生活福祉資金貸付制度が機能していない。
2012/12/09
「生活福祉資金貸付制度」は、低所得者世帯:必要な資金を他から借り受けることが困難な世帯(市町村民税非課税程度)、障害者世帯:身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた者等の属する世帯、高齢者世帯:65歳以上の高齢者の属する世帯を対象に、都道府県社会福祉協議会を実施主体とする国の制度です。
○厚生労働省:http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/seikatsu-fukushi-shikin1/index.html
○全国社会福祉協議会:http://www.shakyo.or.jp/seido/seikatu.html
原則として、連帯保証人を立てることが必要ですが、連帯保証人を立てない場合も借入申込をすることができます。が、貸付利子の利率は、連帯保証人を立てる場合は無利子、連帯保証人を立てない場合は年1.5%となります。
種類は、総合支援資金、福祉資金、教育支援資金、不動産担保型生活資金となります。詳細は上記サイトから…。
生活保護申請の手前で、急場の生活困難を支える制度として、利用を必要としている方は多いと思います。
しかし、これらの説明での謳い文句は美辞麗句。実際に相談・申請をすると、生活保護申請並に水際での攻防がねちっこく行われるのが実態です。
社協の言い分としては、他の貸付制度同様に、償還率が低い(借りたお金を返すことができずにいる人の割合が高い)ために、審査がきびしくなっている、とか。
こんな例があります。老健施設から自宅に戻るにあたって、放置してきた自宅の掃除・片付け、生活再開ができる状態にするためのメンテナンスなどが必要、施設利用費が後払い状態で、退所後2ヶ月後の年金が入るまで無収入、この収入空白期間の穴埋めをしない限り施設退所ができない、そのためのつなぎ資金として「生活福祉資金」借り入れが必要に…。
実際は、相談から「申請書」を「連帯保証人」が受け取るまで約2ヶ月、申請から決定まで約2ヶ月、入金まで約1ヶ月。この間、同「資金」入金を前提にして施設退所を進めていて、決定・入金が遅れたために「緊急小口資金」も追加、転居のための経費は連帯保証人が自腹で立て替え…。それでも半月ほどの空白が追加されたために、その分が新たな焦げ付きとなっています。
これでは、生活保護申請をしていた方が、早く、確実に生活の立て直しができていたかも知れません。
償還ができない状態になっている方が多いのは、その人のせいでしょうか? 適切なケースワークや福祉的支援などにつながることができなかったために、「つなぎ資金」を消費してしまい、その後の生活設計も手つかずで、償還どころではない状態の継続…というケースが多いということでしょう。生活困窮に至ってしまった方がどうこうできるご時世ではありませんよね。
社会福祉協議会は、国から補助金を受けながらこの制度を運用実施しているわけですから、必要な方がちゃんと利用できるように、そして償還していけるように生活支援をしていくとろこまで本人さんと話し合いながら必要な支援をしていく必要があると思います。償還率が低いという結果だけから、支給条件をきびしくするという対応では、制度そのものが先細りするだけでなく、制度の理念そのものが崩れてしまいます。実際本件でも、貸し付け(入金)後のフォローは何もありません(償還が始まり、遅れれば「督促」するだけなのでしょう)。
生活支援のケースワーク、ソーシャルワーク(アクション)のレベルアップ、そのための人材育成や仕組みの有機的な立て直しへの取り組みが求められます。
まず制度を、その実態を知ることから…。
それでは、最近の気になる記事です。
発達障害:小中学生61万4000人 文科省調査・推計
普通学級に通う公立小中学生の6.5%に発達障害の可能性があることが5日、文部科学省の調査で分かった。40人学級で1クラスに2~3人が「読む・書く」が苦手、授業に集中できないなどの課題を抱えていることになる。調査対象地域の44都道府県(岩手、宮城、福島の3県を除く)を基に推計すると約61万4000人になる。このうち約4割は特に支援を受けておらず、専門家は「教員の増員などの手当てが必要」と指摘している。
調査は今年2~3月、学習障害(LD)▽注意欠陥多動性障害(ADHD)▽高機能(知的発達の遅れのない)自閉症−−の発達障害の主な3要素について、44都道府県の普通学級に通う計5万3882人を抽出し、担任教諭が回答した。
「文章の要点を読み取れない」「簡単な計算ができない」などLDがあり、学習面で著しい困難がある小中学生は4・5%。「教室で離席する」などのADHDが3.1%。「周りの人が困惑することを配慮せず言う」などの高機能自閉症は1.1%。一部はこれらが重複していた。
発達障害とみられる児童生徒を学年別に見ると、小学1年が最多で9.8%。成長に伴い障害が改善され、小学4年7.8%▽中学1年4.8%▽中学3年3.2%だった。
また、38.6%は「個別指導」などの支援は受けておらず、学校内で支援が必要と判断された児童生徒(18.4%)でも6%が無支援だった。
調査に協力した大南英明・全国特別支援教育推進連盟理事長は「医師らで構成される専門家チームの設置や教員の増員などの対策が必要だ」と訴えた。
同様の調査は02年にも5県から約4万人を抽出して実施。発達障害の可能性がある子供は今回より0.2ポイント低い6.3%だった。
http://mainichi.jp/select/news/20121206k0000m040080000c.html
「毎日新聞」2012年12月05日
●東電幹部を任意聴取=政府関係者も広範囲に-原発事故捜査・検察当局
東京電力福島第1原発事故をめぐり、業務上過失致死傷容疑などの刑事告発を受理した検察当局が、東電幹部ら告発対象者を含む関係者を広範囲に任意で事情聴取していることが8日、分かった。地震や津波の予測や、事故を防ぐ対策が可能だったかについて、認識を確認するなどしたとみられる。
検察当局はこれまで、東電や政府の関係者、国会議員ら100人を超える主要な事情聴取対象者をリストアップし、うち約50人について既に聴取した。早ければ来年春にも刑事処分する方向で捜査を本格化させている。
東京、福島両地検は8月、東電幹部らが地震や津波への対策を怠り、周辺住民に傷害を負わせたなどとする告発を受理し、捜査を開始した。
関係者によると、検察当局は約20人の専従体制を敷き、東電や旧原子力安全委員会、旧原子力安全・保安院、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)を所管する文部科学省の担当者らの聴取を進めてきた。
検察当局は、事故を誘発する地震・津波の発生が予測できたかを捜査の焦点と捉えている。東電は大地震時に発生する津波を最大15メートル超と試算していたが、5.7メートルまでの対策しか取っておらず、こうした試算の位置付けや、試算を受けた津波対策などについて、当時の幹部らから事情を聴いたとみられる。
検察当局は既に、原発敷地内に立ち入って事故現場も確認。事故と被害との因果関係を探るため、被災者からも説明を受けたもようだ。
業過致死傷容疑などの捜査では、予見可能性に加え、被ばくを傷害と認められるかどうかなど課題が多く、立証には困難が予想される。
http://www.jiji.com/jc/eqa?g=eqa&k=2012120800268
「時事ドットコム」2012/12/09
●奨学金制度のブラックリスト 厳しい取り立ても〈AERA〉
学生生活を支えるはずの奨学金に苦しんでいる人たちが増えている。大学卒業後も正規雇用に簡単に就けない中、厳しい回収が始まる。
この不況下、卒業しても奨学金を簡単に返済できない人もいる。大卒でも非正規雇用が珍しくないという状況。11年度だと、滞納者は約33万人、滞納額は876億円。数字の上では、滞納者は全体の11%弱に過ぎないが、無理して返済している人も少なからずいるだろう。
もちろん、救済策は用意されている。例えば、最長5年までの返還猶予。昨年からは、返還年数を最大で30年まで延ばし、回当たりの返済額を減らす「減額返還制度」も始まった。12度以降の利用者には、1種に限り、年収によって返還を猶予される「所得連動返還」制度も新設された。障害などによる就労不能者には返還免除も用意されている。
問題なのは、それが機能しているとは言い難いことだ。奨学金ホットラインを設けた首都圏なかまユニオン相談員の伴幸生(ばん さちお)さんは説明する。
「例えば、返還猶予制度は当初、機構のホームページにも載っていなかった。細かい字がぎっしりの内規の文書に載っていたのを07年に私たちが見つけて仲間とともに機構に訴え、やっとネットで周知されるようになったのです」
猶予にも問題はある。5年を超えての適用がされないことだ。それを補うために、機構は昨年、減額返還制度を設立したが、延滞金のある人は利用できないのである。
もう一つの問題点は、厳しい回収制度にある。
「特に、10年度から始まったブラックリスト登録はひどい」
こう訴えるのは、支援機構労働組合の岡村稔・書記次長だ。
「まず3カ月連続の滞納で、返還者は民間金融機関などが多重債務者対策などに用いる個人信用情報機関に登録されます。これでクレジットカードが持ちにくくなる。滞納3カ月から8カ月目までは回収業務が民間サービサーに委託され、滞納が9カ月続くと、機構が一括払いを求める『支払督促』を送付し、それでも応じない場合は給与の差し押さえや提訴が実施されます」(岡村さん)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20121207-00000000-sasahi-soci
「AERA 2012年12月10日号」12月7日
●いじめ対応、医師・弁護士らチームで
いじめが全国で社会問題になっていることを受け、県教育庁は3日までに、弁護士や医師、県教育委員会職員らでつくる「学校問題解決支援チーム」で、子どものいじめ、暴力などの問題行動の対応について協議する、年2回の定例会議を開くことを決めた。法律や医療的観点も含めて検証し、多角的な解決策を県教委や学校に示す。現場で対応に悩む教師の新たな支援策となりそうだ。本年度内にスタートする。(新垣晃視)
チームが協議するのは、いじめの加害者・被害者が入れ替わって複雑化し、保護者間の確執にまで発展したり、けがをさせた場合の医療費に絡むトラブルなど学校内での収束が難しいケース。学校が必要とする場合は、緊急の開催も可能。解決策のマニュアル作成も検討する。
同チームは2007年、多様化する保護者からの苦情に対し、学校の適切な対応を考える目的で発足。弁護士や警察、精神科医、大学教授、県教委職員など10人でつくり、保護者の苦情対応マニュアルを策定した。
その後、学校から要望があった場合に会議を開く予定だったが、要望が上がらず、09年度以降は予算化されず、会議も開かれなかった。今回、定例化することにより、「学校現場が相談しやすくなる」(県教委)。
文部科学省は9月に発表したいじめ問題の対応強化策で、「外部専門家の活用」を盛り込み、各都道府県教育委員会にも同様の取り組みを指示。これを受け、同庁は本年度から同チームの定例会議開催を決め、新たに予算を確保した。
http://article.okinawatimes.co.jp/article/2012-12-04_42359
「沖縄タイムス」2012年12月4日
●野球部いじめ:元生徒が賠償求め、鎮西高など提訴
熊本市の私立鎮西高校の元野球部員で発達障害のある元男子生徒(16)が部員らにいじめられて精神的苦痛を受けたとして、元生徒と両親が30日、同校と当時の野球部副部長、教頭を相手取り計約880万円の損害賠償を求める訴えを熊本地裁に起こした。
訴状によると、元生徒は小学時代、野球を通して友人関係、言語関係もうまくいくようになった。今年4月、同校に入学。同15日、野球部の合宿中、部員3人から「くさい」「障害児で生まれてきたらいかんだろう」などと言われ、6月には別の部員から殴るなどの暴行を受けて首などを負傷。医師から「外野やピッチャーはできない」と診断された。元生徒は「死にたい」と言うようになり、学校側に訴えたが放置されたという。暴行した生徒とは示談したという。
両親によると、自宅で見つかった手紙(7月20日付)には「トラックや車にひかれようとしたり、飛び降り自殺の練習を階段でした」とあったという。
同校は10月末、学費滞納を理由に元生徒を除籍処分とした。
学校側によると、元生徒からの訴えを受け、部員に面談するなど調査したが、いじめは確認できなかったという。同校は「訴状を読ませていただいた後、しっかりと対応する」としている。
http://mainichi.jp/select/news/20121201k0000e040155000c.html
「毎日新聞」2012年12月01日
●福島原発:下請け作業員の半数、偽装請負の疑い 東電調査
東京電力は3日、福島第1原発の下請け作業員のうち、約半数が実際の雇用主とは異なる会社の指示で働く「偽装請負」の疑いがあるとするアンケート結果を発表した。自分の労働条件を書面で明示されていない作業員も約3分の1いた。偽装請負は職業安定法で禁止されているほか、労働基準法では、労働条件を書面で明示するよう義務付けている。第1原発の廃炉作業を管理する経済産業省資源エネルギー庁は同日、東電に口頭で改善を指示した。
アンケートは、第1原発の元請け企業27社の下請け企業に勤務する作業員3974人を対象に、9月20日~10月18日まで実施。3186人が回答した(回答率80.2%)。
作業の管理員を除く2423人に、現場で作業を指示する会社と給料を支払う会社が同じか聞いたところ、「同じ」と答えたのは1173人(48.4%)だったのに対し、「違う」は1160人(47.9%)で、半数が偽装請負の可能性があった。
また、雇用主から強要・指示された内容について複数回答で聞いたところ、「現場では別会社の指示通りに働け」と言われたのは158人。「東電や元請けへの提出書類に、別会社の名前を書け」と指示された人も125人いた。
仕事内容や場所、賃金などの労働条件について、雇用主から書面で明示されなかったのは全回答者のうち1146人(36%)。198人(6.2%)は、口頭説明もなかった。
時給は、837円以上(71.8%)▽658円以上837円未満(2.8%)▽645円以上658円未満(1%)▽645円未満(1.1%)−−だった。
東電の尾野昌之原子力・立地本部長代理は3日の記者会見で「現時点で、偽装請負などの法令違反に当たるかは判断できないが、改善すべき状況は現実に存在すると認識している。元請け企業と協力して改善する」と述べた。
http://mainichi.jp/select/news/20121204k0000m040051000c.html
「毎日新聞」2012年12月03日