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        「わかった」、でも実行しない。同じ不安を繰り返す…。
        2013/01/08
         明けましておめでとうございます。年末に準備し、年明けにサイトをリニューアル公開したところです。また、時間を作って修正して行きたいと思います。
         さて、2013年最初の【この頃思うこと】です。
         説明し、望ましいと思える提案をしつつ話し合い、「わかりました」と了解されても数ヶ月経っても実行されていない。そして数年前と同じ様な不安を繰り返し訴える…。地元の保健センターや行政の障害福祉の窓口、地域包括支援センター、通院先の病院など、民間支援者としてできる限りの情報提供や支援要請をし、それぞれにつながってはいるものの、ご自身からある一定以上の介入を拒むなどで、支援が先に進まない。行政機関などの「申請主義」や不作為にも呆れるものがありますが、なぜ途中で「もう良いです」と行動を止めてしまうのか? ずっとこんな逡巡を繰り返していたケースで新たな進展がありました。
         昨年末に、親族から不可避的な精神的及び具体的な侵襲を断続的に受けて限界に至り、それまで手前まで何度かたどり着きながら断ってきた「入院」に自ら踏み切られました。「精神科入院がベストな選択とは言えないけど、今はしばらくゆっくりして、心身共に良い状態に戻しましょう」と、1ヶ月程度の「静養」をすすめました。しかし、2週間あまりで退院されてしまいました。「食事がおいしくない」「退屈だ」と…。
         それは事実でしょうが、精神的ダメージは少し回復できたかと思えるレベルで、家に戻ればまたすぐに元の侵襲的な状態に戻ってしまいますし、現にその親族の方は、入院中にも数度電話連絡をしてきたとか…。
         「不幸中の幸い…」だったのは、入院中に(時間もあり)判断のエビデンスが必要だったためかウェクスラー式成人知能検査(WAIS)を受けたこと(ご自身は検査名や目的はわかっておられない)。結果、数字や図形の処理は問題ないが、意味理解など言語性知能に苦手さがあり「軽度の知的障害」の疑いがあるとの説明がされたようです。検査所見やディスクレパシーを含む結果プロフィールのコピーももらったそうです。
         「わかった」、でも実行しない。同じ不安を繰り返す…。この理解のためのヒントが、WAIS検査から示され、医師から伝えられたことで、ご本人もすんなりと受け入れられたようです。「単語を重ねて、つながった文章で話されると理解できなかった…」など、ふり返って自己理解を始められています。
         大学も卒業されておられ、就労された時期もあり、日常会話に困難さは見られませんでした。でも、実際は困っておられたのです。
         大切なのはこれから。入院した病院から、通院先の病院へ医療情報として検査結果や入院治療の内容などは伝えてもらえるようです。福祉行政、地域福祉が医療と連携した支援を取り組んでくれるか否か…。これまで各々の「入り口」で止まっていましたので…。
         それでは、最近の気になる記事です。

        就活生:「失敗で自殺」4年で増加 NPOが悩み分析へ

          大学生の就職が厳しい状況が続く中、就活生を支援しようと、NPO法人・自殺対策支援センター「ライフリンク」が、就活中の学生に聞き取り調査を実施する。就活失敗が原因とされる自殺の防止も視野に、就活の悩みや不安を分析しケアするのが目的だ。職業観や人生観も聞き、さらに他国と比較もして、日本の若者が感じる「生きづらさ」や価値観を浮き彫りにした上で、支援の一助にするという。
         文部科学・厚生労働両省の調べでは、昨春卒業した大学生の就職率は93.6%(前年度比2.6ポイント増)。また、今春卒業予定の大学生の昨年10月時点の就職内定率は63.1%(同3.2ポイント増)で、回復傾向は見られるが、依然厳しい状況が続いている。
         警察庁によると、11年の10~20代の自殺者は3926人で前年より134人増えた。「就職失敗」が原因とされたのは、07年の60人から11年の150人と2.5倍に。大学生など学生は同16人から同52人と増えている。
         調査は1~2月、大学生と大学院生の計100人程度を対象に実施し、3月末予定のシンポジウムで結果を発表。内定を得る学生が増える夏に追跡調査もして対応を検討するという。心理学などを研究する学生らも調査に参加する。
         60項目程度の質問を予定し、「就活の不安」や「親からの重圧」について実感を探る。このほか、キャリアプラン、働くことや社会へのイメージ、大学生活の満足度も聞く。「死にたい」と考えた経験の有無や受診歴、頼れる人の存在など、深刻なストレスに関連した質問も用意。また、韓国や自殺率が日本より大幅に低いトルコでも同じ調査をして比較することも検討中だ。
         調査に参加する一橋大4年、松井沙斗美(さとみ)さん(23)は商社から内定を得た。企業の採用基準が不明確な場合が多く、真面目な人ほど内定を得られなかったときに自己否定につながる可能性が高いと感じたといい、「調査で就活生の実情を社会にもっと認識してもらえたら」と話す。
         ライフリンクの清水康之代表は「社会を意識する敏感な時期の学生に話を聞くことで、就活生だけではなく若者世代の生きづらさや価値観を浮き彫りにしたい」と話している。
        http://mainichi.jp/select/news/20130107k0000e040136000c.html
        「毎日新聞」2013年01月07日

        ●いじめ被害「親には言えない」…法務局への手紙相談増加 専門家が秘密厳守で返信
         大津市の中2男子が自殺した事件で同級生が暴行容疑などで書類送検されるなど、いじめの深刻な実態が浮き彫りになる中、各地の法務局に手紙で相談を持ちかける小中学生が増加している。校内でいじめを受けているケースが多く、内容は多岐にわたる。法務局関係者は「学校や親に相談できない子供の連絡が多く、問題の早期認知にもつながる」と指摘している。
         《いじめにあってます。菌(黴菌(ばいきん))扱いです。両親には、勇気が出ず何も言えません》《陰口を言われたり、無視されたりします。「ちくった」と言われるので学校には言わないで》…。昨年10月以降の約2カ月間で、東京都内の小中学生から東京法務局(千代田区)に届いた悲痛な叫びは750通以上に及んだ。
         法務省は悩みを周囲に打ち明けられない子供の「声なき声」を掘り起こそうと、平成18年度から、いじめや虐待の相談を手紙で受け付け、アドバイスする「子どもの人権SOSミニレター」事業を実施。毎年10~11月、切手不要の専用紙を全国の小中学校を通じて配布している。児童生徒は年間を通じて、悩み事を書いて投函(とうかん)すれば、法務局の担当者に届く。同省によると、20年度に5567件だったいじめ相談の手紙は年々増加し、23年度は8916件に。《「震災で死ねばよかったのに」「この町から消えうせろ」と言われる》。東日本大震災に伴う転校先での嫌がらせを打ち明ける訴えも昨年は目立ったという。
         子供への返信は、元教師など各地域で民間から選抜され、法務大臣が委嘱した人権擁護委員が主に担当。秘密の厳守を約束した上で、複数の選択肢を提示し解決を図る。東京法務局で委員を務める江藤佳子さん(61)は「一人で解決できるのか、大人の手が必要なのか。1通に1~2時間かかっても、状況に応じた返事ができるよう最善を尽くしている」と話す。
         法務省調査救済課は「窓口や電話では大人にうまく悩みを説明できないことも多い。一人で抱え込まず、思いを自由につづってほしい」と呼びかけている。
        http://sankei.jp.msn.com/life/news/130105/trd13010522300013-n1.htm
        「産経ニュース」2013.1.5

        ●大津いじめ自殺:同級生2人を書類送検へ 1人は児相に
         大津市で昨年10月、市立中学2年の男子生徒(当時13歳)が自殺した問題で、滋賀県警は男子生徒をいじめたとされる同級生3人について、暴行などの容疑で近く立件する方針を固めた。うち当時14歳だった2人については大津地検に書類送検し、刑事罰に問われない当時13歳だった少年については、男子生徒への暴行などの非行内容で児童相談所に送致する見通し。
         捜査関係者によると、当時14歳だった少年の1人は、昨年、校内で男子生徒を殴るなどした疑いや、男子生徒の成績カードを破った器物損壊の疑いがある。もう1人の当時14歳の少年については、校内での男子生徒への加害行為のほか、今年5月に女性教諭にけがをさせた傷害の疑いが持たれているという。
         また、男子生徒が窓から落ちる練習をさせられていたとされる「自殺の練習」については、他の生徒らからの聞き取りの結果、詳しい内容などは確認できず、度胸試しの一環だったと判断し、強要容疑での立件は見送る方針だという。
         一方、今年7月の学校などへの捜索容疑になった、昨年9月の体育祭で男子生徒の手足を鉢巻きで縛るなどしたとする暴行容疑については、「体育祭での行為は、遊びで同様の行為をしていた生徒が多く、犯罪との区別が難しい」として、立件の可否を慎重に検討している。
         これらの同級生3人を巡っては、体育祭での暴行容疑で県警が7月11日に学校と市教委を家宅捜索。その後、男子生徒の父親が3人を暴行、恐喝、強要、窃盗、脅迫、器物損壊の6容疑で大津署に告訴していた。
        http://mainichi.jp/select/news/20121223k0000m040065000c.html
        「毎日新聞」2012年12月22日

        ●性犯罪:再犯防止効果を実証
         法務省は、性犯罪の受刑者や保護観察対象者に実施している「認知行動療法」を用いた再犯防止処遇プログラムの効果が国内で初めて実証されたと発表した。受講者組が非受講者組に比べ、再犯率が低かったという。
         刑務所では06年5月からプログラムを実施。検証は、07~11年に出所した性犯罪受刑者(受講者1198人、非受講者949人)で3年以内で再犯(全犯罪)に至った人の割合を調べた。その結果、受講者は21・9%で非受講者の29・6%より、約8ポイント低かった。
         保護観察所も06年9月から保護観察対象者にプログラムを開始。導入前の非受講者410人と導入後の受講者3838人について、07年9月~11年12月の間に再犯(同)した人の割合を調べた。このうち、保護観察付きの執行猶予判決が確定した人では、受講者が非受講者を13・6ポイント下回った。刑務所から仮釈放されて保護観察を受けた人でも受講者が非受講者に比べ7・4ポイント低かった。
        http://mainichi.jp/select/news/20121223ddm041040109000c.html
        「毎日新聞」2012年12月23日

        ●いじめ自殺:控訴審で学校法人の賠償減額…名古屋高裁
         中学1年の時に受けたいじめが原因で高校2年の高橋美桜子(みおこ)さん(当時16歳)が自殺したとして、母典子さん(54)=愛知県刈谷市=が学校法人市邨(いちむら)学園(名古屋市瑞穂区)などを相手取り、慰謝料など約4250万円の支払いを求めた訴訟の控訴審判決が25日、名古屋高裁(林道春裁判長)であった。林裁判長は、いじめと自殺の因果関係を認めて学園側に約1491万円の支払いを命じた1審の名古屋地裁判決を変更、約619万円に減額した。
         1審判決は「学校側は、いじめを放置すれば自殺を招く恐れがあることを予見できた」としたが、林裁判長は美桜子さんが中学1年修了時に転校し、3年5カ月後に自殺していることから、「その間にさまざまな出来事や人間関係があった。高校の同級生とのトラブルや教諭との人間関係、進級問題による精神的ストレスが、自殺の原因と推認される」と判断した。
         美桜子さんは解離性障害などと診断されており、林裁判長は1審同様、いじめと障害の因果関係は認定。そのうえで、自殺当時の症状について「中学で受けたいじめと似た状況になった時に、過剰に反応する程度に過ぎなかった」として、障害が自殺の原因とはならないと指摘した。
         美桜子さんは02年4月、同学園が運営する名古屋経済大市邨中に入学。同級生から靴に画びょうを入れられたり、暴言を浴びせられたりするなどのいじめを受け、03年3月に転校した。06年8月、住んでいたマンションから飛び降りて死亡した。
         市邨学園は「判決を重く受け止め、真摯(しんし)に対応する。生徒間のトラブル発見、防止に努める」とのコメントを出した。
         ◇母「1審判決から後退し残念」
         高裁の判決後に高橋さんは記者会見し、「1審判決から後退したという気持ちで、残念」と、目を潤ませながら話した。
         高橋さんは、判決が学校側がいじめを放置した責任に言及したことは評価しながらも「いじめがなければ娘が亡くなることはなかった。娘の声が高裁に届かなかった」と悔しさをにじませた。
         現在は国や愛知県に対し、美桜子さんへのいじめの実態を解明する第三者調査委員会の設置を求めているという。高橋さんは、私立学校への行政側の指導が不足していることが問題と指摘し、「私立でも公立でも、子どもに救いの手がさしのべられる仕組みを作ってほしい」と訴えた。
        http://mainichi.jp/select/news/20121226k0000m040105000c.html
        「毎日新聞」2012年12月25日

        ●「教諭の死、公務で過労が原因」…鳥取地裁
         小学校教諭の男性が脳出血で死亡したのは公務での過労が原因だったとして、男性の妻が地方公務員災害補償基金(東京都)を相手取り、公務と認めなかった処分の取り消しを求めた訴訟の判決が鳥取地裁であった。
         和久田斉裁判長は「発症は公務から受けた肉体的、精神的負荷に起因する」と公務との因果関係を認め、処分取り消しを言い渡した。21日付。
         判決などによると、男性(当時47歳)は鳥取市立岩倉小で2年生の担任などを担当。2003年3月に体調を崩しながらも出勤し、19日にも39度を超える熱があったが出勤。早退後に自宅で脳出血で死亡した。
         和久田裁判長は「職員の自主的な取り組みは公務にはあたらない」とする同基金側の主張を退け、死亡の約1か月前から行っていた文集作成などが公務にあたると指摘。「日常外の公務も行わなければならず免疫力を低下させた」とし、妻の訴えを認めた。
         妻は同基金県支部に公務災害認定を請求したが認められず、支部や同基金への再審査も棄却されていた。同基金訟務課は「判決内容を精査し、対応を検討したい」としている。
        http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20121226-OYT8T00371.htm?from=tw
        「読売新聞」2012年12月26日

        ●ボート転覆:現場や競技に詳しい関係者からは疑問の声
         千葉県東庄(とうのしょう)町の利根川支流の黒部川で26日、高校生が乗ったボートが強風で転覆した事故で、転覆したのは1人乗りボート18隻に達したことが分かった。乗っていた生徒18人のうち6人(男子1人、女子5人)が病院に搬送され、うち4人が低体温症と診断されたが、いずれも命に別条はなかった。一部の船が転覆し、急きょ練習を中止したものの転覆が相次いだといい、県警は学校関係者らから当時の状況などについて事情を聴く方針。
         県警や県教委、県から練習の委託を受けた県ボート協会によると練習には千葉、茨城、群馬、山梨、神奈川の5県9高校の生徒34人が参加。26日午前9時から練習を始め、6000メートルのタイム測定などをしていた。同10時15分ごろ、天候が悪化し波が高くなり、2隻が転覆。現場責任者の教諭が練習中止を決めたが、他のボートが相次いであおむけになった。拡声機はなく、メガホンで避難を呼び掛け生徒らは自力で陸に上がったり、消防隊員らに救助されたりし、全員無事が確認されたのは約2時間後だった。
         千葉県教委と同県ボート協会が同日夕に行った記者会見での説明によると、練習開始は複数のスタッフで決めたが、気象条件について判断する具体的なマニュアルはなく、風速は測っていなかった。会見で担当者らは「中止を決めたタイミングなど判断は適切だった」とする一方、「街中と違い、川の上では風速や風向きの変化はよくあり、予測しにくかった」と説明。同協会の魚地利明ヘッドコーチは「感覚に頼ってしまった部分はある」と反省点も示した。
         また、ほとんどの生徒は救命胴衣を装着していなかった。日本ボート協会によると、着用判断は現場の責任者に委ねられ、義務化はされていないが、11年に定めた安全マニュアルでは、転覆したのと同じシングルスカルと呼ばれるタイプの船は、風速が4~5メートルを超えると安全な操船が難しくなるため、現場責任者に安全に配慮するよう求めている。
         銚子地方気象台によると現場に近い千葉県香取市のアメダスで午前9時54分に最大瞬間風速13・4メートルを観測した。強風注意報は出ていなかった。気圧配置からみて、竜巻のような現象は考えにくいが、突風が吹いた可能性はあるという。国土交通省の運輸安全委員会は、船舶事故として調査官3人を現地に派遣した。
         ◇「漁師なら絶対船を出さない」
         この日の練習実施は適切だったのか。現場や競技に詳しい関係者からは疑問の声も上がった。
         地元の漁業組合幹部、滑川幸男さん(60)は「朝から風が強かった。漁師なら絶対船を出さない」と指摘。一方、合宿に参加した千葉県立銚子商ボート部顧問の島崎安弘さん(54)は艇庫にいたが、風が気になって様子を見に行ったところ、ボートが転覆していたといい「風と波が強ければ、通常は船を出さないが、船を出した後に風が強まった。反省しています」と唇をかんだ。
         参加した高校関係者の一人は「強風なら陸上トレーニングに切り替わるが、複数の学校の合同合宿で日程も限られ、多少の風でも出てしまったのだろうか」と語った。
         ボート部の2生徒が一時不明となった県立小見川高校では、現場の上流約2キロでカヌー部らが練習していたが、風が強くなり、顧問の判断で練習を中止していた。同校の早川昌二教頭は「下流の事故の知らせを受けたのはカヌーを引き揚げた直後でした」と複雑な表情を浮かべた。
        http://mainichi.jp/select/news/20121227k0000m040143000c.html
        「毎日新聞」2012年12月27日

        ●いじめ後遺症「人が怖い」 24歳、消えぬ心の傷
        〈仕事を辞めてもよいと思い始めてます。もう取材には応じられない〉
         マサト(仮名)から電子メールが届いたのは、12月20日の朝だった。前日に都内で2度目の面会をして、年末までに写真を撮る約束をしたばかりだった。
         あわてて彼のツイッターをスマートフォンで確認する。ふだんは好きなアイドルグループの話題ばかり投稿しているのに、出勤前にこうつぶやいていた。
        私は自分勝手なのか
         弱気なメールを受け取るのは2度目だ。1週間前に初めて会った際も笑顔を見せていたのに、翌日は、24歳にして初めてのアルバイトが「続くか分からない」。日々、揺れていた。
         出会いのきっかけは私が投稿したツイッターの呼びかけだった。
        〈「いじめ後遺症」って知ってますか?〉
         自殺事件になると注目されるいじめ。でも実際は、死に至らなくても心に傷を残し、大人になって対人恐怖に苦しむ。私も、子ども時代、プロレス技をかけられて、つらくても笑ってごまかした記憶にさいなまれてきた。そんなことを打ち明けながら、声を募った。
         2日後、マサトからの最初のメールが届いた。
        〈私はいじめに遭い、人生が変わりました〉
         スマホで親指入力した全1288文字には、「人間関係に自信がない」「半引きこもり状態」といった言葉が並んでいた。
         JR山手線の駅近くにある喫茶店で話を聞いた。
         小学生の時に「ばい菌」扱いされ不登校になったこと。中高時代、休憩時間は1人で自席に座っていたこと。一緒に弁当を食べる相手もいなくて、「昼になると図書館に逃げ込み、家に帰って食べてた」。
         今も苦しんでいる、そのこと自体に負い目を感じる。「仲間はずれだけで、暴力もなかった。いつまでも吹っ切れないのは、自分が弱いだけなんすよ……」
         大学の夜間部に通い、就活が迫った2年前、臨床心理士がいる学内の相談室に通い始めた。人間関係のレッスンも受けた。「でも、面接が怖くて」。昨春、進路未定のまま卒業した。
         現在のつけ麺屋のバイトを見つけたのは12月になって。私にメールを送ったのは、「自分に区切りを付けたかったから」。でも、最初の取材から別れた後、こうも、つぶやいていた。
        〈はたして良かったのだろうか〉
         私はつぶやき返した。
        〈大丈夫ですよ。つけ麺、おいしかったです〉
         やっとの就職を、マサトは母校の臨床心理士に報告していた。心理士は「行ったり来たり少しずつ、できなかったことが、できるようになってる」と見守る。マサトのように「後遺症」に悩む学生は多いという。
         取材を断ってきたメールの4日後、マサトに再び会えた。この日は一転、少し得意げに、店長から「頑張ってるな」とほめられたこと、1月からフルタイムで働かないかと提案されたことを報告してくれた。
         その後、弱気なツイートやメールは届いていない。
         ■夢に、泣きながら帰る息子 まだ言えない、心の傷
         いじめを受けても、人はなかなか打ち明けようとはしない。10年前、20年前の「後遺症」となるとなおさらだろう。周りに「いまさらなにを」と一笑されかねない。言い出せずにきた声を聞きたい。匿名のままで、個人とつながるツイッターで呼びかけた理由だ。
         12月21日、私をフォローしてくれた人に会うため、大津市を訪ねた。
         少年のイラストを使ったアイコン画像から、男性だと思っていたら、30歳の静かに笑う女性だった。
         「いじめ自殺」が問題となっている市立中学の卒業生。警備員が立ち、緊張した雰囲気の母校の周りを一緒に歩いて話した。
         「私、スクールカーストが下の方だったから」
         いじめられた理由は学級内の「序列」の低さだったという。「きしょい」「ブス」。仲間はずれにされた。「いっそ暴力なら相手に反発できたのに。自分が悪いと思わされてた……」
         うつ状態となり、進学した高校を中退。いまは自宅で療養している。同世代は働き、結婚し、子どもを持つ年頃だ。時が経過するほど焦りは増し、傷は深まる。静かに涙を流した。
         苦しんでいるのは親もだった。「一家まるごと(の後遺症)もある」。50代の母親から届いたメールだ。
         20歳の息子は高校で不登校となり、自宅で暴れた。母親も心のバランスを崩し、治療を受けた。
         日差しに輝く花をアイコンにした母親は当初、取材に前向きだった。2日後、断りのメールが届いた。考えていると、なかなか寝付けず、「泣きながら帰ってくる子どもの夢でうなされる有り様で、まだ開けちゃいけない箱でした」。
         届いたつぶやきやメールは延べ100通を超す。いじめが注目され始めた1980年代以降に学齢期を迎えた20~40代が目立った。
         精神科医の斎藤環さん(51)は、いじめは「現代日本で最も多くのPTSD(心的外傷後ストレス障害)をもたらす温床」と指摘する。患者に「治る」と最初に伝える斎藤さんは、自らの治療法を「人薬(ひとぐすり)」と呼ぶ。人の中で傷ついた病を信頼できる人のつながりの中で癒やすのだという。
         ネットで手軽につながる時代。私たちは本当の声を届け合っているだろうか。
         12月29日、愛知県西尾市の大河内祥晴さん(66)を訪ねた。18年前にいじめを理由に中学校2年で自殺した清輝さんの父親だ。
         あの時、いじめに悩む多くの子どもたちから手紙が届いた。大人になった送り主たちと、いまも連絡を取り合う。
         「苦しいです。どうしたらいいか分かりません」。療養中の35歳の女性から、12月19日、携帯電話にメールが届いていた。2時間半かけて返事を打ち返した。
        〈清輝がいなくなって、私もどうしたらいいのか、わからなくなりました。車に乗ったまま、ハンドルを握って動けなくなり、夜空の星を見上げ続ける自分がいました〉
         いつも、ただ、自分の経験を記す。連絡ありがとう。それだけで、自分も支えられてきたから。
         ■「ネットで胸を見せた」告白した少女は
         【カナダ西部ポートコキットラム=藤えりか】昨年秋、カナダを舞台にソーシャルメディアを使った陰湿ないじめが発覚し、世界に衝撃を与えた。
         顔を下半分だけ見せたロングヘアの女の子。モノクロの画面に、手書きの紙を黙って次々と示す。
         「中1の時、ウェブカメラで、見知らぬ男に請われるまま胸を見せてしまいました」「1年後、男から脅されました」「(フェイスブックの)友達みんなにその写真を送られました」
         動画サイト「ユーチューブ」に9月7日に投稿された約9分の動画は、世界中で再生された。投稿したのは、カナダ西部ポートコキットラムに住む15歳の高校1年生、アマンダ・トッドさん。応援する声が殺到したが、10月10日、アマンダさんは自ら命を絶った。
         母親のキャロル・トッドさん(50)を自宅に訪ねた。ITも教える学校教師だ。「ネットでの振る舞いには気をつけるよう言ってきたけど、10代の子はなかなか聞こうとしない」
         アマンダさんが「ネットいじめ」の渦に巻き込まれたのは12歳の時。ネット経由でおしゃべりしていて、相手から「かわいいね」と言われ、求められるままウェブカメラに胸を見せた。その瞬間の画像を、記録されてしまった。相手は同じ10代かと思っていたが、成人男性だったらしく、写真はポルノサイトにも載せられた。
         アマンダさんのフェイスブック上の「友達」は500~600人。ネットだけでつながる「友達」にも写真は転送され、学校でも知れ渡り、クラスで孤立。自殺を図って一命を取り留めた時には、それをからかう書き込みがフェイスブックに投稿された。
         アマンダさんは2度転校したが、「状況は変わらなかった。『友達』はあちこちにいたし、写真を撮ったらしい男が、ネット上で転校先の学校も割り出した」とキャロルさん。
         ソーシャルメディアを使った、逃げ場所を許さないいじめ。皮肉なことにアマンダさんがそれを告白したのも、不特定多数が見られる投稿サイトだった。「動画を遺書だと思う人は多いけれど、違う。いじめた人たちがごまかせないよう、自分の身に起きたことを人々に伝えたかった」とキャロルさんは考えている。
         フェイスブック上にはアマンダさんを悼むページが多くできた。だが、悪意が追いかけてくる。カナダ・カルガリーに住む女性たちは、アマンダさんをネット上で中傷した一人がトロントの小売店勤務の男だと突き止めた。雇用主に通報し、男は解雇された。
         ところが最近、彼女らのページが消えてしまった。「やり過ぎだ」との批判の嵐に遭ったのだ。女性の一人は携帯電話も通じなくなった。メールを出したが、届かずに戻ってきた。
        http://digital.asahi.com/articles/TKY201301040355.html?ref=comkiji_txt_end_s_kjid_TKY201301040355
        「朝日新聞デジタル」2013年1月5日

        ●専門家意見受け起訴判断=障害・高齢容疑者で4地検-再犯防止で福祉と連携
         知的障害などの可能性がある容疑者について、福祉の専門家の意見を反映して起訴や求刑を判断する取り組みを、一部の検察庁が試行している。長崎地検は実施済みで、東京地検では高齢の容疑者も対象に年明けから開始する。更生の可能性がある容疑者を刑事手続きに付さなかったり、執行猶予を求めたりすることで、早い段階で自立支援を受けさせ、再犯を防止する狙い。
         検察が刑事処分などの判断に第三者の意見を取り入れるのは異例で、最高検は来年の検証結果を受けて試行の拡大を検討する。
         試行を始めるのは他に仙台、大津両地検。医師や心理学の専門家らによる審査委員会を各県に設置。障害の可能性のある容疑者について、地検や弁護人から助言要請があった場合に審査し、障害の程度や更生に生かせる福祉サポートなどを提言する。
         長崎では6月から実施しており、福祉施設に受け入れが決まった事案など3件を不起訴処分にした。仙台と大津では12月に委員会が発足し、審査は年明けから行われる見通し。
         東京では障害者に加え、身寄りや住居がないなど生活困難な事情のある高齢者も対象とする。地検が社会福祉士を雇い、事件ごとに意見を求めて刑事処分を判断する仕組みを検討している。
        http://www.jiji.com/jc/zc?k=201211/2012112300177&g=soc
        「時事ドットコム」2012/11/23