発達障害のある方の「訓練」について考える。
2011/10/30
2週間ぶりの更新です。
最近のTwitter上で、「他に言葉ないんだからしょうがないんだけど、発達障害者の「訓練」っていう言い方、すごい差別的で失礼だと思うんだけど!」、「子どもに対してはぎりぎり「訓練」という言葉を使ってもいいが、苦労して大人になった成人発達障害者にその言い方はないだろう!」、「「訓練」というと、何か使えないものを使えるようにする、みたいな感じがしますね…。」、「「お前らは歪んでるから矯正してやる」みたいなものを感じるよね。「わざわざやってやるんだ」的なニュアンスも見え隠れする。」、「訓練じゃなくて支援でしょう。」…など、発達障害特性があるために「社会適応(参加)」や就労困難な状態にある方々に対して行われる様々な取り組みに「○○訓練」などと「訓練」という名称が付けられていることへの違和感が、当事者の方々からつぶやかれています。
就労(技能)、生活、対人関係、社会適応、などに「訓練」や「スキル」という単語がくっついて、障害者自立支援法にもとづく障害福祉サービスをはじめとして、公的制度においても、民間の施設や支援団体などでも、こうした表現が一般化しているのが実態です。
「訓練」や「スキルトレーニング」などの名称は、上記コメントをつぶやかれた当事者さんたちが違和感や差別感などを感じてしまうのも、もっともなことだと思います。
何かの能力や技術などが不足、欠落、未獲得、不十分な状態を補完して、社会適応できるようにすることを、定型社会では「訓練」などの言葉で脈々と表現してきているのですから。発達障害は様々な能力に関する脳機能の偏りや、それがあるがゆえにその後の成長において「失敗や苦手=無理やできない」という認知形成が進んでしまったことで、不得意なことが「見えやすい」ことが多く、そのために定型発達者(と言われるマジョリティー?)が形成した様々な「社会」において、「不適応」な状態になってしまうことが少なくありません。
私的には、「スキルトレーニング」はギリセーフで、「訓練」はやはり「上から目線」の用語に思えますが、福祉サービス等の行政用語が、発達障害を対象とする以前に作られていて、その体系が継続されていることや、支援者間の共通言語として一般化している現状で、名称を変えることは、時間のかかる作業だとも思えます(もちろん必要で努力しなければなりませんが…)。
昨日、Amazonで届いた『発達障害 工夫しだい 支援しだい』(しーた:著、梅永雄二:監修、Gakken)の中で、しーたさんは、「「発達障害」とは「普通の型」にはまらない例外」「無限のバリエーションがあります」「(このバリエーション)すべてに共通するマニュアルなんて、作れるわけがありません!(きっぱり)」「発達障害の人が上手に生きるためのマニュアルは、きちんと発達障害の当事者と正面から向き合って、それぞれの当事者にオリジナルのマニュアルを丁寧に作りこんでいかなくてはならないものなんです」と書かれています。また同書で、監修の梅永氏は佐々木正美氏の次の話を紹介しています。
「自閉症スペクトラムの人に社会性を求めるトレーニングをすることが、どれだけ自閉症スペクトラムの方を苦しめていることでしょうか。自閉症スペクトラムの人が社会性のトレーニングをするのではなく、回りにいる私たち、親や教師などの支援者が、トレーニングして彼らとの接し方を学ぶべきです。ソーシャル・スキル・トレーニングは、回りの人たちにこそ必要なのだと言ってもいいくらいです」
1章のタイトルは「苦手なことは工夫でカバーする」、4章のタイトルは「自己肯定感を土台にする」です。私が相談支援面接を本人さんやご家族としている時に頻繁に使っている言葉です。これに「特性を理解する、本人さん自身の個性を理解する」を加えつつ、個別の支援(相談支援や集団的支援などの)計画を本人さんと一緒に見つけて行くことこそが大切なんです。「支援計画」は作れば良い、提出すれば良い、というものでは決してないことを付け加えておきます。
それでは、今週の気になる記事です。
<原発>再稼働「賛成」自治体ゼロ
◇半数、協定の意向「ある」
国の原子力安全委員会が原発事故時の避難検討範囲を原発から半径30キロ圏内に広げる防災指針案を固めたことについて、毎日新聞は20日、新たに避難対象になるとみられる20道府県84市町村に緊急アンケートを実施した。回答した自治体の5割近くが電力事業者と原子力安全協定を結ぶ意向が「ある」としており、再稼働や増設へのハードルが高まる可能性がある。
「脱原発」を明確にした福島県を除く全国15カ所の原発周辺84市町村に尋ね、79市町村から回答を得た。協定を結ぶと新設・増設時に首長や議会の了解が必要となるが、結ぶ意向が「ある」自治体が36、「未定」が41、「ない」は2だった。原発の再稼働への賛否では「どちらともいえない」が51自治体と最も多く、安全対策などの充実を前提とした「条件付き賛成」が17、「反対」2、「賛成」はゼロ(無回答9)だった。
「毎日新聞」10月21日(金)7時30分配信
●小中学生の体内から少量のセシウム 福島・南相馬で検出
福島県南相馬市の市立総合病院は、9月下旬から検査した市内の小中学生の半数から少量の放射性セシウム137が検出されたことを明らかにした。事故直後に呼吸で取り込んだものか、事故後に飲食物を通じて取り続けたものか不明のため、病院の責任者は「定期的に調べて健康管理につなげたい」と話している。
小中学生527人を最新の内部被曝(ひばく)測定装置で調べたところ、199人から体重1キロあたり10ベクレル未満、65人から同10~20ベクレル未満、3人から同20~30ベクレル未満、1人から同30~35ベクレル未満のセシウム137を検出した。
セシウム137が半分になるまでは約30年かかるが、体からは便などとともに排出されるため、大人で100日程度、新陳代謝が高い小学校低学年生で30日程度で半分が出ていく。
「asahi.com」2011.10.24
●<福島第1原発>1~4号機の廃炉まで30年以上
◇原子力委員会がまとめた第1原発の廃炉工程
東京電力福島第1原発1~4号機の廃炉措置について、内閣府原子力委員会がまとめた報告書案が26日、分かった。使用済み核燃料プール内の燃料は2015年以降、原子炉内の溶融燃料は22年以降、取り出し作業を始め、廃炉終了には「30年以上を要する」との長期見通しを初めて盛り込んだ。報告書案は、28日に開かれる原子力委の中長期措置検討専門部会で了承される見通し。
◇【すべてはここから】津波に襲われる福島第1原発を多数の写真で
第1原発では、炉心溶融した1~3号機の原子炉内に計1496本、1~4号機の使用済み核燃料プール内には3108本の燃料集合体が残っている。廃炉実現のためにはこれらを回収し、長期間にわたって安定的に冷却・保管する必要がある。
報告書案によると、廃炉措置は原子炉の「冷温停止状態」を年内に達成したうえで、早ければ来年からスタートする。原子炉内の溶融燃料回収のため、原子炉建屋内をロボットなどで除染したうえで、格納容器の損傷部分を修復。さらに、放射線を遮蔽(しゃへい)するために格納容器全体を水で満たす「冠水(水棺)」作業を実施し、22年以降から燃料回収を始める。
一方、プール内の燃料は比較的損傷が少ないが、2号機を除いて水素爆発で原子炉建屋が大きく壊れ、取り出すための既設のクレーンが使用できない。このため、新たにクレーンを設置し、4号機近くにある一時貯蔵施設「共用プール」を整備したうえで、15年以降の回収を目指している。
報告書案では、すべての燃料回収までに約20年かかった米国のスリーマイル島原発事故(79年)の経緯を踏まえたうえで、「廃炉措置が終了するまでには少なくとも30年以上の期間を要する」と推定。早期の廃炉実現のためには、(1)海外専門家の助言を積極的に得る(2)計画が不調な場合は臨機応変に対応する(3)実際の現場作業に必要な研究や開発を優先する(4)国内の技術者の育成につなげる--の四つの基本方針を示した。福島原発では4基の廃炉措置を同時並列で進める必要があり、スリーマイル事故や旧ソ連のチェルノブイリ原発事故(86年)と比較しても、きわめて困難な作業となることが予想される。このため、報告書案は「官民挙げたオールジャパン体制で進める必要がある」と強調。そのうえで、来春に発足する「原子力安全庁」とともに、廃炉の進捗(しんちょく)状況をチェックする第三者機関の設置の必要性も初めて盛り込んだ。
「毎日新聞」10月27日(木)2時30分配信
●柏市の高濃度放射性物質 雨水から土壌蓄積か
千葉県柏市根戸の市有地で採取した土壌から高濃度の放射性セシウムが検出された問題で、調査に当たった文部科学省放射線規制室の中矢隆夫室長は23日、「福島第1原発事故によるセシウムを含んだ雨水が濃縮され、土壌に蓄積した可能性が高い」との見方を示した。
文科省はこの日、現場付近の状況を確認し、放射線量を測定。近くの破損したコンクリートの側溝から雨水が土壌にしみ出し、高い線量が蓄積したとみられる。中矢室長は「雨水がたまりやすい所は線量が高くなるが、これほど高くなったのは周りの状況ではないか」と指摘し「結果を持ち帰り、できるだけ早く除染を始めたい」と話した。
現場は福島第1原発の南西約195キロメートル。毎時57・5マイクロシーベルトの線量が測定されたため、柏市が22日に土壌を調査。地表から30センチの深さで1キログラム辺り27万6000ベクレル、地表面でも同15万5300ベクレルのセシウムが検出された。現地調査は当初24日に予定されていたが、市が22日の検査結果の重大性や天候を考慮して早めるよう要請、文科省が応じた。
この市有地には戦時中、旧日本陸軍の軍事施設があったが、関連性は薄いとみられる。
「スポーツ報知」10月24日(月)8時3分配信
●東電、国に1兆円支援申請へ…今年度賠償分 福島原発
東京電力は、福島第一原子力発電所の事故の賠償金支払いのために最大1兆円規模の財政支援を国に申請する方針を固めた。
11月上旬に国と東電が策定する緊急特別事業計画に盛り込む。2年間で4・5兆円と試算されている賠償総額のうち、2011年度分の賠償額に絞って支援を求める。支援の前提として、電気料金の本格値上げを見送る一方、来年度中に柏崎刈羽原発(新潟県柏崎市、刈羽村)の再稼働を実現させる方向で調整している。
緊急計画は、東電の経営を調査する「経営・財務調査委員会」が10月3日に発表した報告書をもとに国の原子力損害賠償支援機構と東電が策定し、枝野経済産業相が11月上旬に認可する。
賠償支払額は年内に限れば7000億~8000億円、年度内まで見通せば1兆円規模になる見通しで、支援機構と東電が申請額の詰めの調整に入っている。
「読売新聞」2011年10月18日03時04分
●政府、復興債の償還期間延長へ…15~20年
政府・与党は18日、「10年間を基本」としていた東日本大震災の復興債の償還期間を延長する方針を決めた。
復興財源確保法案などの2011年度第3次補正予算案の関連法案の早期成立のため、償還期間の延長を求める野党の公明党などに配慮した。具体的には償還期間を「15~20年」とする方向で検討している。
民主党の前原政調会長は18日、国会内で、自民党の茂木、公明党の石井啓一両政調会長と個別に会談した。石井氏は「公明党内には15~20年が望ましいとの意見がある」と伝え、前原氏は「意向に沿えると思う」と前向きに検討する考えを示した。
一方、前原氏は茂木氏に対し、償還期間について20年間程度にする考えを伝えたが、茂木氏は応じなかった。自民党は建設国債に準じ、償還期間を60年程度とするよう求めている。
「読売新聞」10月19日(水)3時16分配信
●<自転車>歩道走行禁止、厳格運用…警視庁が安全対策策定へ
警視庁は、自転車の車道左側走行の原則を順守させ、これまで積極的に摘発していなかった歩道走行の取り締まりを徹底する方針を固めた。そのうえで自転車のルール順守や走行環境の整備なども盛り込み、全国の警察本部で初となる包括的な自転車安全対策の策定作業に入った。東日本大震災以降、通勤・通学に自転車を利用する人が増え、交通事故全体に占める自転車事故の割合も増加。警視庁は「マナーを守れば防げる事故は多い」と意識向上による事故減を目指す。
◇震災後に事故急増
警視庁は自転車ブームが高まった数年前から摘発強化に乗り出している。昨年の取り締まり件数は信号無視が300件(前年比189件増)、ブレーキのない競技用自転車「ピスト」など制動装置不良が661件(同659件増)に上り、今年はさらに昨年を上回るペースだという。
一方、歩道での高速走行や一時停止違反の摘発はほとんどなく、警視庁幹部は「黙認と受け取られても仕方がない側面もあった」と話す。
今後は道路交通法の規定通り、子供や高齢者らを除き車道の左側を走るよう促し、走行可能な歩道を走る場合も安全徹底を求める方針とみられる。
東京都内で昨年起きた歩行者と自転車の事故は1039件で全国の約4割に上り、今年8月までの事故全体に占める自転車関連事故の割合は37.8%で過去最高を更新する勢いだ。
今年3月の震災以降の半年間の通勤・通学中の事故も、前年同期より5%(96件)増えている。警視庁は「このままではさらに事故が増える可能性が高い」とみている。
研究者によると、自転車事故の7割は交差点で起き、歩道走行が主要因。昨年2月には渋谷区で歩行中の女性(当時69歳)がピストにはねられて死亡する事故も起きている。
60年に制定された道交法は自転車の歩道走行を禁じたが、車道事故が増え、70年には標識のある歩道に限って走れるよう改正。歩行者との接触事故が目立つようになると78年の再改正で、走行可能な歩道での徐行や歩行者の前での一時停止を義務付けた。
警視庁幹部は「道交法の基本に立ち返って歩行者との事故を減らし、車道でのルールを守った走行を訴えたい」と、安全対策の効果に期待する。
また、警視庁は都と連携し、車道の左側を線で区切る自転車レーンのほか、路面を色分けして自転車と歩行者の通行部分を明示した歩道の整備を進める。現在は自転車レーンが13カ所9キロ、カラー舗装歩道が40カ所37キロにとどまるが、3年以内に計10カ所31キロを新設する方針を決めている。
「毎日新聞」10月19日(水)2時37分配信
●20代アニメーターの平均年収は110万円 あなたの知らない業界事情
これまでさまざまなタブーに切り込んできた、ニコニコ生放送の「トークセッション」。2011年10月14日の放送は「テレビじゃできない!?業界最新事情むき出しSP」と題し、東洋経済新報社が発行する『業界地図』とコラボして、各業界の過激な話が暴露された。
この放送は、スポンサー企業がいないニコ生だからこそ実現したと言っても過言ではない。いろいろな業界の儲けの仕組みや平均年収、年齢、今後の動向まで、業界担当の記者さんが、包み隠さず解説。司会役のジャーナリスト、井上トシユキ氏は、「おもしろい、時間が足らない」というほど、各業界の話は内容の濃いものとなった。
なかでも衝撃的だったのは「映画・アニメ」業界。オタク文化を世界に発信している日本でも、その現場で働く人たちの環境はけっして楽ではないようだ。例えば、アニメを支えるアニメーターは現在、40代が中心。この業界を担当する『週刊東洋経済』編集部の桑桑原幸作記者によれば
「あるデータでは、20代のアニメーターの平均年収が110万円。それだと生活できないので、若い人がこの業界に入らない。それで、高齢化が進んでいるとも言われています」
と発言。コメント欄にも「ひでえ」「無理だ」などの声が寄せられた。
JASDAQに上場しているアニメ業界大手のIGポートの社員の平均年収は423万円。あまり高いとは言いがたいが、実は本当に高いのは年齢。ここの社員の平均年齢が54.3歳。この数字について桑原記者は「今回『業界地図』で取り上げている128業界のなかでも最高齢ですね」と言うと、会場内は苦い笑いに包まれた。華やかに見える世界も、その内実はいろいろと大変なようである。
「news-postseven.com」2011.10.16 17:41
●全国いじめ被害者の会:放置すれば深刻 代表の大沢さん、県教委に対策要望/山形
中学3年の息子をいじめ自殺でなくしたNPO法人「全国いじめ被害者の会」(大分県佐伯市内町)代表の大沢秀明さん(67)と妻園子さん(67)が26日、県教委を訪れ、いじめ被害者の不登校や自殺への対策を求める要望書を提出した。大沢さんは「『いじめられている』と教師に訴えても調べてくれないという相談者が多い。いじめは放置しておくと深刻になる。加害生徒を教室でしかり、謝罪させる教育を徹底してほしい」と訴えた。
要望書では▽生徒がいじめを訴えてきた時や教師が気がついた時は調べてほしい▽加害生徒をしかれば被害者に限らず生徒たちは安心して訴え、報告するという信頼関係ができる▽教師の『知らなかった』は言い訳で、生徒から信頼されていないから報告や訴えがないのが真実だ--などとしている。
大沢さんは96年1月、当時中学3年の四男(15)をいじめ自殺でなくした。同級生が教師に「いま、たたかれているから止めに入ってほしい」などと訴えても動いてもらえなかったという。大沢さん夫妻は96年、福岡県などを相手に「教師がいじめをいじめととらえなかったため、いじめが深刻になった」として、安全配慮義務違反の民事訴訟を起こし、勝訴している。
「毎日新聞」10月27日(木)11時36分配信
●<雑記帳>あしなが育英会、奨学金給付苦慮で募金呼びかけ
東日本大震災の遺児支援を続ける「あしなが育英会」が、本来の目的である病気や自殺で親を亡くした学生の奨学金給付に苦慮している。29日、奨学生らが全国約200カ所で協力の募金を呼び掛けた。
同会は今春実施した募金の全額を、震災で親を亡くした子供1821人への一時金に充てた。そのため他の遺児への奨学金は募金額が目標に届いておらず、今後不足する懸念があるという。
JR札幌駅前では約50人の学生らが参加。「前に募金した」と断られる場面もあったが、北翔大1年の近藤あおいさん(19)は「子供が夢をあきらめないよう支援を」と訴えた。
「毎日新聞」10月30日(日)2時1分配信
●被災地派遣の幹部自衛官、相次ぎ自殺 「丁寧なメンタルケアが必要」の声
新潟県上越市の自衛隊宿舎で、陸上自衛隊の連隊長を務める52歳の1等陸佐が自殺しているのが2011年10月19日発見された。理由は不明だが、この1等陸佐は福島県の被災地で、人命救助や行方不明者の捜索の指揮を取っていた。18日にも、やはり被災地に派遣されていた青森県青森市の3等陸佐が自殺している。いずれも幹部自衛官だ。
今回の震災では最大10万人の自衛官が、被災地で過酷な救助、捜索の任務に当たった。以前にはイラクに派遣された自衛官に自殺者が急増して問題となったが、今回の震災では大丈夫なのか。
福島、岩手にそれぞれ派遣
そもそも自衛隊の自殺率の高さは以前から指摘されている。自衛隊には陸海空合わせおよそ25万人の隊員がいるが、自殺者は毎年80~100人。特に2004年からのイラク派遣では、参加した自衛隊員のべ2万人弱のうち16人が在職中に自らの命を絶った。日本全体の自殺率は10万人あたり24.9人(2009年)だから、3倍以上の高い割合だ。
今回自殺した1等陸佐は3月11日の東日本大震災発生直後からおよそ3か月にわたり、福島県の被災地に派遣されていた。前日までは普段どおり出勤していたが、19日の朝連絡が取れず部下が自宅を訪れたところ、首を吊って自殺していた。
青森市の亡くなった3等陸佐については、詳しいことは明らかではない。陸幕広報室によればこの自衛官も岩手県などの被災地に派遣されていたという。
2人の死が震災派遣に関係しているのかどうかは、今のところ不明だ。同室によると、被災地での公務中に急な病気などで自衛官は3人が亡くなっているというが、被災地から戻ってから死亡したケースについては「因果関係もわからないので、そうした統計は取っていない」。
自衛隊では、被災地に赴いた自衛官の心のケアについてはカウンセリングやメンタルヘルス教育の充実により対応しているという。
「救助で疲れきっているのに、訓練は普段どおり」
『自衛隊という密室』『日本を滅ぼす電力腐敗』などの著書があるジャーナリスト、三宅勝久さんは個々の原因はさまざまだとしつつ、自衛隊の「体質」の問題を指摘する。
「自衛隊では旧日本軍と同じで、『隊員はいくらでも代わりがいる』と思っているところがある。たとえば今回の震災で捜索に当たった隊員は、多くの遺体などを目にして相当なショックを受けたはず。十分な休息が必要なのに、帰還した隊員たちは普段通りの厳しい訓練を続けている。すでに訓練のための予算が出ているからです。一方で上層部は震災救助の実績などをもとに、さらなる予算を取ることしか考えていない」
さらに「男社会」の自衛隊では「弱音を吐けない」「できないとは言えない」雰囲気が強く、酷いいじめに遭ったり理不尽な仕事を押し付けられたりしても、そのまま抱え込んでしまい自殺にいたるケースが後を断たないという。「外部委託のはずのカウンセリングも実際には自衛隊OBが運営しているなど、外からのチェックが機能していない」
三宅さんは「震災による精神的な影響は、これから必ず出てくる」として、今回の自殺と被災地での任務との関係については、あらゆる可能性を検証する必要があると強調する。
「過労などが原因となれば責任問題に発展するから、もちろん自衛隊はやりたくない。しかしさらなる被害者を出すわけにはいけない。問題は自衛隊の閉鎖性。機密以外の情報は開示して、隊外の専門家が分析できる体制が必要です。これは国民全体の問題です」
「J-CASTニュースニュース社会」2011/10/22 10:00
●Twitterのユーザー名とパスワードを狙った攻撃が相次ぐ、Sophosが注意喚起
英Sophosは23日、Twitterのアカウントとパスワードを盗もうとする攻撃が相次いでいるとして、手口の一例を紹介し、ユーザーに注意を呼びかけた。
最近確認された手口は、「面白い写真を見つけた」「あなたに関する悪いブログを見つけた」といったメッセージとともにリンクが貼られているツイートで、このリンク先がフィッシングサイトとなっているもの。リンク先は偽のTwitterサイトとなっており、「セッションがタイムアウトした」と勘違いしたユーザーがユーザー名とパスワードを入力してしまうことを狙っている。
Sophosでは、こうしたサイトにユーザー名とパスワードを入力してしまった場合、攻撃者がTwitterアカウントにアクセスできるようになるだけでなく、同じユーザー名とパスワードを使用している他のサービスにもアクセスされる潜在的な危険があると警告。また、こうしたメッセージを友人から受信した場合には、その友人のアカウントは侵害されており、パスワードを早急に変更する必要があると友人に伝えてほしいとしている。
「Impress Watch」10月24日(月)14時0分配信
●「社会への同調」で生まれる「ニセの記憶」
われわれは世界を「物語」として認識するが、それは「事実」を歪めてしまうことも多い。同時テロのような社会的大事件についての記憶も含め、個人の記憶は、社会に同調する形で容易に変化しうることが実験で示されている。
人は物語を作る。われわれは世界を受動的に認識するのではない。われわれは世界についての物語を語り、ランダムに起こるイベントを整理して、ひとつの筋の通った物語にする。
この習慣は役に立つことも多い。しかし、深刻な副作用もある。筋が通っていない事実については、それを歪めたり無視したりする傾向があるからだ。エピソードのほうを重視するあまり、真実が遠ざけられ、何度も語っているうちに純粋な創作になることもある。例えば筆者は先日、自分の子どものころの大事な思い出(トイレに行っている間に、食べていた中華料理に兄が芥子を入れたという思い出)は、実際には妹に起こったことだったということを知った。私は妹のトラウマを自分のものだと思っていたのだ。
われわれは自分の物語を調整して、よりよい物語に変える。われわれは事実を曲げて、もっと集団にアピールするようにする。われわれは社会的動物であるから、過去の記憶も、社会的圧力に即する形で絶え間なく修正されているのだ。
この現象について研究した論文が『Science』誌に掲載されている。神経科学者チームは、個人の記憶が、さほど時間が経たないうちから、他者の意見によって変化しうることに着目した。
実験では、数十人の被験者が、5人ずつのグループに分けられ、警察の逮捕の様子を追った現場レポート風の短いドキュメンタリー映像を見せられた。3日後、被験者たちは、ドキュメンタリー映像についての記憶テストを受けた。さらにその4日後、被験者たちはもう一度呼び出され、今度は脳スキャナーにかけられた状態で、映像についてのさまざまな質問を受けた。
被験者たちは、同じグループで映像を視聴した他の人々の回答を見せられた。ところが、「ライフライン」として提示された回答は、実はどれも間違いであり、しかもその質問は、前回、彼らが自信を持って正しく回答したものだった。驚くべきことに、この偽のフィードバックは被験者の回答を変化させた。ほかの人の意見に従って、事実と異なる回答を行った確率は70%近くにものぼった。
問題は、彼らの記憶が実際に変化していたかどうかだ(過去の研究において、人は社会に同調するために、間違っているとわかっている回答も行うことが確認されている)。このことを調べるために、研究チームは、被験者をさらにもう一度呼び出し、再び記憶テストを受けさせた。その際に被験者には、前回見せた回答は、実は同じグループで映像を見た人のものではなく、コンピューターでランダムに生成したものだったと告げた。すると、最初のテストと同じ回答に戻るケースも見られた一方、40%あまりの回答は依然として間違ったままだった。これは、前回植えつけられた虚偽の記憶が、被験者の中ではすでに事実となっていたことを示している。
虚偽の記憶が永続したケースと、「社会への同調」によって一時的に誤った回答をしたケースとで、脳の活動を比較した結果、研究チームは、記憶間違いの神経的要因を突き止めることに成功した。主要な引き金になっているとみられるのは、2つの脳の領域、海馬と扁桃体が同時に激しく活性化することだ。
海馬は長期記憶の形成に関わっていることで知られる領域、扁桃体は脳の感情中枢だ。この2つの領域が同時に活性化すると、正しい記憶と虚偽の記憶は、虚偽の記憶のほうが社会的要素を帯びていた場合、入れ替わってしまうことがある、と研究チームは述べている。このことは、他者によるフィードバックは、われわれの記憶する体験を形づくる強い影響力を持っていることを示している。
なぜこの現象が起こるかについて、研究者たちは次のように述べている。
偽りのプロパガンダなどがもたらす社会的影響は、政治キャンペーンや商業広告における個人の記憶に有害な影響を及ぼしたり、目撃者の証言を変化させて裁判の妨げになったりするおそれがある。しかし一方で、記憶の同調は、適応的役割を果たす可能性も考えられる。社会的学習は、個人的学習よりも効率的で正確であることが多いためだ。このような理由から、人間は、本来の個人的意見と食い違っているときでさえ、集団の判断を信頼する傾向をもっているのかもしれない。
この研究は、社会的に共有された物語が、個人の記憶をまったく信頼できないものにしうることも説明している。例えば、2001年9月11日の「鮮明な」記憶に関して調査が行われている。悲劇的なテロ事件があってから数日後に、ウイリアム・ハーストらによって率いられた心理学者たちが、人々の体験についてインタヴューを行い、その後も個々の記憶について追跡調査を行ったのだ。その結果、1年後には、事件の詳細の37%が、最初の叙述から変化していた。2004年には、その数字が50%近くに達した。研究者たちは現在、10年目の調査結果をまとめているが、おそらく記憶のほとんどがフィクションに近いものになっているだろう。
われわれの物語は、よりよいものになる。よりエンターテインメント的で、ドラマチックで、恐ろしさをより強調したものになったりする。しかし、その「改良」は事実を犠牲にすることで行われている。物語は意味を生じさせるが、人生はふつう、そうではないからだ。
TEXT BY Jonah Lehrer
TRANSLATION BY ガリレオ
「WIRED NEWS」原文(English)2011年10月27日