競争・選別から、子どもの命と育ちを保障する学校へ。
2013/06/05
6月1日・2日、神戸市内で開催された「全国学校事故・事件を語る会 大集会」に参加してきました。
北は北海道、南は鹿児島から。メディアや当日参加を加えると130名以上の参加。
1日は交流会。2日はシンポジウム。シンポのテーマは「第三者委員会のあるべき姿を問う」。
学校における事故・事件に限らず、遺族が求めるのは事実の解明と検証、再発防止への具体的な取り組みです。大津市で起こったイジメ自殺事件で、その本来的な役割のモデルが示された「第三者委員会報告書」。第三者委員会という、公平な立場で、事実を解明・検証し、事後対応の問題点・課題の指摘、教委をはじめ子どもに関わる機関・組織・専門職などのあり方を提言し、再発防止へのチェック機能も果たす組織に期待が高まっています。
しかし、この第三者委員会の設置のされ方、委員の構成、調査方法、報告書等の公表のされ方などに、大きな違いがあることがわかってきました。
どの立場に立った、何を目的としたものか。その報告は誰に対して、何を伝えたいのか、何に応えたいのか。これらによって、その内容も価値も違ってきます。
モンダイなのは、教育委員会が「第三者委員会」を設置し、教育委員会にとって都合の良い報告書をまとめることを目的としているケースが多すぎることでしょう。
中には、教育委員会内の調査委員会として、遺族が求める「問いかけ」に誠実に応えるものもあります。この大集会で集められた全国の情報では1件だけでしたが…。
2日間の集会で改めて考えたのが、子どもを育て、その能力を伸ばす「教育」における「評価」のあり方です。
戦後の日本では、5教科の点数や偏差値による評価と、部活動などの「成績」による評価の2つの面だけが重視され、子どもたちの、それぞれのさまざまな能力を見つけ伸ばす、自立し社会生活を営む上で大切な職業スキルや社会性スキルの獲得を支えるという視点での教育や「評価」が欠落してしまっているのではないでしょうか。
5教科「学力」や部活動などの「成績」による評価においても、数字による表象でありながら、その実、競争を煽り「できる子」と「できない子」を選別することが目的となっていて、本来的な役割を果たせていません。絶対評価を装った相対評価。とりわけ中高時代という心身の急進的な成長期に競争と選別を強いること、「その後の人生が決まる」という固定観念の定着は、子どもたちへの過度なストレスを超えて虐待的なものになっていると思います。
相対的な評価では、苦手なことや得意なことが極端に表象され、根拠無くあいまいなままに自己評価を下げやすくなります。サポートするにも褒めるにも、具体的説明が伴わないために、やみくもに「頑張れ」「やればできる」「みんな頑張ってるじゃないか」の根性論が展開され、親や教師の期待に少しでも「応えられない」状況が生じた時に、「もう無理!」と自己否定に向かいやすくなり、子どもたちをめぐる(自死にも至る)モンダイとなっているのではないでしょうか。
悲しい学校事故・事件が生じた時、誠実な事後対応や公平な立場での事実解明・検証、その内容や評価の公表がきちんと行われるか否かは、学校が、子どもの育ちや命が尊重される教育の場となっているか否かを見定めるものとなると思います。
<本の紹介>
これは読んで欲しい!という一冊が出版されました。
『指導死』
http://www.amazon.co.jp/「指導死」-大貫-隆志/dp/4874985130/ref=sr_1_2?ie=UTF8&qid=1370423010&sr=8-2&keywords=住友+剛
◇出版社からのコメント
いじめとも、家庭の悩みとも無関係な子どもが、学校での「指導」の後に自殺する事件・「指導死」。
体罰だけでなく、「言葉の暴力」でも追い詰められ、自尊感情をずたずたにされ死を選んだ子どもは、年に何人にも上っている。
「指導死」遺族の手記を元に、その背景と防止策を教育学者が解説。学校での懲戒、叱り方、指導の仕方を考える。
それでは、最近の気になる記事です。
自殺調査、第三者委の実態に不満 神戸で遺族らシンポ
【宮武努】学校でのいじめや体罰の影響が疑われる子どもの自殺が起きた場合、自治体の教育委員会がしばしば設ける第三者による調査委員会。そのあり方を考えるシンポジウムが2日、兵庫県神戸市で開かれた。出席した各地の遺族から、「名ばかりの第三者委が事態の沈静化に利用されている」という不満の声が相次いだ。
◇「ガイドライン必要」
シンポは、自殺や部活動中の事故で子どもを失った遺族らでつくる「全国学校事故・事件を語る会」が主催。遺族や支援者、弁護士ら約120人が参加した。
19年前に、教師の体罰を苦にした自殺で小学6年の長男を失った代表世話人の内海千春さん(54)=兵庫県たつの市=が、第三者委について、「事実解明が真の目的ではなく、いじめと自殺の因果関係を認めたくない教育委員会が、学者の権威を使って世間や遺族を納得させようとしているケースが多い」と問題提起をした。
そうした場合の特徴として、第三者委と言いながら学校側が作成した調査資料を判断材料にしている▽いじめと自殺の因果関係は不明とするだけで、「では何が原因と思われるか」に踏み込んでない――などを挙げ、第三者委のガイドラインが必要だと訴えた。
http://www.asahi.com/edu/articles/OSK201306030041.html?fb_action_ids=301212160015121&fb_action_types=og.recommends&fb_source=timeline_og&action_object_map=%7B%22301212160015121%22%3A315715418561485%7D&action_type_map=%7B%22301212160015121%22%3A%22og.recommends%22%7D&action_ref_map=%5B%5D
「朝日新聞DIGITAL」2013年6月3日
●第三者委の権限明記、国に要望へ=自殺生徒の遺族らがシンポ-神戸
学校でのいじめや体罰が原因で亡くなった子どもの遺族らでつくる「全国学校事故・事件を語る会」が2日、神戸市でシンポジウムを開いた。大津市で起きたいじめ自殺の報告書などを例に、第三者委員会のあり方を議論。「事態沈静化のための手段にしてはならない」などと意見が出され、第三者委の設置基準や権限明記について、国へ要望活動を行っていく方針を決めた。
シンポには北海道や鹿児島県など、全国から約100人が参加。いじめや体罰、部活中のしごきなどが原因で死亡した子どもの遺族5人が、学校や第三者委の対応を報告、ほかの遺族や弁護士、専門家らと意見交換を行った。
同会世話人で、体罰を苦にした自殺で19年前に小学6年の息子=当時(11)=を亡くした内海千春さん(54)は、「教育委員会への信頼の低下から第三者委が設置されているが、事態の沈静化に使われてはならない。亡くなった子どもの目線で原因を合理的に解明するため、独立性を担保してほしい」と訴えた。
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2013060200158
「時事ドットコム」2013/06/02
●小6女児自殺:110万円の支払い命令 北海道遠軽
北海道遠軽町で2008年4月、町立小6年の今野彩花さん(当時11歳)が自殺したのは担任教諭の行き過ぎた指導が原因だとして、両親が町と道に対して約7800万円の損害賠償を求めた訴訟で、札幌地裁(千葉和則裁判長)は3日、町と道に連帯して110万円の支払いを命じる判決を言い渡した。
訴状などによると、彩花さんは小学5年のとき、担任の教諭から夏休みの宿題のやり直しや楽器の居残り練習を繰り返しさせられ、精神的苦痛を受けた。春休みには両親に「担任が嫌だ」と何度も訴え、6年に進級して間もなく自宅トイレで首をつって死亡した。
両親は、学校側が不適切な指導を黙認し、教諭の行き過ぎた指導に絶望して自殺したと主張。道と町は「指導は適切だった」として全面的に争っていた。
千葉裁判長は判決で、指導と自殺の因果関係は認めなかったが、その後の対応で両親に精神的苦痛を与えたとした。【山下智恵】
http://mainichi.jp/select/news/20130603k0000e040182000c.html
毎日新聞 2013年06月03日 15時01分
●いじめで不登校…元同級生3人に200万円賠償命令
いじめで不登校になったとして、福島県伊達市の少年(18)が、中学時代の元同級生3人とそれぞれの両親に計約970万円の賠償を求めた訴訟の判決で、福島地裁(潮見直之裁判官)は5日、元同級生3人に計約200万円の支払いを命じた。
判決理由で潮見裁判官は「元同級生による暴行は多数回に上り、少年の自尊心を大きく傷つけた。悪ふざけの限度を明らかに超えており、人格権や身体に対する違法な侵害行為だ」と述べた。
一方で、両親への請求は「いじめを予見するのは難しく、監督義務違反は成立しない」として棄却した。
判決によると、少年は中学2年だった2008年7~11月、同級生3人に言動をからかわれたり、暴行を受けたりし、精神的なショックで卒業までほとんど学校に通えなかった。
http://www.sponichi.co.jp/society/news/2013/06/05/kiji/K20130605005951350.html
「スポニチ」2013年6月5日
●頼れる大人になって「いじめSOS!」シンポ開催/横浜
子どもや子育てに関わる人を支援するNPOに資金を助成しているNPO法人「神奈川子ども未来ファンド」(青木和雄理事長)の設立10周年を記念したシンポジウム「いじめSOS!」が25日、横浜市中区桜木町の市社会福祉センターホールで開かれ、いじめ問題に対して保護者や教諭らがとるべき対応などについて議論が交わされた。
朝日新聞社編集委員の氏岡真弓さん、NPO法人ジェントルハートプロジェクト理事の小森美登里さん、篠原宏明さんがパネリストとして登壇。
高校生の一人娘をいじめによる自殺で失った小森さんは、「子どもは大人に相談しても解決すると思っていない。大人サイドの問題にわれわれが気付き、頼れる大人になることが大切だ」と指摘。同じく中学生の次男を亡くした篠原さんは「次男は苦しんでいる姿を見せず、私は何でも話せる環境をつくっていると高をくくっていた。楽観的な考えではだめ。本気で向き合わないと子どもを救えない」と訴えた。
いじめ問題の取材に長年取り組んできた氏岡さんは「先生がいじめに加担しているという子どもの声を聞く。先生は学級を統率するため強い子どもの側に立たないとうまくいかない現状がある」と問題提起。
小森さんは「先生が『とりあえず様子を見ましょう』というのは一番危険。いじめが大人の耳に届いた時には深刻化している」とした上で「いじめは被害者の問題ではなく加害者の置かれている環境の問題。大人が傍観者にならずに向き合えるような社会をつくっていきたい」と訴えた。
同ファンドは2003年設立で、企業や個人などからの寄付を原資に子どもや若者、子育てに関わる人を支援するNPOに資金を助成。13年度は11団体に計329万円を助成する。
http://news.kanaloco.jp/localnews/article/1305250008/
「カナロコ」2013年5月26日
●12年の労災は9600件、10年間で倍増-医療介護分野で厚労省調査
◇保健衛生業の労働災害発生状況
厚生労働省の「2012年における労働災害発生状況」確定版によると、医療・福祉分野を含む「保健衛生業」で発生した労働災害は、前年比6.8%増の9635件で、このうち約7割が老人福祉施設や有料老人ホームなどが分類される社会福祉施設での事故だった。事故件数の推移をみると、特に社会福祉施設で大幅に増加しており、02年からの10年間で2.7倍となった。
【保健衛生業の労働災害発生状況詳細】
この調査では、死亡災害か、休業4日以上の死傷災害を集計。10年前と件数を比べると、保健衛生業全体では、02年の4911件から約2倍になった。社会福祉施設に限れば、02年の2411件から12年には6480件へと2.7倍に増えている。この間の「医療・福祉」分野における就業者数の増加は1.5倍にとどまっており、社会福祉施設の増加傾向は著しい。
社会福祉施設は、今年度を初年度とする第12次労働災害防止計画でも、特に災害の多い産業として重点分野に挙げられている。社会福祉施設での発生状況では、「動作の反動・無理な動作」34%が最多で、「転倒」30%、「交通事故」6%、「墜落・転落」6%と続いた。社会福祉施設以外の病院、診療所などでは「転倒」が36%で最も多く、「動作の反動・無理な動作」28%、「墜落・転落」9%となった。労災防止計画では、社会福祉施設で発生する腰痛を防ぐため、介護従事者への研修の充実や、事業所への介護機器の導入などを盛り込んでいる。【大島迪子】
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130528-00000003-cbn-soci
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/39994.html
「医療介護CBニュース」5月28日