向日市の「福祉タクシー事業」の実施要綱が「改正」されたことに伴って、前年まで申請・受領していた身体障害のある被補助人が突然「対象外」とされました。
これについて、補助人として(代理権はないものの)、福祉専門職有資格者として、市の障がい者支援課と懇談の場を持つことができました。
併せて、今月26日にあった住宅火災への対応、成年後見制度利用促進についての考えも問いました。
以下、「相談・確認したいこと」の文面です。現物は以下のURL、若しくはページ下部のPDFでご覧下さい。
http://ss856941.stars.ne.jp/kannadata/soudan-kakuninn202205_20220530_0001.pdf懇談の内容は、以下のURL、若しくはページ下部の画像でご覧下さい。
http://ss856941.stars.ne.jp/kannadata/kanikeikikanate202205_20220530_0001.pdf
向日市市民サービス部様 障がい者支援課様
2022年 5月 30日
障がい福祉課窓口で相談・確認したいこと
いつもお世話になっております。
精神保健福祉専門職(有資格者)、成年後見人等として、いくつか相談・確認をさせてください。
(略儀をお許し下さい)
1.向日市福祉タクシー事業の「改正」について
私が補助人をしている市内在住の高齢身体障害者である被補助人(単身、賃貸住宅、要介護3)が、先般、市からの通知に沿って移動支援事業を利用して「福祉タクシー事業」の申請に行ったところ、「今年から要綱が改正され、対象外となった。診断書を再提出するようにと言われた。昨年までもらえていたのになぜ急に無理になるのか?と問うと、さらに説明をされたが理解できない。訪問診療医に診断書を書いてもらうのもタダではないし、申請に行くだけでもタクシー代の往復分がかかる。再申請をすれば2倍の費用がかかるから諦めることにした」とのことです(申請は郵送でも可との説明理解は不明、(ご案内)も手渡されたが)。本人は機嫌を損ねるどころか怒りが激しく、訪問面会においても会話にならず、(ご案内)はゴミ箱に入れられました。
本人の障害者手帳(手帳申請申請当時の自治体発行)には、障害名「右脳内出血による左上下肢機能障害」、身体障害者等級表による種別「2級」とされています。
向日市福祉タクシー事業はその実施要綱(昭和56年3月31日策定)では、
(目的)第1条、外出困難な障がい者に対し、タクシー料金及び障害者用自動車のガソリン等の代金(以下「ガソリン代」という。)の一部を助成することにより、障がい者の生活行動範囲の拡大及び社会参加の促進を図り、もつて福祉の増進に寄与することを目的とする。
とされています。
「地域共生社会」の実現、障害者の差別禁止・社会参加の促進等、時代の求めに即した市の独自事業として有り難いものと認識致しております。
ところが、本年4月より、以下の内容で「要綱を改正します」とされました。
令和4年度から要綱を一部改正し、以下の点が変更となりました。
(略)今後、手帳の表記が上記に該当しない方は福祉タクシー利用券の対象外となります。必ず手帳の表記と上記の内容をご確認ください。
これにより、本被補助人は「下肢」の障害等級がわからないとの理由で非該当と判断されたようです。
全国の自治体における同様の事業を見ると、それぞれに本旨は類するものの、詳細において、特に対象とする身体障害者の障害等級については二極化しているようです。つまり、当市のように「下肢」について2級以上であることを要件とするもの、身体障害者手帳2級以上であることを要件とするもの、の2つです。
本被補助人の手帳からは、「下肢」の障害の程度や等級を切り取って判断することはできません。そのために貴課は、主治医による改めての障害状態を特定する書面が必要と考えられ、当該医師宛にその依頼をされたものと考えます(送付された封筒には返信用封筒も切手も入っておらず、医療機関の負担となっているとのことです)。そもそも、申請時に医師の意見書(診断書)の添付を必要とする自治体は、ネットで見る限り見当たりません。
以下、厚生労働省の障害等級等についての「通知」から抜粋します。
〇「身体障害者障害程度等級表の解説(身体障害認定基準)について」の一部改正について(平成26年1月21日)(障発0121第1号)
(各都道府県知事・各指定都市市長・各中核市市長あて厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知)
四 肢体不自由
(2) 下肢不自由
ア 一下肢の機能障害
(ア) 「全廃」(3級)とは、下肢の運動性と支持性をほとんど失ったものをいう。
具体的な例は次のとおりである。
a 下肢全体の筋力の低下のため患肢で立位を保持できないもの
〇身体障害認定基準の取扱い(身体障害認定要領)について(平成15年1月10日)(障企発第0110001号)
(各都道府県・各指定都市・各中核市障害保健福祉主管部(局)長あて厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課長通知)
2 障害程度の認定について
(1) 肢体不自由の障害程度は、上肢不自由、下肢不自由、体幹不自由及び脳原性運動機能障害(上肢機能・移動機能)の別に認定する。
この場合、上肢、下肢、体幹の各障害については、それらが重複するときは、身体障害認定基準の障害が重複する場合の取扱いにより上位等級に認定することが可能である
<確認事項.1>
今回の「改正」は、本市が昭和56年に策定し運用してきた要綱の解釈を変更したために生じたものと思われますがいかがでしょうか?
・そうであれば、昨年までに同様の申請でチケットを支給されていた障害者を「非該当」と切り捨てることとなり、当該障害者の社会参加の意欲や機会を減らし、経済的負担を増加させるという新たな「障壁」を本市が作ったこととなります。
・「非該当」とするのではなく、申請書の身体障害の対象者に記載を求める「障がい部位及び等級」を部位事ではなく、障害者手帳の等級のみにすることで、また、「下肢…のいずれかを含む」と変更することで、昨年までの利用者が切り捨てられることなく、医師への新たな負担も避けられるのではないでしょうか。
横浜市・長崎市の案内、長岡京市・かほく市の申請書を添付しますので、参考にして下さい。
<確認事項.2>
「改正」の議論の経過、通知の仕方は、妥当なものだったのでしょうか?
・今回「改正」は市議会の議事を経ないで行えるもののようです。部内の議論・決済で行われたものとはいえ、補助人としては、その議論の内容や経過について、公文書開示請求も含めて、今回「非該当」になった被補助人にわかりやすく説明する必要があります。
・今回「改正」の通知は本年3月付けで市ホームページ及び(ご案内)書面で行われています。「非該当」となる障害者の多くが身体障害者であり、障がい福祉サービスや介護サービスを利用していると思われます。
・これら「サービス」を利用するには、相談支援事業所や居宅介護事業所と契約し、計画相談や居宅サービス計画書の作成が必要となりますので、それら事業所が、事前に「改正」内容や理由を正しく理解しておくことが不可欠と思いますが、今回「改正」ではそれらは行われておらず、申請時に「非該当」とされることで初めて「改正」されたことを知るところとなっています。該当するであろう障害当事者はもとより、各障害者団体、乙訓圏域自立支援協議会、乙訓障がい者基幹相談支援センター、乙訓福祉事務組合、各地域包括支援センター、各移動支援事業所、乙訓医師会等にも同様に、事前の説明やニーズの聴き取り・アセスメント、話し合いの場、「改正」決定後の通知・周知も丁寧に行う必要があったと思います。
・また、障害の程度について、症状が固定し、永久認定になっている障害手帳をお持ちの障害者の申請においては、医師の意見書(診断書)を必要とする必要性はないと思います。
2.寺戸町永田において5月26日に発生した火事について
高齢者が火災により死亡され、怪我を負い、住居・財産を失う等、被災されています。
<確認事項.3>
今回の火災において、支援の制度がありながら「非該当」等となって支援が届かなかった、ということはなかったのでしょうか? また自然災害に限らず、高齢者、障害者、支援を要する人への火災等での被災時に、行政各担当課からの重層的・多面的なプッシュ型の支援が必要と思いますが、いかがお考えでしょうか?
・亡くなられたのは80代の単身生活の方、怪我をされたのも高齢の方々だったと聞きます。向日市は住宅密集により、火災発生時の類焼危険性が高い地域と聞きます。自然災害を想定した、災害時の要支援者登録は取り組まれていますが、実際には支援が必要であるにも関わらず登録を躊躇っている方も多いようです。具体的に災害が発生し、要請があれば動く、では初動が遅く、必要な支援が届かないことは想像に難くありません。火災、台風等の風水害、突然の土砂崩れや建造物の倒壊等、高齢者や障害者が被災するリスクは高く、他の部局や地域の各種機関・団体等と連携してこうした災害被害に備える必要があると思います。
3.成年後見制度利用促進について
第6期向日市障がい福祉計画・第2期向日市障がい児福祉計画によれば、向日市における成年後見制度利用支援事業の令和4年度・5年度の【サービスの見込み量】はそれぞれ7人・8人とされています。第5期の実績が5〜6人で、自然増を見込んだものと思われます。
国・厚労相は「第二期成年後見制度利用促進基本計画」(令和4年度〜令和8年度、令和4年3月25日閣議決定、同日各都道府県・市区町村 民生主管部(局)長宛て通知)に基づき、権利擁護支援の地域連携ネットワーク、重層的支援体制整備、市町村長申立てと成年後見制度利用支援事業の推進、担い手の育成等をさらにすすめるために、5月27日にも第158回市町村職員を対象とするセミナーをオンラインにて開催しました(私も視聴しました)。同事業の全市町村における実施率は94%となっていますが(100%をめざして未実施市町村に要請をしています)、申立費用・報酬の一部助成について生活保護受給者のみを対象としている市町村が少なくないため、非課税・低所得の人を広く対象とするように要綱改正等の取り組みが強く促されていました。
利用支援事業とともに、成年後見制度利用促進法(平成28年4月15日公布、同年5月13日施行)に基づく市町村での取り組みが求められているところです。
(地方公共団体の責務)
第五条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、成年後見制度の利用の促進に関する施策に関し、国との連携を図りつつ、自主的かつ主体的に、その地域の特性に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。
第五章 地方公共団体の講ずる措置
(市町村の講ずる措置)
第十四条 市町村は、成年後見制度利用促進基本計画を勘案して、当該市町村の区域における成年後見制度の利用の促進に関する施策についての基本的な計画を定めるよう努めるとともに、成年後見等実施機関の設立等に係る支援その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
2 市町村は、当該市町村の区域における成年後見制度の利用の促進に関して、基本的な事項を調査審議させる等のため、当該市町村の条例で定めるところにより、審議会その他の合議制の機関を置くよう努めるものとする。
<確認事項.4>
本市の成年後見制度利用支援事業を、非課税の低所得者が対象とされるように柔軟な対応ができるものに要綱を改正することをお考えではありませんか? また、成年後見制度利用促進法および第二期成年後見制度利用促進基本計画に基づき、本市における利用促進基本計画の作成およびその実施、そのプロセスにおける市民や後見人である専門職等の参加についてはどのようにお考えでしょうか?
・本市における利用支援事業は収入・資産要件において、実質的には生活保護受給者およびそれに準ずる非課税所得者のみを対象としており、年収が150万円を超えるとこれまた「非該当」となってしまいます。150万円から家賃、そして後見人報酬を差し引けば、間違いなく基本生活費を下回ります。収入要件を撤廃すること、低所得の非課税の人が利用対象者となることが必用です。成年後見制度の利用について、そのニーズを広く市民、介護・障害福祉・司法関係者等から把握すると共に、支援事業の拡充や利用促進基本計画の作成を求めたいと思います。
以上ご検討いただき、回答頂きますと共に、今後の向日市における地域共生社会の実現、障害者の差別解消や社会参加の促進に引き続きのご尽力をお願い致します。
今後とも宜しくお願いします。