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        自閉症スペクトラム—「3つ組み課題」に加えて…。
        2013/03/16
        あっという間に3月も後半に入っていました。久々の更新です。
         NHKクロ現などで、「ASD(自閉症スペクトラム)」という表現が使われ始めています。ここ数年、「高機能の広汎性発達障害(HF-PDD)」などと、「知的に問題がない」とされるアスペルガー障害、広汎性発達障害、特定不能の広汎性発達障害などの診断名が概念的に表現されてきていました。アメリカ精神医学会(www.apa.org)の「精神疾患の分類と診断の手引」DSMが、今年5月に改訂され「DSM-5」となる予定で、「autism spectrum disorders (ASD)」というカテゴリーに統合されるようです。
         自閉症、高機能自閉症、アスペルガー障害、特定不能の広汎性発達障害…、という診断名がついてきた「症名」を、それぞれははっきりした線引きができるものではなく、「連続的な虹色の模様」の様に緩やかな表現形でとらえるべき、との考えからスペクトル/スペクトラムという概念が採用され、日本における名称を(私も一応会員の)日本児童青年精神医学会などが「自閉症スペクトラム」として行くことになっていて、NHKがそれを報道レベルで使い始めた、ということになります。
         ただ、「自閉症スペクトラム」に位置しない人を「定型発達」という概念で表現していくことになるのですが、その2つにも線引きはできないことは、大切なことです。「自閉症スペクトラム」の「特性」とされる様々な状態、強みや弱さなどは、おそらく「定型発達」とされる方にもいくつも在り、また、「自閉症スペクトラム」とされる方にもばらつき=「違い」があることを知っておいてほしいと思います。
         さて、自閉症の理解において、従来から「3つ組み課題」が重視されてきました。社会性・コミュニケーション・こだわりなどとされ、それぞれが関連しながら「定型者社会」での生きづらい状態を形成しています。しかし、これらの3つの「特性」からの「理解」では、「生きづらさ」を理解することは不十分だろうと思っています。
         私がこの「3つ組み課題」を前提に、さらに深く理解をすすめたいと思うのは次の2点です。
        1.情報処理機能の「違い」
        2.実行機能の「違い」
         先天的な脳機能の「違い」としてくくられてきた多くの「機能」を整理するとこの2点に集約できるのでは?と思います。
         情報処理機能は、実は多くの機能の総称です。(視・聴・嗅・味・触の)5感(第6感を含む)覚、記憶/感覚記憶・短期記憶・作動記憶・長期記憶自伝的記憶・回想的記憶・展望的記憶や記憶の過程(記銘・保持・想起・検索・忘却)、それらの情報の認知と行動化などです。これらの「違い」は、検査や短時間の問診での聴き取りなどからは充分に理解できにくく、学校や家庭などの日常生活場面における対人関係や自己感覚から気づいていけるものでしょう。
         実行機能は、「脳科学辞典/http://bsd.neuroinf.jp/wiki/実行機能」では「複雑な課題の遂行に際し、課題ルールの維持やスイッチング、情報の更新などを行うことで、思考や行動を制御する認知システム」とされている、何かの課題を企画し、計画を作り、(課題によっては役割分担をし)、集中し、やり遂げるという一連の動きとその力を意味しているものです。
         「3つ組み課題」の特性が見られたら、さらにこの2点に着目して生活上の、特に対人関係における課題や問題を本人さんや関係する方から聴き取らせていただくことで、生きづらさの本質部分のテーマがいくつも見えて来ます。
         『成人アスペルガー症候群の認知行動療法』(ヴァレリー・L・ガウス/著、星和書店/刊)との出会いから、私なりの「情報処理機能アセスメントシート」(本人さんに感覚的に度合いを記入してもらう)を作り、実施すると、クライエントの過去から現在に至る、トラウマや体験により形成されてきた自動思考やスキーマなどの同定に役立ち、個別サポートの課題と支援計画がより具体的なものになっています。
         この2つの視点による本人さんからの聴き取りから、多くの発見・気づきが(お互いに)あり、個別サポートのテーマが見えて来ます。
         それでは、最近の気になる記事です。

        大津市の遺族が提言 いじめ検証標準化求める

         大津市の中2自殺で、亡くなった男子生徒の父親(47)が11日、文部科学省を訪れ「大津市ではいじめ自殺の真相究明ができたが、うまくいかないことも多い。このケースを全国で標準化するべきだ」と要望し、いじめ対策に関する提言書を出した。
         提言書では、大津市がいじめ検証のために設置した第三者委員会が「真相究明の中心的な役割を果たした」と評価。自治体が遺族の求めに応じて第三者委を設置することを法律で義務付けるべきだとした。
         学校や教育委員会による児童生徒へのアンケートを義務化することや、いじめについての調査研究の充実、遺族への情報開示の徹底も求めた。
         父親は、文科省の担当者と面会後、「当事者として気付いたことを伝えていく必要がある。教育現場の改善につなげたい」と話した。
        http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130311/crm13031113120004-n1.htm
        「産経ニュース」2013.3.11

        ●体罰:報告書に教師名も公開、府審査会が答申 「公務過程で発生」 /京都
         府内の小中学校で起きた体罰の報告書について府情報公開審査会(会長、山本克己・京都大教授)はこのほど「学校名や教師名も含めて公開すべきだ」と答申した。これを受けて、府教委は今月中にも公開する。
         NPO法人・行政監視機構(城陽市)理事長の半田忠雄さん(72)が11年9月、府情報公開条例に基づき、08年4月から11年8月末までの「体罰に係る事象問題の報告書」を公開請求。府教委は8件の文書を公開したが、学校名や教諭名などは非公開とした。これに対し半田さんが同年11月、行政不服審査法に基づき異議を申し立てていた。
         審査会で府教委は「プライバシー保護のため、個人が特定できないよう、どの部分を非公開とするかについては、実施機関の選択裁量の問題」と主張。これに対し、審査会は先月27日付答申で「体罰は公務員の公務遂行の過程で発生しているものであり、非公開の対象にならない」と判断、児童生徒が特定されるおそれがあるものを除く7件を公開対象とした。また答申は「情報公開は国民・府民の権利の問題であり、実施機関に裁量の余地はない」と指摘した。
         体罰の報告書を巡っては兵庫県教委の非公開を不服とした馬場健一・神戸大教授(法社会学)が裁判で争い、昨年6月、最高裁が教師名も公開すべきとの判断を示した。府内では昨年9月、宇治市が教師名も含め公開した。馬場教授は「最高裁の決定があった後も教師名の公開には及び腰の教育委員会が多い。今回の答申は高く評価できる」としている。
         半田さんは「体罰を起こせば名前が公開されるなら、一定の抑制効果がある」と話している。
        http://mainichi.jp/area/kyoto/news/20130308ddlk26040373000c.html
        「毎日新聞」2013年03月08日 地方版

        ●児童虐待/母への暴力の影響も深刻 児童虐待の増加が止まらない。
         検挙件数は前年から23%増の472件と過去最多を更新した。7割以上は身体的虐待で、性的虐待も2割を超えた。こうした事件で32人の子どもが命を落としている。痛ましい限りだ。
         先月末には、行方不明になっていた大阪市内の6歳の女児が、尼崎市のアパートで遺体となって見つかった。出生直後に母親が首を絞めて殺害した疑いが持たれている。児童手当を受け取るために死亡を隠していた疑いもある。
         親の虐待から子を守るため、一時的に親権を停止する改正民法が昨春に施行された。こうした対策が機能しているのか、さまざまな角度から検証し、悲しい事件をなくさねばならない。
         虐待があったとして、昨年1年間に警察が児童相談所へ通告した子どもの人数は1万6387人に上った。虐待への関心が高まった結果とみられるが、8年間で17倍という急増ぶりだ。通告内容は暴言などの心理的虐待が半数を超えた。
         気掛かりなのは、子どもの前で母親らが夫などから暴力を受ける「面前DV」が、7割近くを占めていることだ。
         2004年の改正児童虐待防止法で、面前DVも児童虐待と位置付けられたことから、全体の数字を押し上げたようだ。ただ、被害の立証が難しく、警察庁によると検挙に至った例はない。
         とはいえ、子どもに与える影響は身体的虐待と同様に深刻だ。
         母親などへのDVを目撃している子どもは、発達の遅れや自尊心の低下などが目立ち、他の子どもへの暴力や暴言など攻撃的な行動を取りやすいとされる。母親へのDVは「自分のせい」と自らを責める子もいる。成長してからも、そうした心の傷に苦しみ続けるケースは多い。見えない被害を放置してはならない。
         子どもを虐待から守るためには、暴力にさらされず安心できる生活環境が欠かせない。児童相談所の役割は重いが、ケースワーカーの不足も指摘されている。子どもの危険をいち早くとらえ、対応できる体制整備を地域の中で考えたい。
         夫婦間のDVが続く家庭では、子どもも親などの暴力にさらされている場合が少なくない。兵庫県内で9カ所に設置されている配偶者暴力相談支援センターと児童相談所などの関係機関が連携を強めることで、家庭内の暴力に対処していく必要がある。
         子どもや配偶者を暴力で支配することは許されない。まずは、その意識を浸透させることだ。
        http://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/201303/0005807452.shtml
        「神戸新聞」2013/03/12社説

        ●少女連続刺傷 家裁送致決定 「医療少年院が最良」
        少年に言い渡されたのは、刑事処分ではなく、家裁送致だった。三郷市や千葉県松戸市で少女二人を刺したとして、殺人未遂などの罪に問われた少年(18)のさいたま地裁での裁判員裁判。十二日の公判で、田村真裁判長は事件をさいたま家裁に移送する決定を言い渡し、医療少年院での治療が「最良の手段」と、その理由を説明した。少年は再び家庭裁判所の審判を受けることになる。
         「罰を受けずに済んだわけではありません。君は変わる必要があります。変わらなければなりません」
         田村裁判長は決定理由を読み上げた後、分かりやすい言葉を選び、少年に語りかけた。「分かりましたか」。田村裁判長が声をかけると、少年は前かがみに座ったまま小さくうなずいた。裁判員たちは、じっと少年の表情に見入っていた。
         これまでの公判で、少年は少女二人を殺害しようとした動機について「興奮するから」と供述した。殺害後に首を切って持ち帰る計画だったなどと説明し、検察側は懲役五年以上十年以下の不定期刑を求めていた。
         この日の決定理由で田村裁判長は、悪質な動機は、少年の広汎性発達障害や家庭環境と直結しているとして、刑事処分の根拠とすべきでないと指摘。「治療のためには少年刑務所より医療少年院が有効であることは明らかで、保護処分は再犯を防ぐ社会の要請にもかなう」と述べた。
         弁護側の柴野和善弁護士は決定を受け「少年には裁判長の言葉をしっかりと受け止めてほしい。裁判員の方は難しい決断だったと思うが、少年の将来を真剣に考えてくれたと思う」と評価した。
         検察側は「障害がある少年という特異な審理に取り組み、熟慮を重ねた末の判断であると受け止めている」とコメントした。
        http://www.tokyo-np.co.jp/article/saitama/20130313/CK2013031302000150.html
        「東京新聞」2013年3月13日

        ●自殺:10~20代の女性自殺者、67%に未遂歴 支援早める対策急務−−NPO「実態調査」
         10~20代の女性自殺者の67%に自殺未遂歴があることが、NPO法人「自殺対策支援センターライフリンク」(東京都)が28日に公表した「自殺実態白書」でわかった。悩みを抱えてから自殺までの期間は雇用形態などで違いがあり、ライフリンクは「未遂歴を有効に生かし、事案によって支援を早めるきめ細かな対策が急務」と話している。
         ライフリンクは07年から5年間、自殺者の遺族が集まる会合の出席者ら523人に、生前の状況を聞き取り調査した。男女全体で未遂歴があったのは33%。各年代とも女性は男性より高率で、特に若年女性の未遂が際立った。
         女性は薬物使用や自傷による自殺未遂が以前から多いが、自治体の対策は自殺者の7割を占める男性が中心になりがちだ。ライフリンクによると、治療後の精神的ケアなどで未遂者を支援しているのは東京都荒川区や秋田市、大阪府警などに限られる。
         調査では、自分で自営業を始めた人の場合は経営難など最初の悩みを抱えてから2年、主婦は育児疲れやDV(ドメスティックバイオレンス)被害などで苦しんでから8年余りで、それぞれ半数が自殺する傾向も判明した。白書では、09~12年の警察庁の自殺者数データも独自集計。雇用形態、年代、同居人の有無などの観点から地域性を探り、「主婦が多い」「自営業者が多い」などの特徴を市区町村ごとに分析した。白書はライフリンクのホームページ(http://www.lifelink.or.jp)で公開される。
        http://mainichi.jp/select/news/20130301ddm041040158000c.html
        「毎日新聞」2013年03月01日

        ●自殺の10~20代女性、67%未遂歴=いじめ、虐待も遠因-NPO調査
         自殺した10~20代の女性の67%に自殺未遂歴があったことが、自殺問題に取り組むNPO法人「自殺対策支援センターライフリンク」(東京)がまとめた「自殺実態白書2013」で分かった。
         白書では07~12年までに自殺した人のうち523人について遺族らから聞き取り調査を実施。自殺未遂歴に関しては、全体では33%で未遂歴があり、女性は48%と男性(26%)の2倍近くに上った。
         自殺に至る主な要因として「事業不振」「職場環境の変化」「失業・就職失敗」「生活苦」「負債」「家族間の不和」「うつ病」などが挙げられた。
         過去に虐待やいじめなどを受けた経験が「自殺の遠因」になっていた可能性がある人は女性では19%と男性(12%)より高かった。
        http://www.jiji.com/jc/zc?k=201303/2013030100594&g=soc
        「時事ドットコム」2013/03/01

        ●京都府が「自殺対策条例」検討 「ゼロ」目指し対策印刷用画面を開く
         京都府内で2012年の年間自殺者数が15年ぶりに500人を切ったことを受け、府は自殺者ゼロを目指し、対策に力を入れる。地域ごとの特性に応じた市町村の施策への支援や各種団体間の連携を強化し、都道府県では全国初となる自殺対策条例(仮称)の制定も検討する。
         府内の自殺者数は1997年の467人から急増し、2000年の696人をピークに近年600人前後で推移していた。12年は464人となり、人口10万人当たりの自殺者数も17・6人と全国最低になったとはいえ、府は「依然として高水準」としている。
         府は、高齢者や中高年など地域の自殺者の傾向を踏まえて対策を行う市町村に対し、資金や講師派遣の面から支援する。悩みを抱える人への対応法などを学ぶ「ゲートキーパー」の養成にも力を入れる。研修受講者を現在の4500人から、14年度末までに1万人に増やすことを目指す。
         電話相談などを行う「府自殺ストップセンター」に精神保健福祉士らを増員するほか、自殺願望者を支援する相談機関のネットワークを強化し、受けた相談を適切に引き継ぐ仕組みもつくる。
         重症うつ病対策として、脳への磁気刺激でうつ症状の改善を目指す医療機器を府立洛南病院(宇治市)に導入する。自殺未遂者など「ハイリスク者」とされる人に絞った対策の実施も検討していく。
         13年度中に自殺対策条例を制定する方針で、学識者や相談機関の関係者らによる協議会を立ち上げ、内容を検討する。
        http://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20130304000013
        「京都新聞」2013年03月04日

        ●成年後見制度:選挙権喪失は違憲 東京地裁判決
         成年後見人が付くと選挙権を失う公職選挙法の規定は法の下の平等などを保障した憲法に反するとして、ダウン症で知的障害がある茨城県牛久市の名児耶匠(なごや・たくみ)さん(50)が国に選挙権があることの確認を求めた訴訟で、東京地裁は14日、この規定を憲法に違反すると判断し、訴えを認める判決を言い渡した。同様の訴訟はさいたま、京都、札幌の各地裁で起こされており、今回が初の司法判断。
         定塚(じょうづか)誠裁判長は「選挙権を制限するやむを得ない理由があるとは認められない」と述べ、名児耶さんに対し「どうぞ選挙権を行使して社会に参加してください」などと語り掛けた。
         判決が確定すれば名児耶さんは投票できるようになる。違憲を解消するには公選法の改正が求められることから、昨年末の時点で成年後見人が付いている成年被後見人約13万6000人(最高裁調べ)の選挙権にも影響を与える可能性がある。
         判決は、在外邦人の投票を制限する公選法の規定を違憲とした最高裁大法廷判決(05年9月)を引用。今回問題となった規定が「公正を確保しつつ投票を認めることが事実上不能か著しく困難で、選挙権の制限がやむを得ない場合」に当たるかどうかを判断した。
         投票には「物事の道理を理解する能力が必要」としたが、「成年後見人を付ける際に審判で判断される財産の管理能力と、投票能力は明らかに異なる」と指摘。「成年後見人が付いても投票能力のある人は少なからずいる」とした。
         国側は「投票能力を個別審査する制度の創設は不可能で、成年後見制度を借用せざるを得ない」と主張したが、判決は「運用に困難が伴うからといって、一律に選挙権を奪うことが『やむを得ない』とはいえない」と批判した。
         さらに、障害者の自己決定を尊重し、通常の生活をする社会を作る「ノーマライゼーション」という成年後見制度の理念を重視。同様の理念に基づいて欧米で法改正が進んでいることに触れ「選挙権を奪うことは制度の趣旨に反し、国際的な潮流にも反する」と述べた。
        http://sp.mainichi.jp/m/news.html?cid=20130314k0000e040186000c
        「毎日新聞」2013年03月14日