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        小4男子生徒に自殺を迫る教師を考える…。
        2003/10/11
        9月8日、担任教師から子どもが「けがれた血だ。自宅マンションから飛び降りろ」と自殺を迫られ、「五つの刑」といった体罰を受けていたご両親が当該教師と福岡市に対して損害賠償訴訟を起こされました。その子は「生まれ変わりたい。自分には生きる価値がない」と抱え込み自己否定感情を高めているようです。その子の恐怖体験も深刻ですが、教室でその場を体験した他の子どもたちの受けた心的外傷もとても深いものだと思います。
        体罰は言うまでもなく法律違反です。でも(少し古い資料ですが)小学校では4割強、中学校では6割強の教師が体罰を必要と考えているという調査結果があります。そして、げんこつ・平手打ち等の過度な暴力的体罰をしたあと「後味が悪かった」と答えた人は8割を超えています。子どもの側の受け止めは正直です。小学生で、「なぐられてもしかたがない」と答えた子どもは28.3%ですが、「なぐらなくてもよいのに」43.3%、「なぐられるほど悪いことはしていない」16.7%、他に否定的・反発的感情を抱いた回答が8.3%。中学生も近い数値ですが、否定的・反発的感情を抱いた回答は13.9%です。体罰によって子どもが反省したと思っている教師は多いようですか、それは思いこみです。体罰は即効性のある規制ですし、「強い態度」に出ないと言うことを聞いてくれないと思う教師のみなさんの心情も理解できます。しかし、子どもたちのこうした否定的・反発的感情は一時的なものではなく、体罰によって教師への信頼感は確実に揺らいでしまいます。過激な体罰を受けた子どもほど「えこひいき」を感じたり、「学校に行くのがイヤになる」、「ムカつく」、「対教師暴力願望」といった感情が高い。教室という密室で、みんなの前で行われる違法な体罰は、「強者が弱者を暴力で制裁する」ということを是とすることで、教師自身が「いじめ」を容認する風土を学校内につくっていることになることを忘れないで欲しいと思います。
        「けがれた血」「単一民族」といった言葉で連想したのはナショナリズムです。この教師がどんな思想・心情をもっていても構いませんが、公教育の場に持ち込むことは明らかな違法であり、今回の行為は暴力であり人権侵害です。503人の全国弁護団のみなさんには本当にがんばって欲しいと思います。
        10月10日付の「週間金曜日」紙上で「なぜいま『心のノート』なのか」という激論がありました。登場するのは文化庁長官の河合隼雄氏と作家の森巣博氏。『心のノート』をめぐる様々な賛否の論議がされた後、河合氏は「いろいろ論争が起きると言うことは、ぼくは大歓迎です。皆で充分考えて、その結果『そんな内容やったらやめよう』という声が大きくなれば、やめたっていいわけですから」と締めくくっています。どこで決まって何を目的に始まったのかわからず、突然全生徒向けに配られ「使うように」という指導・点検が行われ、現場に混乱だけを与えて、だめなら「やめたっていい」という開き直り、こんな事業に2年間で10億円という税金が使われているという事実にこうまで客観的でいられるのかと驚きです。10億円あれば他に豊かな教育をめざす取り組みがいっぱいできると思うと、こんな文部行政を許している国民として情けなさを感じます。