困った状態は個人の問題に切り分けられない。
2014/02/11
2015年に介護保険制度が「改定」されようとしています。学習会などに参加してその内容を聞けば、要支援1・2判定の方はデイケアやホームヘルパーを利用できなくなる(さらに市町村の裁量に移行する)、デイサービスは機能訓練だけになり会話やレクリエーションなどが中心のデイは経営できなくなる、住民ボランティアでの代替えを拡大しとにかく安上がりにしようとしている、特別養護老人ホームは要介護3以上でないと入れなくなる、サービス利用料が現行1割から2割負担になる、等々。保険料が上がり続け、サービスがどんどん縮小・低下していく目論見が本格的に進行しています。
なぜ介護保険の問題にふれるか? ちゃんとした理由があります。
不登校やひきこもり、精神症状などの相談で来られる親御さんたちに、子どもの問題に集中できない状態が増えているからです。
まず、母子家庭が増えていて、経済問題、就労をめぐる問題、ご自身の人生設計などの悩みや不安が深刻さを増しています。
そして、「実は、親のこともいろいろあって…」と、聴けば明らかに要介護の状態にありながら介護保険制度につながっていない、どこに相談に行けばわからない、親が「必要ない」と行っているなど、地域包括支援センターの存在も介護認定調査の存在も知らないまま、でも放ってはおけないし…と抱え込まれているケースが増えています。
子どもの不登校やひきこもり、二次症状としての精神症状などと、こうした家族の課題は、おそらくほとんどの場合に関係があります。関わり合う近親者ですから、当然のことですし、良くも悪くも影響を受けながら、子どもたちは育ちの中で体験し、記憶し、認知スタイルを形成していくからです。
経済の問題、介護の問題、学校教育の問題…。行政にはそれなりに切り分けられた相談先(担当窓口)がありますが、家族の問題としてトータルにサポートしてくれる体制になっているとは言えません。
障害福祉および介護の相談支援においては、対象となる個人へ提供できるサービスは何かを探して提供することに集約される一方で、家族で支えることを基本軸に考えています。
一般的に言うところのカウンセリングにおいても、子どもには子どもの、親には別のカウンセラーがつくのが当たり前のようにされていて、家族・親族・近親者間での精神力動や環境としての枠組み、その中での体験や認知などを尊重しながらのサポートにならない構造を持ってしまっています。(各々のセラピストや関係者が支援検討会議などで情報共有をするなどの体制がとれていれば良いのでしょうが…)
困っているのは、困った状態を運命共同体のように抱え込み続けている家族の個々人であって、その支援は家族全体の状態・関係性を把握し、課題を具体化し、多様なサービスや社会資源につないで行く視点が不可欠となります。
医療モデル、福祉モデルから、社会モデルとでも言うべき「家族を地域で支える」支援のあり方へと変わっていって欲しいと願いつつ、支援連携の拡大を模索しているところです。
繰り返しになりますが、困りを個人の問題にしていては改善・解決に向かうことはありません。ぜひご相談下さい。
それでは、最近の気になる記事です。
「体罰を見聞き、自殺の一因」 愛知の高2、部活動悩み
愛知県立刈谷工業高校2年の山田恭平さん(当時16)が2011年6月、練炭を使って自殺した。遺書などはなく、県の第三者調査委員会が13年から自殺の経緯などを調べ、4日、最終報告書をまとめた。「山田さんが所属する野球部内で体罰を見聞きしたことなどでうつ病を発症し、自殺の一因となった」と結論づけた。
報告書によると、山田さんが自殺する約20日前、校内でトランプをしていた野球部員5人に、副部長が平手打ちをしたり、蹴ったりするのを目撃していた。
山田さんは直接的な体罰は受けなかったが、第三者委は「周辺で体罰を見聞きしたことで心を痛めたことを自殺に至る経過の中では重視するべきだ」と指摘した。野球部をやめたくてもやめられないという二律背反に悩み、うつ病を発症。解消するには自殺するしかないというところまで追い詰められていた。
(つづきはログインが必用)
http://www.asahi.com/articles/ASG1Y66M4G1YOIPE03H.html
「朝日新聞DIGITAL」2014年2月5日
●いじめ、自殺前に母に告白 長崎の小6女児
長崎市立小学校6年生の女児(当時11)が昨年自殺した問題で、女児が生前、母親に「虫を食べさせられた」などのいじめ被害を伝えていたことがわかった。母親が、市教育委員会が設けた第三者委員会の調査に対し、明らかにした。
遺族の代理人弁護士によると、母親が第三者委に伝えた内容は、5年生の3学期に女児が「虫を食べさせられた」「『何でも言うことを聞きます』との誓約書を書かされた」「シャープペンシルで腕を刺された」といういじめ被害を母親に告白したというもの。
いずれも市教委の児童への聞き取り調査などで、複数の児童が知っていた情報だが、市教委は「伝聞情報なので事実確認はできていない」としていた。この確認のため、学校は改めて今月から、児童への聞き取り調査を始めた。
市教委は、女児が5年生の3学期に靴を隠されたことと、自殺直前の昨年7月に修学旅行の班決めで仲間外れにされそうになったことの2件について、事実と確認し、いじめだったと判断している。(岡田将平)
http://www.asahi.com/articles/ASG275GJTG27TOLB00R.html
「朝日新聞DIGITAL」2014年2月8日
●滋賀県、いじめ問題の第三者機関を2段構えで
大津市立中学で2011年に起きた男子生徒のいじめ自殺問題を踏まえ、滋賀県は4月から、県立学校などで重大ないじめ問題が起きた際に専門家が調査する常設の第三者機関を県教育委員会、知事部局の双方に置く方針を決めた。
教委レベルでの調査が不十分であれば知事部局側が再調査する。こうした「2段構え」の取り組みは珍しいという。
昨年9月に施行されたいじめ防止対策推進法は、教委や自治体の首長が調査のための付属機関を設けることができると規定している。第三者機関は教委での設置が一般的だが、調査結果が「学校寄り」だとして被害者側が不満を抱くケースも多いという。
滋賀県によると、第三者機関の委員はいずれも弁護士や臨床心理士など5人を想定し、兼任しない構成。知事部局の「県いじめ再調査委員会」は、知事が教委側の調査を「不十分」と判断した場合に再調査するほか、教委の管轄外の私立学校も対象とする。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20140210-OYT1T01082.htm
「読売新聞」2014年2月10日
●いじめ防止条例制定へ 田辺市の中学生自殺未遂問題
和歌山県田辺市の中学2年生男子生徒(14)が2012年12月に自殺を図り、寝たきりになっている問題で、真砂充敏市長は6日、市教育委員会に市長部局と連携して「いじめ防止条例」の制定に取り組むよう要請した。中村久仁生教育長は「しっかり受け止め、再発防止に全力で取り組む」と述べた。
1月19日に市の第三者調査委員会が市長に提出した最終報告書は、自殺未遂の原因を「いじめを含む周囲との人間関係や学習面の問題など、学校生活におけるさまざまな因子が複合的に結びついた」と結論付け、再発防止の取り組みを提言している。
要請書は、今回の事案を教訓にいじめ防止のための基本的な事項を定める条例の制定をはじめ、教委で本年度中に策定する「いじめ防止基本方針」に報告書の内容を十分配慮すること、早急な自殺防止対策を求めている。
報告書は、学校の対応の問題点を指摘しており、要請書でも、生徒指導や保護者との連携についての検証や教育相談体制の改善、いじめや自殺を予防する授業の実施。問題が発生した場合に第三者の専門家を交えた会議、子どもの権利を扱う常設の第三者機関設置の検討を求めている。
市長室で要請書を受け取った中村教育長は「条例制定は市長部局と十分に協議して進める。いじめ防止基本方針は早急に作成し、関係する委員会を14年度中に立ち上げたい。教委として全力で対応する」と答えた。
真砂市長は「市長部局も報告書を熟読し、教委と連携して適切に対応したい」と話している。
http://www.agara.co.jp/modules/dailynews/article.php?storyid=267971
「紀伊民報」2014年02月06日