進学や就職をめぐるストレスと葛藤。
2014/03/18
冬から春へ。年度替わり。今を生きる日本人、特に思春期・青年期段階にある人たちにとってこの季節は、季節の移り変わりを味わう「ゆとり」どころではなく、進級・進学・就職などにまつわるストレスと葛藤の季節です。この間、こうした課題での何件かの相談をお受けしてきています。(解決したもの、見通しのついたもの、目下格闘中のもの、様々です)
進級は、クラス替え、担任の異動、学年が変わることによる学校内の力関係や自身の立ち位置、キャラの適応性など、気を使うことばかり。
進学は、5教科中心の評価にさらされながら、希望する学校やコースとの解離、親や親族の期待との解離、新たな立ち位置とキャラづくり、経済的問題や生活面での具体的な不安などなど。
就職は、決まらないことによる自己評価の低下や無価値化、先行きの見えない不安や無力・絶望感、親や親族の期待との狭間での葛藤と苦悶…。決まったとしても、ブラックではないか?、企業などの先行き不安、求められるスキルなどへの対応・適応不安、新たな対人関係性づくりなど…、これまたストレスと葛藤にあふれています。
「そんなのは当たり前。乗り越えてこそ一人前…」と親世代の方は言われるかも知れませんが、親世代が青年期を生きた時代と現在とでは、比較できないほどの違いがあることは、改めて説明を加える必用はないと思います。社会(教育評価、就活、企業経営、国家財政など)の仕組みも価値観も、子どもが成人するまでに体験し身につけるもののレベルも内容も、自己に対する評価の有り様(およびその根拠)も、「自信を持って苦難に立ち向かう」ことができる態勢を維持している人は稀少と言える状況ではないでしょうか。
なかでも、自己に対する自己評価や他者による評価への過敏なまでの脆弱さは、個人の問題ではなく、生きてきた環境の中で作られてきたものであることの理解が不可欠です。
親は、子どもの将来を思うあまり、無難で安定した職業や資格取得などを期待し、時に要請します。悪気がないことは明らかでも、少し考慮に不足するところがあるのではないでしょうか。
具体的には以下の3つの視点です。
1.今、これからの時代に安定を保証してくれる企業や職業・職種はあるのか。あるとして、それに加わることのできる人はどれくらいいるのか。その人は、自己の要求や能力、価値観とマッチした選択ができているのか。
2.その人の得意・不得意や能力、意欲、価値観などにマッチした職業選択となっているか。
3.その人の、その時の心身の状態に応じた活動(勉強や就活)になっているか(後にダメージを与える無理強いになっていないか)。
人にはそれぞれの個性・特性があり、体験してきた様々な環境によって多様な認知や価値観が作られ、また多様な能力・スキルごとに獲得の段階・レベル・スピードが違います。それらを一律に、○○になったからと、他の同級生は○○しているのにと、他者と比較しながら要請・強要することは、せっかくの「親心」がストレスを与え、度を過ぎるとアイデンティティの拡散・崩壊状態を生じさせてしまう結果となりかねません。
大切なのは、多様な情報やスキル、価値観を学び獲得していける環境を提供しつつ、将来への身の振り方を自己選択・自己決定してもらうこと。親・親族が出して良いのは「口」ではなく、お金だけ、とは少し言い過ぎでしょうか。
それでは、最近の気になる記事です。(今回も自殺事案を含むいじめ関連が満載です)
「誰もわかってくれない さよなら」”学校の現実”克明に、湯河原いじめ調査報告/神奈川
「誰も僕の心をわかってくれない さよなら」。昨年4月に自殺した湯河原町立湯河原中学校2年の男子生徒=当時(13)=は、自宅に残したメモにこう記していた。いじめを受け続けることによる苦痛と、周囲に迷惑を掛けたくないという自立心とのはざまで揺れる「思春期の少年」の苦悩-。第三者委員会が4日に公表した調査結果は、男子生徒が向き合っていた”学校の現実”を克明に浮かび上がらせた。
報告書によると、いじめは2012年4月の入学直後に始まった。所属していた運動系の部活動で、尻をたたかれたり、シューズのひもをほどいて練習の邪魔をされたりするなど、当初は「ちょっかいが日常的に行われていた」という。
だが、行為は次第にエスカレート。同年10月以降は暴力が目立つようになり、10回以上連続して柔道技で投げ倒されたことも。その後も暴力は繰り返され、「もう、痛いからやめて」という男子生徒の悲痛な訴えは届かなかった。翌年1月ごろからは「死ね」という無慈悲な言葉を浴びせられ、ますます追い込まれていった-。調査委はこう分析している。
3人兄弟の長男だった男子生徒。頭が良くて生真面で大人っぽく、責任感が強くて我慢強い性格の「いいやつ」。教諭や同級生には、こう映っていた。家族や、毎朝一緒に登校していた友人が心配して学校生活について尋ねても、いじめを受けていることは口にしなかった。
しかし同時期、周囲は異変に気付いていたはずだった。自殺翌日の4月11日、学校が同学年を対象に実施したアンケートでは、2割の生徒がいじめ行為を目撃していたことが判明。部活の試合後に男子生徒が泣いているのに気付いた顧問が、「大丈夫か」と声を掛けたこともあったという。
そんな日々を送りながらも、男子生徒はメッセージを送っていた。「たまには僕たちの悩みを聞いてください」。2年に進級した直後の13年4月、生徒が担任教諭に提出した「自己紹介カード」に記したという。しかし、学校側がすぐに対応することはなかった。
そして、翌日-。
自宅に残したメモに、いじめへの怒りや憤りを表す記述はなかった。調査報告書では「いじめの苦痛や不安のみが問題になったのではなく、解決できないふがいなさや、いら立ちが自分に向かっていた可能性がある」と指摘している。
調査委の小林正稔委員長は会見で、こう訴えた。「誰かに気付いてほしいというかすかな思いに、大人が気付けなかった。『中学生だから』と、自立を強制するのではなく、信頼関係を築いて支えていける学校であってほしい」
◇生徒が読める機会を
玉川大学教職大学院・田原俊司教授(教育心理学専攻) 限られた時間の中で、いじめの事実関係を丹念に追っている。委員会からの提言も具体的で、関係者は真剣に受け止めて実行してほしい。特に調査報告書の公開は、同じ過ちが繰り返されないようにするためにも必要。部分的で良いので、生徒たちが報告書を読む機会も設けるべきだ。
いじめに気付けなかった学校側は、いじめがあるのが当たり前という「感覚のまひ」があったのではないか。生徒に目を配り「おまえ、最近変だぞ」「言いづらければスクールカウンセラーが話を聞くよ」と声を掛けるのが重要。教職員が忙しければ外部の手を借り、生徒が声を上げられる態勢をつくってほしい。
◇学校の責任問うべき
NPO法人「ジェントルハートプロジェクト」・小森美登里理事 事案発生前の資料が、保管の責任があるのに破棄され、本人からの「悩みを聞いてほしい」という訴えに担任は対応していない。意識の低さ、指導力不足がうかがえる。報告書は「学校はいじめに気付けなかった」としているが、いじめの隠蔽(いんぺい)の可能性も含め、学校側の責任を問うべきだった。
提言はもっと具体策を示すべきだ。例えば重大事案発生後に行うアンケートの質問項目も学校側に任せるのではなく、「こういう質問を盛り込む」と明記するなどだ。事実に向き合うためのプロセスを示し、学校がそのプロセスに添って動くようにしなければ意識は変わらない。
http://news.kanaloco.jp/localnews/article/1403040043/
「カナロコ」2014年3月5日
●小6自殺「いじめ原因」 前橋地裁、群馬県・桐生市に賠償命令
群馬県桐生市で2010年、小学6年、上村明子さん(当時12)が自殺したのは学校でのいじめと校長らの不適切な対応が原因として、両親が市と県に3200万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、前橋地裁は14日、市と県に450万円の支払いを命じた。自殺といじめとの因果関係を認めた。
原道子裁判長は判決理由で、「臭い」「きもい」など継続的な悪口や仲間はずれなどのいじめを受けていたのに、学校側が適切な指導をしなかったため絶望的な状況に追い込まれたと指摘。「自殺の原因は校長と担任教諭にある」と認定した。
原告側は「担任教諭はいじめを分かっていながら放置した。適切な対応を取っていれば自殺に至らなかった」と主張。市と県は、原告側が主張するいじめの一部を認めた上で「非常に軽微で自殺の原因とはならない」と反論していた。
上村さんは小4だった08年に桐生市立新里東小に転校し、10年10月に自宅で自殺した。訴状では、同級生に「臭い」などの悪口を言われたなどとしていた。
市の第三者委員会は11年3月、「いじめが唯一の原因で自殺したとは判断できない」との報告書をまとめた。〔共同〕
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1401Y_U4A310C1CC0000/
「日本経済新聞」2014/3/14
●プール事故:小1女児死亡、京都市に賠償命令
京都市左京区の市立養徳小学校のプールで2012年7月、同小1年の浅田羽菜(はな)さん(当時6歳)が死亡した事故で、羽菜さんの両親が京都市などを相手取り、約8000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が11日、京都地裁であり、橋詰均裁判長は現場にいた教諭3人の過失を認め、市側に約3000万円の賠償を命じた。
訴状によると、羽菜さんは夏休み中の7月30日、課外のプール学習中に溺れ、翌日、死亡した。プールは通常、低学年向けに最も深い場所で水深90センチにしていたが、事故前にあった高学年の練習に合わせ110センチにしていた。羽菜さんの身長は113.5センチだった。
両親側は、指導を担当した3人の教諭が普段より水位が高いことを知らず、深い場所に行かないようロープを張るなどの安全対策を怠ったと主張。市側は「安全管理に課題はあるが、違法とまでは言えない」などと争う姿勢を示していた。
京都市教委は、弁護士らによる第三者委員会を設置し、事故原因を調査している。【松井豊】
http://mainichi.jp/select/news/20140311k0000e040184000c.html
「毎日新聞」2014年03月11日
●自殺:2013年は2万7000人 4年連続減も高止まり
警察庁と内閣府は13日、2013年の自殺者数を前年比2.1%(575人)減の2万7283人(確定値)と発表した。4年連続の減少で、2年続けて3万人を下回ったものの、政府が目標とする「2万4000人台」は達成できておらず、高止まりが続く。動機別では、多重債務や事業不振などの「経済・生活問題」の減少が583人と最も大きく、内閣府は「景気回復が大きな要因ではないか」と分析する。一方、東日本大震災関連とみられる自殺は38人と前年より14人増えた。【川辺康広】
国は09年度、自殺対策を支援する基金を都道府県に創設。12年度までに118億4000万円が市町村や民間団体などの活動に充てられた。内閣府の担当者は「一定の効果が出ている」としている。
全体の68.9%が男性。職業は「無職者」(学生や児童生徒は除く)が6割を占めた。年代別では60代が17.3%で最多で、次いで40代16.8%▽50代16.4%▽70代13.9%−−など。12年はすべての年代で減少したが、13年は70代以上が増加に転じた。
遺書などから原因や動機を特定できた2万256人について分析(最大で3項目まで計上)したところ、最多は「健康問題」の1万3680人(前年比0.4%増)。次いで「経済・生活問題」4636人(11.2%減)▽「家庭問題」3930人(3.9%減)▽職場の人間関係などの「勤務問題」2323人(6%減)▽「男女問題」912人(11.9%減)▽学業不振やいじめなどの「学校問題」375人(10.1%減)−−など。
最多だった健康問題の内訳では、「統合失調症の悩み・影響」の増え方が最も大きく10%(115人)増。経済・生活問題では、「多重債務」の減り幅が最も大きく、17%(151人)減。なかでも40代と60代の減少ぶりが目立った。「就職失敗」は20代に顕著で30%(45人)減だった。
一方、警察が東日本大震災関連の自殺と判断したのは前年比14人増の38人。前年は11年(6月以降のみ)の55人から半減したが増加に転じた。原因は健康問題の22人が最多。自治体別では、福島県が23人で前年より10人増えた。
NPO法人「自殺対策支援センター ライフリンク」の清水康之代表の話 4年連続の減少は自殺対策の成果とみられるが、減少幅は前年の9.1%から2.1%に縮んだ。依然として1日平均75人が自殺しており、自殺率は米国の2倍、英国の3倍だ。政府は16年までに2万4000人台に減らす目標を掲げており、「自殺総合対策大綱」に列記された項目を確実に実行することが求められる。震災関連の自殺が福島県で増加したことも注視すべきで、戦略的に対策を講じる必要がある。
◇自殺の主な原因・動機
<家庭問題>
・夫婦関係の不和 1002人
・家族の将来悲観 587人
<健康問題>
・うつ病 5832人
・身体の病気 4463人
<経済・生活問題>
・生活苦 1277人
・多重債務 688人
<勤務問題>
・仕事疲れ 649人
・職場の人間関係 539人
<男女問題>
・失恋 293人
・不倫の悩み 165人
<学校問題>
・学業不振 135人
<その他>
・孤独感 532人
※現場の警察官が最大3項目選択
http://mainichi.jp/select/news/20140313k0000e040145000c.html
毎日新聞 2014年03月13日 10時41分
●大学生の7割以上が「ぼっち」実感
高校時代とはガラリと環境が変わる大学生活。学内に友達ができず「ぼっち」になってしまったらどうしよう? そんな心配を抱えている人も多いハズ。編集部が大学生の男女200人に「友達作り」についてアンケート調査をしたところ「ぼっちだと思うことはある?」の質問に対して「一度もない」と答えたのは26%のみ。「よくある」(21%)、「たまにある」(53%)を合わせると、7割以上の人が「ぼっち」を実感することがあるようだ。具体的に「ぼっちで困るのはどんな時?」と聞いてみると以下の通り。
1位 大学でランチを一緒に食べる人がいない時(40%)
2位 欠席した授業のノートを借りる人がいない時(37%)
3位 特に困ることはない(21%)
4位 授業の代返を頼める人がいない時(20%)
5位 休日に一緒に過ごす友達がいない時(16%)。
「特に困ることはない」という回答は、男女別では男子18%に対して女子は24%と、意外にも女子の方がタフという結果に。しかし、「ぼっち」は寂しいだけでなく、学業面で問題になる場合もあるようだ。
では「ぼっち」を回避できた先輩たちは、どうやって友達を作ったの?「最初に友達ができたタイミング」として多くあげられたのは「入学式から1週間くらい」(30%)、続いて「入学式」(28%)と、入学早々という人が多数。出会って間もない人と会話を弾ませるのはハードルが高いように思えるが、芸能界屈指の人脈を持つお笑い芸人・カラテカ入江さんは次のように語る。
「イタいと思われるのを恐れず積極的に絡みましょう。単位やサークルなど、共通の話題を会話のきっかけに」
入学したら勇気を出して、とにかく周りの人に話しかけよう!
(有栖川匠)
(R25編集部)
http://news.so-net.ne.jp/article/detail/938099/
(提供元:web R25)2014年 03月16日