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        21 「成年後見」という制度に「専門職」として関わりながら<1>
         <その1.制度と実態>
         私は「精神保健福祉士」という国家資格で「成年後見」という制度に「成年後見人等」として関わる時は、「専門職」=「職業後見人」として取り組んでいます。毎年家庭裁判所に後見人等としての活動や資産状況などの報告をし、活動実績に応じて審判される報酬を受け取る(非課税など低所得の方は市町村の成年後見制度利用支援事業を活用して)という仕事としてです。
         毎年数件はマスコミで、「後見人が(被後見人の)財産を横領…」といった事件が報道され、制度そのものの危うさが露呈されています。財産や権利を「守る」はずの制度が、故意に「奪える」仕組みとして利用されるという問題ですが、本質的にはもっと深い憂うべき本質があります。
         現在の制度は2000年4月、それまでの禁治産・準禁治産制度にかわってスタートしましたが、その契機となったのが介護保険制度の発足です。詐欺被害や相続問題などの増加もさることながら、介護保険サービスは「契約」によって行われるため、「契約」する「人」が必用となったわけです。本人が認知症、親族はいないか疎遠であれば、この仕組みは成り立ちません。制度を理解し、「つなぐ」人の存在も不可欠です。

         「成年後見」制度は、民法上の「判断能力」の考え方によって<3つの類型>があります。
         □後見:欠く状態にある □保佐:著しく不十分 □補助:不十分
         「判断能力」が全くない、あると言えない、支援が必要、という3段階ですが、それを「判断」する材料は申立時に提出する書面と調査(諸資料、医師診断書、本人への聴き取り)で、それでも裁判官が「判断」できない場合には精神鑑定が行われます。おおよそが精神科医による「判断」で類型が決まり、支援する人(後見人等)は裁判所が選任します(申立時に候補者を出すこともできます)。
         この「判断」で「後見」とされるか、「保佐」「補助」とされても「代理権」や「同意権」が付与されていれば、本人が「○○したい(したくない)」と意思を持っていても「判断能力」がないわけなので、後見人等が判断することになります。
         これは、現在の制度が「判断能力」がどの程度あるかは医学モデル(精神機能/脳機能の程度)による判断(権利能力説)によるためですが、国連で2006年12月採択され日本政府も批准した「障害者の権利に関する条約」(2014年1月20日公布)に反するものであるのです。例えば「お金」については…。
        第十二条 法律の前にひとしく認められる権利
        5 締約国は(略)障害者が財産を所有し、又は相続し、自己の会計を管理し、(略)平等の権利を確保するための全ての適当かつ効果的な措置をとるものとし、障害者がその財産を恣意的に奪われないことを確保する。
         成年後見制度は施行から16年、活用状況は低迷しています。最高裁事務総局家庭局がまとめた平成26年の概況によれば、全国の制度利用者数は毎年増加しつつ約18万5千人。全国の同年の申立件数は約3万4千件、約82%が「後見」開始(保佐は約14%、補助は約3%)。本人との関係では、約35%が親族、約65%が第三者でその内訳は弁護士:約6千9百人、司法書士:約8千7百人、社会福祉士:約3千3百人、他)。
         認知症、老老・老障介護、親亡き後の知的・精神障害、生活困窮とされる人の数を考える時、18万5千人という制度利用者数は決して相応とは言えません。しかし、制度を後見人等として支える第三者:主に「専門職」(職業)後見人等にも限りがありますし、その中には資産略取や権利を守るために為すべきことをしない「専門職」がいる実態もあります。

        (note22<その2.問われる専門性、問う制度のあり方>へ続く)