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        日本の「教育」はガラパゴス化してないか?
        2013/05/26
        最近、至極納得しながら読める本と出会いました。
         精神科医の岡田尊司氏の『子どもが自立できる教育』(小学館文庫) です。
         http://www.amazon.co.jp/子どもが自立できる教育-小学館文庫-岡田-尊司/dp/4094088075
         氏は、統合失調症、うつと気分障害、パーソナリティ障害、発達障害などの精神疾患などに関する執筆も豊富ですが、その臨床の中から、今の日本を生きる子どもたちをとりまくモンダイに関しても、鋭く深い提起・喚起を取り組んでおられます。
         日本で行われている教育や医療、社会福祉などを、日々の生活の中で「普通」「当たり前」のものと受け入れ、あるいは諦めている人には、現実の困難さから狭窄した視野を少し広げるためにも、日本の実情や他国で取り組まれていることを知ることは、大切なことかと思います。
         この『子どもが自立できる教育』では、文字通り学校教育のあり方を問うておられます。
         日本で半世紀以上生きてきた私の記憶においても、5教科の「成績」評価と出席日数などが記された通知表(生徒指導要録というその元となるものがあります、が開示されることは稀で、内容はその詳細?を記してあるだけ)、結果数値としての偏差値、どこの大学に進んだか、どこに就職できたか、などだけが、親の期待として子どもに課せられる(子どもはその期待に応えようと限界まで頑張る)仕組みとなっていると言っても過言ではないでしょう。
         それらの(評価の)数値を上げるために、学習塾などがこれほど数多く存在している国は珍しいのです。そこには、当然、経済格差によって満たされる人と満たされない人の格差も生じ、「落ちこぼれ」が放置される仕組みまで「当たり前」となっています。
         「一部のエリートが国を救う」という妄想のような人材戦略を根幹に置いた日本の政治・経済のシステムが、本当に「国を救う」のか否か。その答えを、殆どの人が、日々実感されているのではないでしょうか。
         この「教育」システムのモンダイは何か? 日本の実情の真逆を想像すると見えて来ます。
         本の小見出しを少し拾うと…。
         ・自立プロセスのつまづきとしてのひきこもり
         ・ペーパーテスト中心の教育の悲劇
         ・凋落し続ける日本の学力レベル
         ・上意下達の日本社会と画一化した教育
         ・自立という観点が乏しい日本の教育
         ・五教科主義は、優等生たちの自立を助けているか
         ・受験戦争と点数主義が生み出したもの
         現在のフィンランドの教育では、社会に出た時に何ができるかが重視されるそうです。隣国ロシアとの長期の危ういどん底の歴史から這い上がったフィンランドが選んだのは、子どもが自立できる教育、育った子どもたちが社会を支える仕組みづくり=未来のための教育改革を優先することでした。決して経済的に恵まれた国ではないにも関わらず、2000年から始まったPISA(OECD生徒の学習到達度調査)では2003年に学力世界一位(その後も上位)、世界経済フォーラムによる国際競争力ランキングで、2012年は世界第三位の評価を得るまでとなりますが、実質労働時間はオランダと並んで先進国最短。残業はないのが当たり前。犯罪や非行も少ないと言います。学力アップの要因は、成績下位層の学力アップ=落ちこぼれる子どもたちが激減したことだそうです。特性やニーズを尊重し、苦手をみんなで支え合う異年齢の小集団学習も、それらの成果を支えています。
         たとえば、発達心理学の分野で「発達の最近節領域」などの学習・発達理論研究に影響を与えたロシアのレフ・ヴィゴツキー、認知機能発達の分野で影響を与えたスイスのジャン・ピアジェ。「教育」に係る領域で学ばれた方は、もれなくこの二人の理論を学んだと思います。子ども期の学びは、認知機能の発達や社会性の獲得、その子の特性やニーズに沿って、発見や自発的な集団的取り組みを尊重することが大切であると…。その子の情報処理のタイプ、学習のレディネスや社会的スキル獲得の状態などを、個別に丁寧に見て、少しの導きや手段の提供で達成感や自己効力感を体験してもらえるような関わりが、今かなりのレベルで見落とされているように思えて仕方ありません。
         画一的な講義型授業、成績に優劣をつける、競争下に置く、偏った進路別・習熟度別コース分けなど、間違っているというつもりはありませんが、日本で取り組まれてきたことがどんな状態を生じさせているのか、他国の取り組みや実情とも比較しながら考えるべきではないでしょうか。
         落ちこぼれ、ひきこもり、負け組、高学歴ワーキングプア、ホームレス、住民票から抹消された居所不明の子ども、貧困格差、虐待、体罰・「指導」死、自死、触法行為…。日本が選択してきた「教育」システムが生み出し続けているものです。このままでは、日本は「教育ガラパゴス島」として危惧される国になってしまいます。

         それでは、最近の気になる記事です。

        知的障害の生徒にいじめ 長崎・佐世保の中学校

         長崎県佐世保市の市立中学校で、複数の3年の男子生徒が、知的障害のある3年の男子生徒のズボンや下着を、繰り返し脱がせていたことが分かった。市教委は「人権意識を欠いた重大ないじめ事案」として、再発防止に努めるという。
         市教委によると、いじめを受けていた生徒は特別支援学級に在籍。今月8日、3年生の教室で昼食を一緒に食べて交流した後、生徒9人がこの生徒を仰向けにして手足を押さえつけ、ズボンの上から下半身を触ったり、下着を脱がそうとしたりした。
         被害を受けた生徒が泣いたため、教室にいた女子生徒が担任に訴え発覚した。
        http://www.asahi.com/national/update/0526/SEB201305250072.html?tr=pc
        「朝日新聞DIGITAL」2013年5月26日0時18分

        ●体罰見聞きした女子中高生、半数が体罰教師に”恐怖心”–3割弱は”憎しみ”も
         ふみコミュニケーションズはこのほど、同社が運営する女子中高生を中心としたコミュニケーションサイト「フミコミュ!」にて実施した「学校での体罰を含む生徒指導についてのアンケート」の結果を発表した。同調査は、2013年2月28日~3月30日の期間にインターネット上で行われ、「フミコミュ!」ユーザー370名(中学生65.0%、高校生21.0%)から有効回答を得た。
         まず、今までに学校で体罰を経験したことがあるかと尋ねたところ、4.3%が「自分がされたことがある」と回答。このほか、「クラス/部活の友人が体罰を受けたことがある」は18.4%、「学校の生徒が体罰を受けたと聞いたことがある」は11.1%となり、合わせて33.8%が体罰を受けたり、見聞きしたりしていたことがわかった。それに対して、「自分自身も周りでも体罰に関わることは全くなかった」は66.2%だった。
         ◇今までに学校で体罰を経験したことがありますか?
         次に、体罰を見聞きしたことがあると答えた人を対象に、友人・知人が体罰を受けたと聞いてどのように感じたかと問うと、「体罰を行った教師を怖く感じるようになった」が最も多く48.6%、次に「体罰を行った教師を憎むようになった」が28.4%と続き、教師の体罰が女子中高生に恐怖心や憎しみを与えている状況が浮き彫りになった。
         教師が生徒指導のために体罰を行うことをどう思うかと聞いたところ、約7割の69.2%が「体罰は暴力的なのでなくしてほしい」と回答。一方、「指導が難しい生徒には体罰は必要だと思う」と答えた割合も28.6%あった。
         もし、あなたの学校で必要以上に体罰を受けている生徒がいたらあなたはどうするかとの質問に対して、「信頼のできる教師に相談する」と答えた割合は35.9%。以下、「自分の保護者に相談する」が22.7%、「その生徒に声をかけ支えてあげる」が16.5%、「友人に相談する」が13.0%と続いた。
         自由回答方式で、体罰はなぜ起こると思うかと尋ねたところ、教師のストレスやイライラを理由に挙げる回答が多数寄せられた。具体的には、「熱血教師が指導を頑張りすぎたり、教師のストレスが原因だと思う」(東京都:中学3年生女子)、「体罰は教育だの、成長するのに必要だの言ってる人がいますが、体罰とは言葉を換えてるだけでただの暴力でしかないのです。教師のストレス発散、と思っています」(奈良県:中学2年生女子)といった内容が見られた。
         また、「先生が子どもの時に体罰を受けていたからだと思います」(大阪府:中学1年生女子)など、教師が受けた教育に原因があるため、生徒達にも同じように接してしまう、という意見も挙げられた。御木本千春
        http://news.mynavi.jp/news/2013/05/13/128/index.html
        「マイナビニュース」2013/05/13

        ●生活保護法改正案 議論なく申請厳格化
         政府が自民党に十日に提示した生活保護法改正案に、保護の申請を厳格化する項目が盛り込まれていたことが十三日分かった。これまでの政府や与党内の議論ではほとんど取り上げられていない内容で、関係者や専門家、受給者の支援団体などから「本当に生活保護を必要とする人が利用できなくなる」「制度の根幹に関わる見直しをこっそり隠すやり方は問題だ」と批判が出ている。政府は十七日にも閣議決定して国会に提出する方針だが、野党が反発するのは必至だ。 (上坂修子)
         改正案は申請時、本人の資産や収入、扶養義務者の扶養状況を記した申請書を提出し、必要な書類を添付しなければならないと新たな規定を設けた。現行は施行規則で住所、氏名、保護が必要な理由を書いた書面を提出すればよく、資産や収入までは入っていない。判例で、口頭での申請も認められている。申請の意思を明確に示すことが難しい人もいるからだ。
         保護の開始時、扶養義務者に書面で「省令で定める事項」を通知することも盛り込まれた。
         生活保護受給者と過去に受けていた人の扶養義務者の収入や資産の状況について官庁や銀行、勤務先、日本年金機構などに報告を求め、調査することができるとの項目も入った。
         制度見直しを議論してきた厚生労働相の諮問機関・社会保障審議会「生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会」の宮本太郎部会長(中央大教授)は「部会では議論されなかった。(部会がまとめた)最終報告にも入っていない。保護が必要な人への心理的な脅威になることは避けるべきだ」と指摘した。
         生活保護問題対策全国会議の事務局長を務める小久保哲郎弁護士は「これまで違法とされてきた(自治体が窓口で申請を受け付けない)水際作戦を法制化するもので、多くの保護が必要な人を窓口で追い返す効果がある」と批判した。
         厚労省社会・援護局保護課は取材に「政府としては与党に法案審査をしていただいている段階なので、現時点での個別の条文についてのコメントは差し控える」と答えた。
        http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013051490070137.html
        「東京新聞」2013年5月14日 07時01分

        ●米国の子ども最大5人に1人に精神疾患、CDC報告
         米疾病対策センター(Centers for Disease Control and Prevention、CDC)は16日、米国の児童や10代の若者のうち最大で5分の1が不安やうつといった精神疾患を患っており、その数は増加傾向にあるという報告書を発表した。
         CDCの「週刊疾病率死亡率報告(Morbidity and Mortality Weekly Report、MMWR)」によると、1年間に精神疾患を経験する子どもの割合は13~20%に上る。報告書は、若者の精神疾患は「その流行の度合い、早期に発症すること、子どもや家族、コミュニティーへの影響が大きいことといった点から米国における重大な公共衛生問題であり、年間で推定2470億ドル(約25兆5000億円)の損失を生んでいる」としている。
         報告書は2005~11年のデータに基づいたもの。それによると、若年層に最も多い精神疾患は注意欠陥多動性障害(ADHD)で全米の児童・若者の6.8%が患っていた。次に多かったのは行動問題(3.5%)で、不安(3.0%)、うつ(2.1%)、自閉症スペクトラム障害(1.1%)、トゥレット症候群(0.2%)が続いた。
         報告書は医療関係者に、「精神疾患の影響をよりよく理解し、治療と介入戦略の必要性を伝えて、子どもたちの精神衛生を促進する」ための「早期の診断と適切な治療」を行うよう呼び掛けている。(c)AFP=時事/AFPBB News
        http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2944706/10761027
        2013年5月18日 13:29 (AFPBB News)