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        精神状態の判断には、心因だけでなく状況因や生育歴、器質因の把握が不可欠。
        2012/10/27
        睡眠時無呼吸症候群の治療はキチンとCPAP(ポンプで空気が送られるマスクを装着する装置)で行っているため、昼間の眠気はほとんどありませんが、夜の睡眠の乱れは相変わらずです。
         先日も深夜の断眠の中、リアルな夢が2つ記憶に残りました。時間軸が乱れ、関係性があり得なく結ばれ、見たことのない風景の中でストーリーが展開されます。それは、覚醒状態であれば幻覚であり、幻視であり、幻聴であり、混迷極まる了解不能な「現実体験」となるでしょう。
         twilight(朝・夕に、太陽と月の2つの明かりが見えることが語源とされていますが、薄暗いはっきりとしない状態を表すようになっています)、夢と現実が交錯する刹那、意識レベルが低ければその区別を失うと思われます。夢と現実が交錯する刹那は、目覚め時だけとは限らず、過ストレス等による意識障害やせん妄状態、タイムスリップが生じた時等に起こると解釈することは乱暴でしょうか。解釈可能かと思っています。
         精神状態の診断は、精神科の世界的な操作的診断基準によって、(診察室での)その場の状態や本人の語りなどから行われるのが一般的です。短い診察時間では、コンパクトに聴き取って、診断基準と照らして診断し、処方する…というシステムが作り上げられてきています。インテーク(受理面接)だけは30分~60分程度の時間をとって、心理士さんなどがしっかりと聴き取ってくれるクリニックなどもありますが、数は少ないようです。
         精神状態が正常域を超えて、不安や混乱、自傷・他害、暴言・暴力などの問題行動化、強い抑うつや非現実的体験の表現などが生じた場合に、とりあえず「受診」、「病院に連れて行く」では、状況因や生育歴、器質因の把握がされないままに「診断」、処方がされてしまうことになりかねません。
         問題と思われる精神症状が生じるには、かならず因子(きっかけ)が、その以前にあります。生得的なもの(器質、性格、脳機能の違いなど)、生育環境、その中の人間関係性、虐待などの被害的体験(身体的および心理的)、喪失体験、他の身体疾患等々、想定できる因子を把握し、消去法で精神症状が残れば、そこからが精神科(心理)領域での「治療」が必要となる、という考え方が大切ではないかと思うこの頃です。
         それでは、最近の気になる記事です。

        加害者たち 罪悪感なく「面白い」

         ■いじめが止まらない。今も昔も、程度の差こそあれ、なくならない。
         ◇「お道具箱の中に油みたいなものが入ってる…」
         近畿地方の公立小学校に通っていた会社員の男性(37)は小学5年の時、同級生の男児が先生に泣きついたこの言葉を今もはっきり覚えている。
         男性は前日の放課後、教室に忍び込み、仲間数人と一緒に男児の机の中にあった道具箱に小便を入れた。
         男児は当時、男性の指示でクラスのほぼ全員から無視されていた。男性はいじめのニュースに触れるたび、このときの絶望した男児の表情を思い出す。その場面は無声映画のモノクロフィルムのように繰り返されるという。
         「下手したら自殺したかもしれない」。自身の息子が小学校に通う今、強い悔恨の情にかられるが、当時は男児の言動を仲間と笑いものにしていた。
         関東地方の公立小学校に通っていたフリーターの男性(31)は小学4年の時から同級生へのいじめや暴力事件を何度も起こした。男女問わず、相手が泣くまで悪口を言ったり、蹴ったりした。そのたびに校長室に呼び出された。
         なぜ、そんなことをしたのか。理由は明確だった。「鬱憤晴らし」だった。男性は小学3年から塾に通わされ、成績が悪いと父親から殴られた。「ご飯を食べないとか、些細(ささい)なことで怒鳴られ、殴られ、虐待のようだった。いじめはそのストレス発散だった」
         ■善悪教えない教育
         ◇「お前たちがやったことをすべて話しなさい」
         今から18年前の平成6年12月。愛知県西尾市の大河内祥晴(おおこうち・よしはる)さん(66)の自宅に、中2の次男、清輝(きよてる)君=当時(13)=が通う中学の校長が4人の男子生徒を連れてやってきて、生徒らにこう命じた。
         5日前、清輝君は自宅裏で首をつり、短い生涯を終えた。4人はいじめの加害者だった。遺書には万単位でお金を脅し取られていたことなどがつづられていた。《もっと生きたかった…》という言葉もあった。
         祥晴さんは怒りを押し殺して4人に語りかけた。「清輝に、いつ、どこで、誰と、何をやったのか、手紙に書いて毎週土曜に持ってきてくれ」
         4人は言われた通り、毎週、手紙を書いてやってきた。祥晴さんはその内容を見て驚愕(きょうがく)した。遺書に書かれた内容以上の壮絶ないじめの数々が記されていた。「何でこんなにひどいことが、すらすらと書けるのか…」
         祥晴さんの親戚が4人のうちの1人に、「清輝と仲が良かったお前が、なんでこんなことをやったんだ」と尋ねると、思わぬ返事が返ってきた。
         ◇「面白かったから」「楽しかったから」…。
         祥晴さんは手紙のやり取りを通じ、「あの子たちに罪悪感は絶対なかった」と確信している。「だからこそ、あんなにひどいいじめができた。そういう物事の善悪を教えてやれない学校教育とは何なのか」。時がたつにつれ、その思いは一層強まる。
         ◇「かわいそうな子」
         横浜市に住む小森美登里(みどり)さん(55)も平成10年、高1の長女、香澄(かすみ)さん=当時(15)=を自殺で失った。香澄さんは同級生から言葉や態度によるいじめを受けていた。学校には10回以上足を運び、メンタルクリニックにも通わせていた。
         ある夜、美登里さんは引きこもっていた香澄さんを散歩に連れ出した。美登里さんは励まそうと、加害者側の女子生徒のことを口汚くののしった。
         すると、香澄さんは冷静につぶやいた。「お母さん、優しい心が一番大切だよ。その心を持っていない、あの子たちがかわいそうなんだよ」。香澄さんはその4日後、自宅で首をつった。
         まな娘の言葉「優しい心」にちなんで「ジェントルハートプロジェクト」を立ち上げ、10年以上、いじめ防止のNPO活動を続けてきた美登里さんは「いじめは加害者の心の問題なんです」と言い切る。
         「加害者がやめない限り解決しないから」。この瞬間も、絶望のふちに立たされている子供たちがたくさんいる。
            ◇
         いじめを受けていた大津市の中学2年の男子生徒の自殺で、学校や教育委員会の不手際が指摘されてから3カ月余り。いじめがまた社会問題化している。自殺に追い込まれる児童・生徒は各地で後を絶たない。悲劇を防ぐためには何が必要なのかを考えてみたい。
            ◇
        【用語解説】大河内清輝君事件
         平成6年11月27日、愛知県西尾市の中学2年、大河内清輝君=当時(13)=が同級生4人から川に沈められたり、計100万円以上を取られたりするいじめを苦に自殺。遺書には「どんどんいじめがハードになり(略)もう、たまりません」などと記されていた。4人は恐喝容疑で書類送検され、うち3人は初等少年院、1人は教護院に送致された。その後4人は反省を深め、うち3人は今も清輝君の命日に焼香に訪れる。
        http://sankei.jp.msn.com/life/news/121021/edc12102110000000-n1.htm
        「産経ニュース」2012.10.21

        ●いじめ調査、自宅でアンケート記入 府教委が統一基準
         京都府教育委員会はいじめの有無を調べるアンケートについて、学校ではなく自宅で記入させるなどの府内統一基準を設けることを25日までに決めた。同級生の視線が気にならない自宅の記入で被害情報を得やすくするなど、実効性を高める狙いで、年内にも新基準でアンケートを実施する方針。
         アンケートの実施方法は国も府も明確な基準がなかった。府教委は文部科学省が行った9月の緊急調査では「府内ではほぼ学級内で行われた」とみる。ただ、大津市で自殺した中学2年の男子生徒に関するアンケートでは「学級内で誰が答えたか分かってしまうため詳細に書けなかった」と同級生が証言している。
         府教委は自宅記入を明記した新基準の原案を各教育局に同日提示した。京都市以外の公立小中高が対象で、質問用紙は「小学校低学年用」などと、学年に応じて複数の種類を用意する。
         新基準のアンケートを年末にも実施、文科省の緊急調査と比較する。田原博明教育長は「学校現場にさまざまな手法が混在しており、基準を示したいと考えた」と話した。
         原案では、追跡調査が容易な記名式とした。記名か匿名かについては、京都市や向日市が実名とする一方、福知山市は匿名と判断が分かれ、学校により異なる市もある。田原教育長は「記名か匿名かは意見が分かれると思うので、市町村の意見をよく聞きたい」としている。
        http://www.kyoto-np.co.jp/education/article/20121026000018
        「京都新聞」2012年10月26日

        ●<館山・中2自殺>いじめ再アンケート 小、中同級生らに
         千葉県館山市で08年に自殺した中学2年の男子生徒の父親が「いじめが原因」として再調査を求めている問題で、同市教育委員会が、同級生ら対象のアンケートを再実施すると父親に伝えたことが分かった。アンケートは自殺直後に行われたが、保管義務に反して学校側が廃棄していたことが今月明らかになった。いじめ問題でアンケートの再実施は極めて異例だ。【中島章隆、田中裕之】
         再アンケートするのは、当時の中学校在校生全員約560人。新たに、男子生徒が小学校6年生だった当時の同級生も対象に加え計約670人に上る。当時の中学在校生へのアンケートは自殺直後に行われたが、昨年3月に中学校長が廃棄を指示。市の文書管理規則では5年間の保管義務があり、市教委は今年1月に校長を厳重注意処分としていたことを今月10日に公表した。
         県教委は「遺族の心情への配慮からアンケートの再現が必要と判断した。全国的にも前例がないと思う」と話している。詳細については、26日の市教委臨時委員会で検討する。
         市教委や県教委などによると、同級生は現在大半が高校3年だが、上級生だった08年当時の中学3年生はほとんど卒業しており、用紙の配布先の確認なども課題となる。アンケート原案によると、質問は(1)亡くなった生徒にいじめと思われる行為をしたことがあるか(2)この件に関し、いじめと思われる行為を見たり、聞いたことがあるか(3)本件に関し、知っていることや意見があるか--の3項目で記名式。11月下旬までに集計結果をまとめ、遺族らに文書で報告する方向で調整している。
         県教委指導課によると、破棄問題を踏まえて公平性、中立性を保つため、回答の送付先は県教委とする予定。その上で市教委が分析と評価を担当する。
         この問題では、事件直後のアンケート結果から中学校と市教委は「からかいなどのいじめにつながる事実はあったが、死と結びつくと思われる要因は分からなかった」と結論づけた。父親は「母が外国人で小学時代からいじめを受け、別の学区の中学に進んでもいじめは続いた」と訴えており、再アンケートについては「とにかく知っていることを書いてほしい」と話している。
        http://mainichi.jp/select/news/20121026k0000e040226000c.html
        「毎日新聞」10月26日

        ●定時制高校で増える不登校 時代の変化に教員追いつけず
         働きながら高校卒業を目指す定時制高校に近年、変化が起きている。小中学校で不登校だった生徒など、一般の学校に馴染めない生徒が落ち着く場へと変わりつつあり、よりその重要性が増している側面も。だが同時に、中途退学者は増加傾向を示している。教育関係者からは学校側が時代の変化に対応しきれていないとの指摘も聞こえてくる。(市岡豊大)
         ◇「定時制は必要」
         「集団行動が苦手でクラスになじめなかった」。さいたま文学館(埼玉県桶川市若宮)で14日に開かれた「定時制通信制生徒生活体験発表会」。埼玉県立朝霞高校定時制4年、小松耀さん(19)は、こう話した。定時制で、同じ悩みを持つ同級生と心を通わすことができたという。「人を信じられるようになれた。定時制はそういう人たちのために必要な場所」と語った。
         発表会では、挫折を乗り越えた経験談が多く、定時制高校で不登校から立ち直った生徒も。県立羽生高校定時制2年の杉町麻由子さん(17)は小学校で受けたいじめを発端に中学校はほぼ欠席。高校で、いじめられていたクラスメートに声をかけたことをきっかけに友達ができ、学校が楽しくなったという。
         杉町さんは「定時制の生徒はいろんな事情があって個性を持っている。全日制より楽しいんじゃないかな」と笑顔をみせる。
         ◇増える不登校
         県教育委員会が公立学校を対象として行った児童生徒の問題行動調査(平成23年度)によると、定時制高校の長期欠席者数は21年度以降、1291人▽1306人▽1679人と年々増加。その中心は不登校で19年度は413人だったが、4年後の23年度には倍以上の976人に達した。
         また、中途退学者数は全日制も合わせた高校全体で減少しているにもかかわらず、定時制は19年度の686人から23年度は888人と逆に増加した。
         かつて定時制は社会人として働きながら通う高校だった。しかし、県教委の担当者は「何らかの問題を抱えて全日制に進めない生徒が通う学校になった。この数年間は特に変化が激しい」と話す。
         ◇変化に追いつけず
         学校はこうした変化に対応できているのだろうか。県立上尾高校定時制の岡部競(きそう)教頭は「生徒の内面に立ち入ることも求められるが、教員のスキルが追いついていない」と話す。県教委は今年度、モデル校に指定した定時制高校2校にスクールカウンセラーを配置。教員の補助として生徒支援に乗り出している。
         社会人からの需要がない以上、そもそも”夜間学校”であることの必要性についても議論がある。東京都は平成12年度から昼間定時制「チャレンジスクール」を開校。県教委も現在、昼間定時制高校について検討中という。
         昼間にすることで教員力強化にもつながりそうだ。ある県教委幹部は「夜間に出勤する定時制への異動は敬遠されがち。優秀な教員が育ちにくい環境になっている」と指摘する。
         通常クラスに適応できなかった子供たちの受け皿として重要性が増す定時制高校。その強化が今、急務となっている。
        http://sankei.jp.msn.com/region/news/121024/stm12102411560001-n1.htm
        「産経新聞」10月24日

        ●不登校:受け入れ、15高校が説明--倉敷であす/岡山
         不登校問題に取り組む「長期欠席支援ネットワーク・倉敷」など3市民団体は27日、倉敷市福田町古新田のライフパーク倉敷大ホールで「進路について考える会」を開く。小・中学校の不登校経験者、高校の中途退学者や保護者が対象。不登校経験者を受け入れている高校や通信制高校など15校が学校の特色を説明し、個別相談に応じる。午後1時半~4時半。参加無料。問い合わせは同ネットワークの水野さん(090・1010・4920)。
        http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121026-00000198-mailo-l33
        「毎日新聞」10月26日

        ●生活保護受給前に就労支援へ 厚労省、申請者にも働く場
         厚生労働省は26日、生活保護受給前の申請者や相談者に、2013年度から本格的な就労支援を実施する方針を固めた。申請が多い自治体の福祉事務所に求人事情に詳しい専門相談員を常駐させ、働く場の提供に乗り出す。
         就労支援はこれまで保護受給者に実施していたが対象を拡大し、増えている若者の受給の抑制を目指す。生活困窮者の自立支援策を柱とする「生活支援戦略」の一環で、来年度予算の概算要求に関連経費100億円を盛り込んだ。
         生活保護受給者には現在、自治体職員がハローワークに同行して職探しを後押ししたり、履歴書の書き方を助言したりする支援事業があり、受給前の人にも行う。
        http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2012102601001897.html
        「東京新聞」2012年10月27日

        ●「朝起きられない」疾患 起立性調節障害 思春期 軽症含め100万人
         朝起きられず、日中もだらだらと過ごすけれど、夜には元気になる−。子どものこんな症状には要注意。思春期特有の疾患「起立性調節障害」の可能性がある。認知度が低く「ただの怠け」と間違われやすいが、その数は軽症者も含め推定100万人。不登校の隠れた原因ともいわれ、周囲の無理解によって子どもを深刻な状況に追い詰めかねない。
         「この子の将来はどうなってしまうの、と不安でいっぱいでした」。フリーライターの武香織さん=川崎市=は、6年前に長男の大耀(たいよう)さん(18)が起立性調節障害を発症した当時を振り返る。
         2006年9月のある朝、中学1年だった大耀さんはベッドから起き上がることができず、学校を休んだ。青白い顔で頭痛を訴えたが、熱もなく、夜にはすっかり元気に。テレビ番組に笑い声を上げさえした。
         そんな日が続き、香織さんは「不登校?」といぶかりつつも、医者に連れて行くと、起立性調節障害と診断された。
         この疾病は10~16歳ごろに発症しやすい自律神経機能不全のひとつ。起立時などに脳の血流が下がり、立ちくらみや頭痛、疲労感を伴うほか、思考力や判断力も低下する。体を横にすると全身への血流が回復するため、寝転がるなどの楽な姿勢を取ることが多い。
         日本小児心身医学会などによると、小学生の5%、中・高校生の5~10%がかかり、中高校に登校ができないなどの重症例は全国で推定7万人。また不登校の児童・生徒の3~4割が起立性調節障害とみられるという。
         同会は06年、「診断・治療ガイドライン2005」を作成。臥位(がい)や立位などで血圧を測る「新起立試験」による診断基準を提示した。治療には▽できる限り生活リズムを整える▽起立動作はゆっくり行う▽水分、塩分を多く取る▽薬物療法(昇圧剤)−などの方法がある。症状は精神的ストレスによって悪化するため、心のケアも重要だ。
         ◇成長期終息で 症状和らぐ
         通常は身体の成長期の終息に伴って症状が消えたり、日常生活に支障がなくなったりする。とはいえ、すぐに治る病気ではなく、大耀さんも苦しい日々を過ごした。体がだるい、指先に力が入らない、勉強に集中できない−。テストの際には頭が動かず、問題文さえまともに読めなかった。
         学校は事情を理解してくれたものの、思うように登校できず、友人関係の悩みも体調の悪化に拍車を掛けた。「何度も死にたいと思った。夜、布団の中で誰にも迷惑を掛けない死に方を考えていた」と大耀さんは話す。
         香織さんは大耀さんと衝突もしたが「登校できたかどうか、に一喜一憂することが、息子へのプレッシャーになっていたのでは」と反省し、ありのままを受け入れようと決意した。「今は治すことだけを考えよう」と呼び掛けて治療に専念した。症状は徐々に好転し、中学を卒業した。
         大耀さんは音楽のドラムに興味を持ち、音楽系高校に進んだものの、中退。通信制高校に入り直し、早朝時間帯のアルバイトも始めた。仲間とバンドを組み、地域の音楽祭やライブハウスのイベントにも参加。「将来はプロのドラマーに」との目標を胸に、生きる自信を取り戻している。
         ◇「親の理解が 最も大切」
         大耀さんは、同じような疾病に苦しんでいる人たちに対し「学校生活がすべてだった中学時代と違い、社会は広かった。つらいときは誰の言葉も聞きたくなくなるけれど、ずっと苦しいわけじゃない。いつかきっと”兆し”が見えてくると信じて」とエールを送る。
         香織さんは9月、「起立性調節障害を広く社会に知ってもらえれば」と、自分たちの体験をつづった著書「朝起きられない子の意外な病気」(中公新書ラクレ)を出版した。「親の理解こそが最も大切と実感している。子どもが自分から動き出せるまで、温かく見守ってあげてほしい」と力を込めた。
         ◇教育現場ではどのように対応しているのか。
         東京都の区立小学校養護教諭、船越夏可さん(32)は「起立性調節障害を理解している教員はまだまだ少なく、『怠けているだけ』としか見ない人もいる。現状では各学校ごとに対応が委ねられている」と指摘する。
         船越さんは3年前、発症した児童に初めて接し、その対応の難しさを認識。昨年から大学院に入学し、疾患の子どもや保護者への聞き取り調査を続けている。
         子どもにとって、ただでさえ学校生活を送れないことはショックなのに、教員や級友の無理解に傷つけられれば自信を失う。適切な治療をせずに症状を悪化させ、長期の不登校で親子関係が悪くなったり、引きこもりやニートになってしまうケースも懸念される。
         船越さんは「症状の重さは人によりさまざま。学校側は個々の程度に合わせて柔軟に対応することが大切だ。疾患の疑いのある子を発見して医療機関につなぐ仕組みや、学校が保護者をサポートするシステムも研究したい」と話した。
         ◇自律神経の バランス崩れ 
         そもそも、起立性調節障害は新しい病気と思われがちだが、国内で初めて報告されたのは1958年のことだ。なぜ、あまり認知度が高まっていないのか。
        <田中英高・大阪医科大准教授>
         前述のガイドラインを作成した日本小児心身医学会理事長の田中英高・大阪医科大准教授は「当時の診断基準では正確に判定できず、心因性の不登校などと区別しにくかった。近年、ようやく医療現場で混乱がなくなってきた」と解説する。
         ちなみに朝寝坊などとはどう違うのか。朝寝坊の子どもは血圧を測る起立試験の結果に午前、午後とも異常がみられないのに対し、起立性調節障害は午前の方が午後より検査結果が圧倒的に悪い。また、うつ病の子どもは夜になって元気が回復することはない。
         発症する原因ははっきりしていないが、田中氏は「もともとの遺伝的な体質に加え、思春期のホルモンの乱れやストレスが重なり、自律神経のバランスが崩れたと考えられる」とみる。
         ◇心配りできる、きまじめな子注意
         ただ、発症しやすい子どもには一定の傾向もみられる。多くの保護者が「幼いころから手を煩わさなかった」というように、周囲に心配りができ、「ノー」と言えないきまじめな子どもだ。「慢性的なストレスを無意識に抱えているケースが多い」(田中氏)
         当事者にとって最も悩ましいのは、高校や大学などの進路のことだ。
         田中氏は「随時入学や高校卒業認定テストなど選択肢は多い。心と体を十分に休ませることで、数年後に急速に回復することも珍しくない」とした上で、こう助言する。
         「『人生は1冊の問題集』です。どんな難問も必ず解ける、危機は乗り越えられると信じて、明るく前向きに毎日を過ごしてほしい」
        <デスクメモ>
         武さんの体験本を読んだ。息子の異変に気付き、家庭問題などを追う取材力で早めに症状を知る。だがその後の道のりは戸惑いと挫折、希望に向けての日々だ。友人との付き合い方やその親に理解を求める訴え…。疾病の潜在者は少なくないという。家族だけで悩まず、専門の医師に相談してほしい。
        http://iryou.chunichi.co.jp/article/detail/20121024133044720
        「北陸中日新聞」2012年10月22日

        ●消灯後の携帯使用、心に悪影響か 中高生1万8千人調査
         中高生約1万8千人を対象にした大規模調査で、夜間、消灯後にメールや通話のため携帯電話を使う頻度が高いほど、心の健康状態が悪い傾向がみられるとの結果を、東京都医学総合研究所の西田淳志主任研究員(精神保健学)らのグループがまとめ、27日までに英国の専門誌に発表した。
         西田主任研究員によると、中学生の場合、携帯電話を消灯後に使う生徒は使わない生徒より睡眠時間が短くなっており、睡眠不足が心の健康度低下につながっている可能性が浮かんだ。子どもの「ケータイ依存」が問題となる中、メンタルヘルスの観点から警鐘を鳴らすデータとして注目される。
        http://www.47news.jp/CN/201210/CN2012102701001119.html
        「共同通信」2012/10/27