期間をその満了する日の翌日から起算して30日を限度として延長することができる。この場合において、実施機関は、請求者に対し、遅滞なく、延長後の期間及び延長の理由を書面により通知しなければならない。
第7条 実施機関は、非公開情報が記録されている公文書であつても、期間の経過により、当該公文書に記録されている情報が非公開情報に該当しなくなる場合において、当該期間の経過後に、公文書の公開の請求があつたときは、これに応じなければならない。
遅延はいつものこと。過去には、当該資料を「処分したため公開できない」というあきれた「非公開通知」もありました。学校では、生徒が卒業したら、すぐにとは言わないまでも数年以内に処分することになっているようですが、それを良しとする規定がどこかにあるのか、時間のある時に調べたいと思っています。
今回も、8月30日付けで、向日市教育委員会委員長名で「公文書公開等決定期間延長通知書」が3通、情報公開制度を担当する市民参画課から自宅に届きました(数日前に電話も頂きました)。ただ、「通知」という行政用語に引っかかります。以下に示す通り、時間が足りなくて間に合わないのは行政機関側の問題であり、「時間がかかっていてすんません」という内容が「通知」または同封文にあれば、納得できるのでしょうが…。
「延長の理由」は次のようなものです。3つの請求について、同文でした。
「公開請求のあった公文書には、各学校の文書も含まれており、該当する文書の特定に時間を要するため」
文科省へ報告を上げるためにまとめた資料は問題ないでしょう。各学校での不登校などの問題事象に関するもの、SCやSSWとの連携した取り組みなども生徒指導部の毎月のまとめがあってしかるべきものかと。特別支援教育に関しても、そのあり方についてはしっかりとした枠組みがあるはずですから、「今、どうですか?」ではなく、「昨年度はどうでした?」なので、まとめがないはずはありませんし、なかったとしたら問題です。いずれにしても、お得意の「管理」がちゃんとできていれば、「これとこれ…」という感じで学校からの資料収集もできるはずです。しかも毎年のように請求している人間がいるのですから…。
心配なのは、こうしたチェックを市民がしている、ということが、「管理・統制」の強化につながらないか、ということです。少なくとも、「数が多いから問題だ」と問題視するつもりはまったくなくて、そうした状態に、学校を構成するすべての人たちがどう現実に即して柔軟な対応をできる環境に学校があるのか、そうでないとしたら何をどう変容すべきかを検討し提起できるものは提起していきたい、という思いからの私的な行動です。
ご意見・ご批判などお寄せいただければ幸いです。
それでは、今週の気になる記事です。
<いじめ>昨年度、認知件数が初めて増加 複雑・潜在化進む
◇調査実施率向上が影響/「氷山の一角」の声も
文部科学省が今月4日発表した10年度問題行動調査で、いじめの認知件数が増加した。現行の調査方法となった06年度以降初めてで、同省はアンケート調査の実施率向上を主な要因と見る。だが、いじめは潜在化しており、学校からは「判明したのは氷山の一角」との声が上がる。
■自殺の衝撃
今回の問題行動調査では、国公私立小中高校などでいじめアンケート実施率が65・9%から90・4%に大幅に上昇した。昨年全国で相次いだ子供の自殺が実施率を押し上げた。
群馬県桐生市では10月、小6の上村明子さん(当時12歳)が自殺した。学校側は当初、いじめを否定していたが、再調査でいじめの事実を認めた。県はこの問題を重く受け止め、事件後、県立、市町村立の全593校でアンケートを毎月実施。この結果、国公私立の県全体の実施率は09年度の78・9%から95・8%に上がった。また、上村さんのシグナルに気付けなかった背景に、学級崩壊状態があったことも判明した。県教委は教諭を対象に学級崩壊に関するアンケートも実施。現場の実態が少しずつ共有されつつある。
■アンケート効果
一方、1000人あたりの認知件数が27・6件と、3年連続で全国最多だった熊本県。文科省の指示よりも前の06年度から、アンケートによる実態把握に取り組んできた。きっかけは、同年に県内の消印のある「いじめ自殺予告はがき」が文科省に届いた”事件”だった。件数の多さは事態の深刻さを想像させるが、いじめの解消率も全国トップの97・2%だった。県教委は「担任教諭が気づかない子供のSOSを浮かび上がらせることができている」と、敏感な対応姿勢を自負している。
むろんアンケート調査にも課題はある。熊本市立小学校に勤務する50代の女性教諭は「無記名といっても、いじめ相手に『告げ口した』と思われるのを気にして言い出せない子供もいる。教師と子供の信頼関係が大切だ」と話す。
■実態は潜在化
さらにアンケート調査だけでは把握しきれないほど、いじめの実態の複雑化と潜在化は進んでいる。
アンケート実施率が公立小36・7%、同中55・3%からともに100%となった大阪府。認知件数は小中ともに06年度から減少し続け、10年度は前年度比168件減の1744件で、06年度(3559件)からはほぼ半減した。府教委は「スクールソーシャルワーカーの配置など組織的な取り組みの成果が出てきた」と手応えを示すが、府内のある市教委幹部は「人員の配置は対症療法で、今の成果は『水もの』と見るべきだ。実態は見えにくくなっている」と警鐘を鳴らす。
問題を複雑化させる要因は、家庭の不安定さ。大阪は生活保護受給率が全国一高く、ある市立小の男性教頭(50)は「貧困など生活環境が不安定な『しんどい家庭』の子は、いじめの被害者にも加害者にもなりやすい」と指摘し、子供だけでなく保護者にも目を向けるようにしているという。
さらに、携帯電話の普及が子供たちに新たないじめの場を提供した。「学校裏サイト」など携帯電話で利用できるネット世界で、特定の子供の嫌がる写真を投稿したり、書き込みで集中的に攻撃しながら、学校生活ではそぶりも見せない。
また、今回は東日本大震災で大きな被害を受けた3県(岩手、宮城、福島)のデータは含まれていない。文科省の調査では、この3県から転校などをした児童生徒や幼稚園児は5月1日時点で約2万人に上るが、避難先で誰にも相談できないまま耐えているケースがあると危惧されている。
■意識改革も必要
いじめ発見のため、学校側の意識改革を求める意見もある。NPO法人「全国いじめ被害者の会」(大分県佐伯市)代表の大沢秀明さん(67)は96年、当時中学3年だった四男秀猛(ひでたけ)さんをいじめを苦にする自殺で亡くした。加害者の同級生2人は恐喝罪で書類送検されたが、学校側を相手取った民事裁判では、自殺を予測する学校側の予見可能性は認められなかった。大沢さんは、教師はいじめがあってもけんかやトラブルとして扱い「仲良くしなさい」となだめているのが現実だと言い、「『悪いことは悪い』としかるのが真の教育。いじめた子には厳しく措置して更生に導かないと、被害者も加害者も救えない」と訴える。
「毎日新聞」8月29日(月)7時22分配信
●中2自殺受け調査委
■札幌市教委 弁護士らも
札幌市手稲区の市立前田北中学校2年の男子生徒(13)が自宅近くのマンションから飛び降り自殺したことを受け、市教育委員会は1日、調査委員会を2日に設置すると発表した。
委員は、同校の校長、市教委幹部をはじめ、弁護士や精神科医師、教育学者ら5~10人程度になる予定。
同校の全生徒に対し、教員やスクールカウンセラーが面談し、心のケアをする中で事実の究明に努める方針だ。調査結果は報告書にまとめ、数カ月後をめどに公表できる部分は何らかの形で発表するという。
一方、2日夜には同校で、保護者説明会を開き、事実経過と今後の対応などについて説明する予定だ。
「asahi.com」2011年09月02日
●非正規社員、過去最高の38・7% 「賃金の節約のため」4割超 厚労省調査
厚生労働省が29日発表した「就業形態の多様化に関する総合実態調査」(2010年10月時点)によると、パートタイムや契約社員、派遣労働者など全労働者に占める非正規社員の割合は38・7%となり、前回調査(07年)の37・8%を上回り、過去最高を更新した。非正規社員を活用する理由(複数回答)は「賃金の節約のため」が43・8%となり、前回調査と同様にトップとなった。
非正規労働者の割合は、パートタイムが22・9%(前回調査は22・5%)でトップ。契約社員が3・5%(同2・8%)で続いた。派遣労働者は3・0%で、前回調査(4・7%)から減少した。
一方、非正規社員に現在の就業形態を選んだ理由を聞いたところ(複数回答)、「自分の都合のよい時間に働けるから」が38・8%(前回調査は42・0%)でトップ。以下、「家計の補助、学費等を得たいから」が33・2%(同34・8%)、「通勤時間が短いから」が25・2%(同23・2%)で続いた。
「正社員として働ける会社がなかったから」は22・5%で第5位だったが、前回調査からは3・6ポイント上昇。派遣労働者だけをみると、44・9%を占めトップ、契約社員でも34・4%で「専門的な資格・技能を活かせるから」の41・0%に次ぐ2番目の理由だっだ。
調査は従業員5人以上の1万6886事業所と、その従業員5万1152人を対象に実施。有効回答率は事業所が61・7%、従業員が64・7%だった。
「SankeiBiz」2011.8.29 19:05
●原発周辺、長期間住めないと判断…首相陳謝へ
政府は20日、東京電力福島第一原子力発電所事故で高濃度の放射性物質に汚染された周辺の一部地域について、長期間にわたって居住が困難になると判断し、警戒区域を解除せず、立ち入り禁止措置を継続する方針を固めた。
数十年続くとの見方も出ている。菅首相が地元自治体に直接説明し、避難の長期化を陳謝する方向で検討している。具体的な地域は、福島県双葉、大熊両町の原発3キロ・メートル圏内などを念頭に精査する。
政府は4月、原発20キロ圏内を原則として立ち入りを禁じる警戒区域に設定。来年1月中旬までに原子炉が安定的に停止する「冷温停止状態」を達成し、警戒区域を解除する方針を示してきた。
しかし、文部科学省が原発20キロ圏内の警戒区域内で事故発生後の1年間で浴びる放射線の積算量を推計したところ、大熊、双葉両町を中心とする35地点で、計画的避難区域などの指定の目安となる年間20ミリ・シーベルトを大きく超えた。原発から西南西に3キロ離れた大熊町小入野では508・1ミリ・シーベルト、同町夫沢でも393・7ミリ・シーベルトと、高い推計値を示した。
「読売新聞」8月21日(日)3時1分配信
●<福島第1原発>東電、水素爆発予測せず ベント手順書なし
東京電力福島第1原発事故で、3月12日に起きた1号機の水素爆発について、政府の「事故調査・検証委員会」(畑村洋太郎委員長)の聴取に対し、東電側が爆発前に予測できていなかったと証言していることが分かった。長時間の全電源喪失時に格納容器を守るため実施するベント(排気)のマニュアル(手順書)がなかったことも判明。このため、作業に手間取るなど、初期対応で混乱した様子が浮かび上がった。
関係者によると、政府事故調はこれまでに、同原発の吉田昌郎所長ら東電社員や政府関係者らから聴取を続けている。
1号機の水素爆発は、東日本大震災の翌日の3月12日午後3時36分に発生。建屋の上部が吹き飛んだ。水素は、燃料棒に使用されるジルコニウムが高温になって水と反応し発生したとみられている。
関係者によると、事故調に対し、東電側は原子炉や格納容器の状態に気を取られ、水素が原子炉建屋内に充満して爆発する危険性を考えなかったという趣旨の発言をし、「爆発前に予測できた人はいなかった」などと説明しているという。
また、ベントについては、マニュアルがなかったため設計図などを参考にして作業手順などを検討。全電源が喪失していたため作業に必要なバッテリーなどの機材を調達し始めたが、型式などの連絡が不十分だったこともあり、多種多様な機材が運び込まれて、必要なものを選別する手間が生じた。
さらに作業に追われる中、機材が約10キロ南の福島第2原発や作業員らが宿泊する約20キロ南のJヴィレッジに誤って配送され、取りに行かざるをえない状況になった。ある社員は「東電本店のサポートが不十分だった」と話しているという。
一方、1号機の炉心を冷却するための非常用復水器(IC)が一時運転を中断していたものの、吉田所長ら幹部がそのことを把握せず、ICが稼働しているという前提で対策が検討されていたことも判明。事故調の聴取に吉田所長は「重要な情報を把握できず大きな失敗だった」などと話しているという。
事故調は、東電側からの聴取内容と一連の事故に関するデータなどを精査した上で事故原因を解明していく方針だ。
◇震災翌日の首相視察「目的分からぬ」
「目的が全く分からない」--。菅直人首相が東日本大震災翌日の3月12日、東京電力福島第1原発を視察したことについて、現場のスタッフが政府の「事故調査・検証委員会」の調べに、懐疑的な感想を述べていることが明らかになった。
菅首相からの「なぜこんなことになるのか」との質問には、「自由な発言が許され、十分な説明をできる状況ではなかった」と振り返る説明があった。また、海江田万里経済産業相が12日午前6時50分、1号機の原子炉格納容器の圧力を下げるベントの実施命令を出したことに、現場は「違和感が強く、意図的にぐずぐずしていると思われたら心外」と受け止めたという。
陸上自衛隊のヘリコプターによる使用済み核燃料プールへの放水には、「ありがたかったが、作業効率が極めて低いと感じた。プールに入っていないと思われるケースが多かった」との感想があったという。
◇原発事故調査委・ヒアリング経過メモ(要旨)
事故調査・検証委員会が、福島第1原発の吉田昌郎所長やスタッフ、関連企業の社員ら、学識経験者にヒアリングした経過を8月にまとめたメモの要旨は次の通り。
<ベント>
・11日深夜から12日未明にかけ、炉心損傷を認識した吉田昌郎・福島第1原発所長がベント準備を指示
・マニュアルがなく、現場で設計図などを参照しながら必要な措置を検討し、弁操作に必要なバッテリー調達などから始めた。ストックを把握していなかったため、構内を探したり本店に調達要請したりと手間取った
・最終的にベントが成功したかは確認できていない。「成功した」とされているのは、格納容器の圧力低下や放射線量増加などの状況証拠からの推測。現在も確証を得られない
・ベントや注水に必要な資材が福島第2原発などに誤搬送され、第1原発から取りに行く人員を割かれるなど、本店のサポート体制は不十分
・海江田万里経済産業相のベント実施命令には違和感が強く、意図的にグズグズしていると思われたとしたら心外
<水素爆発>
・1号機の水素爆発を予測できた者はいない。爆発後数時間以内に、炉心損傷で発生した水素が建屋に充満して爆発した可能性が高いと結論付けた
<甘い認識>
・炉心の熱を海に逃がすための海水ポンプが津波で故障した場合、非常用復水器(IC)などで炉心冷却しながら復旧すればよいという程度の認識だった
<4号機の損傷>
・3号機から排気ラインを通じて逆流した水素がたまって爆発した可能性が考えられるが、逆流させるだけの空気圧が発生していたか疑問はある
<菅首相の福島原発視察>
・12日早朝の首相来訪は目的・趣旨がまったくわからない
<海水注入>
・防火水槽の淡水貯水量には限界があり、いずれ海水注入が必須になるとの認識はあった
・12日夕に官邸、東電本店から海水注入中断の指示があったが、注水を続けないと大変なことになるので、従ったふりをして継続
<1号機の非常用復水器停止把握せず>
・担当作業員がICを11日午後6時半から約3時間、停止させたが、吉田所長らは把握せず、動いていることを前提に対策を講じた
<ヘリ、放水車などによる放・注水>
・電源復旧作業の中断を余儀なくされた
・散発的な放水は作業効率が低く、使用済み核燃料プールに入っていないと思われるケースが多かった
<想定地震超える>
・福島第1原発2、3、5号機の東西方向で、想定していた揺れである基準地震動を超えたが、東電によると原子炉の安全上重要な設備に大きな損壊は確認されず
<想定津波を再計算>
・09年2月、海底地形と平均潮位を見直して想定津波を再計算。その結果、想定津波の高さが上昇した5、6号機については、非常用海水ポンプの電動機の架台の浸水対策をした
「毎日新聞」8月17日(水)2時31分配信
●自殺報道考 「ガイドライン作り必要」「メディア自身で議論を」
2011.8.16 07:40 (1/3ページ)
WHOの「自殺報道ガイドライン」
年間自殺者数が13年連続で3万人を超えている日本。この異常事態を改善させるための取り組みが政府や関係機関によって行われる中で、メディアの「自殺報道」自体が自殺者を増加させているという指摘がある。有名人の自殺報道、硫化水素自殺のような「手段」の報道…。自殺報道はどうあるべきかを考える。
報道が誘発?
7月4日、内閣府の自殺対策検討部会で、清水康之・内閣府参与(39)=NPO自殺対策支援センター・ライフリンク代表=は、今年5月の自殺者急増と、同月12日に自殺したタレント、上原美優(みゆ)さん=当時(24)=をめぐる報道が関連している可能性を指摘した。
内閣府は、今年に入って減少傾向にあった自殺者数が、5月に前年比17・4%増の3191人と跳ね上がったため調査を実施。その結果、同月13日以降に自殺者が急増し、1月以降1日平均82人だった自殺者数が、13日からの1週間では1・5倍の平均124人に達していた。
「増加分が13日からの10日間に集中しており、20、30代の若い女性が多い。報道によって自殺が誘発された可能性がある」と清水氏は指摘し、政府に対し、報道各社に自殺報道のガイドラインの作成を呼びかけるよう求めた。
2011.8.16 07:40 (2/3ページ)
ウェルテル効果
ただ、報道と自殺との因果関係の立証は難しい。上原さんの自殺を報じた一般紙やスポーツ各紙などの報道を見ると、自殺の手段については書かれているものの、記事の扱いや量からは「過熱報道」とまでの印象は受けない。それでも清水氏は「自殺予防に携わるものとして、自殺者数を押し上げている可能性のあるものに対しては対応を求めていきたい」と話す。
『群発自殺』などの著書がある高橋祥友・防衛医科大教授(行動科学研究部門)は「メディアの自殺報道は以前より抑制気味で、5月の自殺者数増加と報道とを結びつけるのはやや疑問」としつつ、「一社一社の報道は抑制されていても、さざ波が集まって情報の洪水となってしまうこともある」と語り、平成20年に起きた硫化水素自殺の流行を例に挙げる。
海外では、メディアによる自殺の誘発は「ウェルテル効果」と呼ばれている。ゲーテの『若きウェルテルの悩み』(1774年)を読み、主人公と同じ方法で自殺する若者が相次いだからだ。WHO(世界保健機関)は2000年、「センセーショナルに扱わない」「過剰に、繰り返し報道しない」「手段を詳しく伝えない」などの項目を挙げた通称「自殺報道のガイドライン」を発表した。
清水氏は「精神的に不安定で自殺を考えている人は、自殺報道を食い入るように見る。具体的な自殺方法をあまりに詳細に報じると、自殺の仕方を”指南”することになる」とし、「大事なのは『自殺予防』の観点。各社でWHOのようなガイドラインを作成し、毎回の報道内容を意識的に判断するよう求めたい」と主張している。
2011.8.16 07:40 (3/3ページ)
取材の足かせ?
一方、ガイドライン作成には慎重論も根強い。
ある週刊誌のライターは「細かい事実を積み上げて検証するのが雑誌ジャーナリズムであり、ガイドラインは取材の足かせになる。自殺者の事情を詳しく報道することで、自殺志願者に『自分とは違う』と認識させ、安易な同一化を防ぐ効果もあるはず」と話す。
また、上智大の田島泰彦教授(情報メディア法)は2つの問題を指摘する。
「まず、ガイドライン作成は問題提起として意義があるが、政府が報道機関に作成を要請する図式は危険だ。もう一つは、ガイドラインがあるとメディアが”事なかれ主義”に流れ、思考停止状態を招きかねない。発生時だけでなく、長期にわたって自殺者や遺族の問題を取り上げ、自殺報道のあり方についてメディア自身が議論していく姿勢も大事なのではないか」
◇
ライフリンクは、自殺についての相談窓口を検索できるウェブサイト「いのちと暮らしの相談ナビ」(lifelink-db.org)を開設している。
「産経ニュース」
●<大阪維新の会>教育条例に「愛国心」明記 9月提案
大阪府の橋下徹知事が率いる首長政党「大阪維新の会」が9月定例府議会に提案する教育基本条例案に、「愛国心」を明記することが16日分かった。「基本理念」を示した条項で、06年に成立した改正教育基本法より踏み込んだ表現になっている。同法の審議で激論になった経緯があり、論議を呼びそうだ。
第2条で目指すべき六つの理念を明示。その一つに「我が国及び郷土の伝統と文化を深く理解し、愛国心及び郷土を愛する心にあふれるとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する人材を育てる」とした。
府議会は維新が過半数を占めており、この条例案が提案されれば成立する可能性が高い。
「毎日新聞」8月17日(水)2時30分配信
●<調査>看護学生の6割が、患者からの暴力を経験
看護学生が実習中に患者から受けた暴力の実態を、筑波大の江守陽子教授(看護科学)らの研究チームが調査した。学生の6割が暴力を受け、うち性的暴力が精神的暴力と並んで4割を超えていた。日本看護協会の調査では看護職員への暴力は約3割とされ、学生は2倍もあった。看護学生への暴力の実例に基づいた本格的な調査と分析は初めてという。
関東地方の看護専門学校、短大、大学計15校の看護学生712人を対象に07年に調査した。593人(83.3%)が有効回答をした。
暴力を受けたと答えた学生は352人(59.4%)で、総件数は1498件。種類別では▽精神的暴力44.7%▽性的暴力43.1%▽身体的暴力12.2%。性的暴力では「胸を触られた」「手を握られ、お尻を触らせてと言われた」「後ろから抱きつかれ、頬にキスをされた」「声をかけられ、ずっと追いかけられたり、わいせつな発言があった」などの被害があった。
最も困った事例について具体的に記述した95人のうち20.0%は、暴力を受けた際、誰にも相談しなかった。「怒り」「嫌悪感」を覚え、「辱めを受けた」「人格を否定された」と感じたという。
研究チームは、担当看護職員に向けられた不満やストレスのはけ口として経験が浅い学生が攻撃対象となったと分析。三木明子准教授は「暴力は弱い立場の者に向く。患者との距離感の取り方など暴力防止の実技講習を行い、まず予防が大切。防犯ブザーを持たせるなど暴力を受けない環境作りも必要だ」と話している。
「毎日新聞」8月22日(月)2時30分配信
●うつ患者に特有タンパク質パターン=診断客観指標に応用期待―広島大
うつ病患者に特有の血中タンパク質の構造パターンを発見したと、広島大学大学院医歯薬学総合研究科の森信繁准教授らのグループが31日発表し、米科学誌「プロス・ワン」電子版に掲載した。
従来うつ病の診断は、意欲低下などの症状を基にした主観的なものだったが、森信准教授は、今回の発見が、構造パターンを客観指標とした診断法や治療に役立つ可能性があるとしている。
森信准教授らは、神経細胞の栄養成分となる脳由来神経栄養因子(BDNF)というタンパク質の一種に着目。BDNFの遺伝子にメチル基と呼ばれる分子が結合する「メチル化」のパターンについて、未治療のうつ病患者20人と、健康な人18人の血液を採取し解析、比較した。その結果、遺伝子の特定の部位で、うつ病患者と健康な人で全く違うメチル化のパターンがあることが分かったという。
(時事通信)8月31日(水)6時4分配信