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        18 成年後見制度利用支援事業の「収入」要件について
        この8月、私が成年後見制度の保佐人に選任されている方の保佐人報酬に関して、長岡京市の成年後見制度利用支援事業を申請するにあたり、別紙の通り「嘆願書」(以下にPDF末尾に全文)を提出しました。

        長岡京市成年後見制度利用支援事業における「収入要件」にかかる嘆願書
        tangannagaokakyocity201509.pdf

        (長岡京市成年後見制度利用支援事業)
        http://www.city.nagaokakyo.lg.jp/0000004733.html

         被保佐人は精神症状が10代より生じ、通院・ひきこもり状態で30年以上が経過しています。障害手帳は当初3級だったものを、保佐人に選任された後の昨年、再認定で2級となりました。
         障害基礎年金は、過去にもご自身・両親で裁定請求をされたことがありましたが、20歳前発症を証するものがないなどで窓口却下され、諦めていたものを、24年頃より社会保険労務士と協働して再裁定請求する方向でご支援してきたものです。
         様々経過を経て、この8月に、過去分(2年)を含めて障害基礎年金「1級」の初回支払いが行われました。
         本人はそれまで、父親の受給する高齢老齢年金から小遣いとして毎月少額をもらって生活していましたので、預金は30万円程。保佐人となった後は私が預金、収支を管理をしています。
         障害基礎年金受給は、本人にとって、今後の人生の経済的支えの根幹となるものであり、受給要件を満たす本人がきちんと受け取り、適切に活用できることは当たり前のことであり、妥協はできません。
         たまたま過去2年分が一括して支払われ、同事業の、「対象要件」の1つにある「年間収入が150万円以下であること」に、過去2年分の障害年金が一括払いとなったためにこの要件を満たさなくなるかも?をどう判断するか、柔軟な解釈などを求めた嘆願でした。
        ※詳細は「嘆願書」をお読み下さい。

         結果、同支援事業の申請は支給決定され、担当者より口頭ではありましたが、決定に至った経緯や解釈を説明いただきました。
         (2.障害年金そのものが非課税…)に関しては、国の「社会福祉法人等にいおる利用者負担軽減制度」で、障害年金等非課税対象の年金受給を収入と見なしても良いと、京都府を通して国から回答があり(検討に時間を要したこと)、よってこの「収入」要件は妥当であるものの、(1.)の過去分(25・26年度分)は各々の年度の収入とみなし、27年度分は150万円以下であると判断したこと、さらに、(6.要綱の改定または内規策定)は内規的に担当課内で申し送る決定をしている、とのことでした。

         障害のある方の老後を支える活動をされている多くの団体や組織が、この解釈をめぐって、「非課税である障害年金を収入とみなすべきではない」と取り組んでおられます。
         私なりにネット波乗りをして、国の解釈や実際の運用を調べてみました。

        <障害年金を「収入」に含めるとする解釈>

        社会福祉法人等による利用者負担の軽減制度実施要綱
        平成18年3月31日
        告示第57号

        (目的)
        第1条 この要綱は、介護保険法(平成9年法律第123号。以下「法」という。)に規定する介護保険サービスの提供を行う社会福祉法人等が、低所得で生計が困難であると認められる者に対し利用者負担を軽減することにより、低所得利用者の生活の安定と、介護保険制度の円滑な実施に資することを目的とする。

        (軽減対象者)
        第3条 この要綱による軽減対象者は、市が行う介護保険の要介護被保険者等(生活保護受給者及び旧措置入所者で利用者負担割合が5パーセント以下の者を除く。ただし、旧措置入所者で利用者負担割合が5パーセント以下の者であっても、ユニット型個室の居住費に係る利用者負担額は、軽減の対象となる。)で、市民税非課税世帯に属する者であって、次のすべての要件を満たす者のうち、その者の収入、世帯の状況、利用者負担等を総合的に勘案し、生計が困難な者として市長が認めた者とする。
        (1) 年間収入(収入には非課税収入、仕送り等も含めるものとする。ただし、事業収入及び譲渡収入については、収入から必要経費を控除した額とする。)が単身世帯にあっては150万円以下とし、世帯員が1人増えるごとに50万円を加算した額以下であること。
        (2) 預貯金等の額が単身世帯にあっては350万円以下とし、世帯員が1人増えるごとに100万円を加算した額以下であること。
        (3) 世帯がその居住の用に供する家屋その他日常生活のために必要な資産以外に利用し得る資産を所有していないこと。


        ↑これらに基づいて、障害基礎年金や遺族年金等は非課税でありながらも、障害福祉サービスの利用料算定等に際して「所得」と認定されたり、「社会福祉法人等による利用者負担額軽減制度」等でも「収入」に含まれることになっています。

        ↓一般的に運用されている「軽減制度」の紹介

        (東京都北区の例)
        http://www.city.kita.tokyo.jp/kaigo/kurashi/hoken/kaigo/teshutsushorui/documents/3.pdf
        (富士市の例)
        http://www.city.fuji.shizuoka.jp/kenkou/c0504/fmervo000000kstz-att/fmervo000001m1hz.pdf
        (神戸市の例)
        http://www.city.kobe.lg.jp/life/support/carenet/setsumeikai/img/20110318_7.pdf

        全国一律で、非課税年金も収入とされ、その額も同じです。



        <「嘆願書」全文>(個人が特定される部分は○○としています)

        長岡京市長 中小路健吾 殿

        長岡京市成年後見制度利用支援事業における
        「収入要件」にかかる嘆願書

         長岡京市におかれましては、障害者総合支援法等に基づく市町村事業(地域生活支援事業等権利擁護事業)としての「長岡京市成年後見制度利用支援事業要綱」を実効性高い内容に改定・拡充していただき、成年後見制度利用を必用としている生活保護受給世帯はもとより、それに準ずる低所得・非課税世帯等がその申立および報酬に関して助成を受けられるようになりましたこと、まず御礼申し上げます。
         私は○○○○氏(○○○○○○○○)の保佐人(京都家庭裁判所における平成26年○○月○○日付保佐開始・選任審判/平成26年(家)第○○号・第○○号事件)である精神保健福祉士の木下秀美と申します。
         保佐開始・代理権付与の審判が下る背景には、被保佐人が長期に渡って精神疾患罹患状態であることによる就労不能や判断能力等の低さ・困難さ、無年金、老齢年金収入のみで生活している父母と同居とはいえ、父親は心臓疾患等を含む持病がありつつ介護サービスを受け、母親もリウマチや呼吸器疾患等の持病がありながら夫の介護と息子である被保佐人の生活を支えており、その生活は正に困窮状態にあり、被保佐人はその父親からの月25,000円の小遣いをもらいながらひきこもり状態にあったことが大きく判断の根拠とされているようです。
         この度、被保佐人である○○○○氏について、家庭裁判所に対して保佐事務照会と共に報酬付与申立を行いその審判が下り、貴市要綱が定める所の「助成対象要件」を満たすと判断し、「報酬費用の助成」を申請するに至りました。
         一方で被保佐人は、10代より精神科等に通院し、精神症状が悪化・継続、生活はひきこもり状態で、両親と同居ながら無年金の単身世帯であったため、平成24年11月頃より障害基礎年金裁定請求を改めて行うこととなりました。社会保険労務士を代理人として平成25年5月1日に下京年金事務所において裁定請求受付、年金機構の審査を経て、厚生労働大臣による「初診日不確定」を理由とする却下決定(平成25年8月5日)、近畿厚生局社会保険審査官に対して「決定」内容に対する不服審査請求(平成25年10月8日)、同受付(平成25年10月9日)、同審査請求棄却(平成26年4月30日)、同再審査請求(平成26年6月23日)、同受付(平成26年6月27日)、厚生労働省社会保険審査会審理(平成26年12月12日)、同棄却裁決(平成27年2月27日)等を経て、「裁定請求にかかる決定の変更」通知(平成27年5月28日)、障害基礎年金決定通知書(平成27年6月25日)、年金支払通知書等(平成27年8月6日)、8月14日に平成25年5月以降分(過去分および8月支払分)として被保佐人名義預金口座に2,105,281円が振り込まれるに至りました。
         保佐人として平成26年7月1日〜平成27年7月31日の一年間の保佐事務・財産目録等の照会、報酬付与申立を家庭裁判所に提出した直前に決定通知が届き、提出後に(過去分を含む)初回支払いが行われたことになります。
         貴市支援事業要綱に基づけば、利用対象となる「収入・資産要件」のイの(2):「年間収入が単身世帯で150万円」以下との「収入要件」を一過的に満たさない状態となります。
         
         保佐人として本件に関して、以下の観点から「収入要件」を柔軟に解釈され、貴市支援事業の請求を受理いただけるよう嘆願するものです。

        1.本件200万円余の障害基礎年金「支払」は、過去分(2年)を含むものであり、本来であれば裁定請求を提出した日(平成25年5月1日)から「おおむね50日」には初回支払が行われるものであったが、却下、再審査等2年余を経て決定通知となったために支払が一括されたものであり、過年において受け取っているはずの「入金」が200万円余のほとんどであること。
        2.障害年金そのものが非課税であり、1.の「一括」がなければ「収入要件」を問うことがなかったこと。
        3. 今回障害基礎年金決定額が過年に支払をされていた額を全て預金していたとしても、本支援事業の「預金要件」に該当すること。
        4.私は財産の保存行為・管理行為等の代理権を付与された保佐人として、成年後見制度の基本理念(ノーマライゼーション、自己決定の尊重、身上保護の重視等)に基づき、被保佐人(本人)の資産を守り、身上監護において「意思尊重義務」「善良な管理者の注意義務」等を担いその権利を擁護する立場にあることから、今回の過年分を含む「入金」は被保佐人にとって重大な資産として守る立場にあること。
        5.「収入要件」によって貴市支援事業の請求が受理されなければ、単年度ながらも家庭裁判所から審判された保佐人「報酬」(261,360円)を、「預金要件」に該当しない預金の中から受け取ることことは、保佐人として、また精神保健福祉士として自己判断しかねる内容であること。
        6.本件は稀なケースではあるが、今後同様のケースが生じることが想定されるため、ケース毎の(その時の)対応とするのではなく、貴市の判断により必用と認められる場合は要綱の一部改訂または一定の内規の制定が必用と考えられるため。

         以上、宜しくご検討・ご判断願います。

        ※京都市は年間「収入」を対象要件としていないことを付記しておきます。

        2015年8月18日   
        ○○○○ 保佐人 木下秀美(精神保健福祉士)   
        ○○○○○○○○○○○○○○   

        ○○○○(被保佐人)   
        ○○○○○○○○○○○○○○   

        上記嘆願に賛同します。

        住所       (司法書士、主治医、各1名の賛同署名)
        氏名