お知らせ

news

  • ▼新着情報

    • ▼ブログ

      • ▼研究ノート

        学校事故・事件に関するカウンセラーなどの役割について考える。
        2013/02/22
        前回に続き、大津市自殺事件での第三者委員会報告書に関する話しです。
         同報告書では、スクールカウンセラーの役割、運用の在り方について以下のような記述が見られます。
         「カウンセリング情報がそのまま学校管理者である市教育委員会の下に提供されたのではないかと考えられる」
         「スクールカウンセラーといった専門家が…深く関与していているのではないかということが窺われ、また、その黄務遂行においてプライバシーの厳守の原則が揺らいでいるのではないかと疑われる局面が見られた。これらは、スクールカウンセラーの専門性、独立性、中立性を骨かす重大な問題である」
         「当該県の「平成24年度スクールカウンセラー等の活用事業について」によれば、「スクールカウンセラ-の職務等」として、校長の指揮監督の下に、①児童生徒へのカウンセリング、②カウンセリング等に関する教職員に対する助言・授助、③児童生徒のカウンセリング等に関する情報収集・提供、④その他児童生徒のカウンセリング等に関し、各学校において適当と認められるもの、となっている。これを根拠にスクールカウンセラーは、校長の指揮監督下で、児童生徒のカウンセリング等に関する情報収集・提供をさせられる危険性がある。先に問題点としてあげたカウンセリングメモこ関する問題は、この規定に由来すると考えられる。か<て、スクールカウンセラーの業務そのものが、学校の生徒指導体制下に組み込まれ、教員の仕事を援助ないしは補完するためのカウンセラーとなり、完全に教員の「下的け機関化」しているかのような様相がある。このような現況は極めて不正常であり、臨床心理士の職質にも関わるために、緊急に改めることが求められる」  ある意味、これが臨床心理士のスクールカウンセラーとしての学校配置の目的であり、実態であり、報告書が指摘するように改められなければなりません。しかし、こうした実態は、心理士個人レベルの問題ではなく、学校管理職や教育行政による「勝手な解釈」によるご都合主義的な「活用」であることこそが問題ではないでしょうか。  「臨床心理学」が、「スクールカウンセラーの配置」という枠組みによって誤用されている問題は、学校事故・事件の事実解明を目的に設置される「第三者委員会」や、裁判での学校による「調査」の開示においても散見されます。  ある事案では、当初「学校が調査した事実部分のみの開示(個人を特定出来る部分は非開示とし)との決定」が裁判所で下された後、「原告は情報公開請求をしておりそこで開示された(実際は全部黒塗りで何も読めない)内容が既に"公定力"を有しており、裁判所としてもそれを超える決定は出来ない」という理由(?)で学校側は即時抗告、裁判所は「カウンセリング目的なので開示出来ない」として逆転非開示となっています。  在校生から事実解明を目的として収集した「アンケート」自体の問題もありますが、集めたものを公開しないことは、子どもたちが知っている事実を隠蔽する行為であり、それを「カウンセリング目的」を理由として、裁判所もそれを容認するという異常な事態です。  「カウンセリング目的のアンケート」というものがそもそも存在するのでしょうか。これは誤用を超えて、悪用と言うほかありません。臨床心理面接も行う「カウンセラー」の端くれとして、このテーマは追いかけて行きたいと思います。  それでは、最近の気になる記事です。 「不登校自殺」 悔い続ける遺族 苦しみに寄り添えず…(上)  育ち盛りの愛するわが子が、親より先に自ら死を選ぶ。これほどつらい経験があるだろうか。  ◇「楽になれたか…」  今から13年前の平成12年2月4日。小雪がちらつく京都府内の病院の霊安室で、出張先の東京から駆け付けた木下秀美さん(51)は中学3年の長男、学さん=当時(15)=に嗚(お)咽(えつ)しながら語りかけた。表情は穏やかで、まだ赤みもある。だが首に巻かれた包帯の下からのぞくロープの傷痕を見て、かすかな望みも許されないと悟った。  その日は私立高校を受験する日だった。学さんは午前4時ごろ、自宅で首をつって命を絶った。遺書にはこう書かれていた。  「自分に自信がなく、このままだと、ろくな大人になれないと思いました。これ以上、家族や先生に迷惑をかけられないと思った」  学さんは中2の2学期から学校を休みがちになり、中3の秋からは完全に不登校になった。理由を尋ねると「授業が分からない。ついていけないのに、どんどん進んでいく」と答えた。  自殺前日、学さんに変わった様子はまったくなかったという。夕食を終え、入試に持参する弁当のおかずをリクエストし、お気に入りのテレビ番組を見た後、いつも通り自室に入った。ただ唯一違ったのは目覚まし時計が4時にセットされていたことだけ…。  印刷会社で役員を務め、働き盛りだった38歳の父親が直面したわが子の死。木下さんは今も、その理由を問い続けている。  ◇生きる意欲そがれ  わが国で深刻な社会問題となっている自殺。警察庁の統計によると、10年に初めて3万人を超えたことを機に国が対策に乗り出し、18年に自殺対策基本法が制定された。22年から減少に転じ、昨年は2万7771人(暫定値)で、15年ぶりに3万人を切った。  一方で、若者の自殺は増加傾向にある。23年の「学生・生徒」は前年より101人(11%)増の1029人で、調査を開始した昭和53年以来、初めて1千人を超えた。学業や進路の悩みを苦にしたケースが多い。  小中高生でみると、平成23年は前年より66人増加し353人。平成以降は200~300人前後で推移しており、350人以上の高水準となるのは、昭和61年以来25年ぶりだ。  精神科医の町沢静夫さん(67)はこうした傾向を「学校、社会、家庭での苦しさの反映」とみる。「少子化の中、過保護に育てられるので対人過敏の傾向が強い。嫌われたり、叱られたりすることに反応が高く、衝動的に死を選ぶ」  NPO法人「自殺対策支援センター ライフリンク」代表の清水康之さん(41)は「いじめ、虐待、就職難など子供の生きる意欲が社会でそがれている」と指摘する。「周りの評価におびえ、自己を押し殺して作り笑いをしながら生きる子供は少なくない。そんな中で壁にぶつかると、壁を乗り越えてまで生きようと思わなくなる」  ◇「社会変えてくれ」  「不登校自殺」。木下さんは学さんの死をこう表現する。当時、学さんの中学は"荒れ"が激しかったという。校内でたばこ、教師への暴言、授業中にゲーム…。不登校率は5%を超え、府内で突出していた。  木下さんは学習の機会を奪われ、自己を見失ったことも自殺の一因と考え、京都弁護士会に人権救済を申し立てた。同弁護士会は学習権の侵害を認め、府教委や学校に改善を求めた。  一定の「成果」を勝ち取ったものの、木下さんは「息子を直接追いつめた一人」として今も悔やみ続けている。「世間並みに高校は出ておかないと」。そんな親の願いを一方的に押し付け、叱(しっ)咤(た)激励という形で登校や進学を促したこと。日々の仕事に追われ、息子の苦悩に寄り添うことができなかったこと…。  学さんの死後、仕事をやめた木下さんは大学院で臨床心理などを学び、精神保健福祉士の資格を取得。府内にカウンセリングルームを開き、不登校や引きこもりなどの相談に応じている。木下さんは、学さんが死をもって、こう訴えているように感じている。  「人が人として大切に育てられ、自分らしく生きられる社会に変えてくれ」      ◇  昨年はいじめを受けた大津市の中2男子、今年は体罰を受けた大阪市の市立高の高2男子の自殺が社会に波紋を広げた。今月14日には大阪府の小5男児が電車に飛び込むなど、子供たちの自殺はその後も止まらない。なぜ死を選ぶのか。防ぐには何が必要なのかを考えたい。 http://sankei.jp.msn.com/life/news/130218/edc13021811130001-n1.htm 自殺率、G8ワースト2 子供への対策に遅れ(中)  「いじめや体罰などを受けた子供の自殺は社会やマスコミの関心が高く、第三者委員会などで調査されるケースも増えているが、原因が分かりにくい自殺についても同様に詳しい調査が必要だ」  平成12年9月に埼玉県新座市の中学2年だった次男、陵平さん=当時(13)=を亡くした大貫隆志さん(56)は訴える。  陵平さんは、学校であめを食べたことを教員から注意された翌日、飛び降り自殺した。大貫さんは学校側に原因究明を求めたが、担任と面会できたのは約1カ月後。学校側はほとんど調査せず、話し合いも3回で打ち切られたという。  文部科学省の「児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議」の主査を務める筑波大の高橋祥友(よしとも)教授(59)は「子供の自殺が起きると、いじめがあったかなかったかだけに傾注するのは日本独特の風潮」と指摘。「学校や社会は死からしか学べないことは何かという姿勢で、すべてのケースの原因を究明した上で自殺予防の教育を普及させていくことが不可欠だ」と強調する。  ◇国挙げ取り組み  高橋教授によると、欧米では自殺予防教育が盛んに行われており、国を挙げた取り組みの結果、自殺率が大幅に減少する成果を出している国もあるという。  人口10万人当たりの自殺者数(自殺率)が30前後と世界的に高かったフィンランドでは世界保健機関(WHO)から提言を受けたことなどを機に、1980年代から本格的な自殺対策をスタートさせた。自殺が起きると、専門家チームを派遣し、遺族の同意を得て自殺直前の行動を詳しく聞き取った。調査には遺族の96%が協力したという。  詳しく分析した結果、自殺者の80%が鬱病かアルコール依存症を発症していたことなどが判明。このデータを基に対策を取った。  具体的には「メディカルモデル」と「コミュニティモデル」といわれる2つの考え方。前者は自殺の背景には精神疾患が隠されているケースが多いとして、早期に発見して治療につなげるというもの。後者は健康な人へのアプローチで、悩みを抱えたときに助けを求められないことが多いため、適切な援助を呼びかけるという考え。2つのモデルの組み合わせにより、同国では15年間で自殺率を30%減少させることに成功したという。  ただ同国でも、若者に関しては、いまだに高水準が続いている。WHOのデータによると、15~24歳の自殺率は17・8(2009年)。日本は15・2(同)で、主要8カ国(G8)ではロシアの25・8(06年)に次いで高い。  ◇相談相手は仲間  若者の自殺率が日本より30%程度低い米国では、児童・生徒向けの自殺予防教育が多くの州の学校で行われている。その背景には「子供が自殺を考えるほど追いつめられたときに相談する相手は、圧倒的に同世代の仲間が多いことから、相談された際にどう対応すべきかを教育するという考え方」(高橋教授)がある。  対処方法として強調するのは「早期の問題認識」と「適切な援助希求」の2点。具体的には(1)問題に早く気づく(2)誠実な態度で相手に関わる(3)秘密にしないで信頼できる大人に相談する-の3点という。  多くの州では、こうした自殺予防教育を担当する教員らへの訓練プログラムが整備されているほか、学校での自殺予防教育の内容について、保護者や地域の精神科医療機関などにも周知徹底するよう配慮されている州もあるという。  欧米に比べ、日本では、子供の自殺対策への取り組みは進んでいない。 http://sankei.jp.msn.com/life/news/130219/edc13021908350001-n1.htm 「寝た子」はいない 適切な予防教育急務(下)  自殺を防ぐためには誰が「ゲートキーパー」になるかが重要とされる。ゲートキーパーとは悩んでいる人に気づき、話を聞いて、必要な支援につなげる人だ。  学校の担任が自殺願望の強い母子を寸前で救ったケースがある。その一家は父母と高校生の長男、小4の次男の4人家族。長男は成績優秀で両親の期待を一身に背負っていたが、ある日の早朝、オートバイで事故死した。タクシーを使うよう注意した母親は「もっと強く止めておけば…」と自らを責め、自殺未遂。次男も画鋲(がびょう)を口に入れるなどの奇行を繰り返した。  担任が尋ねたところ、次男は「お母さんが飲まなかったお酒を飲んで『一緒に死のう』と言う。お兄ちゃんではなく僕が死ねばよかったんだ」と打ち明けた。  自殺の危機を察知した担任は、次男、母親とも精神科の治療につなげたという。  文部科学省の「児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議」の主査を務める筑波大の高橋祥友(よしとも)教授(59)は「子供の自殺は家庭の問題が深いケースもある。親も問題を抱えると、子供のサインに気づけないため、最初のゲートキーパーとして教員の役割は重要」と指摘する。  同会議は平成21年に教員向けの自殺予防教育の冊子を作成。次に導入を検討しているのが、直接子供を対象とした教育だ。  ◇「共感系」が大勢  「死にたいと打ち明けられたら、どうしますか」  昨年9月、長崎県大村市の医療法人カメリアが主催した子供の自殺予防のワークショップで、自殺予防教育を10年以上研究してきた四天王寺学園小学校(大阪府)の阪中順子教諭(60)が、全国から集まった自殺関連団体や行政関係者ら約50人に語りかけた。  参加者は2人一組のロールプレー(役割演技)に取り組み、相手役は(1)説教系「命は大切。そんなこと言ったらだめ」(2)励まし系「元気出して頑張って」(3)共感系「そんなにつらかったんだ。よかったら話して」-の3パターンで応じた。  これは阪中教諭が平成10年以降に3度、ある中学校で実践した授業の再現。参加者からは「共感系だけが悩みを話す気になった」との感想が大勢を占めた。  阪中教諭は「友達に死にたいと相談されたときに大事なのは『よい話し手』になるのではなく『よい聞き手』になること。その上で信頼できる大人につなげることが予防の基本」と話す。  ◇理解に温度差も  わが国の教育現場では、子供への自殺予防教育について消極的な風潮が強い。その背景には、健康な子供にも自殺願望が芽生えるのではないかという「寝た子を起こす」論がある。  自殺予防の講演を行うNPO法人「自死遺族支援ネットワークRe」代表の山口和浩さん(32)が昨年、自殺率の高かった九州の自治体の全中学校を回った際、露骨に嫌な顔をする校長がいたという。「校長によって理解に温度差がかなりある。漠然とした大人の不安感があまりにも大きすぎるのではないか」  阪中教諭は自殺予防教育実践の有無と自殺願望の変化を調査。男子では顕著な差が出なかったが、女子では明確に出た。  実践無しのうち「死にたいと思ったことがある」との質問に「どちらかと言えばその通り」(グレーゾーン)と答えた生徒の率は中1から中3にかけ9ポイント上昇したのに対し、実践有りでは1ポイント減少。「その通り」(ハイリスク)は実践の有無でほとんど差はなかった。阪中教諭は「グレーゾーンの生徒には教育効果があることがうかがえる半面、ハイリスクの生徒には効果が低く、個別のケアが必要」と分析する。  高橋教授は強調する。「子供はもはや寝ておらず、ネットなどから誤った情報を得る可能性もあり、適切な自殺予防教育が急務。その際、教員や保護者など関係者の合意形成とハイリスクな子供へのフォローアップが欠かせない」 http://sankei.jp.msn.com/life/news/130220/edc13022008410005-n1.htm 「産経ニュース」2013.2.18-20 ●宝塚市:いじめ、体罰から子ども守る 人権擁護委員設置へ /兵庫  宝塚市は19日、学校でのいじめや体罰から子どもを守るため、第三者組織「いじめ及び体罰に係る子どもの人権擁護委員」を今年5月、市長部局に設置することを明らかにした。弁護士や臨床心理士ら専門家2人を非常勤特別職として委嘱。相談や調査のうえ、市長に是正などを要請する。報酬など必要経費356万円を13年度一般会計当初予算案に盛り込んだ。  市によると、市内に在住・通学する高校生までの子どもへのいじめや体罰を対象とし、相談は市民以外からも受け付ける。委員は親や子どもに助言や支援をし、市長に対しては是正を要請する。市長は市の機関には命令、市教委には是正勧告、私立学校などには是正を要請する。事務局は市子ども政策課。平日の午後1~6時に電話などで相談を受ける。  川西市の第三者機関「川西市子どもの人権オンブズパーソン」などを参考に制度設計。公平性を保つため、市教委ではなく、市長部局に置くことにした。当面は宝塚市の要綱で設置し、いじめや体罰にテーマを特化する。将来は条例化し、他の人権侵害への対応も検討する。 http://mainichi.jp/area/hyogo/news/20130220ddlk28010405000c.html 毎日新聞 2013年02月20日 地方版 ●シンポジウム:自殺と精神疾患、議論 40人参加−−遺族弁護団 /東京  自殺者の遺族を法的に手助けする「自死遺族支援弁護団」が17日、精神疾患を抱えた自殺者をテーマに都内でシンポジウムを開き、約40人が参加した。鉄道や賃貸住宅での自殺で損害が生じ、遺族が多額の賠償請求をされる例や、自殺の場合は生命保険会社に保険金支払いを一定期間免責する仕組みを巡り、弁護士や精神科医、遺族が議論した。  精神疾患のため自分の意思で自殺したと言えない場合、賠償責任などが否定される例外はあるが、法曹界でも依然、自殺を「自ら選んだ死」とする考え方が根強いという。自殺者の多くは精神疾患を抱えているとされ、シンポではこの考え方が現実に合っているかを問題提起した。  精神科医の天笠(あまがさ)崇さんは、自殺に至るまでの精神状態を解説。「自分の意思というより、病的に、健康なときとかけ離れた精神状態で自死される方がほとんどでは」と述べた。  弁護団事務局長の生越(おごし)照幸弁護士は、労災認定を受けたのに生命保険金が当初支払われなかった事例を紹介した。和泉貴士弁護士は「保険金目当てではないことが明らかでも、例外を簡単に認めない運用が問題では」と話した。  弁護団の相談電話は050・3786・1980(水曜正午~午後3時)。対応時間外でも着信があれば掛け直す。 http://mainichi.jp/area/tokyo/news/20130218ddlk13040101000c.html 「毎日新聞」2013年02月18日 ●成年後見人:NPO、60代受刑者の出所後支援 名古屋  寝たきりで知的障害の疑いもある60代の男性受刑者の成年後見人に、NPO法人「名古屋成年後見センター」(名古屋市緑区)がなり、出所後の生活支援を行うことになった。引き取り手が見つからない男性を支援することで、犯罪を繰り返す「累犯者」に陥ることを防ぐ。専門家によると、服役中からNPO法人が成年後見人になるのは全国でも異例。  センターは、出所後の行き場がない同じ境遇の高齢者や障害者が罪を重ねることがないよう、成年後見人になるケースを増やしたい考え。専門家は「期待できる試み」と評価している。  センターによると、男性は09年の脳梗塞(こうそく)をきっかけに右半身がまひし、言葉も思うように出なくなって医療施設を転々とした。11年4月、タクシーに無賃乗車して詐欺罪で執行猶予付き判決を受けた。その10日後には無施錠の車から現金を盗んで検挙され、同7月に実刑判決を受けた。名古屋刑務所(愛知県みよし市)で服役している。  今月20日に出所予定だが、独身で両親とは死別。所持金も170円しかなく、生活のめどが立っていない。このため、刑務所や愛知県の施設「地域生活定着支援センター」の働きかけで昨年12月、名古屋成年後見センターが成年後見人となった。  同センターは有料老人ホームへの入所手続きなどを行い、生活保護費を管理して入居料を納めるなど、男性の生活を支援する。  法務省の統計では、11年に刑務所に入った受刑者のうち65歳以上の高齢者は8%、知的障害が疑われる人は22%を占める。  高齢者のうち服役2回以上は58%に上るなど、犯罪抑止や福祉面から累犯者対策がクローズアップされ、司法と福祉の連携強化が課題となっている。国は09年から、出所者の福祉支援を担う地域生活定着支援センターの設置を全国で進めている。  名古屋成年後見センターの石川徹理事長は「もっと早く男性に福祉の手が届いていれば、犯罪を重ねることもなかったと思う。今回の支援を成年後見制度の普及と活用につなげたい」と話す。  累犯問題に詳しい浜井浩一・龍谷大法科大学院教授(犯罪学)は「従来の刑務所には無かった発想だ。高齢者や知的障害者の受刑者に対する社会の関心が高まり、各地に地域生活定着支援センターができたからこそ生まれた成果で、累犯防止に向け期待できる試みだ」と評価している。  【ことば】成年後見人  認知症や知的障害、精神障害などで判断能力が十分ではない人に代わり、財産管理や契約行為、法定手続きなどを行う援助者。本人や配偶者、親族、検察官、市町村長などの申し立てにより、家庭裁判所が選ぶ。親族ら個人のほか、NPOなどの法人もなれる。本人の同意がない不利益な契約を後から取り消すこともでき、行った職務内容は家裁に報告する。 http://mainichi.jp/select/news/20130220k0000m040157000c.html 「毎日新聞」2013年02月20日 ●障害者支援4億円消えた 景気優先で冷遇  文部科学省が、障害者の大学教育支援のために要望していた予算四億四千万円が、二○一三年度予算案から削除された。この予算は民主党政権時の昨年九月、同省が概算要求。政権交代後のことし一月にやりなおした概算要求でも同額を求めていたが、財務省に認められなかった。安倍政権は景気対策を最重視、一二年度補正予算案と一三年度予算で計約七兆七千億円を公共事業に充てているが、経済浮揚にあまり結びつかない障害者施策には熱心さが足りないことが浮き彫りになった。 (城島建治)  認められなかった予算は「障害学生修学支援拠点形成事業」。身体障害や発達障害などのある学生が大学受験しやすいように配慮、入学後は授業を受けやすい環境を整備して就職支援も手厚くするという新規事業だった。  初年度は十大学程度を拠点校に指定。周辺大学に施設整備や教材開発について助言させるため、財政支援を強化する方針だった。だが同省学生・留学生課によると、予算編成の段階で「十分な予算がない」などの理由で財務省から認められなかった。同課は「ほかの事業費をやりくりして、修学支援を行うが、いくら確保できるか、現時点で見通しは付いていない」としている。  十八歳未満の全人口に占める障害者の割合は約2%だが、日本学生支援機構によると、障害がある学生の数は一一年度で約一万人で、全学生の0・3%にとどまっている。国の支援の必要性が指摘されてきた。  障害のある学生を支援する民間の「全国障害学生支援センター」の殿岡翼代表は「事業費削除は残念だ。大学改革を掲げる安倍政権には、障害のある学生の修学を含めた、特色ある大学づくりを進めてほしい」と話す。 ◆我慢強いるの論外  障害者政策に詳しい慶応大の岡原正幸教授(社会学)の話 安倍政権が公共事業に膨大な予算をつぎ込むのは、経済浮揚を最優先しているから。経済効率性ばかり考え、障害者へさらに我慢を強いるのは論外だ。 http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2013022102000143.html 「東京新聞」2013年2月21日