大阪市立桜宮高での体罰-自殺事件、体育系入試中止に思うこと。
2013/01/26
桜宮高校で生じた(生じてきた)体罰問題をめぐっては、さまざまな議論が展開されています。
体罰がダメなことと、体罰などを苦に自殺に至った生徒とご遺族の無念さを基本において、思うことを書いてみます。
客観的な(教育行政以外の公的第三者機関の調査などによる)、事実(実態)の解明、加害教師や教育行政の具体的な責任(過失や不作為を含む)の明確化と処罰などを適切な今後の対応、ご遺族サポート、それらに関して保護者や地域の理解・合意を広く形成できるようにすることなどが、まず考えられます。
各論としてすぐさま過熱状態になっているのが、同校の当面の対処として、市長が体育系2科の募集中止を求め(応じない場合はお金を出さないという脅しも含めて)、教育委員会がそれに応じて新年度の体育系の入試の中止を決定・発表したことです。
尾木直樹氏をはじめ複数の「教育の専門家」が市長の判断を「是」とする一方で、夜回り先生の水谷修氏はブログで「お願いです。もう少し冷静になって下さい。募集停止で苦しむ子どもたちのことを考えてあげて下さい。あなたのしたことは、この子どもたちに対する、許すことのできない体罰です。何も罪も犯していない、何も問題行動も起こしていない子どもたちへの虐待です」と「否」とするコメントを発表しています。
<参考>夜回り先生は、今!(水谷修ブログ) 大阪市の橋下市長に一言言わせていただきます http://www.mizutaniosamu.com/blog/010diary01/post_81.html
在校生、保護者、今年の入試を予定していた多くの皆さんも「否」の立場ではないかと推察します。
当初、体罰を容認する態度を示していた市長は、遺族との面会後に「認識に誤解があった」と体罰は許されないとする態度に一転。同校管理職や部活顧問教師の総入れ替えなど、「市長の立場」で教育委員会批判などを含めて持論を展開されています。
多くの識者から、「市長の責任」に言及しない態度は問題であり、これまでの氏の論理展開と同じであるとの指摘がなされているように、教育委員長をはじめ教育行政職の任命責任は市長にあり、自己の責任についてふれない態度はいかがかと思います。
ただ、「体罰は許されない」と断言、自殺を巡る事実関係を徹底的に調査することを明らかにした態度は、氏ならではの毅然たるものかと思います。
ただ(再び)、氏が共同代表を務める政治団体「維新の会」は(もう一人の代表を中心に)体罰を「指導」に必要とする「戸塚ヨットスクールを支援する会」と深い関わりがあり(もう一人の代表はその会長を務めている)、氏の「体罰否定」の真意を現段階で信じることは危険かと思います。
体罰などによって生徒が自殺に追い込まれ、体罰などの被害が他の生徒にも他の部活動でもおこなわれていたことに対する事件の解明と加害者の処罰を厳粛に行うこと、体罰に依存した「指導」が常態化していた学校の体質を抜本的に変えていくことは緊急の課題です。
ただ(再び)、それらは学校に関わる大人の課題=責任であり、その対処に生徒たちが巻き込まれ、さらなる被害が重なる状態となることは避けなければなりません。運動部主将を勤めた3年生8人が記者会見して入試中止反対を訴えた件について、「誰がこんなことやらせたんだ」と「学校側や一部保護者の入れ知恵」でやらされていたのでは?と尾木氏が指摘しているように、部活動での「良い成績」を残したいとする学校や保護者の一部が子どもたちを巻き込んで代弁させているとすれば(そうした思いから現体制存続を希望し、子どもたちに心理的誘導をしているとすれば)、この問題は、加害教師や管理責任のある学校や教育行政、市長だけの問題ではなく、大人たちみんなが我がこととして見つめ直すべき課題であるときちんと認識しなければなりません。
それでは、最近の気になる記事です。
「体罰ではなく暴行」 生徒の父親、顧問を刑事告訴
大阪市立桜宮高バスケットボール部主将の2年の男子生徒=当時(17)=が顧問の教諭(47)から体罰を受けた後に自殺した問題で、生徒の父親が23日、顧問を暴行罪で刑事告訴し、大阪府警に受理された。府警捜査1課はすでに部員や学校関係者、遺族らから事情を聴取。部活動で行われた体罰の実態解明を進め、立件の可否を判断する。
告訴では、昨年12月22日の練習試合で顧問から受けた体罰が暴行にあたるとしている。生徒は翌23日に自宅で自殺しているのが見つかった。顧問宛ての手紙には「なぜ僕だけがしばき回されなくてはならないのですか」と、指導への強い不満が記されていたという。
顧問は市教委の聞き取りに「練習試合で頬を平手で4、5回たたいた後、頭を4、5回殴った」と述べ、府警が自殺直後に事情聴取を行った際も「キャプテンなので厳しく指導した。発奮させるためだった」と体罰を認めている。
一方で生徒は自殺前日、母親に「今日も30~40発殴られた」と打ち明け、体罰の回数などをめぐって顧問の言い分と食い違いを見せており、府警は練習試合に参加した部員らから当時の状況を聞き取り、具体的な体罰の内容を調べる。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130123/crm13012316100019-n1.htm
「産経ニュース」2013.1.23
●なぜ僕だけしばかれると自殺生徒 苦悩にじむ、顧問宛て手紙判明
大阪市立桜宮高バスケットボール部主将の男子生徒=当時(17)=が、顧問の教諭(47)から体罰を受けた後に自殺した問題で、生徒が生前、顧問宛てに書いた手紙の詳細が22日、複数の関係者への取材で判明した。手紙には「なぜ僕だけがしばき回されなくてはならないのですか」「キャプテンをしばけば何とかなると思っているのですか」と、苦しむ生徒の心情が率直につづられていた。
大阪市教育委員会によると、手紙は自殺4日前の昨年12月19日、兄の助言をきっかけに、生徒がルーズリーフ1枚に書いた。しかし内容を見た他の部員からの忠告を受け、顧問には渡さなかった。
http://www.kobe-np.co.jp/news/zenkoku/compact/201301/0005688710.shtml
「神戸新聞NEXT」2013/1/23
●自殺:「気づく」を行政課題に 自治体など独自の対策
昨年は15年ぶりに3万人を下回ることが警察庁の速報値で分かった年間自殺者数。自殺の危険性が高い中高年層の対策に取り組んで成果を上げた自治体、若者の相談を受ける団体、警察の新たな試みを探った。
■職員が「門番」
「相手の感情に注意し不安な表情は見せないで」。東京都足立区庁舎ホールで8日開かれた「ゲートキーパー中級研修会」。区職員が相談者・相談員の2役に分かれ、悩みに気づき自殺を予防するゲートキーパー(門番)の講習を受けた。職員の9割以上の約3300人が初級コースを受講するなど全庁で対策に当たる自治体として知られる。
06年の自殺者数が都内ワーストの161人だった同区は「10年続けば町会一つの消滅に匹敵する」と対策を本格化させた。
40~50代男性らを「ハイリスク層」と位置づけ、自殺前に7割以上が債務等の相談で公的機関を訪れていたため「兆候に気づく」を最大の行政課題とした。11年から役所のあらゆる相談窓口を訪れた人の情報を一元管理する全国初の体制を構築。自殺者は11年に前年比23人減の149人となった。同区の担当者は「今後は女性の自殺などの対策を考えたい」と話す。
■若者を救え
若者の自殺者が増加傾向にある背景として、就職難やいじめ問題が指摘されている。若者の労働相談に応じているNPO法人「POSSE」(東京都)には、長時間労働やパワーハラスメントが横行する「ブラック企業」で働いた20~30代の相談が相次ぐ。正社員でも定期昇給がないなど不安定さが目立ち、事務局長の川村遼平さん(26)は「労働時間規制や社会保障拡充で低賃金でも生きていける状況が必要」と訴える。
全国展開の18歳以下向け電話相談事業を取りまとめる「チャイルドライン支援センター」(同)では、いじめで自信を失った孤独な高校生の相談が目立ち、代表理事の太田久美さんは「自己肯定感を持てない子が多い。学校や家庭で、まずは大人が教育力や人間力を取り戻さないと」と話す。
■警察と支援機関連携
大阪府警は今月、自殺未遂者の個人情報を本人や家族の同意を得て、保健所など府内約40の支援機関に提供する取り組みを始めた。支援機関は医師などの専門家と連携し、未遂者と一緒に問題解決を目指す。自殺者の3~4割が過去に未遂歴があるとされており、早期の支援によって自殺を再び試みるのを防ぐ狙いがある。
本人が情報提供を拒否するケースも多い。このため府警は、家族にも積極的に協力を求めて情報提供に同意してもらうよう各警察署に指示した。府警幹部は「情報提供への理解を浸透させ、一人でも多くの命を救いたい」と話している。
http://sp.mainichi.jp/m/news.html?cid=20130117k0000e040223000c
「毎日新聞」2013年01月17日
●自殺者15年ぶり3万人下回る 「経済・生活を苦に」減る 警察庁まとめ
2012年の全国の自殺者数は、前年より2885人(9.4%)少ない2万7766人(速報値)となり、1997年以来、15年ぶりに3万人を下回ったことが17日、警察庁のまとめで分かった。3年連続の減少。11月分までの内閣府のまとめによると、動機別では「経済・生活問題」が前年同期比で20%以上減少しており、全体を引き下げたとみられる。
内閣府は「経済環境が底打ちした影響もあるのではないか」(自殺対策推進室)とみている。
11月分までの内閣府のまとめでは、動機(複数計上)は「健康問題」が延べ1万2090人で最も多く、年代別では60代の割合が17.8%で最も多かった。
男女別では、男性が同8.3%減の1万9216人、女性が同11.8%減の8550人。
発見場所の都道府県別では、東京2760人、大阪1720人の順に多かった。最も少なかったのは鳥取の130人。
一方、東日本大震災に関連した自殺者は11月までに21人。統計のある前年6~12月の55人に比べ半分以下の水準。
年間の自殺者は97年まで2万~2万5千人の範囲で推移したが、不況が深刻化した98年に急増。前年比約8千人増で約3万3千人に達し、03年には3万4427人と過去最悪を記録した。
人口10万人当たりの自殺死亡率では日本の24.4(09年)は主要8カ国(G8)ではロシアの30.1(06年)に次いで高い。G8では以下、フランス16.3(07年)、ドイツ11.9(06年)、カナダ11.3(04年)、米国11.0(05年)、英国6.9(09年)、イタリア6.3(07年)の順。
00年以降のデータがある中では、リトアニアの34.1(09年)が世界最高で、韓国の31.0(09年)が2番目に高い。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG16083_X10C13A1MM0000/
「日本経済新聞」2013/1/17
●「不登校怒られ」祖父母を殺害容疑 広島県警、高2逮捕
16日午前0時ごろ、広島県警安佐北署に高校2年の少年(17)が「祖父母を殺した」と出頭した。警察官が広島市安佐北区の少年の自宅に駆けつけたところ、少年の父方の祖父(74)と祖母(73)が死亡しており、同署は少年を殺人容疑で緊急逮捕した。
同署によると、少年は「祖母に不登校であることについて怒られ、腹が立った。(15日)午後10時ごろに殺した」などと供述。2階にある少年の自室で祖母の後頭部を2キロのダンベルで殴ったうえ、台所にあった包丁で腹部と背中を刺し、その後1階の仏間で寝ていた祖父の腹部と背中も刺したという。自宅から、凶器とみられるダンベルと包丁が見つかったという。
http://www.asahi.com/national/update/0116/OSK201301160001.html
「朝日新聞デジタル」2013年1月16日
●長期体罰の子、脳が萎縮 熊本大准教授が共同研究
子どものころ長期にわたり強い体罰を受けた人は、受けていない人より脳の前頭葉の一部が最大で約19%縮んでいるという研究結果を、熊本大大学院医学薬学研究部の友田明美准教授(小児発達社会学)が米ハーバード大医学部との共同研究でまとめた。体罰と脳の萎縮(いしゅく)の因果関係を実証した研究として、体罰のあり方に一石を投じることになりそうだ。
友田准教授は筑波大(茨城県つくば市)で開かれている「都市化社会と脳の健全育成」を主題としたシンポジウムで25日、研究結果を発表する。11月に米ワシントンでも学会発表の予定。
研究は米国で、4~15歳のころに平手打ちされたり、むちで尻をたたかれたりするなどの体罰を年12回以上、3年以上にわたって受けた米国人の男女23人を対象に実施。磁気共鳴断層撮影装置(MRI)で脳の断面図を解析したところ、体罰を受けず育った同年代の22人に比べ、感情や意欲の動きにかかわる前頭前野内側部が平均19.1%、集中力や注意力にかかわる前帯状回が16.9%、認知機能にかかわる前頭前野背外側部が14.5%小さかった。
小児期に過度の体罰を受けると行為障害や抑うつなどの精神症状を引き起こすことは知られているが、脳への影響は解明されていなかった。今回の研究で脳の萎縮がみられた人については、体罰でストレス下に置かれた脳が、前頭葉の発達を止めたと考えられるという。
友田准教授は「研究結果は虐待の早期発見に生かせるのではないか」と話している。
■虐待発見に役立つ
子どもの虐待に詳しい才村純・関西学院大学人間福祉学部教授(児童福祉・母子保健)の話 虐待が子どもに与える影響を客観的な証拠で示した画期的な研究だ。子どもが虐待の事実を言い出せず、親も隠したり認識がなかったりして見落とされる事例は多い。脳との因果関係を裏付けることができるなら、隠れた虐待の発見に役立つだろう。研究成果が今後、教育や福祉の分野で普遍化されていくことを期待する。
http://www.asahi.com/edu/kosodate/news/SEB200810230015.html
「asahi.com」2008年10月24日
●特別支援学校生徒の修学旅行での死亡事故――態度”豹変”の新潟県教委
新潟県立はまぐみ特別支援学校高等部三年の修学旅行で、体調を崩した女子生徒Aさん(当時一七歳)が死亡した事故で、当初責任を認めていた新潟県教育委員会の”豹変”が問題となっている。
旅行は二〇一一年六月一日、教頭を含む教員、校医の計一〇人が生徒五人を引率し出発。バス移動中、脳性マヒ障がいで車イスのAさんは吐き気が数回あったが、学校側は十分に休憩させなかった。
群馬県の宿泊先に到着後、発熱し食事もほとんど摂れないAさんに学校側は十分な水分補給をせず、翌二日未明から嘔吐。当初、教員だけで対応したが、午前四時に胆汁も吐き体調が悪化。養護教諭が対応したが、校医に連絡せず、診察は同五時半頃に。
水分摂取量を養護教諭は記録せず、校医は「水分補給の点滴は不要。救急車で近隣の病院に運ぶと環境ストレスになる。保護者に迎えに来させ、主治医のいる新潟の病院で受診を」と診断し、養護教諭が七時、教頭が七時半になって、保護者に迎えに来るよう連絡した。
車で二時間以上かかる高速を往復した保護者は午後二時前、病院に娘を搬送したが、すでに「点滴する血管が確保困難」の重症。翌朝、「脱水性ショック」で死亡した。
県教委の佐藤昇誠・義務教育課室長は同年一二月一二日の検証作業会議で「責任は教委にある」と謝罪したが、補償問題の出た一二年三月頃から態度が変化。一〇月二日には中島秀晴・新室長が保護者らに「県費の補償なし。日本スポーツ振興センターの見舞金のみ支給」と告げた。一二月二六・二七両日、筆者の電話取材に中島氏は、(1)補償なしは新潟大の専門医らの意見聴取で「教員や校医の対応は死亡と直接的因果関係なし」との見解が出たから(2)だが教員らは十分に対応しておらず、降格した教頭を含む四人は懈怠と判断し訓告措置にした(3)道義的責任は大、管理責任もあるが、賠償責任はノーコメント――などと答えた。
保護者らは一二月一八日、上京し「いじめ自殺以外の学校管理下での死亡事故等発生時も、第三者委員会を設置し、公平公正な検証を行うよう教委に働きかけを」と文科省に要望。林剛史・初等中等教育企画課係長らは検討する考えを示した。保護者らは近く新潟地裁への提訴を検討中だ。
http://www.kinyobi.co.jp/kinyobinews/?p=2873
「週間金曜日ニュース」2013年1月25日
●記憶を思い出す様子を測定=サルの脳神経細胞で―東大-
ある手掛かりをきっかけに記憶を思い出す際、脳神経細胞の間で信号が伝わり、増幅される様子をサルで測定することに成功したと、東京大大学院医学系研究科の宮下保司教授や平林敏行助教らが米科学誌ニューロン電子版に発表した。
宮下教授は「健常な人が記憶を思い出せない度忘れの場合は、この想起信号がうまく伝わらないと考えられる。今後どのような条件で起きるか調べ、原因を追究したい」と話している。研究が進めば記憶障害のメカニズム解明に役立つと期待される。
http://news.infoseek.co.jp/article/130112jijiX159
「時事通信」2013年1月12日
●心中図り娘殺害、裁判長が被告の横にしゃがみ…
心中を図ろうと知的障害のある次女(当時39歳)を絞殺したとして、承諾殺人罪に問われた東京都世田谷区若林、無職松村宏子被告(69)に対し、東京地裁は21日、懲役3年、保護観察付き執行猶予5年(求刑・懲役4年)の判決を言い渡した。
佐藤弘規裁判長は判決言い渡し後、法壇を降りて被告に歩み寄り、「一歩一歩前へ進んで、困った時は周囲に相談して」と説諭した。
判決によると、夫、次女と3人暮らしだった松村被告は、夫が病気で余命わずかと知って将来を悲観。2011年10月、自宅で次女に心中を持ちかけた際、次女が「先に逝きたい」と電気コードで首を絞めたため、「楽にしてあげたい」と殺害した。被告も自殺を図ったが、夫に発見されて一命をとりとめた。夫はその後、亡くなった。
佐藤裁判長は「追い詰められた心情には同情の余地も大きい」と量刑の理由を述べた後、被告席に座って泣き続ける松村被告の横にしゃがみ込んだ。「夫がつなぎ留めてくれた命。困った時は長女や保護司に相談すると、約束してくれますか」と語りかけると、被告は「はい」と答えた。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130122-OYT1T00404.htm
「読売新聞」2013年1月22日
●診断書なくても障害認定 年金請求めぐり名古屋地裁判決
2001年に胃がんで死亡した男性(当時40)の妻(51)=名古屋市=が、男性の生存期間中の障害年金を支給するよう求めた請求について、診断書がないことを理由に国が却下したのは不当と訴えた訴訟で、名古屋地裁は17日、男性の障害を認め、障害厚生年金の却下処分を取り消した。
判決理由で福井章代裁判長は「請求に対する判断の資料を診断書に限るとした規定は見当たらず、男性の日記や妻の証言などで病状の推移は認定できる」と指摘。「初診から1年半後の認定の起算日となる時期には、男性は障害等級3級の状態にあった」とした。
妻の代理人弁護士は「診断書がなくても障害があったと認め、全国的にあまり例がない判決」と話した。
判決によると、男性は1993年10月に胃がんで余命6カ月から1年と診断されたが、医療機関での診療を拒否し、漢方などでの治療を続けたため診断書がなかった。01年2月に死亡した。
妻は07年9月、男性の生存中の障害年金を国に請求したが、旧社会保険庁は却下。再審査請求も却下されたため提訴した。
厚生労働省年金局事業管理課は「国の主張が認められず、大変厳しい判決だ。関係省庁と協議し適切に対処したい」としている。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFD1701M_X10C13A1CN8000/
「日本経済新聞」2013/1/18
●発達障害児向け塾登場 保護者ら関心高まる (東京多摩)
読み書きや計算が難しい学習障害(LD)など、発達の遅れが気になる子供を対象にした学習塾や通信教育が、多摩地区でも登場してきた。一人一人の特性に応じたきめ細かい指導を提供しており、学校だけでは子供に合った教育を受けさせられないと考える保護者の関心が高まっている。
多摩地区に住む女性会社員(45)は小学1年の次男を、発達の遅れが気になる子供向けの「学習塾Leafプログレス町田校」(町田市)に通わせている。小学校の普通学級で学んでいるが、授業についていくのが難しく、昨年11月に開設された同塾も利用することにした。
個別指導の授業を月2回受け、苦手だった文章題のコツをつかみ、解けるようになったという。女性は「友達が多くできるよう、特別支援学級ではなく、普通学級に通わせ続けたい。何とか授業についていければ」と話す。
同塾は開設以来、塾生が増え、現在は幼稚園・保育園から中学までの約65人が通う。運営会社「ウイングル」(港区)の手塚志穂さんは「普通学級では難しくて授業についていけないケースのほか、特別支援学級では内容が物足りないという場合もある」と話す。
こうした一人一人の発達障害の状況や要望に合わせて、同塾では教材を独自に作製し、使っている。
「りんごが6こなっています。あたらしいりんごが4こなると、あわせていくつでしょう」。こうした文章題を理解できない子供向けには、字を絵に置き換えた教材を開発。アスペルガー症候群など、対人関係に問題を抱えた子供には、コミュニケーション能力を高める教材も用意する。
通信教育でもプログラムが用意され、利用が増えている。大手予備校「四谷学院」を運営するブレーンバンク(新宿区)は、国語や算数、コミュニケーションなどについて学ぶ通信教育プログラムを提供中。自閉症児教育で有名な武蔵野東学園(武蔵野市)の監修で、対象は3~10歳程度。開講した2008年には100人未満だった申込数が、12年には1000人を超えた。うち約200人が都内在住者だ。同社は「学習内容を細分化し、苦手分野を克服しやすくしているため、関心を持ってもらえているようだ」とする。
ただ、民間の学習塾などを利用すれば、家庭にとっては経済的な負担が増すことになる。東京学芸大の高橋智教授(特別ニーズ教育学)は「本来は行政が、発達障害を抱えるすべての子供に総合的な支援を保障すべきだ」と話している。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news2/02/20130121-OYT1T00516.htm?from=tw
「読売新聞」2013年1月22日
●統合失調症の重症度・社会性の低下は、海馬体積の減少と関連
統合失調症において海馬体積の減少は高い頻度で報告されているが、疾患への影響(とくに臨床面、心理社会面にどれほど影響するのか)については依然として十分に明らかとなっていなかった。イタリア・ウーディネ大学のP. Brambilla氏らは、統合失調症患者における症状重症度と社会性の低下は、海馬体積の減少と関連している可能性があることを、三次元マッピング研究の結果より、報告した。British Journal of Psychiatry誌2013年1月号の掲載報告。
研究グループは海馬の神経解剖学的差異を、3次元(3D)コンピュータ画像解析を用いて調べることを目的とした。高解像度MRIと表面モデリングによる3Dマッピングにて、成人の統合失調症患者群と健常者対照群の海馬プロファイルの違いを調べた。海馬の3Dパラメトリック・メッシュモデルを手動トレースにて作成し、回帰モデルにてラジアル距離にみる診断尺度を、また色分布図を作成し関連プロファイルを評価した。
主な結果は以下のとおり。
・被験者は、統合失調症群67例、健常者対照群72例であった。
・海馬のラジアル距離について、両群間の差異は検出できなかった。
・しかし統合失調症群において、両側性にみられた体積減少が症状重症度(期間、陽性または陰性の症状について)の増大、および社会性の低下(教育レベル、QOL、健康状態)と関連していることが示された(Bonferroni補正後)。
・以上の結果から、統合失調症における症状重症度および社会性の低下が、海馬体積の減少と関連している可能性が認められた。
・画像診断尺度はアウトカム不良の構造的サインとして、サブグループ(海馬体積の減少を食い止める特異的治療を要する可能性がある患者)を特定するのに役立つ可能性がある。
http://www.carenet.com/news/general/carenet/33147
「ケアネット」2013/01/22