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        35 『大地』5周年を迎えて 寄稿
        2022/01/11
        乙訓不登校を考える親の会『大地』5周年記念誌「そのままでええねん」の巻頭に寄稿したものです。

        乙訓不登校を考える親の会『大地』5周年を迎えて

         「親の会を作るのでアドバイザーになってもらえませんか?」「この日を16年間待っていました」と答えたのを思い出す。来られた二人は、私が元不登校の子どもの親であることを知っていた(詳細は私の事務所のサイトで…)。
         小・中学校の不登校(年間30日以上欠席)が増加し2001年度に13万人を超えた。その後減少期を経るが2019年度は18万人を越え、さらに増加傾向にある。
         不登校に対する考え方や呼称も大きく変わった。学校恐怖症、学校嫌い、登校拒否、そして不登校…。2016年に教育機会確保法が成立し、学校以外で学びを受けられる環境は、コロナ禍の影響もあり多様になっている。学校に「行かさなければ…」「再登校させなければ…」という親や学校による「大人の圧」は低減しているが、何か解決の光が輝いているわけではない。子も親も教師も悶々とし続けている。
         その悶々を共有し、一緒に考えることを目的とした「親の会」。全国レベルの連絡会も25年の歴史を持つ。公助がない中で自助を支える地域の共助組織として、子と親に安心と勇気を紡ぎ合う不可欠な存在になっている。
         『大地』は、かなりユニークな「親の会」である。毎月の定例会運営だけでも相当なエネルギーを要するのに、地元の教育委員会の後援を頂きながら地域に不登校の理解を呼びかけるフォーラムや講演会の開催、卓球を楽しむ親子の活動、地元のお寺の協力を得た子どもの居場所、それに便乗した?親の居場所、バーベキューやそうめん流しなどのお楽しみ会、学習会やワークショップ、地域のイベントへの参加、市町の適応指導教室の拡充を求める取り組みなど、多彩多様に楽しんでいる。支援者、関係者の参加も多い。
         不登校の数だけその原因・理由・経過はあるのだから、一括りにはできない。直面した子と親にとって、もがき悩みながら共に人生を見つけていく営み。だから、支え合う中でこそ味わえる、人間的な共感や喜びは普遍的かつ有意義で、そして重い。家庭や個々の問題として抱え込まれることなく、地域で共に生きる課題として共有し、すべての人が豊かな気持ちで居られる、解の無い問いを包み込む地域となることを願いつつ、あの日から5年を迎える。

        『大地』アドバイザー 教育と人間関係の相談室カンナ 代表 木下秀美